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SPIKE WARS -チャプター13 オーバー・ザ・トップ/ナイキ『マジスタ・オーパス・プラスHG』(後編)

メーカー横断履き比べ企画第2弾

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/07/25

〔CHAPTER13・オーバー・ザ・トップ(後編)〕


【登場人物】
聞き手(編集部)
マスターナガイ(永井秀樹=東京ヴェルディ1969=)

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◆ナイキの「マジスタ・オーパス」の芝生の印象は?!


──さあ、マジスタ・オーパス、実際に芝生の上で履いてみての印象はいかがでしょうか。
マスター永井「びっくりした」

──と、言いますと?
マスター永井「クラブハウスでも思ったんだけど、これ、マジでいい。正直言って、生まれて初めてナイキのスパイクでいいなと思った」

──マジすか。
マスター永井「‥‥」

──失礼いたしました。しかし、やっぱりマスター・ナガイ、ナイキのことが嫌いだったんですね。
マスター永井「こらこらこら。表現は正確に(笑)。昔のナイキのスパイクが好きじゃなかった‥‥う~ん、違うな。より正確にいうと、サッカー業界に参入してくる新興メーカーの作るスパイクが好きになれなかったってとこかな。いまとなっては、かなり食わず嫌いのところもあったなあって反省はしてるけど(笑)」

──ただ、ぶっちゃけマスター・ナガイのような考え方、日本のサッカー界では割と一般的だったかもしれません。98年のフランス・ワールドカップの際、中田英寿選手がいわゆる新興メーカーと契約しましたが、実物を手にとった現役の選手たち、衝撃受けてましたから。「ヒデ、こんなスパイクでワールドカップ戦うんですか?」って(笑)。ちなみに発起人K曰く、当の中田さんは平然としていたそうです。「俺、スパイクはとにかく軽ければいいし」って。
マスター永井「ある意味、最近の流れの走りだったわけね。さすがヒデ(笑)。ただ、言われてみれば確かにあのころだったよね。天然皮革全盛というか、それしかなかったスパイクの世界に、人工素材のモデルが出てきたのは」

──ですね。きっかけを作ったのはアメリカのMLSだとも言われております。あのリーグ、なぜか天然皮革のスパイクを使用することが禁止されておりまして、メーカーとしては、いやでも人工素材のスパイクを作らざるをえなかったと。
マスター永井「へ~え、そうなんだ。でも、なんで?」

──自然保護団体の圧力が原因ではないかと。一方で、伝統あるメジャーリーグでは平然と天然皮革を使用したグローブが使われているのが、かの国の不思議なところでございます(笑)。
マスター永井「めんどくさそうだから話題を変えよう(笑)。ミズノのウェーブイグニタスとモレリアの違いにも驚かされたけど、このマジスタも、前回履かせてもらったティエンポとはまるで違う。というか、同じメーカーが作ったものとはとても思えない(笑)」

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マスター永井「前回履かせてもらったティエンポとはまるで違う」


──先日、広報の方がおっしゃっていたのですが、ナイキの場合、売れ線となる主要4モデル、それぞれが違った足型を使用しているそうです。
マスター永井「理由は?」

──4つのモデルを試していただければ、どれか一つ、きっとあなたにあったスパイクがあるはず‥‥という狙いがあるそうです。それぞれのモデルは独立した存在で、ナイキのスパイク、といった縛りというか共通項のようなものは、あえて持たせていないところもあると。要するに、一つのモデルを履いただけで、ナイキのスパイクにダメ出しをするのは愚の骨頂であるということでございますね(笑)。
マスター永井「俺のこと?(笑) ま、わかりました。いままではフツーに“あのメーカーの足型は細い”とか、“あそこが作るスパイクは固い”とかレッテル張りしちゃってたけど、もうそういう時代じゃないってことだよね。少なくとも、ナイキに関する限りは」

──いや、おそらくはほとんどのメーカーがそうなのでは、という気もいたします。それぞれのモデルが、独立したテイストであったり特徴を持つ時代になったということでは。
マスター永井「だね。昔であれば、メーカーの名前を聞いただけである程度は履き心地が想像できた部分があったけど、もうそういう時代じゃないっていうのはよくわかった」

──マジスタについてですが、他に印象が変わった点はございますか?
マスター永井「くどいようだけど、ティエンポとは別物。スパイクの中で足が泳ぐ感じだとか、足の甲の部分が固定されちゃってる感じだとか、あのスパイクを履いた時に感じた違和感が、まるでないんだから。ってことは、だ」

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◆永井秀樹のナイキのサッカースパイクに対する印象が変わった。


──ってことは?
マスター永井「俺にとっては不満だらけだったティエンポも、ナイキとしてはあえてそうしてるのかもしれないね。つまり、ある程度足がスパイクの中で泳ぐようにしてほしい、アッパー部分の型が崩れないようにしてほしい、みたいな要望があって、それに応えているだけなのかも」

──ありえることでございますね。
マスター永井「だから、そういう人からすると、このマジスタは逆にまったく合わないかもしれない。俺が思ってた以上に、選手がスパイクに求める条件っていうのは、多様化してるみたい」

──となりますと、これからスパイク・オブ・ザ・イヤーを決める際は、何をもって評価するか、非常に難しい問題になって参りますね。
マスター永井「もちろん。でも、カー・オブ・ザ・イヤーだって、超高級車から軽自動車までが同じ舞台で評価されるわけでしょ。スパイクでも同じようなことはできると思うし、できたら面白いじゃない?(笑)」

──確かに。
マスター永井「なんにせよ、ナイキが本気でサッカーに取り組んでるっていうのはよくわかった。トップ、とるつもりだね」

(以下次号へ/取材協力・東京ヴェルディ1969)