横浜BC・河村勇輝が「人生最大のチャレンジ」NBA挑戦を表明。富永啓生とは「一緒のコートに立ち、ユニフォーム交換をする約束も」
Bリーグ1部の横浜ビー・コルセアーズは、パリ五輪を戦う日本代表の一員にも選出された河村勇輝選手(PG)が、NBAのメンフィス・グリズリーズと「エキシビット10」契約に合意したことを受けて記者会見が実施された。河村選手は会見後の質疑応答で、NBAでプレーした渡邊雄太選手(来季より千葉に加入)からのアドバイスやNBA挑戦への強い決意などを語った。筆者撮影
河村選手は、NBAのメンフィス・グリズリーズと「エキシビット10」契約合意に関する会見を終えた後に、質疑応答に応じた。
――河村選手が加入するメンフィス・グリズリーズには、パリ五輪代表にも選ばれた日本代表で渡邊雄太選手も過去に在籍されていましたが、渡邊選手から何かアドバイスはありましたか?
河村:グリズリーズの環境や組織の素晴らしさについては、(渡邊)雄太さんから話は聞いていたので、 純粋にすごく楽しみです。その際に「NBAは本当に厳しい世界だ」という話も伺ったので、僕自身も「しっかり覚悟を持ってプレーしていきたいな」と思っています。
©B-CORSAIRS 会見には多くの報道陣が詰めかけ、注目度の高さを感じさせた。
――渡邊選手は「NBAの厳しさ」について、どのようにお話しされていましたか?
河村:チームの環境に関する話題の方が多かったですが、雄太さんは日頃から「覚悟を持って戦い抜かなければ世界最高峰のリーグではやっていけない」とおっしゃられているので、その気持ちは忘れずに、常に戦っていけたらなと思っています。
――河村選手がNBAでプレーする夢を叶えられたら、「リーグ内で最も小さい選手(河村選手の身長は172㎝)」ということになるかもしれません。夢に向けてのスタートラインに立った今のお気持ちや、選手としての目標を聞かせて下さい。
河村:まずはNBAのコートに立つことが1番の目標になりますが、そのためにはキャンプでしっかりとアピールしていかなければなりません。さまざまな状況や困難も想定されると思いますが、「本当に覚悟を持って戦い抜け抜かなければいけない場所」であることは自分でも理解しているので、より一層の努力を重ねながら、日々精進していきいければいいなと思っています。
――河村選手と同じタイミングで、同世代の富永啓生選手もインディアナ・ペイサーズと「エクジビット10契約」を結ぶことを発表しました。
河村:(富永選手とは)高校時代の頃からの親しくしている仲なので、(富永選手の)アメリカでの大学生活に関する話は色々聞いていて。毎年のように成長し、スキルアップして帰ってくる富永選手の姿は僕にとっても刺激的ですし、彼と同じタイミングで、NBAという1番レベルの高いところに挑戦できるのは、僕にとっても本当に嬉しいです。
河村:「お互いに契約を勝ち取って、必ず一緒にコートに立ってユニフォーム交換をしよう」という話もしたので、それを実現させて、日本のファンの皆さんが喜んでもらえるような形になれば最高だなとは思いますね。
筆者撮影
――現在のグリズリーズは、3枠に制限されている「2ウェイ契約」に空きがない状況です。厳しい条件下でのチャレンジになることも予想されますが、今後の選手としての目標や、それらを実現させるためのタイムラインがございましたら聞かせて下さい。
河村:もちろん(NBAデビューが)『早ければ早いほど嬉しい』という気持ちはありますが、現実的にはまだまだ足りないところは正直たくさんあると思います。
バスケットだけではなく、言葉の壁もそうですし、それ以外にも慣れないといけない部分がきっと出てくると思うので、来季は「すごく難しいチャレンジ」になるんじゃないかと思っています。
僕も今年は23歳になり、海外ではあまり若くない選手になりつつあるので、来季は自分のプレーや実力を評価してもらう1年にしていきたいですし、2年目以降は自分の進化した姿を見せなければいけないと思っています。
――もしかしたら思いどおりに行かない場面もあるかもしれません。心配や不安などはありませんか?
河村:(NBAの舞台に立つまで)とんとん拍子で行けるとは全く思ってないですし、必ず大変な時期や、どうしたらいいかわからない時期っていうのは必ず来ると思います。それもわかった上でのチャレンジです。
その決意を決めたのが(会見が行われた)7月7日だと思っているので、言語や文化の壁に当たったり、全く歯が立たない場面もあると思いますけど、それでいいと思います。
その経験が僕の力になるでしょうし、今後のバスケットボールキャリアにおいて必ず必要になるものだと僕は信じているので、全く心配していません。
©B-CORSAIRS
――ファン・ブースターの皆さんへの思いを聞かせて下さい。
河村:パリ五輪が終わった後に、横浜ビー・コルセアーズのファンの皆さんには思いをお伝えできればいいなと思っています。
僕自身は、特別指定を含めて4シーズン、横浜ビー・コルセアーズでプレーさせていただきました。
横浜は僕にとって本当に大好きな街で、ファンやブースターの皆さんの前でプレーできることが、自分にとって本当に最高の時間で幸せな時間でした。
でも、昨シーズンは優勝して終わりたかったというところには心残りがあって、自分勝手な夢の実現のためにチームを去ることになり、ファンの皆さんにはすごく申し訳ない気持ちもありますが、僕はまだ23歳ですし、これから色々なことをチャレンジを重ねていく中で、横浜ビー・コルセアーズの一員として優勝を掴み取る可能性もまだ残されていますから、今回の会見が「“さよなら”のメッセージにはしたくない」という気持ちがあります。
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ーー日本のバスケットボールファンやバスケットをしている子供達へのメッセージをお願いします。
河村:僕は「チャレンジする大切さ」を伝えたいです。僕自身はもちろんチャレンジすることだけで満足してるわけではありませんし、まだスタートラインにも正直立てていない状況なのですが、NBAのコートに立って「この身長でもNBAに挑戦できるんだ」ということを証明して、1人でも多くの子供たちがバスケットを始めるきっかけを作ったり、バスケットを頑張れる原動力になれればいいなと思っています。
僕の決断は、田臥勇太選手(宇都宮)や富樫勇樹選手(千葉)といった体格に恵まれているとは言えない先輩方の挑戦してきた姿があったからこそ実現したと思っているので、例えこの挑戦がどんな結果になったとしても、お二人の思いを自分自身が後世に紡いでいくような気持ちで、僕自身も頑張っていければいいなと思っています。
――日本代表で一緒にプレーされている富樫勇樹キャプテンから何かアドバイスはありましたか?
河村:富樫勇樹選手は「アメリカでは色々なことが突然起こる」と話して下さいました。「自分が良いと思っているのに、突然次の日にチームを追われたり、トレードが決まるようなことも多いリーグだ」とお聞きしていますが、それらも含めて僕のバスケットボール人生においては素晴らしい財産になると思っています。
富樫勇樹選手選手とは、パリ五輪でも一緒にプレーできるので、色々なものを学んで吸収して頑張っていければいいなと思っています。
筆者撮影
――河村選手はさまざまな決断を発表される時、「覚悟」という言葉を多用されてきましたが、今回の「覚悟」はどのようなものですか?
河村:僕のバスケット人生における決断の中で、「最も大きなチャレンジになるんじゃないか」と思います。
おそらくアメリカではバスケットボールだけではないいろんな側面で難しい部分が出てくると思いますが、さまざまな問題に直面しても、自分を律しながらも向上心を持ち続けて成長を続ける。それが一番大切だと思いますし、どんな困難にも立ち向かっていくという自信も持っています。
結果として、それが一番自分を成長させてくれるでしょうし、バスケットボールのスキルだけではなくて、人として成長できると僕は信じているので、すごく楽しみにしています。