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英雄たちが愛した歴史的グローブ(一話完結)「美津濃赤カップ編」

今でこそサッカースパイクオタクの私ですが、最初にスポーツ用品に興味を持ったのは野球グローブでした。70年代半ばから登場し、多くの一流プロ選手が使っていた美津濃のワールドウィンシリーズで赤カップがついた硬式用グローブは、その頃の野球少年にとっては憧れでした。「KING GEAR」オールドギア部門担当者(?)が質より量で集めたモデルを使って、当時の赤カップグローブの一端についてご紹介します。

Icon 29634314 1815368455432881 1085668874 o 小西博昭 | 2019/10/01
50歳半ば世代の多くが最初に興味を持ったスポーツは野球だと思います。 私がプロ野球を見始めた頃、長嶋さんがギリギリ現役で、74年に引退後、野村さんや王さんが数年現役で活躍されていた姿を覚えています。 

図1は2013年に発刊された「野球用具大図鑑グラブ編」の表紙の一部で、まさしくこのお三方のグラブ、ミットが載っています。
オリックス時代のイチロー選手や、楽天時代の田中投手のグラブも載っていますが、やはり個人的にはこちらに目が行きます。 今の時代はグラブと呼ばれますが、世代的にグローブの方がしっくりきます。    

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図1 左から長嶋さん、野村さん、王さんの現役時代のグラブ、ミット。王さんも美津濃の前はお二人と同じローリングス製を使われていました。 (訂正、キャッチャーミットは森さん(元巨人、西武監督)のものでした。しかし、野村さんも同じモデルをお使いでした)   

図2は表紙の全体写真で、当時のスター選手がこぞって美津濃のワールドウィンシリーズの野球用品を使っていました。 ウェブ部分に赤カップがついたグローブは75年ぐらいから登場し、この写真は左上端の東尾さんがクラウンライターライオンズ時代なので、77か78年だと思います。 

その頃は王さんも赤カップのミット(図1右)をお使いでしたが、バットやスパイクは他のメーカーだったので、この中にはおられなかったのかもしれません。

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図2 当時の美津濃野球用品販促グッズの下敷き。懐かしい名選手の面々。もうおられない方々も・・・。さすがに闘将、鉄人が逝かれてしまったのは未だに信じられず寂しい限りで、英雄のギアについて書き残したくなったしだいです。   
数多い赤カップグローブ使用者でも、おそらく最も印象深いグローブをお使いだったのは図3のお二人だと思います。 山口投手のグローブは図1の長嶋さんモデルとベースは似ています。 高田選手のクロスウェブにライナーバック(後述)のモデルは赤カップグローブの中で最も人気が高く、今でもオークションなどではとても高額で取引されています。 

お二人のグローブはそれぞれオールラウンド用、内野手(三塁)用ですが、この頃からキャッチャー、ファースト以外のポジション専用モデルが使われ始め、高田選手のようなカラーグローブも解禁されたと思います。

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図3 阪急・山口高志投手(左)、巨人・高田繁選手。   

図2の集合写真は代表的な赤カップモデルの特徴を見せるようにうまく撮影されています。上段左の東尾投手、鈴木孝正投手のグローブはタータンウェブ(TARTAN WEB)、右から3人目の星野投手はディープボウルウェブ(DEEP BOWL WEB)、右端の三村選手はクロスウェブ(CROSS WEB)です。 

それ以外だと、中段左から3人目の小林投手のグローブのウェブはこれらとは違う特別なものでした。
グローブ背面についてですが、下段左端の山口投手のはローリングスで言うWING TIPタイプ(王冠パターン)、左から3人目山田投手のはオーソドックスなタイプ、右端の弘田選手のはライナーバックです。 図4下にこれら代表的な特徴を持つグローブを載せました。 

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図4 図2でグローブを持っている選手の拡大図(上)と、それぞれの特徴をもったグローブ3種(下)。タータンウェブのオールラウンド用(左)、ディープボウルウェブの内野手(セカンド)用(中)、クロスウェブでライナーバックの外野手用(右)。    

赤カップモデルがいつまで作られたかは存じ上げませんが、私の場合、MIZUNOマークも古いタイプ(80年ぐらいまでの前期型)が好きで、その後はMIZUNO+大きなMマークが入ったものに変化しますが、そちらはあまり興味が湧きません。 オールラウンド用(GAT-5)はこれまでいくつか入手しました(図5上)。

一見みな同じに見えますが、前期型赤カップWorld Winモデルはグレードが4種類ほどあり、これらはそれぞれグレードが異なります。
このグレード名は最初から4種類あったわけではなく、「Title Cup」は後から追加されたようです。 「All STAR」と「Professional」はUSAレザー製ですが、中央のマークはそれぞれ少し違います。 

また、わかりにくいですが、 「Professional」(右上)は内部がシカ革で、ウェブ内側の赤カップの裏側に当たる丸い部分が金色のペイントになっており、他のグレードは縫い付けられた糸が露出しています。 

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図5 捕球面の「World Win」表示下にグレードを示す文字が記されています。グレードは上から「Professional」、「All Star」、「World Win」のみ、「Title Cup」です。オールラウンドの品番はGAT-5で、Gはグローブ(?)、AがALL ROUND、TがTARTAN WEBを表わします。

内野用はGI
(Infielder)、外野用はGO(Outfielder)で、その後はWEBタイプ(ディープボウル(D)、クロスウェブ(C))が続きます。数字は背面パターンを表わし、5は図4左のタイプ、中のタイプは3で、ライナーバックの場合は3Lとなります。

図4
中はGID-3S(Sはおそらく短いか小さめの意味)、右は(赤カップなら)GOC-3Lです。 


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図6 同じ品番でもグラブの大きさがまったく違う場合もあります。図6はどちらもGOC-3でクロスウェブの外野手用ですが、左の方が随分縦長です。

また、土手の縫い目に用いられている金属の端止めは、当時のモデルのみに使われおり、復刻版や現在のグローブには見られませんが、右は修理してヒモを取り換える際に除かれたようです。
  

図4ではすべて赤カップで揃えたいところですが、ライナーバックは人気が高くて手に入らず、軟式用の青カップ(しかも左投げ用)しかありません。 

しかし、仕方なく入手した青カップモデル2種類に、それまで知らなかった違いがありました。 青カップ捕球面は「World Win Dynamic」と「CREST HIDE DELUXE」の表示が普通ですが、左のモデルは赤カップと同じ表示(牛革のロゴのCREST HIDE CUSTOM)になっています(右下)。 

また、前期型MIZUNOマークの色合いや刺繍の仕方も異なります(左下)。

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図7 青カップ2種の比較。美津濃マーク、捕球面の革の表示の違いの他、青カップのモデル番号はBGN3000番台が普通ですが、左は4000番台になっています。   

カップマークの赤と青部分はエナメル製ですが、経年劣化していることがほとんどです。しかし、最近手に入れたソフト用緑カップはまったく劣化が見られず、材質が違うのかもしれません(図8左)。 

また、青カップ、緑カップのモデル番号はそれぞれBGN、BGSで、NとSは「軟式」、「ソフト」を意味しているようです(BはBaseball?)。 


追記になりますが、背面パターンは図4の3パターン(3、3L及び5)が代表的なのですが、ピッチャー用で図8右のようなパターンがあり、このモデル番号はGPT-6となります。  
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 図8 緑(ソフトボール)、赤(硬式)、青(軟式)のカップ付きモデル。右はピッチャー(P)用赤カップモデル(GPT-6)。   

赤カップグローブはその人気の高さゆえ、復刻版が何回か製作・販売されました。 図9の赤カップ復刻版は硬式用でオリジナルにとても忠実にできています。ただ、復刻版のオールラウンド用の背面は図4左の王冠パターンというよりも、図6右に似ていたので、ノーマルタイプのピッチャー用(左、背面3タイプ)と、高田選手モデル(右、背面5タイプ)を購入しました。

Thumb efbc91efbc90 図9 2015年発売の復刻版赤カップモデル。ピッチャー用(左)と内野用(右)。これまで何回か復刻版が出ているようですが、軟式用で赤カップがついたモデルもあります。

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図10 上は復刻版(左)と昔(右)のライナーバックの比較ですが、印字等はオリジナルと異なる点がいくつかあり、昔は小指ホルダーがないモデルもあったようです。 また、昔のプロフェッショナル(下中)は捕球面の小指付近の印字に「PROFSSIONAL MODEL」の表記がなく、「PERFECTLY STITCHED WITH NYLON」のみになります。復刻版(左)と昔(右)のプロフェッショナル以外のモデルの印字は同じように見えますが微妙に違います。  

 赤カップ以外にプロ選手がどこのメーカーのグローブを使っていたかは、当時ほとんど興味がなかったのですが、他のメーカーで持っているものは図11ぐらいです。 

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図11 所有グラブその他。基本的に赤カップのみしか興味がないのですが、きれいだったので青カップキャッチャーミットを衝動買いしました(左上)。右上は400勝投手金田さんが企画し作られたSX400の(なぜか)硬式セカンド用。下は阪神大震災時のチャリティーオークションで入手した近鉄・山崎投手の久保田スラッガー製グローブ。赤カップに比べるとかなり新しいです。   

赤カップ以外で印象的だったのは江川投手のアディダスグローブでしょうか(主に80年代ですが)。こちらも未だに人気が高く、入手しようとは思いませんが、アディダスの野球用スパイクは廃業したスポーツ用品店からいただきました。色以外同じように見えますが、それぞれモデル名が違い、サッカースパイクと違ってアメリカの都市なのが野球らしいです。ちなみにすべて日本製です。 

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図12 アディダス野球スパイク。シカゴ(左)、ピッツバーグ(右上)、セントルイス(右下)。細かな違いはわかりませんが、学生野球の場合、ラインが白いとダメな場合があったので、どのモデルもすべて黒モデルがあったようです。 

  本題材に関してはもっとお詳しい方が多数おられると思いますが、赤カップを愛する1人の雑文としてお許しいただければ幸いです。 次回(いつになるかわかりませんが)は、また昔のサッカースパイクについて書きたいと思います。


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神に愛された西独製サッカースパイク』
80年代に数々の伝説を生んだサッカー界のスーパースターを足元から考察した論考。  
                  


◆小西博昭オフィシャルブログ
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