
英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.29『プーマSPAキング編』
金子さんとの対談で、いたく気に入っていただいたモデルがSPAキングです。特徴的なSPAソールのモデルは日本のトップ選手で履いているのをほとんど見たことがない不思議なスパイクでした。かなりコアなプーマファンの方でないと詳しいことはご存じないモデルと思われますので、知る限りのことを書きたいと思います。

(スパイクブログ始めました。https://maradonaboots.com/)以前も少し触れましたが、 SPAの略は「Special Protection Achilles」で、かかと部分が厚くなっているソールのことです。
SPAシリーズは70年代、まだソールが白1色だった頃に登場し、最高モデルがSPAキングでした(こちらをご参照ください。
http://king-gear.com/articles/925)。
80年代になり、図1左上、下の黒・黄色2色ソールのSPAキング(モデル番号493)とキング(モデル番号492)が新開発されました。 この頃はかかとの厚さが違うだけで、ソールのデザインは同じでした(前期型)。その後、SPAキングは右上のような専用のソールパターンになりました(後期型)。
巻頭写真はイタリアの神グッズコレクターさんのお部屋ですが、ただでさえ珍しい後期型SPAキングが飾られています。しかも、神実使用のようです。実際にそれを履いている時の切りぬき写真も貼ってあります。

図1 上と下ではソールのかかと部分の厚みが異なります。

図2 SPAキングを日本で履いている選手は稀でしたが、神は82年バルセロナに移籍した時(右)からナポリ時代(左)まで、時々SPAキングを使っていました。バルセロナ時代にはソールは既に後期型のものでした。
W杯での使用はないと思いますが、代表戦やオールスター戦などでも履いていたことがあります。メノッティ監督がスパイクを履いている写真は珍しいと思います。
神は様々なプーマモデルを愛用されましたが、年によってソールが変化していたと思っていました。
しかし、88年のナポリのスパイクロッカーの写真を見ると(図3左)、80年代に登場したソールパターンがすべて揃っていました。この頃はどのソールのモデルも使いたい放題だったようです。
右は83年のリバプールのスパイクルームで、使用感が生々しいですが、こちらは後期型SPAキングはもちろん、今では幻のアディダス・スーパーカップやワールドカップウィナーがあります。 「マラドーナ独白」に書いてありましたが、神は用具室がお好きだったとのことです。 いい話ですね。

図3 タイムスリップしたい場所です。でも、もし実現したら絶対正常ではいられないと思います。
80年代の初め、前期型SPAキングは日本でもカタログやサッカー雑誌の広告に載っていました。
その後の国内カタログなどで後期型は見たことがなく、日本では販売していなかったのかもしれません。 同じソールでペレキングがありましたので(こちらをご参照下さい。 http://king-gear.com/articles/821)、競合を避けたのかもしれません。その影響からか、プーマを使っている日本代表選手でSPAキングを履いていた方は見たことがありませんでした。
しかし、香港には輸入されていたようで、日本対香港戦でSPAキングを履いている香港代表選手がいました(図4)。
図4 85年メキシコW杯予選の対香港戦(左)。
赤の倒れている香港代表選手のスパイクはSPAキングです。
白の日本代表は原選手で、プーマのスパイクですが、こちらは結構ナゾです。ソールはトレロ(黒・金色)のようで、ラインは白色・・・。特注品でしょうか? 右はその試合の香港主将だった方。後に日本で行われた芸能人チームとの親善試合でもSPAキングを履いていました。
SPAキングの黒・黄色ソールモデルは前後期どちらも現物をまだ見たことがありません。かわりに手に入ったのが黒・赤色ソールのSPAキングです(図5左)。
黒・赤色ソールは以前ご紹介したように、おそらく79~80年の短い間のみ存在していたと思われます。カタログではメノッティスターとWMメノッティのみにこのソールが用いられました(図6)。
黒・赤色ソールのSPAキングはカタログでも見たことがなかったので、レアかもしれません。 また、後期SPAソールのSPAレアル(モデル番号450、右上)は黒・白色で、90年代以降も製造されたSPAキング(右下、こちらはチェコ製)も同じカラーのソールでした。

図5 80年代初め~90年代のSPAシリーズ
図6 黒・黄色、黒・赤色ソールのWMメノッティ。 側面には「WORLD CUP Menotti」と表記されています。すべて大文字表記の物もあります。
黒・赤ソールモデルは79年ワールドユースで神が履いていたことをご紹介しました(こちらをご参照下さい。http://king-gear.com/articles/864)
しかし、生産期間が短かったためW杯での使用はなかったと思っていましたが、82年W杯でアルジェリアのベンサウラ選手が履いていました(図7左上)。
ただ、SPAソールではなく普通の厚さなので、黒・赤ソールのキングだと思います(これも見たことがありません)。この大会のアルジェリア選手はかなりすごい創作スパイクを使用していました(右)。

図7 このコラムではよく登場するアルジェリア代表。いつもながらユニークです。
ベンサウラ選手(左上)の黒・赤色ソールのスパイクはSPAソールではないようです(左下別角度写真)。 3本線とプーマラインが一緒になると、昔の月星やアキレスのラインみたいです。
SPAモデルは後発のソール(ダブルフレキシブルソール)にもあり、トレロ(こちらをご参照下さい。
http://king-gear.com/articles/736)にもSPAトレロがあります(図8)。

図8 ドイツのカタログに載っているSPAトレロ(左)。モデル番号は499で、普通のトレロ(右)は496です。SPAトレロは実物はおろか、履いている選手すら見たことがないです。
さて、今年一年、当コラムをご覧いただき誠に有難うございました。来年もよろしくお願いいたします。
(写真は当時のサッカーマガジン、ダイジェスト、イレブン及びゲッティイメージズなどより引用)
著者 小西博昭の作品はバナーをクリック!

『神に愛された西独製サッカースパイク』
80年代に数々の伝説を生んだサッカー界のスーパースターを足元から考察した論考。
80年代になり、図1左上、下の黒・黄色2色ソールのSPAキング(モデル番号493)とキング(モデル番号492)が新開発されました。 この頃はかかとの厚さが違うだけで、ソールのデザインは同じでした(前期型)。その後、SPAキングは右上のような専用のソールパターンになりました(後期型)。
巻頭写真はイタリアの神グッズコレクターさんのお部屋ですが、ただでさえ珍しい後期型SPAキングが飾られています。しかも、神実使用のようです。実際にそれを履いている時の切りぬき写真も貼ってあります。

図1 上と下ではソールのかかと部分の厚みが異なります。

図2 SPAキングを日本で履いている選手は稀でしたが、神は82年バルセロナに移籍した時(右)からナポリ時代(左)まで、時々SPAキングを使っていました。バルセロナ時代にはソールは既に後期型のものでした。
W杯での使用はないと思いますが、代表戦やオールスター戦などでも履いていたことがあります。メノッティ監督がスパイクを履いている写真は珍しいと思います。
神は様々なプーマモデルを愛用されましたが、年によってソールが変化していたと思っていました。
しかし、88年のナポリのスパイクロッカーの写真を見ると(図3左)、80年代に登場したソールパターンがすべて揃っていました。この頃はどのソールのモデルも使いたい放題だったようです。
右は83年のリバプールのスパイクルームで、使用感が生々しいですが、こちらは後期型SPAキングはもちろん、今では幻のアディダス・スーパーカップやワールドカップウィナーがあります。 「マラドーナ独白」に書いてありましたが、神は用具室がお好きだったとのことです。 いい話ですね。

図3 タイムスリップしたい場所です。でも、もし実現したら絶対正常ではいられないと思います。
80年代の初め、前期型SPAキングは日本でもカタログやサッカー雑誌の広告に載っていました。
その後の国内カタログなどで後期型は見たことがなく、日本では販売していなかったのかもしれません。 同じソールでペレキングがありましたので(こちらをご参照下さい。 http://king-gear.com/articles/821)、競合を避けたのかもしれません。その影響からか、プーマを使っている日本代表選手でSPAキングを履いていた方は見たことがありませんでした。
しかし、香港には輸入されていたようで、日本対香港戦でSPAキングを履いている香港代表選手がいました(図4)。

白の日本代表は原選手で、プーマのスパイクですが、こちらは結構ナゾです。ソールはトレロ(黒・金色)のようで、ラインは白色・・・。特注品でしょうか? 右はその試合の香港主将だった方。後に日本で行われた芸能人チームとの親善試合でもSPAキングを履いていました。
SPAキングの黒・黄色ソールモデルは前後期どちらも現物をまだ見たことがありません。かわりに手に入ったのが黒・赤色ソールのSPAキングです(図5左)。
黒・赤色ソールは以前ご紹介したように、おそらく79~80年の短い間のみ存在していたと思われます。カタログではメノッティスターとWMメノッティのみにこのソールが用いられました(図6)。
黒・赤色ソールのSPAキングはカタログでも見たことがなかったので、レアかもしれません。 また、後期SPAソールのSPAレアル(モデル番号450、右上)は黒・白色で、90年代以降も製造されたSPAキング(右下、こちらはチェコ製)も同じカラーのソールでした。

図5 80年代初め~90年代のSPAシリーズ

図6 黒・黄色、黒・赤色ソールのWMメノッティ。 側面には「WORLD CUP Menotti」と表記されています。すべて大文字表記の物もあります。
黒・赤ソールモデルは79年ワールドユースで神が履いていたことをご紹介しました(こちらをご参照下さい。http://king-gear.com/articles/864)
しかし、生産期間が短かったためW杯での使用はなかったと思っていましたが、82年W杯でアルジェリアのベンサウラ選手が履いていました(図7左上)。
ただ、SPAソールではなく普通の厚さなので、黒・赤ソールのキングだと思います(これも見たことがありません)。この大会のアルジェリア選手はかなりすごい創作スパイクを使用していました(右)。

図7 このコラムではよく登場するアルジェリア代表。いつもながらユニークです。
ベンサウラ選手(左上)の黒・赤色ソールのスパイクはSPAソールではないようです(左下別角度写真)。 3本線とプーマラインが一緒になると、昔の月星やアキレスのラインみたいです。
SPAモデルは後発のソール(ダブルフレキシブルソール)にもあり、トレロ(こちらをご参照下さい。
http://king-gear.com/articles/736)にもSPAトレロがあります(図8)。

図8 ドイツのカタログに載っているSPAトレロ(左)。モデル番号は499で、普通のトレロ(右)は496です。SPAトレロは実物はおろか、履いている選手すら見たことがないです。
さて、今年一年、当コラムをご覧いただき誠に有難うございました。来年もよろしくお願いいたします。
(写真は当時のサッカーマガジン、ダイジェスト、イレブン及びゲッティイメージズなどより引用)
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『神に愛された西独製サッカースパイク』
80年代に数々の伝説を生んだサッカー界のスーパースターを足元から考察した論考。