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スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲④「ちょっとびっくり。このスパイク、嫌いかも」

東京ヴェルディの永井秀樹選手が「スパイクの履き比べ」をする「スパイク・ウォーズ」。今回は天然皮革の中から、カンガルー革のスパイクのみを履き比べ。マスター永井はアシックスの『2002』に、どんな評価をくだすのか?

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/10/28
スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲①はこちら
スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲②はこちら
スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲③はこちら

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──続いてはアシックスです。

マスター永井「あれ、この前、俺が絶賛したモデルじゃないんだね」 

──はい、同じものを履いていただくのも芸がないので、以前マスターが100点満点で120点をあげたいとおっしゃったDSライトではなく、2002というモデルをお持ちいたしました。名前の通り、02年当時のものを復刻させたスパイクです。きっと、マスターもお気に召していただけるのでは、と。

マスター永井「あれっ?」
 
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──どうなさいました?

マスター永井「ちょっとびっくりした。俺、このスパイク嫌いかも」 

──ええっ!?

マスター永井
「いや、この間履いたDSライトってモデルは、ちょっと衝撃的なぐらいよくできたスパイクだったんだけど‥‥うっわあ、この違いはマジでびっくり」 

──こちらもマジでびっくりでございます。

マスター永井「たぶんね、違和感の最大の原因はステッチの形状なのよ。なんかこう、サッカーがやりにくそうっていうか、キックフィールがしっくりこなさそうっていうか。せっかくアッパーにはいい素材を使ってるのに、それを生かしきれてないっていうか」 

──細かな違いはあるでしょうが、こちらもアッパーは最高級のカンガルーを使用しております。

マスター永井「これって、02年当時とほぼ同じスパイクなんだよね。だとしたら、ああ、スパイクって進化してるんだなって痛感させてくれる一足だね、ある意味。このスパイクの足りないところ、不満の多かったところを少しずつ修正していって、最終的にできあがったのがDSライトだったんじゃないか。そんな気もする」 

──いやあ、実を言えば、形状といいカラーリングといい、今回のモデルの中で、マスターが一番お気に召すのはこの一足ではないかと予想していたのですが。

マスター永井
「履いてみるとね、すべての面が凡庸なのよ、申し訳ないけど。うわっ、ここがいい‥‥みたいなところが見つからない。いままでのスパイクは、誰に履かせたいとか、誰に履いてほしいっていうのがすぐ思い浮かんだんだけど、これは名前も顔も出てこない」
 
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──ただ、02年と言えば、スパイクの世界では昔のようで結構最近でもありまして、これから履いていただくパラメヒコやコパ・ムンディアル、それに以前履いていただいたミズノのモレリアなどは、それよりさらに以前から発売されているモデルなのですが。

マスター永井「だから、俺たちは気づかなかったけど、細かなところは少しずつ修正が施されてたんじゃないかなあ。もしパラメヒコやコパムンの発売当初のモデルを履いてみたら、ひょっとするとこのスパイクと同じ印象になるかもしれない。もちろん、その当時からとんでもなくよくできてたって可能性もあるんだけどね」

 ──このモデルとDSライトの関係性、さらには20世紀終盤の名機XLなどとのつながりは、アシックスの方に聞いてみたいところです。

マスター永井
「おお、XL! 懐かしいねえ、ラインが黄色いヤツ。ラモスさんが好きだった」

 ──いわゆる名手が好むモデルでしたよね。なので、この2002に対するマスターの印象は本当に意外です。

マスター永井「なんかさ、みんなで食事に行って、何か美味しいものでも食べようかって時、ぼく何でもいいです、みたいな子っているでしょ。こだわりがないっていうか、食に対する興味がないっていうか」 

──いますねえ。発起人Kに言わせますと、美食家である必要はないけれど、一流になるようなアスリートの場合、食べるという行為に自我を見せないタイプはほとんどいないそうです。確かに、特に食べたいものがない、みんなと同じものでいいという考え方では、オリジナリティを発揮していくことも難しいでしょうし。

マスター永井「だよね。でも、このスパイクを履く子って、まさにそういうタイプなんじゃないかって気がする。こだわりのない子。ただ、このカラーリングだと、そもそも若い子は欲しがらないだろうから、昔サッカーやってたお父さんとか、あるいは貸し出し用。申し訳ないけど、そんな印象しか持てないな」

取材協力/東京ヴェルディ1969
写真/㈱カルーテ 菅優樹   写真編集 榎本貴浩