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日本人初!プロのホぺイロになった松浦紀典が語る物への矜持 Vol.3「スパイクやユニフォームは侍の刀と一緒だ!」

日本人初のプロのホぺイロとして東京ヴェルディや名古屋グランパスなどで25年に渡り活躍してきた松浦紀典さん。物への矜持や印象に残っている選手のこだわりなどについて約8時間に渡り聞いてきました。Vol3.では前園選手との話やエジムンド選手のこだわりなどについて聞きました。

Icon 16466945 810048175800857 1247399717 n 菊池 康平 | 2017/07/06
<インタビュー第1回はこちら> 
<インタビュー第2回はこちら> 
 

――1997年頃に前園真聖さんが入ったと思うんですけど、前園さんはどうでした?  

松浦そうですね、当時の移籍金が最高額で来られて注目されていましたよね。  


――本人へのプレッシャーは相当あったんじゃないですか?  


松浦すごい報道されたじゃないですか。新聞の一面にもなりましたし。 ビスマルク選手が抜けた後の背番号7番だったのですごいプレッシャーもあり、相当苦労はされたと思うんですよね。  

――スパイクへのこだわりはいかがでしたか?ナイキでしたっけ?  

松浦そうですね、ドリブラーなのでソールが柔らかい方が良いって仰ってましたね。冬とかは固くなったりするので、僕がマッサージするんですよ。

――スパイクをですか?  

松浦はい!そうすると革がソフトになるので。  

――練習前とかにいつもマッサージされるんですか?  

松浦練習前とか試合前とかに常にしてましたよ。  

――すごい手間がかかりますね。  

松浦そうですね、マッサージするのってトレーナーの仕事じゃないの?ってよくイジられましたけど(笑)  

――スパイクをマッサージする技はどうやって編み出したんですか?  

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松浦独学でこうしたら良いんじゃないかっていう想いからです。   ホペイロの基本はベゼーハさんに教えて頂いたんですけれど、言葉も通じないので、見て覚えていました。あとは日本には日本の素晴らしい物が沢山あるということも教えてもらいましたね。  

例えばブラシ1本にしてもそうですし、スパイクやユニホームに付いた芝や砂を落とすエアーガンってご存知ですか?ブラジルには当時そんなになかったみたいです。  

だからホペイロのノウハウっていうのは教えて頂いたんですが、そこから先は2人で切磋琢磨しながら「日本にはこういう物があるよ」とか伝えていました。  

ある日の休日にベゼーハさんから「ちょっとスーパーに行こう!」って呼び出されました。 「なんでスーパー?」って思いましたね。  

スーパーに行って食品売場へ連れていかれました。「ちょっと見て!」って言われたんですよ。そうすると綺麗に並んでいるんですよ。野菜もジュースも箱も綺麗に並んでいるじゃないですか!「これは日本だけだよ。海外にはこんなことはないんだよ」って言ってました。  

「ホペイロは日本人に絶対合ってるからまっちゃん頑張れよ!それだけ。」って言って帰っていきました。 日本人はきめ細かくきっちりできるからね。ブラジルなんて行ったら適当だよって言ってました。  

――南米などでは買った商品が汚れてたりしてますもんね。  

松浦そうですね。「そこの差だよ、だから自信持ってやろう」って言ってました。  ブラジル人なのでラテンのノリがある場合もあるんですけど、仕事に対してベゼーハさんは本当に大和魂でしたね。きっちりしていて、シャツの向きも同じように揃えてないとやり直しっていう方なので。  

 ――ブラジル人はサッカーをしている際にも、芝生の上やその辺にシャツを置いていたら物を大事にしろと怒りますもんね。日本人ってその辺に置いてたりするじゃないですか。ブラジル人はそういうことも大事にする文化ですよね。  

松浦シャツは貴重品ですし、良くベゼーハさんとも話したんですけど、日本の文化が大好きな方で、侍の刀と一緒だっていうんですよ。スパイクやユニフォームっていうのは。  

――戦う為の武器ということですね。  

松浦:「錆びたら切れないし、だから手入れもしなければいけない」っていう事は良く言っていました。  

――すごい分かりやすい例えですね。当時ですとエジムンド選手がヴェルディに入ってきましたが、彼はどうでした?すごいドリブルのスキルがあったのでこだわりも沢山あるのではないかと思ってますが。  

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松浦
彼と自分はたぶん一番仲良くさせてもらったと思います。当時アニマルと呼ばれ、色んな所でいろんな問題があったと報道もありましたが、実は一番真面目な選手でしたね。  

誰よりも早くグラウンドに来て、最後まで練習していました。彼のこだわりは、練習では当時モレリア2を着用していました。  

エジムンドが「ブラックアウトにしてくれ」と要望を出してきて、ミズノさんの広い心でスパイクを提供して頂いた上に、メーカーの顔であるラインとかも塗っていいよ!と仰って頂きました。

「エジムンド選手が履いてくれるんだからいいよ!」と。やるなら徹底してブラックにしたかったので、私自身のこだわりでアウトソールも真っ黒にしたんですよ。 あと面白い話がありまして、エジムンド選手は練習では26.5cmを履くんですよ。試合では26cmを履くんですが。  

――試合では0.5cm小さいのは履くんですね。  

松浦0.5cm小さくして、とにかく素足感覚で履きたいって言ってました。色々な国に行って、色んなメーカーさんと契約したけれど、やっぱりこれが1番だ!って言って。  

――ミズノさんにとっては凄くうれしい言葉ですね。

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松浦それと彼はとにかくすごい集中力がある選手で、全体練習が終わっても毎日居残り練習するんですよ。  

「すぐ帰るのかな」って思うじゃないですか。でもすごい練習するんですよ。そのシュート練習も今日は巻いたシュートでゴールの右隅を狙う、それを10本決めたら上がるとかなんですよ!それ以上やっても意味ないって言って。  

その10本への集中力は凄かったです!私は今年でホペイロ25年になるのですが、その中でも一番と言っていいほどの驚いた話があります。  


vol.4に続く。 http://king-gear.com/articles/402

松浦紀典さんのオフィシャルブログ
http://blog.livedoor.jp/roupeiro_matsu/

取材協力/株式会社ミズノ