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英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.53「ディエゴ様の映画編」

不覚にもまだ映画館では見ていないのですが、かなり前に海外版DVDを手に入れて内容は把握しています。懐かしい映像もたくさん見ることができ、往年のファンのみならず、監督としてしか知らない世代も、ご覧になったすべての方が、あらためてすごい選手だったことを再認識されるとともに、サッカー界の至宝を失った寂しさを感じられることでしょう。

Icon 29634314 1815368455432881 1085668874 o 小西博昭 | 2021/02/19
  この映画は、昔、ディエゴ様のファンだった方にとっては、久しぶりに目にするスーパープレーなど、様々見どころがあると思います。

しかし、ほぼ毎日のようにディエゴ様の画像や映像、そして当時のスパイクを眺めている自分にとっては、お若いころのプレーシーンはだいたい見たことがある気がします。 スパイクを履いていないディエゴ様にはあまり興味がないので、スパイクオタク的な見方で、注目すべき部分を挙げてみました。  

まず、映画の冒頭のほんの短い時間しか見れませんが、バルセロナ時代のディエゴ様です(図1)。
 Thumb efbc92図1 左上が映画のシーンの一部で、カメラマンが地面を這うように撮影しています。映画ではディエゴ様が「どこから撮ってるの?」と苦笑いしています。左上は画質が悪くわかりにくいですが、写真のようにかかと部分が厚いスパイクを履いています。  

図1のスパイクはプーマSPAキングで、バルセロナ時代は比較的よく使われていたようです。

これまでバルセロナ時代のスパイクについては、このコラムであまり触れたことがなかったので、他のモデルを履いているディエゴ様の画像を探してみました(図2)。  

Thumb efbc93図2 固定式のベルトマイスター(左)、取替え式キング(中央)、トレロ(右)を履くディエゴ様  

個人的にはバルセロナ入団前の1982年スペインW杯で初めてディエゴ様を知ったので、このころのスパイクは一番憧れが強いです。 ディエゴ様ですら、まだ個人用の特注スパイクではなかったようで、最高級グレードの市販モデルを使われていました。  

図3はこれまでに入手したそのころのモデルです。
Thumb efbc94図3 SPAキング(左上)、キング(右上)、ベルトマイスター(左下)、トレロ(右下)。基本的にアッパーのデザインはすべて同じです。  

現役時代のハイライトであった1986年のメキシコW杯の映像は予選リーグイタリア戦、  ”神の手”、 ”5人抜き”のイングランド戦、準決勝、決勝の映像が出てきます。  

スパイクオタクとしての見どころはほぼありませんでしたが、決勝戦の入場前のディエゴ様を見ることができ、独特のステップでリラックスしながらも、チームに気合を入れるお姿がアップされます。 その時少しだけスパイクが映りますが、あまりはっきりとは見えません(図4)。  

Thumb efbc95図4 左上が映画のシーンです。右が入場後、試合直前のディエゴ様で、この時のスパイクのレプリカが左下の取替え式の方です。  

86年大会のディエゴ様はご自身の専用モデルを履いてプレーされたようです。ただ、見た目は市販のトレロの色違いで、大会当時は一般には販売されていませんでした。
1年後に「マラドーナプロ」というモデル名(プロ1が固定式プロ2が取替え式(図4左下))で発売されました。 西ドイツ製でしたが、ディエゴ様専用のため、サイズが26センチの1種類しかなく、海外ではあまり流通しなかったようです。  

さて、86年W杯で優勝し、絶頂期のディエゴ様は、所属していたナポリでも87年にセリエA初優勝に導きます。
優勝した後に、ディエゴ様がスタンドのファンにスパイクを蹴り入れて、運よくキャッチしたおじさんが映画に登場します(図5)

Thumb efbc96図5 ディエゴ様が蹴り入れたスパイクを運よくつかんだ男性。この映画で初めて登場したわけではなく、昔からよく見る映像です。この後、スパイクをふところにしまうシーンまで映されます。  

昔から、ディエゴ様のスパイクをもらえるなんて、なんともうらやましい人がいるもんだなぁと思っていましたが、よくよくキャッチしたスパイクを見るとプーマではなさそうです。  

映画には写っていないのですが、ディエゴ様がスパイクを蹴り入れるシーンも実はネット上で見ることができます(図6)。Thumb efbc97
図6 ディエゴ様がスパイクを蹴り入れるシーン。蹴り入れる直前に、何か地面の物に気づかれます(左上)。その後、拾い上げて得意の左足を振りぬきました(右上、左下)。画質が悪いですが、ディエゴ様の左足のスパイクはそのままです。右下は88年ごろのナポリのスパイクロッカー。  

図5のおじさんがキャッチしたスパイクはおそらくディアドラ製で、アッパーのみならずソールにもディアドラのラインがあるモデルのようです。


確かに図6右下のように、ナポリの選手でディアドラ愛用者もおられたようなので、ディエゴ様はビクトリーランの途中で誰かのディアドラのスパイクが落ちているのを見つけて、おもむろにファンサービスで蹴り入れたようです。
 

初スクデッドの時のディエゴ様のスパイクは今どこにあるのだろう?  

 映画の後半では、そのナポリのホームグランドで行われた地元イタリアとの90年W杯準決勝がかなりフォーカスされており、試合前の映像にはスパイクのヒモをしめなおすディエゴ様の鮮明なシーンがあります(図7)。 だんだん画質も良くなっており、このころの映像の進歩を感じます。  Thumb efbc98図7 90年W杯準決勝前のディエゴ様のスパイクアップ画像。下は写真家・清水和良さんが撮影された写真(おそらく開幕戦のカメルーン戦前)。  

90年W杯のディエゴ様モデルは完全特注品だったようで、市販品とは様々な点が異なっています。詳しくはこちらをご覧ください。
 

そんなディエゴ様のスパイク情報を徹底解説した拙書はすでに絶版でしたが、あらためて電子書籍で再販しました。
 

ぜひそちらもご覧いただければ幸いです。

「 ディエゴ・マラドーナ 二つの顔」 大ヒット上映中 © 2019 Scudetto Pictures Limited