Img 2711

【ジャパンオープン2024】注目のダブルス“16歳差の錦織&坂本ペア”は「リターン」がすごかった

高校3年の2学期、9月下旬ごろだっただろうか、たしか私はマリモを育てていた。考えなくてはいけないことはてんこ盛りなので、のほほんとお気楽な高校3年生だった気がするーそんな昔のことをふと思い出した。きっかけは目の前で繰り広げられていた熱い戦い。 お気楽な私とは違い、高校3年生で錦織圭選手とダブルス組んだ坂本怜選手。16歳差のダブルスペアだ。あの試合を観戦してから1ヶ月以上経ったが、今でも鮮明に覚えている。※トップ画像出典/Getty Images

Icon img 9605 1  1 髙橋菜々 | 2024/11/28

2024年9月23日〜10月1日にかけて「ATP500 木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2024」が東京・有明コロシアム,有明テニスの森公園にて開催された。ワイルドカード(主催者推薦)で出場した錦織圭選手(34)と坂本怜選手(18)のペア。

高校3年生(2006年生まれ)の坂本怜選手は、プロ転向を表明した後の会見で「小さい頃、テレビで錦織圭選手を観て夢をもらいました」と語っていた。今大会に6年ぶりの出場となった錦織圭選手とジュニア世界ランキング1位を経て今大会でプロ転向を果たした坂本怜選手。多くのファンが注目した試合となった。

Thumb img 5198

筆者撮影

対戦相手は2024年全米オープン4強にもなったナサニエル・ラモンズ/ジャクソン・ウィズローペア(米国)。

錦織選手、坂本選手、それぞれのシングルスの試合はもちろんよく観戦していたが、“男子ダブルス”は観たことがなかった。だから「ダブルスだったらどんなプレーをするのか」「どんな試合展開になるのか」とても楽しみだったのだ(正直に言うとこの試合の個人的な楽しみは「勝敗よりもこの2人の“ダブルス”が観られること。だから会場で生で観戦できることだけでもう大満足。よく頑張った…私)。でもやっぱり勝利への期待は高まる。

第1セット目はタイブレークを経て先取。第2セット目は相手ペアのエンジンがかかってきたような感じがした。第1セット目で決まっていたショットが、第2セット目では相手の前衛に阻まれることが増えたように感じた。ラストは10点先取制のマッチタイブレーク。最後まで粘りと攻めのプレーだったが、惜しくも敗戦となった。

第1セット目7-6、第2セット目4-6、セットカウント1−1から10点先取制のマッチタイブレークで6-10。逆転負けとなった。

Thumb img 2710

出典/Getty Images

テニスではサーブが唯一自分でコント―ロールして打てるショット。だから自分でサーブが打てる「サービスゲーム」が有利といわれている。自分で好きな球種・コースに打つことができるから、おのずと返球もだいたい予測できることが多いのだ。

今回の試合でも錦織選手のコースをついたサーブ、坂本選手の200キロを超える豪快なサーブが素晴らしかった。サービスゲームでしっかり自分たちの得点チャンスを作っていくのかと非常に勉強になる試合だった。「良いサーブが入れば、前衛が決めてくれる」を体現したようなプレーもあった。

サーブも見どころだが、この試合の一番のポイントは“リターン”であったと私は主張したい。

圧巻の“鋭いリターン”

坂本選手のリターンは特に印象に残っている。相手の動きを読んだかのようなリターンをショートクロスに決めリターンエース。続いてまたしても同じゲームで相手から鋭いサーブを、坂本選手がアウトコースに鋭いリターン。そこからチャンスが生まれ、錦織選手が浮いた球を下がりながらショートクロスに決める。このショートクロスも素晴らしくって、球が綺麗なコースで落ちていった。まさに“芸術”だ。

もちろん錦織選手のリターンも素晴らしかった。インコースにきた相手の鋭いファーストサーブに素早く反応しバックハンドでクロス、見事に前衛を抜いてリターンエースを決めた。リターンをショートクロスに返し、相手の態勢を崩しチャンスを作っていく流れも最高だった。

リターンはどのコースに飛んでくるのか予測できず、テニスの中で難しいショット。でも坂本選手も錦織選手もリターンからとにかく攻めの姿勢で、まさに2人で試合を作り上げていた。“リターン”でこんなにも試合が大きく動くのかと、感動した試合だった。

ここから余談だが、坂本選手に対して「あぁ、彼は本当にスターなんだな」と思ったシーンがある。第1セット目のタイブレーク5−5。坂本選手のサーブから始まり、ストロークのラリーが続く。坂本選手が力強く打ったフォアハンドを相手がロブ(相手コートの後方へ高く緩い球)をセンターに返す。そのチャンスボールを坂本選手がフォアハンドで相手の前衛を抜くコースに打ち込む。その瞬間、会場は大いに沸き、坂本選手は耳に手を当て歓声を聞く。その姿にさらに会場がわく…。その姿がとても印象的で忘れられそうにない。本当にスターだなと感じた。「高校3年の2学期、あまりにも濃すぎないか?」と思ってしまったのだった。

今回の男子ダブルス選は本当に熱い戦いで競り合っていて、まさに“惜敗”。最後の1秒まで見逃せない、そんな試合。この試合でもしかしたら、幼い日の坂本選手が錦織選手に憧れたように、今度が未来のスターが坂本選手に憧れた、なんてことが起こっているかもしれない、そしていつかその子と坂本選手がダブルスを組むなんて日が訪れるのかもしれない…。そんなことを思いながら、この原稿を執筆している。ただ一言はっきり言えるのは、「錦織圭選手&坂本怜選手ペアのダブルスがまた観たい!」ということ、だ。