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高橋尚子ランニングクリニック『 参加者たちの笑顔にあふれた至福の時間』

天候に恵まれた東京体育館の陸上競技場では、2000年シドニー五輪女子マラソンの金メダリストで国民栄誉賞を受賞した、あの高橋尚子さんによるランニングクリニックが行われた。

Icon segawa.taisuke1 瀬川 泰祐(せがわたいすけ) | 2017/06/09
多数の応募の中から抽選で選ばれた100名のランナーたち。その幸運なランナーたちの視線の先には、鮮やかな黄色いウェアを身にまとった高橋尚子さんがいた。  

そして、高揚した気分が会場全体を包みこむ中、参加者たちを高橋尚子ワールドの奥深くまで引き込んでいった。

ヒトの身体の構造を熟知し、自らの経験を織り交ぜながら、早口で説明していく高橋尚子さんの言語能力は、天性のものだ。

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一つ一つの動作について、デモンストレーションを交えながら、どの筋肉を使っているか、なぜその動きが正しいのかといったことをわかりやすく説明していく。

マラソンとは、自分の身体と向き合い、使う筋肉を意識的に変えながら、前に向かって走るというたった一つの動作でゴールを目指すスポーツだ。

だからこそ、高橋尚子さんが行うクリニックのように、身体に関するたくさんの情報を与えながら、自分の身体を意識させていくアプローチが、最も有効なのだろう。

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写真:ランナーたちの補強トレーニングのフォームをチェックする高橋尚子さん

クリニックの内容は、前半の準備体操編と後半のランニング編の2つで構成された。

前半部は、靴紐の結び方からはじまり、準備体操の重要性や体の使い方、ケガをした時の補強トレーニング法などを実践。

後半部では、ランニングに必要な手の動きや足の動き、身体の使い方を細かく指導し、それらを走る行為の中で行えるように徐々に実践に移していく。

そのほか、フルマラソンのペース配分方法など、参加したランナーたちにとって、有益な内容が多岐にわたって展開されていった。

Thumb   写真:高橋尚子さんの掛け声のもと、ランニングフォームを笑顔で実践する参加者
 

そしてクリニックの最後には、高橋尚子さんを先頭にして、参加者全員が世界記録2時間19分の世界を体感した。

想像以上の速さに、参加者たちはもちろん、見学者たちからも驚きの声があがっていた。参加者たちは、きっと、マラソンをTVで見るたびに、この時の風を思い出すことだろう。

ちなみに、筆者の走力では、ほぼダッシュに近い感覚だった。

このペースで走ることを42.195km続けることができるのだから、当たり前だが、やはり常人ではない。

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取材協力/東京新聞スポーツ

取材・文・写真/瀬川泰祐