Untold operation flagrant foul 00 02 23 15

NBA元審判ティム・ドナヒーはなぜ道を踏み外したのかーー“八百長はしていない”その言葉に隠された真相とは

元NBA審判のティム・ドナヒーは、自身が審判を務めた試合での賭博行為を疑われ 、2008年に実刑判決を受けた。「Untold: コートに潜む八百長の闇」では、プロバスケットボール界だけでなくスポーツ界全体を揺るがしたスキャンダルに迫るNetflixドキュメンタリー。ドナヒー本人が真相を語る衝撃作だ。事件はフィラデルフィアからニューヨークの犯罪組織、世界のスポーツ賭博の裏社会まで広がり、さらにNBAの闇も明るみになっていく。※トップ画像提供/Netflix映画『Untold: コートに潜む八百長の闇』2022年8月30日より独占配信中

Icon %e5%90%8d%e7%a7%b0%e6%9c%aa%e8%a8%ad%e5%ae%9a%e3%81%ae%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%88%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af 1 キングギア編集部 エンタメ班 | 2025/04/16

“賭け事は一切禁じる”NBA審判契約の裏側で犯した過ち

Thumb untold operation flagrant foul 00 06 39 01
提供/Netflix映画『Untold: コートに潜む八百長の闇』2022年8月30日より独占配信中

ペンシルベニア州デラウェア郡出身のドナヒーは、バスケットが大好きな子どもだった。デラウェア郡は多くのNBA審判を輩出した場所でもあり「自分にもできるはず」とNBA審判になる夢を叶える。しかし、当時コミッショナーだったデビッド・スターンが築いたNBAは、審判にスター選手への特別扱いを求めた。リーグという組織に属し認められるためにはそれに従うことで、超高額の手当と高評価を得ることができると知った。この頃から、遠征先で審判仲間と賭け事をするようになる。NBA審判の契約書には“賭け事は一切禁じる”と記されていたにもかかわらず、ドナヒーは2003年頃から同郷のジャック・コンカノンと、アメフトや野球の高額な賭けに手を染めるようになる。

そんなある日「今夜のNBAはどこが勝つか知りたい」と言われ、内部事情を把握できる“マスタースケジュール”を見て3試合分を教えた。翌日、全勝したことを告げられると、自分が審判をする試合の情報を教えてしまうようになった。その賭けで経由していた胴元“アニマルズ”には、高校の同級生だったジミー・ザ・シープ・バティスタがいた。ドナヒーが情報提供をしていることを知っていたバティスタは、高校時代2人をつないだトミー・マルティーノに連絡を取り、ドナヒーに会う。バティスタから「自分の行いをNBAにばらされたくないだろう」と、“勝者を指名した場合2000ドル、指名を間違ってもペナルティなし”という条件を提示される。この頃にはドナヒーに選択の余地はなかった。

賭けに勝ち続けることで正常な感覚が失われていくなか、事件は意外な展開に

Thumb untold operation flagrant foul 00 10 23 18
提供/Netflix映画『Untold: コートに潜む八百長の闇』2022年8月30日より独占配信中

2006年12月13日以降、指名情報はマルティーノを経由してバティスタに伝えられるようになった。バティスタは毎試合、数百万ドルの賭けを扱い、世界指折りのギャンブラーと取引を始めて、多額の金を稼いだ。この頃、ドナヒーは「いつか逮捕される」と内心では恐れながら、賭けに勝ち続けて手元の金が増えることで正常な感覚を失っていく。生活も、派手になっていった。そんな中、事件は意外な展開を迎える。

当時FBIが追っていたマフィア、ガンビーノ一家の対策本部を率いていたFBI捜査官のフィル・スカラは、捜査でしかけた盗聴器から偶然NBAの内部情報を拾う。その中に、NBA現役審判ティムの名前があり、憂慮すべき事案であると判断した。マルティーノとバティスタのやり取りは、フィラデルフィアのマフィアに知れ渡り、海を越えてガンビーノ一家にも伝わっていた。さらに、バティスタの金はマフィアに流れていたことが発覚。その規模は2~3千万ドル規模だとスカラ捜査官は話す。FBIはマルティーノに、大陪審への召喚状を渡す。ドナヒーは、弁護士のジョン・ラウロに全てを打ち明け、心身ともにボロボロの状態でついにNBA審判を引退した。

個人の犯行か組織ぐるみの犯行か、真相はいかに

Thumb untold operation flagrant foul 00 04 35 04
提供/Netflix映画『Untold: コートに潜む八百長の闇』2022年8月30日より独占配信中

FBIとの面接で、ドナヒーは「内部情報を伝えていただけで決して八百長はしていない」と言い張った。スカラ捜査官は「自分が賭けた試合ならその判定や判断は公平性を欠く」と伝える。ドナヒーが関与したのは、2003年~2007年。賭けた試合は100を越えた。露骨な八百長を働いたなら、内部で気が付く人間がいてもおかしくない。だからこそ「NBAが求めた判定をした。これは組織的なもので、他にも関与している人がいる」とドナヒーは主張した。

NBAの中心選手や有名スターに脚光を浴びせるというビジネスモデルは、審判との関係性にも影響を与えたことは想像に難くない。実際に幹部、オーナー、選手と関係のある審判が複数名、不適切行為で名前が挙がっていた。FBIはドナヒーをおとりに使い、NBA内部の情報を手にする作戦を考えた。しかし、その矢先に新聞でリーク報道があり、2007年7月20日にドナヒーは“汚職審判の不正行為”で国中に知れ渡ることになった。そして、賭博詐欺と電信詐欺の罪で8月29日に禁固15か月の実刑判決を受けた。不正の情報を事前に知り、捜査に全面協力をすると言ったNBA協会は関与を完全否定。すべてドナヒー個人がやったことだと断定した。ドナヒーはいまだ八百長とは認めておらず、結局リーク先もわからないまま、真相は闇の中だ。

Netflix映画『Untold: コートに潜む八百長の闇』2022年8月30日より独占配信中
※記事内の情報は執筆時点の情報です