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英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.22『ナゾ多きフランス製アディダス編』

80年代のサッカー界のスーパースターでプラティニ選手を外すわけにはいきません。特に84年のEURO(巻頭写真)では地元開催で優勝し、得点王も獲得し、この時点では誰もが世界一のフットボーラーと称賛していました。しかし、その大会のスパイクは私にとって長年ナゾのモデルでした。

Icon 29634314 1815368455432881 1085668874 o 小西博昭 | 2018/09/11
今年のW杯はフランスが優勝しましたが、様々な事情でプラティニ氏の姿があまり見られなかったのは昔のサッカーファンには少し残念でした。 

現役時代からプレー以外でも華があり、ゲッティイメージズなどの報道写真で、この方ほど昔のオフショット写真が多くある選手は珍しいと思います。 基本的に代表ではアディダス、82年から在籍したユベントスではパトリックのスパイクを使われていました。

それ以前のことはよく知らないのですが、図1のようなメーカーのスパイクも履いていたようです。 

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図1 ユベントス在籍前は国内リーグでプレーされており、フランス製のスパイクをご愛用でした。
右はルコックですが、左は何と読むのでしょうか?
  

プラティニ選手は78、82、86年の3度のW杯に出場されました。代表戦ではアディダス取替え式スパイクを履かれ、78年はジーコさんと同じような(17話をご参照下さい)白一色ソールでした。 

82年大会はフランス製イベリカを、86年大会ではストラトスSLを履かれ、ストラトスについてはいずれご紹介したいと思います。 イベリカは82年大会当時、日本では売られていなかったモデルで、その2年後ぐらいに、同じフランス製のプロフィ(後にドイツ製になったようです)とともに、かなりコアなサッカーショップでのみ販売されました(図2)。

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図2 足に白いテープ(シップ?)をしているのがプラティニ選手。82年大会のフランス代表選手のスパイクはかなり履き込まれた感じに見えます(左)。

イベリカの特徴はスタッド数が7
本であることと、かかとの白い部分の両端が矢印(?)のような形状をしていることです(右)。

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年大会ではバチストン選手、ジャンジニ選手、ボッシ選手もイベリカを履いていました。この大会以外でイベリカ使用選手はあまり見たことがありませんが、ボッシ選手は84年EURO、86年W杯でもイベリカを愛用していたと思います。 80年代前半のプラティニ選手はプロフィも使っていたことがあったようです(中)。
  

日本では売られていませんでしたが、イベリカには固定式もあり、アルジェリア代表選手が使っていたようです。


Thumb efbc94図3  82年W杯で西ドイツを破ったアルジェリアの代表選手(左はグエンドス選手、右はベルミ選手)たちが80年代中頃に固定式イベリカを履いていました。


さて、個人的なナゾは大活躍した84年EUROでプラティニ選手が履いていたスパイクです。 この頃のアディダスには珍しく所々に白い縁取りがあり、今のコパムンのように3本線の下までかかとの革が延長されているようです。

巻頭写真でわかるようにソールはワールドカップと同じ3マテリアルソールです。
当時日本でも売られていたリンダウに似ている気もしますが(図4挿入写真)、よく見るといろいろ異なります。 

Thumb efbc95図4 84年EURO準決勝ポルトガル戦(左)。

右は大会直前のリラックスした練習時。プラティニ選手は長いシュータンが嫌いだったようで、本番では短くしています。切る前のシュータンには「Made in France
」入りの青いマークがついています(右)。
  

最近、84年のフランスアディダスのシューズカタログを入手し、正体がやっとわかりました。固有の名前はなく、AA2763というモデルでした。 

そのカタログには様々なスポーツシューズが載っていますが、このスパイクは見開き2ページでデカデカと載っています。 10話で触れましたが、このスパイクは長い間各種のゴールデンブーツのモデルになりました。

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図5 カタログ中のスパイク写真はどれもこの角度で、外観しかわかりません。 シュータンマークは西ドイツ製と同じく、青地のトレフォイル(挿入写真)で、マーク部分は図4右と異なるようです(黒地マークもあったようです)。

プラティニ選手の他にはフランスのルルー選手、ベローヌ選手、ポルトガルのシャラーナ選手が84年EUROで履いていました。

しかし、それ以後はあまり使う選手はおらず、ゴールデンブーツのモデルとしては非常に長期間使われましたが、スパイクとしては短命だったと思います。
  

フランス製アディダススパイクが気になり、いくつか入手した物が図6になります。 

左は「CHALLENGER」という名前でアッパーはAA2763とほぼ同じですが、ソールはイベリカ型で、内張りも黒色です。 右のアッパーはイベリカに似ていますが、シュータンやかかと部分が異なり、モデル名は「CARTAGENA」です。

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図6 大学の同期が一時期イベリカを履いていたのですが、すごく重厚な牛革製だった記憶があります。この2つは牛革製のようで、図5のAA2763はフランス製では珍しいカンガルー革だったようです。

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7 こちらは「ZEPHYR」というモデルです。イベリカのソールもユニークですが、6本スタッドのソールも独特なデザインです。   

また、8話でご紹介した、プラティニ選手と並ぶ名手・ジレス選手の82年大会の緑色スパイクはフランス製の「PENAROL」というモデルと思われます。

この時代には珍しく、つま先にステッチすらない1枚革です。また、ジョージベスト選手もこのタイプの固定式を使われていたようです。


Thumb efbc99図8
 ジレス選手の82年W杯使用モデルと思われる「PENAROL」。左下はジョージベスト選手実使用スパイク。スタイロのスパイクを使用したことで有名ですが、アディダスも使っていたんですね。
  

86年大会は当時世界一の選手を決める大会とされ、前評判は84年EUROで圧倒的活躍を見せたプラティニ選手が有利でしたが、結局82年大会と同様、準決勝で西ドイツに敗れ、次の年には若くして引退してしまいました。 

図9左は88年のプラティニ選手の引退試合ですが、豪華メンバーはさておいて、何といっても驚きは、86年大会で頂点に立った神がアディダスのスパイクを履いて(履かされて?)いることです。

Thumb 10図9 神はユニフォームの誓いを破り、90年代はいろいろあってプーマ以外の様々なメーカーのスパイクを履かれましたが、80年代ではとても珍しい(アディダスは唯一かも)と思います。

 プラティニ選手は現役時代に長く愛用したパトリックで出場しましたが、代表のユニフォームとの組み合わせは珍しいかもしれません。 パトリックは多分この時の使用モデルと同じと思われる1足しか持っていませんが、イベリカ同様、牛革でかなり重厚な作りです(フランス製)(右)。     

神のスパイクは何でも興味があるのですが、この時のアディダススパイクはどんなモデルか知りませんでした。調べてみるとフランス製のリオムーレというモデルのようです(図10)。

これに慣れるためか、ナポリのトレーニングでも履いている写真がありましたが、リーグ戦で履いたかは不明です。
ちなみにこの試合の途中には違うアディダスモデル(ワールドカップ?)に履き換えられたようです。やはり足に合わなかったのかもしれません。 

Thumb 11図10 ナポリの練習でリオムーレを履く神(左)。右の写真では違うスパイクを履いているようです。   

次回はスパイクではなく、審判も時々履いているトレシューについて書こうと思います。   

(写真は当時のサッカーマガジン、ダイジェスト、イレブン及びゲッティイメージズなどより引用) 



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