
英雄たちが愛した歴史的スパイクVOL.55 「祝・殿堂入り!木村和司選手のコパムンディアル編」
元日本代表の10番木村和司さんが昨年、日本サッカー協会の殿堂入りをされました。私の中での現役時代の木村和司選手と言えば「ミスター・コパムン」で、伝説のフリーキックも黒塗りしたコパムンで決められました。今回は、アディダスの名品スパイク「コパムンディアル」の歴史を今一度しつこく語りたいと思います。

1985年のメキシコW杯予選で木村選手がなぜコパムンを黒塗りしなければならなかったかは、こちらをご覧ください。
コパムンは前田遼一選手の引退で、現役プロサッカー選手が使うことはなくなったかもしれませんが、現在も生産されており、まだまだ多くの審判やシニアプレーヤーに愛用されています。 図1は現行品で、数年前の木村さんのトークショーでサインしてもらったものです。

図1 木村和司さんのサイン入りコパムン(現行品)。コパムンを履いてプレーされる木村選手(2007年)。リハビリも順調とのことですので、ぜひこのお姿が再び拝見できることを願っております。
以前、キングギアで昔のコパムンについて紹介しましたが、現役プロ選手使用モデルとしては終焉を迎えてしまったコパムンの惜別を兼ねて、今回は木村選手の現役時代使用モデルとともにその歴史を振り返りたいと思います。
コパムンの誕生はスペインW杯が開催された1982年と言われています。 82年当時、日本代表選手はまだコパムンを使用しておらず、旧モデルの固定式最高級品だった「スーパーカップ」か「ワールドカップウィナー」を履いていました(図2)。

図2 1982年インドで開催されたアジア大会で、「スーパーカップ」を履いてプレーされる木村選手と金田選手(左)。木村選手の現役時代のコパムン(右上)。マークが青のシュータンを折り返した場合、画像のような感じになります。ワールドカップウィナー(ソール変更済み)と初期型コパムン(右下)。
初期型のコパムンのシュータンマークは青地なのですが、当時のアディダスの広告ではマークがないコパムンの写真が使われていたりします。
図3が現在までに入手できた西ドイツ製コパムンです。

図3 西ドイツ製(1990年ごろまで)のコパムン。図上右から2番目のみ取替え式の「ワールドカップ82」。シュータンマークは5種類(上)、かかとのマークは3種類(下左)のパターンがあったと思います。初期は横のコパムンの文字が金色でしたが、その後銀色になりました(下右)。
西ドイツ製時代のコパムンのマークはおそらく図3上のように5種類存在したようです。残念ながら黒字に白トレフォイルのコパムンはまだ見つけることができません。
日本でコパムンが使われ始めたのは、おそらく83年シーズンからだと思います。 そのころすでに青と黒のマークのモデルのどちらも、同時期に使われていたようです(図4)。
コパムンはシュータンを折ってプレーする選手が多いので、マークを判別するのが難しいのですが、青マークは裏が白で、黒マークは裏も黒いのが特徴です。

図4 1984年(左)、1986年(右)元旦の天皇杯決勝。日産対ヤンマー戦(左)の木村選手のコパムンは黒マークで、ヤンマー・今村選手は裏が白色なので青マークと思われます。 日産対フジタ戦(右)の木村選手、植木選手とも青マークのコパムンのようです。
80年代半ば以降に、かかとのマークが大きなトレフォイルのみのデザインになりますが、シュータンマークは青色、薄緑、黒地に赤のトレフォイルの3種類が存在したようです(図3)。
西ドイツ時代の最後期にかかとの革が3本線の下まで延長され、かかとのマークのトレフォイルも黒色に変更されました(図5右)。 そして、1994年に現在のデザイン(図1)になり、それ以後ほとんど変更されていないと思います。 木村選手はJリーガーになられた現役最後までコパムンを使っておられました(図5左)。

図5 90年代初め(左)と95年引退試合の木村選手(中央)。右はその時履いていたコパムンと似たモデル。
さて、80年代半ばから登場した黒地に赤のトレフォイルマークのコパムンは西ドイツ製以外にもチェコスロバキア、ユーゴスラビア、ポルトガル製がありました(図6)

図6 西ドイツ製以外の80年代のコパムン。汚い中古が多くて恐縮ですが、違いがおもしろくて集めてしまいました。ユーゴ製はシュータンマークが3種類あります(下左3種類)。同じ黒でも「ユーゴ製」の位置が違います。青マークのユーゴ製はスタッドが13本で、初期のコパムン(西ドイツ製も)はつま先の補強リベットがありません(右上)。ポルトガル製(下右端)はシュータン裏のスポンジが黒色で、チェコ製は生産国がシュータンにではなく、靴内のタグに記されています。
80年代の一般サッカープレーヤーにとって、コパムン(定価2万円)は高嶺の花でした。また、土のグランドがほとんどで、もし買えても練習でなどもったいなくて履くことができない高級モデルでした。 87年に、アッパーはコパムンのデザインで、ソールが白一色の「コパSL(カンガルー革)」と「コパSP(牛革)」が、コパムンよりもかなり安価で発売されました(どちらも日本製)。
学生だった我々にとっては憧れのスパイクに似たモデルが履けるということで、非常に人気が高かったと思います。 木村選手もそのプロトタイプを使っていたことがあったようです(図7)

図7 86年頃の木村選手。白一色ソールのモデルを履いておられます。コパSL、SPが発売される前年なので、それらのプロトタイプと思われます。 右は歴代日本製コパシリーズ(こちらをご参照ください)。 初期は白一色(アディパンソール)でしたが、平成になってからは白黒2色ソールもありました(左挿入写真)。ただ、西ドイツ製と異なり、スタッドが少し楕円型です。
コパムンは現在も生産されていますが、初期型復刻版が1998年(コパアルゼンティーナ)とデビュー25周年の2007年ごろに発売されました。 また、2019年にadidas創立70周年モデルが、さらに今年になってソールが現代風のモデルが発売されました(図8)。

図8 青マークのオリジナルと復刻版(上)。2019年復刻版(左下)と2021年復刻版(右下)。2021年モデルは色違いではなく、ソールの種類や価格が異なります。なぜ黒に白ラインがないのでしょうか…。上は西ドイツ、ドイツ製ですが、下はインドネシア製です。
マラドーナ選手のプーマモデルのコレクターのつもりでしたが、木村選手の影響でコパムンシリーズもずいぶん集めてしまいました(図9)。

図9 この機会に並べてみました。
2021年モデルはプレミアリーグの選手も実際に履いてプレーしたそうなので、これからもプロ選手用コパムンシリーズの登場を期待したいものです。
(画像はスポニチ、サッカーマガジン、アフロ様などより転載させていただきました)
コパムンは前田遼一選手の引退で、現役プロサッカー選手が使うことはなくなったかもしれませんが、現在も生産されており、まだまだ多くの審判やシニアプレーヤーに愛用されています。 図1は現行品で、数年前の木村さんのトークショーでサインしてもらったものです。

図1 木村和司さんのサイン入りコパムン(現行品)。コパムンを履いてプレーされる木村選手(2007年)。リハビリも順調とのことですので、ぜひこのお姿が再び拝見できることを願っております。
以前、キングギアで昔のコパムンについて紹介しましたが、現役プロ選手使用モデルとしては終焉を迎えてしまったコパムンの惜別を兼ねて、今回は木村選手の現役時代使用モデルとともにその歴史を振り返りたいと思います。
コパムンの誕生はスペインW杯が開催された1982年と言われています。 82年当時、日本代表選手はまだコパムンを使用しておらず、旧モデルの固定式最高級品だった「スーパーカップ」か「ワールドカップウィナー」を履いていました(図2)。

図2 1982年インドで開催されたアジア大会で、「スーパーカップ」を履いてプレーされる木村選手と金田選手(左)。木村選手の現役時代のコパムン(右上)。マークが青のシュータンを折り返した場合、画像のような感じになります。ワールドカップウィナー(ソール変更済み)と初期型コパムン(右下)。
初期型のコパムンのシュータンマークは青地なのですが、当時のアディダスの広告ではマークがないコパムンの写真が使われていたりします。
図3が現在までに入手できた西ドイツ製コパムンです。

図3 西ドイツ製(1990年ごろまで)のコパムン。図上右から2番目のみ取替え式の「ワールドカップ82」。シュータンマークは5種類(上)、かかとのマークは3種類(下左)のパターンがあったと思います。初期は横のコパムンの文字が金色でしたが、その後銀色になりました(下右)。
西ドイツ製時代のコパムンのマークはおそらく図3上のように5種類存在したようです。残念ながら黒字に白トレフォイルのコパムンはまだ見つけることができません。
日本でコパムンが使われ始めたのは、おそらく83年シーズンからだと思います。 そのころすでに青と黒のマークのモデルのどちらも、同時期に使われていたようです(図4)。
コパムンはシュータンを折ってプレーする選手が多いので、マークを判別するのが難しいのですが、青マークは裏が白で、黒マークは裏も黒いのが特徴です。

図4 1984年(左)、1986年(右)元旦の天皇杯決勝。日産対ヤンマー戦(左)の木村選手のコパムンは黒マークで、ヤンマー・今村選手は裏が白色なので青マークと思われます。 日産対フジタ戦(右)の木村選手、植木選手とも青マークのコパムンのようです。
80年代半ば以降に、かかとのマークが大きなトレフォイルのみのデザインになりますが、シュータンマークは青色、薄緑、黒地に赤のトレフォイルの3種類が存在したようです(図3)。
西ドイツ時代の最後期にかかとの革が3本線の下まで延長され、かかとのマークのトレフォイルも黒色に変更されました(図5右)。 そして、1994年に現在のデザイン(図1)になり、それ以後ほとんど変更されていないと思います。 木村選手はJリーガーになられた現役最後までコパムンを使っておられました(図5左)。

図5 90年代初め(左)と95年引退試合の木村選手(中央)。右はその時履いていたコパムンと似たモデル。
さて、80年代半ばから登場した黒地に赤のトレフォイルマークのコパムンは西ドイツ製以外にもチェコスロバキア、ユーゴスラビア、ポルトガル製がありました(図6)

図6 西ドイツ製以外の80年代のコパムン。汚い中古が多くて恐縮ですが、違いがおもしろくて集めてしまいました。ユーゴ製はシュータンマークが3種類あります(下左3種類)。同じ黒でも「ユーゴ製」の位置が違います。青マークのユーゴ製はスタッドが13本で、初期のコパムン(西ドイツ製も)はつま先の補強リベットがありません(右上)。ポルトガル製(下右端)はシュータン裏のスポンジが黒色で、チェコ製は生産国がシュータンにではなく、靴内のタグに記されています。
80年代の一般サッカープレーヤーにとって、コパムン(定価2万円)は高嶺の花でした。また、土のグランドがほとんどで、もし買えても練習でなどもったいなくて履くことができない高級モデルでした。 87年に、アッパーはコパムンのデザインで、ソールが白一色の「コパSL(カンガルー革)」と「コパSP(牛革)」が、コパムンよりもかなり安価で発売されました(どちらも日本製)。
学生だった我々にとっては憧れのスパイクに似たモデルが履けるということで、非常に人気が高かったと思います。 木村選手もそのプロトタイプを使っていたことがあったようです(図7)

図7 86年頃の木村選手。白一色ソールのモデルを履いておられます。コパSL、SPが発売される前年なので、それらのプロトタイプと思われます。 右は歴代日本製コパシリーズ(こちらをご参照ください)。 初期は白一色(アディパンソール)でしたが、平成になってからは白黒2色ソールもありました(左挿入写真)。ただ、西ドイツ製と異なり、スタッドが少し楕円型です。
コパムンは現在も生産されていますが、初期型復刻版が1998年(コパアルゼンティーナ)とデビュー25周年の2007年ごろに発売されました。 また、2019年にadidas創立70周年モデルが、さらに今年になってソールが現代風のモデルが発売されました(図8)。

図8 青マークのオリジナルと復刻版(上)。2019年復刻版(左下)と2021年復刻版(右下)。2021年モデルは色違いではなく、ソールの種類や価格が異なります。なぜ黒に白ラインがないのでしょうか…。上は西ドイツ、ドイツ製ですが、下はインドネシア製です。
マラドーナ選手のプーマモデルのコレクターのつもりでしたが、木村選手の影響でコパムンシリーズもずいぶん集めてしまいました(図9)。

図9 この機会に並べてみました。
2021年モデルはプレミアリーグの選手も実際に履いてプレーしたそうなので、これからもプロ選手用コパムンシリーズの登場を期待したいものです。
(画像はスポニチ、サッカーマガジン、アフロ様などより転載させていただきました)