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常識破りの「内野メソッド」に小野伸二が迫る!選手の心に触れる個別のコミュニケーションとは

サッカー元日本代表小野伸二が指導者や監督のもとを訪れ、「伝える」をテーマに指導方法を学ぶDAZN「小野伸二が“伝えるを学ぶ”#2」よりでは内野智章が監督を務める奈良クラブユースの練習に参加し、常識破りの哲学と言われる「内野メソッド」に迫った。※トップ画像出典/DeFodi Images via Getty Images

Icon %e5%90%8d%e7%a7%b0%e6%9c%aa%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af 1 キングギア編集部 エンタメ班 | 2025/02/10

多くのプロ選手を育て上げた「内野メソッド」

2024年のクラブユース選手権に初出場した奈良クラブユース。創設5年とまだ歴史が浅いながらも急成長を遂げている。そこで指揮する内野監督は、興国高校サッカー部監督時代に30人以上のJリーガーを輩出してきた育成のスペシャリストだ。日本代表古橋亨梧もそんな教え子の1人と聞けば、奈良クラブユースに勢いがあるのも頷けるだろう。
しかし、今でこそ周りから一目置かれる内野監督だが、興国高校での個人技にこだわった指導法を「意味がない」「この年代でやるべきことじゃない」と批判されたと言う。それでも「世の中が『16(歳)からじゃ上手くならないよ』って言うことをやらない限り、俺たちの立ち位置変わらん」と信念を曲げずに追求。その結果、多くのプロ仕様の選手が生まれたのだ。

奈良クラブユースでの指導には、個人技トレーニングに加えてスペイン発“エコノメソッド”が取り入れられている。“下がりながらの技術トレーニング”と表現するそのメソッドは、普段使っていない筋肉を使って前進する時と同じように後進するトレーニングだそうだ。さらに、内野監督はそれを取り入れた背景となる考えをこのように語った。
「日本人ってやっぱり運動神経が低下している。外遊びが減って。だからサッカーのトレーニングでやる動作はすごいけど、ちょっとイレギュラーになると弱いっていう子がすごく増えている。だから怪我も多い」
周囲に否定された常識破りの内野メソッドは、現代の子どもの特徴までカバーしているといえよう。

「選手の心に触れられるかどうかが監督としては一番大事」

小野が伝え方について聞くと、内野監督は選手1人ひとりと個別にじっくり向き合っていることを明かす。
時には参考になりそうな動画を探して、LINEなどで選手に送ることもあるそうだ。選手たちもそんな内野監督に信頼を寄せており、小野は「すごい! やっぱり1人ひとりのことをよく考えてよく見てるっていうことですね。本当にただならぬ監督ですね。絶対時間もかかると思うし」と驚きを隠せない。

手間も時間もかかる伝え方を選んだきっかけは、マンチェスター・シティFCのジョゼップ・グアルディオラ監督が現役時代に指導者を目指して動いていた時のエピソードにあると内野監督は言う。
「戦術とか技術も大事だけど、選手の心に触れられるかどうかが監督としては一番大事。どれだけ戦術があっても、どれだけ技術指導ができても、選手の心に触れられない指導者は多分その選手を動かせない...というようなことをグアルディオラさんは言われたっていうのを記事で読んで、全員とそういう1対1のコミュニケーションを増やした。とにかくそれをしないと信頼関係が作れないっていうのは何となく肌で感じていますね。今」

内野監督からかけられた言葉が自信に繋がったと話す選手もいる。相手によって注意するタイミングを変えているのも、選手のメンタルに大きく影響しているのだろう。練習に参加して「内野メソッド」を体験した小野はこう語る。
「(まずは)選手たちにしっかり考えさせて、その中で足りないものを内野監督がおっしゃっていたなっていうのが印象的だった。それが選手たちに伝わってプレーに表れるというのを見られて、自分自身もいい経験ができたなと思います」

内野監督にとっての「伝える」とは

アインシュタインの言葉「6歳7歳の子たちに説明できなかったら、それはその物事を理解しているとは言えない」から学びを得た内野監督は、その言葉に出合う前は選手の理解力に頼って指導していたそうだ。
「小学生にでも説明できるぐらいにまで自分が理解をしないとダメなんだなっていう(ことに気付かされた)。アウトプットさせて、それが確認できるっていうところまで必ず煮詰めているんですよ。だから必ずLINEで学んだことを出させる。伝え返してもらって初めて伝わっているかどうかわかるんですよね」

最後に、小野は奈良クラブユースでの学びをこう振り返る。
「監督によっても色が違うし、人によって考え方も違うっていうのがすごく感じられました。人に伝える伝え方、そこの根本的なところは僕自身も同じことを考えていた。相手が理解していなかったら伝わっていないし。そういった意味で、僕の中でずっと思っていたことが聞けて、『あぁ、やっぱりそういう考え方あるよね』っていうのが認識できて良かったなと思います。チームもプリンス昇格の試合が12月ぐらいあるみたいなので、ぜひそこも上がってもらえれば今日来た意味がまた広がっていくと思うので、期待したいと思います」

今後の奈良クラブユースの活躍に注目していきたい。


『小野伸二が“伝えるを学ぶ”』#2「プロ選手に育てる内野智章の伝える力」(配信:2024年12月1日)より
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