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英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.36『1988年欧州選手権編(その2)』

この大会はオランダ代表の活躍が目立ちすぎて、他国の印象がかすんでしまいがちです。しかし、強豪国の選手たちが使うスパイクには、これまでの定番から様々な変化が見られた大会でもあったように思います。「(その1)」の続きとして、いくつか特徴的なスパイクをご紹介します。

Icon 29634314 1815368455432881 1085668874 o 小西博昭 | 2019/04/11
「(その1)」は、http://king-gear.com/articles/1030)をご覧下さい

88年EUROでの西ドイツは、ホスト国の意地をかけて優勝を目指していたと思いますが、準決勝でオランダに屈しました。

巻頭写真は開幕戦の対イタリア戦です。

イタリアも準決勝でソ連に敗れてしまいましたが、2年後の自国開催のW杯に期待を抱かせる選手が台頭してきた大会でした。

スパイク的には強豪イタリアの中心選手(巻頭写真のバレージ選手など)が、世界主要大会では久しぶりに(多分80年EURO以来)アシックス製品を使うようになりました。
さて、日本でもおなじみのブッフバルト選手が履いているアディダス・3マテリアルソールのスパイクは変わった色をしています。

このモデルは、この大会用に製造されたヨーロッパカップだと思います(図1左)。シュータンのトレフォイルマークが緑なのはこのモデル特有ですが、その頃製造されたワールドカップ(右)も同じ色になっています(普通は赤が多い)。

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  図1 ヨーロッパカップ(88)とその頃のワールドカップ(右)。シュータンマークのトレフォイルが緑です。   

西ドイツでは、リトバルスキー選手、フェラー選手もこのヨーロッパカップを履いていました。巻頭写真左のブレーメ選手のスパイクのアッパーは図1右のワールドカップのようですが、ソールは白一色の取替え式モデルです(図2左と中上)。

シンプルなソールですが、この時期としては珍しいと思います。
多分、巻頭写真右端に写っているベルトルト選手も同じタイプだったと思います。 ちなみに、ブレーメ選手は84年大会ではプロフィを履いていたようです(右と中下)
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図2 白一色の取替え式モデルを履く88年EUROのブレーメ選手(左)。アッパー(中央上)はワールドカップに似ており、トレフォイルも緑に見える気がします。84年EUROのブレーメ選手(右)。かかとの革の縁が白いスパイクなのでプロフィ(中央下)のようです。  

 80年代、アディダスはEURO大会ごとに特別モデルのスパイクをデビューさせていました。 84年大会でもヨーロッパカップというモデルはあったのですが、実際に選手が履くようなハイエンドモデルではなかったようです。

84年EUROはフランス開催だったこともあり、プラティニ選手などはフランス製アディダスの「EUROPA」というモデルを履いていました(こちらをご参照下さい。
http://king-gear.com/articles/910)。
個人的にヨーロッパカップというと80年大会モデルの印象が強いです(図3左) 

銀色ラインの少し変わったアッパーが特徴で、高校生が買える価格ではない高級モデルでした。 しかし、古い雑誌や画像からの情報しかありませんが、80年大会で銀色ラインのスパイクを履いている選手はいなかった気がします。
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図3 ヨーロッパカップ80(左)。80年大会の決勝は西ドイツ(右上、シューマッハー選手とシュスター選手)対ベルギー(右下、クーレマンス選手とプァフ選手)でした。メーカー表示規制があったのか、ユニフォームのマークを隠していたようです。   

当時買えなかったモデルが大好きなため、何足か手に入れたのが図4、5です。
図4左はオーストリア製で、右は西ドイツ製です。 

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図4 左は80の表示がありません。この記事には間に合わず、全体をお見せできませんが、西ドイツ製には「EUROPA CUP80」の表示が2行の物もあります。   

図5は多分珍しいヨーロッパカップ80の白ラインモデルです。日本では販売されなかったようで、シュータンのデザインも図4とは異なります。
こちらは実際にEURO80でも使われていたかもしれませんが、当時の写真ではつま先の細かい形状までは判断できず、ワールドカップ(78)と見分けがつきません。

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図5 このモデルはこちらの方(http://king-gear.com/articles/971)から譲っていただきました。色以外にも革の種類やラインが皮革製であることなど、図4のモデルとは異なる点が多々あります。   

以前も書きましたが、86年大会モデルも市販のものは銀色っぽいラインでしたが、実際に選手が使っていたスパイクのラインは白色だったようです(図6)。
  
 
 
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図6 86年W杯の西ドイツ・フェラー選手(左)とその実使用スパイク(中央、ネットからの画像)。モデルはストラトスSLですが、市販のもの(右)と異なり、ラインやかかと部分が白色です。   

アディダスと違ってプーマは各EUROで特別モデルのスパイクを発売したことはなかったと思います。また、80年代のEUROの出場チームのユニフォームはアディダスが多かったこともあり、選手のスパイクもアディダスが主流です。
 

しかし、84年EUROではポルトガルやスペインの選手が、当時のニューモデル、ステップスターを使用していました(こちらをご参照下さい。http://king-gear.com/articles/995)。 

88年大会でも少数ですが、興味深いプーマスパイクを使っていたようで(図7)、特にこの大会でイングランドを破るなど旋風を起こしたアイルランドチームにはアディダス、プーマの他、ナイキやハイテック(図10)の選手がおられました。
 
 

Thumb efbc98図7
 88年EUROのアイルランド代表・ホートン選手(左)は、取替え式はオーソドックスなKING(左上)を、固定式は珍しいモデルをお使いでした(左下)。

中央のギャルビン選手はVol.33
http://king-gear.com/articles/1029)でご紹介したグラスキャットを履いていました。イングランドGKシルトン選手はこの大会はメキシコフィナーレ(こちらもご参照下さい。http://king-gear.com/articles/1006)をお使いでした(右)。
   

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図8 88年EUROと同じ頃の国際試合(イングランドvsスコットランド戦)の画像ですが、右のような個人的に好きなタイプのプーマのモデルが使われたのはこの頃までで、これ以降、プーマのスパイクは大きく変化していきます。左はモデル名不明のプーマスパイクを履くイングランド・ワトソン選手   

アディダス、プーマ以外では、デンマークやスペインチームでヒュンメルを愛用する選手が目立った中、ラウドルップ選手は定番のパトリックをお使いでした。 

当時珍しいメーカーとしては、86年W杯ではアディダススパイクで得点王を獲得したリネカー選手がQUASARを使い始め、スペインのレニョネス選手らがKELMEを使っていたようです
(図9)。

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図9 88年EUROのリネカー選手のスパイクはこの当時ではかなり派手だったと思います(左、中上)。右は同大会で、スペイン製KELMEのスパイク(中下)を履くレニョネス選手とイタリア製ディアドラを履くドナドニ選手。ちなみにこの大会のイタリア代表ではアンチェロッティ選手のスパイクメーカーがナゾです。   
さらにアイルランドの名FW、ステープルトン選手はハイテック(HI-TEC)のスパイクを履いていましたが、86年W杯でもイングランドのリード選手が使っていました(図10)。  Thumb efbc91efbc91
図10 86年W杯のリード選手(左)、88年EUROのステープルトン選手(中央)。いずれも大会唯一人のハイテック愛用者だったかもしれません。右はスペインのアンドリヌア選手で、88年EUROでおもしろいフェイクスパイクを履いていました。この時期では珍しいアディスーパーソールのアディダス・ワールドカップをプーマに見えるようにしています。

   最後はEUROとは関係ないですが、80年代中頃から見られなくなったポニーのスパイクが手に入ったので載せました。ロッシ選手が78年W杯で使っていたと思ったら、結構大胆なフェイクスパイクでした(図12)。Thumb efbc91efbc92 図12 ロッシ選手シグネチャーモデルと思われるポニースパイク。78年大会のロッシ選手(左)のスパイクはポニーのラインですが、3本線がハッキリ見えます。   

(写真は当時のサッカーマガジン、ダイジェスト、イレブン及びゲッティイメージズなどより引用)
  


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神に愛された西独製サッカースパイク』
80年代に数々の伝説を生んだサッカー界のスーパースターを足元から考察した論考。  
                  


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