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カトリエの「マイ・ファースト・スパイク」第6回ジェラード&ロイ (台湾サッカー解説者) Vol.1「貧しい時代からサッカーに熱狂していた中国。アメリカの影響でバスケと野球が人気の台湾」  

香港出身で台湾にてサッカー解説者として活躍するお2人にお話を伺います。サッカー雑誌の編集も務めるジェラードさんと、芸能人サッカーチームでプレーするタレントのロイさんです。中国と台湾の気になる関係や、お2人の目から見る中国サッカーについて語っていただきました。(加藤理恵)    

Icon kinggear icon KING GEAR編集部 | 2017/03/21
加藤:ジェラードさんとロイさんは、香港出身なんですよね?

ロイ:2人共、香港です。

加藤:台湾に来たのはいつですか?

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ジェラード:僕は1989年、昭和64年です。台湾の大学に勉強しに来たんですよ。

加藤:昭和64年!? 長い!


ジェラード:もう30年近くになります。台湾では“華僑”っていう、海外に住む中国人の学生にすごくサービスが良いんです。無料で勉強が出来たり、食事や宿泊施設を提供してくれたり。いい条件で勉強しに来てくださいって。それで台湾に来ました。


加藤:へぇ! 中国と台湾って、なんというか、どういう関係なのかな? って思っていたので、サービスが良いとは意外でした。

ジェラード:歴史から話すと、すごく長くなりますよ。一冊の本が書けるくらい(笑)

加藤:中国と台湾は交流が盛んなのですか? 中国の方が台湾に来たり、台湾の方が中国に来たり…。

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ジェラード:最近は盛んになってきています。昔は中国も台湾もお互いが独立した中国だと思っていたので、両方とも海外にいる中国人、特に海外の学生を自国に呼ぶために、結構いい条件を出して優遇していました。両方で取り合いをしていたんですよね。

加藤:自分の国に来て欲しいと?

ジェラード:勉強しに来たらそこに住んで、そこに情を持って、その立場に立つでしょう?

加藤:なるほど。でも不思議です。中国と台湾は元々同じ? だったけど、中国のサッカー選手は世界でプレーする人もいるのに、台湾はまだ…。


ジェラード:全然いない。興味がない。

加藤:その違いというのは?

ジェラード:台湾はアメリカに影響を受けているからでしょうね。

加藤:そこで運命が別れたんですね。アメリカと仲の良い台湾で盛んなスポーツは…。

ロイ:野球やバスケです。

加藤:中国はどこの影響を? ロシアとか?

ジェラード:昔はソ連と仲良かったですね。中国人は昔からサッカーが好きだったんですよ。

ロイ
:中国には、“サッカーは我々が発明したよ”っていう冗談もあります(笑)

加藤:あはは(笑)では昔から、中国ではサッカーが人気だったのですか?

ジェラード:40年くらい前、僕が子供の頃から大人気でした。香港は広州に近いので、広州恒大の試合を見に行っていましたよ。すごく大勢の人がいて、とても盛り上がっていた記憶があります。入場券も日本でいう50銭程度でした。

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加藤:50銭? それは当時の中国では安かったのですか?

ジェラード:はい。中国大陸は貧乏の時代でしたが、それでも50銭なんて、何にもならないくらいの値段でした。

加藤:あまり想像がつかないです。

ジェラード:子供の頃は、1丁目でテレビを持っている家は一軒。その一軒の中に30人、40人が集まって、サッカーを観ていた記憶があります。あんなに貧しくても、中国人みんなサッカーに夢中になっていました。たぶん何もエンターテイメントが無かったから、唯一の楽しみだったんでしょうね。


加藤:当時の広州恒大はスーパースターを獲得するようなチームではなかったんですよね?

ジェラード:今は企業にサポートされてお金持ちクラブになったけど、当時は広東省のチームでした。

加藤:すっかり強くなって。 ジェラード:確かにいま広州恒大はホットだけど、中国のチームはお金で優れている人を買収しているだけで、ナショナルチームはダメだし、本当の意味で1番強いのは日本じゃないかと僕は思うんです。

加藤:香港出身の方から、そういう言葉がでてくるとは少し驚きです。

ジェラード:日本人の活躍はJリーグだけじゃない。

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ロイ:良い選手は世界のチームから呼ばれていますもんね!

加藤:世界でプレーしているといえば、韓国の選手もいますが。

ジェラード:日本と韓国はそんなに変わらないと僕は思っています。でも中国は…。

加藤:お金で有名選手を連れてくる事から始める。成長していくという考えは?

ジェラード:確かにJリーグができた時も、世界のスターを呼んできて学びながら、自分たちも段々強くなりました。でもその時のJリーグと広州じゃ全然違います。

日本はそろそろ定年だけどたくさん経験と技術がある人を呼んで、その後はコーチとして教わったりしながら、しっかり彼らから吸収していった。世界との差をちゃんと知って、学んだんです。


ロイ:中国のチームは外から優れた選手を呼んできて、その時は良くなるけど、その間に基盤を作ろうとしない。それと日本はきちんと各世代で基礎、基盤を作っているところも優れているなと思います。

加藤:不思議な感覚です。日本はヨーロッパと比べて課題を見つけたりしていますが、アジアの別の国から見たらそういう対象になるんですね。

ジェラード:僕は過去からいままでの歩みを含めて、日本が好きなんです。日本人は昔からずっと真面目で、頑張り屋で。

加藤:ところでおふたりは、W杯ではどこの国を応援するんですか?

ジェラード:日本ですね。

ロイ:僕はオランダ。

加藤:でも、中国が出場していたら?

ジェラード:絶対、中国のライバルを応援します(笑)!

加藤:なんでですか? だって、その…。

ジェラード:中国人でしょ?って聞きたいんでしょ?

加藤:あ、はい…。 ジェラード:僕は香港の人です。中国人ではありません。

ロイ:僕は台湾の人です。

加藤:そうか…。

ジェラード:2004年アジアカップの決勝、中国と日本が北京で試合をやった時も僕は日本に賭けていましたよ。中村俊輔が絶頂の時で、すごく良かった。


ロイ:でも僕は、もし本当に中国がそれなりのレベルになってW杯に出た時は、もちろん応援したいですよ!

<Vol.2に続く>

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