カトリエの「マイ・ファースト・スパイク」 第8回 鄭大世選手(清水エスパルス)Vol.6「北朝鮮サッカーと世界の関係、今と昔」
現在、清水エスパルスに所属する鄭大世選手は、北朝鮮代表や韓国の水原三星でプレーした貴重な経験を持っています。今回は世界でプレーする朝鮮半島両国の選手の話や、食事情について語ります。【加藤理恵】
KING GEAR編集部
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2017/07/19
<インタビュー第1回はこちら>
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加藤:テセ選手が北朝鮮代表にいた頃、チームメイトに海外でプレーしている選手がいましたよね?
テセ:FWのホン・ヨンジョ(洪映早)ですね、ロシアでプレーしていた代表のドン的存在でした。そういえば昔、彼にipodを譲ってくれって言われたんだけど、頑なに断っちゃって・・・そこで失敗したのかもしれないよね。
加藤:何がですか?
テセ:上手くコミュニケーション取るのを(笑)。
加藤:あ~、そこが結構キモだった訳ですね、彼と仲良くなれるかどうかっていうのがチームの中では。
テセ:彼はボールが集まって来るから、すげー嫉妬してたんですよね(笑)。『何だよ、俺に出さずにそいつにばっか出すんだよ』ってムカついてた(笑)。
加藤:彼は北朝鮮生まれ、北朝鮮育ちの人ですか?
テセ:はい、自国の人で。
加藤:で、海外リーグに行けるんですか?
テセ:もうね、ずば抜けた選手は行けます。でもいろいろややこしい。
加藤:というのは?
テセ:前に、北朝鮮代表のパク・カンリョン(朴光龍)と、韓国のパク・チュホ(朴柱昊)がバーゼルで一緒になって仲良くしていたのが、ちょっと問題になっていました。
加藤:チュホって磐田や鹿島にいたあの?
テセ:そうです、二人ともチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに出場して・・・出世しましたね!
加藤:他にも日本といろいろ制度が違うでしょうしね。
テセ:例えば社会主義の国、キューバの野球選手は年俸を全部国に渡さなきゃいけないんですよ。社会主義は年俸を国にあげて、その後で平等に振り分けられるから。でもボーナスは本人が貰える。
加藤:もし大きな大会の決勝トーナメントなんかに行ったら・・・。
テセ:もの凄い額が入ってきて、その人は安泰でしょうね。1960〜70年代は北朝鮮のサッカー選手が持つステータスは国内でずば抜けてたけど、今はそんなアドバンテージでもない。
昔はソ連や東ドイツやヨーロッパの影響をめちゃめちゃ受けていて、日本よりもかなり強かったんだよね。日本国内で200何連勝の在日蹴球団と北朝鮮代表が試合して0-7とか。
加藤:そんなレベルだったんですか!!
テセ:66年のW杯で北朝鮮代表はイタリアに勝って、準決勝ポルトガルと4-3という死闘をしたんだけど。3点先に取ったのにエウゼビオ(ポルトガル)に4点入れられて・・・ワールドカップのベスト4ですよ?3-0が4-3ってあります?いくら何でもそれは気を抜きすぎでしょ、頑張れよ(笑)。
加藤:でも、『無いゆえの強さみたいな』ものって、ありますかね?
テセ:その時は『地上の楽園』って言われていて、北朝鮮って意外と裕福だったんですよ。その時の韓国ってめっちゃ貧しかった。朝鮮戦争で焼け野原だった。日本も戦後、高度経済成長期の前まではある程度貧しかったから。それに比べたら向こうはソ連からの恩恵ですごく潤っていたし、元々工業地帯が北朝鮮の方に多かった。
加藤:なるほど。
テセ:韓国選手の体つきってデカいじゃないですか?腹筋がバッキバキに割れていて。でも北朝鮮の選手は小柄なんです。
加藤:それは鍛え方の問題じゃなくて、元々の骨格が違うってことですか?
テセ:骨格、骨格。
加藤:北の方に住む人の方が体格が大きいイメージありますけど・・・栄養とかの問題なんですかね?
テセ:まぁ、栄養はあるでしょうね。韓国の選手はそれで身体が一気にデカくなりましたね。
加藤:ということは、日本人も身体が大きくなるかもしれないってことですか?
テセ:韓国と日本って、食に対する意識が違いますよね。日本人ってあんまり食べないじゃないですか。韓国人はとりあえず、“肉食っとけ”だからね。
加藤:韓国の選手と食事する時と、日本の選手では食事の量も違いますか?
テセ:韓国のサッカーチームはすごく食事管理するんです。だからそういう施設が寮の中に出来てて。
加藤:昼食も夕食もですか?
テセ:『昼も夜も食べたい!』ってなって、試合の何日か前から焼肉がブワーって出てくる。
加藤:焼肉が!
テセ:韓国風の。
加藤:試合直前もそんなに食べるんですか?
テセ:試合の2日前は食材はそんなに出ないです。スープ系。
加藤:でも、毎日夕食まで出るって・・・奥さんにとってはいいですね(笑)。
テセ:そうそう、飯は作らなくていいよね。僕もその方が楽なんだよね。作ってもらったら気をつかって洗い物しちゃうからね悪いから、したくないけど(笑)。でも僕は少食なんで・・・嫁にも『特別に栄養あるもの出さなくていい』って言ってます。
加藤:少食(笑)!!そんな立派な身体で!?
テセ:中学の時はめっちゃ食ってて、それで背は伸びました。高校時代もコーチと一緒にジム行った後、鉄板焼きとか行ってた。あの時はマジで食った。でも、日本のサッカー選手は皆あんまり食べないですね。野球とかでは食わされるって聞いたことあるけど。
加藤:韓国では大体どこのチームでもあるんですか?水原三星が有名なチームだからではなくて?
テセ:プロはもちろん、ある程度の良い学校だったら、食事の管理は徹底されてますね。
加藤:学校も!?
テセ:北朝鮮もそうですけど、ユニフォームを着たら意外と細く見えるんですよ。で、ユニフォーム脱いだらマジゴツいんだよね。すごく質の良い筋肉で、芯が太い。
加藤:ちなみに北朝鮮代表の食事ってどんな感じなんですか?
テセ:まぁ、同じ民族なんで・・・すげぇ食います。“代表だから”っていうのもあるけど、もう凄い量の食事が出てきて、皆食いきれないよね(笑)。
加藤:“北朝鮮に行かないと絶対に食べられない”っていう美味しいは物はありましたか?
テセ:えーっとね、『トースト』っすね。
加藤:トースト!?(笑)。
テセ:高麗ホテルの朝食で出てくるトーストがマジで旨いです(笑)。いや、あのね~普通の食パンじゃないんですよ。なんか凄っげぇ綺麗な長方形の形で、バターが塗りやすくて。日本に帰って来ても食べたいもん」(了)
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加藤:テセ選手が北朝鮮代表にいた頃、チームメイトに海外でプレーしている選手がいましたよね?
テセ:FWのホン・ヨンジョ(洪映早)ですね、ロシアでプレーしていた代表のドン的存在でした。そういえば昔、彼にipodを譲ってくれって言われたんだけど、頑なに断っちゃって・・・そこで失敗したのかもしれないよね。
加藤:何がですか?
テセ:上手くコミュニケーション取るのを(笑)。
加藤:あ~、そこが結構キモだった訳ですね、彼と仲良くなれるかどうかっていうのがチームの中では。
テセ:彼はボールが集まって来るから、すげー嫉妬してたんですよね(笑)。『何だよ、俺に出さずにそいつにばっか出すんだよ』ってムカついてた(笑)。
加藤:彼は北朝鮮生まれ、北朝鮮育ちの人ですか?
テセ:はい、自国の人で。
加藤:で、海外リーグに行けるんですか?
テセ:もうね、ずば抜けた選手は行けます。でもいろいろややこしい。
加藤:というのは?
テセ:前に、北朝鮮代表のパク・カンリョン(朴光龍)と、韓国のパク・チュホ(朴柱昊)がバーゼルで一緒になって仲良くしていたのが、ちょっと問題になっていました。
加藤:チュホって磐田や鹿島にいたあの?
テセ:そうです、二人ともチャンピオンズリーグの決勝トーナメントに出場して・・・出世しましたね!
加藤:他にも日本といろいろ制度が違うでしょうしね。
テセ:例えば社会主義の国、キューバの野球選手は年俸を全部国に渡さなきゃいけないんですよ。社会主義は年俸を国にあげて、その後で平等に振り分けられるから。でもボーナスは本人が貰える。
加藤:もし大きな大会の決勝トーナメントなんかに行ったら・・・。
テセ:もの凄い額が入ってきて、その人は安泰でしょうね。1960〜70年代は北朝鮮のサッカー選手が持つステータスは国内でずば抜けてたけど、今はそんなアドバンテージでもない。
昔はソ連や東ドイツやヨーロッパの影響をめちゃめちゃ受けていて、日本よりもかなり強かったんだよね。日本国内で200何連勝の在日蹴球団と北朝鮮代表が試合して0-7とか。
加藤:そんなレベルだったんですか!!
テセ:66年のW杯で北朝鮮代表はイタリアに勝って、準決勝ポルトガルと4-3という死闘をしたんだけど。3点先に取ったのにエウゼビオ(ポルトガル)に4点入れられて・・・ワールドカップのベスト4ですよ?3-0が4-3ってあります?いくら何でもそれは気を抜きすぎでしょ、頑張れよ(笑)。
加藤:でも、『無いゆえの強さみたいな』ものって、ありますかね?
テセ:その時は『地上の楽園』って言われていて、北朝鮮って意外と裕福だったんですよ。その時の韓国ってめっちゃ貧しかった。朝鮮戦争で焼け野原だった。日本も戦後、高度経済成長期の前まではある程度貧しかったから。それに比べたら向こうはソ連からの恩恵ですごく潤っていたし、元々工業地帯が北朝鮮の方に多かった。
加藤:なるほど。
テセ:韓国選手の体つきってデカいじゃないですか?腹筋がバッキバキに割れていて。でも北朝鮮の選手は小柄なんです。
加藤:それは鍛え方の問題じゃなくて、元々の骨格が違うってことですか?
テセ:骨格、骨格。
加藤:北の方に住む人の方が体格が大きいイメージありますけど・・・栄養とかの問題なんですかね?
テセ:まぁ、栄養はあるでしょうね。韓国の選手はそれで身体が一気にデカくなりましたね。
加藤:ということは、日本人も身体が大きくなるかもしれないってことですか?
テセ:韓国と日本って、食に対する意識が違いますよね。日本人ってあんまり食べないじゃないですか。韓国人はとりあえず、“肉食っとけ”だからね。
加藤:韓国の選手と食事する時と、日本の選手では食事の量も違いますか?
テセ:韓国のサッカーチームはすごく食事管理するんです。だからそういう施設が寮の中に出来てて。
加藤:昼食も夕食もですか?
テセ:『昼も夜も食べたい!』ってなって、試合の何日か前から焼肉がブワーって出てくる。
加藤:焼肉が!
テセ:韓国風の。
加藤:試合直前もそんなに食べるんですか?
テセ:試合の2日前は食材はそんなに出ないです。スープ系。
加藤:でも、毎日夕食まで出るって・・・奥さんにとってはいいですね(笑)。
テセ:そうそう、飯は作らなくていいよね。僕もその方が楽なんだよね。作ってもらったら気をつかって洗い物しちゃうからね悪いから、したくないけど(笑)。でも僕は少食なんで・・・嫁にも『特別に栄養あるもの出さなくていい』って言ってます。
加藤:少食(笑)!!そんな立派な身体で!?
テセ:中学の時はめっちゃ食ってて、それで背は伸びました。高校時代もコーチと一緒にジム行った後、鉄板焼きとか行ってた。あの時はマジで食った。でも、日本のサッカー選手は皆あんまり食べないですね。野球とかでは食わされるって聞いたことあるけど。
加藤:韓国では大体どこのチームでもあるんですか?水原三星が有名なチームだからではなくて?
テセ:プロはもちろん、ある程度の良い学校だったら、食事の管理は徹底されてますね。
加藤:学校も!?
テセ:北朝鮮もそうですけど、ユニフォームを着たら意外と細く見えるんですよ。で、ユニフォーム脱いだらマジゴツいんだよね。すごく質の良い筋肉で、芯が太い。
加藤:ちなみに北朝鮮代表の食事ってどんな感じなんですか?
テセ:まぁ、同じ民族なんで・・・すげぇ食います。“代表だから”っていうのもあるけど、もう凄い量の食事が出てきて、皆食いきれないよね(笑)。
加藤:“北朝鮮に行かないと絶対に食べられない”っていう美味しいは物はありましたか?
テセ:えーっとね、『トースト』っすね。
加藤:トースト!?(笑)。
テセ:高麗ホテルの朝食で出てくるトーストがマジで旨いです(笑)。いや、あのね~普通の食パンじゃないんですよ。なんか凄っげぇ綺麗な長方形の形で、バターが塗りやすくて。日本に帰って来ても食べたいもん」(了)