プロ野球新時代へ。ミズノがボール回転解析システム『MAQ』を発表!三浦大輔氏が球のキレ・回転数の「見える化」を体験
総合スポーツメーカー・ミズノは東京・青山のTEPIAで、野球ボールの回転を解析する新システム『MAQ(マキュー)』のプロトタイプ完成発表会を行った。製品紹介後のデモンストレーションでは、元横浜DeNAベイスターズ投手で野球解説者の三浦大輔氏が登場。実際にプログラムを体験し、プロならではの視点で今後の野球界発展につながる可能性を語った。
佐藤 主祥
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2017/10/02
野球界に革命が起きるかもしれない――。
今回ミズノが開発した『MAQ』は、ボールに内蔵したセンサーで取得したデータを専用のアプリケーションと連動させることで、投手の投げたボールの速度だけでなく、回転数や回転軸まで分析することができるというもの。
その回転検知およびスピード測定用のセンサーには、愛知製鋼株式会社製の高感度磁気センサー『MI(エムアイ)センサ』を採用し、毎秒50回転に迫るプロ野球選手の投球を検知可能とした。
よって、打者を打ち取るための重要な要素であるボールの「キレ」や「伸び」、そして「重さ」のような、これまで感覚で語られていた球質の表現を数値化することが可能となる。
野球指導者にとっても、感覚的な指導ではなく数値に裏付けされた練習メニュー作成につながり、より効率的かつ精度の高い指導が行われることが期待できるのだ
完成発表会では、開発に携わった國學院大學人間開発学部健康体育学科の准教授・神事努氏が、『MAQ』の効能、そして今後どのように活用されていくかを説いた。
神事:従来、ボールの球質を評価しようとした場合、その速度から速い、遅い、何キロなのか。具体的にはその程度にしか見極めることができませんでした。しかし、現場の選手からすればそれだけでは不十分。実際に打てないボールは、「球速だけでは測れない」と言われてきたからです。
そういった部分に関して『MAQ』という製品は、表現が曖昧だった球質を「見える化」することで、ボールの全体的な評価がしやすくなる、ということになります。
そもそも何故、回転数を数値化する必要があるのか。
解説すると、これは様々な研究で分かってきたことなのですが、「球速が遅いわりに回転速度が大きい」投手と、「球速が速いわりに回転速度が小さい」投手がいる、ということが分かってきたのです。
例えば、上原浩治投手(現、シカゴ・カブス)はそうなのですが、球は140キロ前後であまり速くはなくても、キャッチャーミットに収まるまでに失速せず、伸び上がっているように見えますよね?実際に試合を見ていても、ボールの下っつらを擦ってフライを打ち上げてしまう打者が多いです。この上原投手のようなストレートが「球速が遅いわりに回転速度が大きい」ということ。
逆に、160キロのボールを投げても簡単にホームランを打たれてしまう投手は、「球速が速いわりに回転速度が小さい」。そういった球質になってしまっている、ということになります。
なので球速だけを見るのではなく、回転数も計測し、両方の関係性を見てみる。すると、打ち取れる投手の特徴が分かってくる。なので回転数の数値化は投手を評価する上で必要になってくるのです。
このように球質を「見える化」できるようになることで、今まで見えてこなかったものが見えてくる。いえ、見ざるを得ない、評価せざるを得ない時代に突入していきます。それを実現していくこの『MAQ』が、野球だけでなく、様々なスポーツに可能性を生んでくれることを期待しています。
神事氏が言うように、ミズノはすでに硬式野球だけでなくソフトボールなど様々なボールに応用することを目指し、『MAQ』のようなIT技術によってスポーツライフをより快適にするための研究開発を進めているという。
そうなると、3年後に迫っている東京五輪でも野球、あるいは他の球技で『MAQ』の技術が使用されているかもしれない。となれば日本スポーツ界のレベルは確実にステップアップしていくことになるだろう。
TEPIAでの会見後、神宮外苑室内球戯場に移動し、三浦大輔氏による投球デモンストレーションが行われた。
ストレート、カーブ、フォークをそれぞれ2球ずつ投球し、『MAQ』でボールを分析。三浦投手がどのような球質なのかを実際に数値化していった。
①ストレート
まずはストレート。球速116キロで、回転数は30と計測された。
116キロでは25〜27回転が平均ということで、三浦氏が投げたストレートは速くはないが回転数が大きく、打者を打ち取りやすい球質だということが分かった。
②カーブ
続いてはカーブ。球速76キロで、回転数は29と計測された。
初めに投げたストレートの球速で回転数が30だったことを考えれば、このカーブは球速のわりに相当回転数が大きく、かなりの変化をしていることが分かる。遅い球に回転数を加えるためには技術が必要なため、三浦氏がどれだけ高い技術を持っているかが伺える。
③フォーク
最後はフォーク。球速は89キロで、回転数はわずかに4と計測された。
回転数が大きければ大きいほど重力への抵抗力を生み出し、ボールが伸びていくようになるため、このフォークは重力に逆らわずに打者の手前でスッと落ちていくボールだということが分かる。
この3球種を分析してみると、“球速と回転数のミスマッチ”によってそれぞれのボール特有の変化を生み出していることが明確化した。
つまり、これまで「ストレートは速くて伸びる」「カーブは遅くて曲がる」「フォークは手元で落ちる」というように、見たままをそう表現をしていたが、何故そうなるのか、その理由がハッキリと証明されたということだ。
実際に体験した三浦氏は、『MAQ』についてこのように語った。
三浦:今までボールのキレというのは自分の感覚しか測るものがありませんでした。例えば、リリースして初速と終速があまり変わらなければ「手元で伸びている、いいボールだな」というように、自分が投げてどう思うか。そういう形でしかボールを見極める上での判断材料がなかったので、投球していく上では1ついい目安ができたなと感じています。
またテータとしても残せると思うので、投手が調子が悪い時に『MAQ』のデータを見返せば、調子を取り戻す上でとても役立つのではないでしょうか。
ファン目線で言うとすれば、投手が良いボールを投げ込めているかどうかという部分に関しては、テレビに表示されるスピードガンの球速しか情報がなかった。それを考えると、回転数という新たな情報が数値化されることによって、さらに野球を楽しく見れるんじゃないかなと思いますね。
そしてプロだけではなくアマチュア野球にも活用できるといいですね。例えば、中学生のチームに使うとすれば、選手全員に『MAQ』を投げさせて、回転数が大きい子を投手にする、という使い方もありだと思います。一人ひとりどのポジションが一番適正があるのかという判断は難しいので、選手の可能性の見極めにおいても有効利用できるんじゃないかと感じています。
三浦氏は『MAQ』に対してプロスポーツ界だけでなく、アマチュア、そしてファンに至るまで様々な可能性を感じていた。
そういった可能性が実現していき、次々と導入されていくことになれば、スポーツシーンを根底から変え、新たな時代へと移行することになるだろう。
今後、『MAQ』はプロ野球・大学野球などで実証テストを積み重ねていき、2018年春に向けて研究開発を進行中。各チームが即導入ということになれば、来季のプロ野球からは目が離せない。
ミズノ公式サイト:http://www.mizuno.jp/
今回ミズノが開発した『MAQ』は、ボールに内蔵したセンサーで取得したデータを専用のアプリケーションと連動させることで、投手の投げたボールの速度だけでなく、回転数や回転軸まで分析することができるというもの。
その回転検知およびスピード測定用のセンサーには、愛知製鋼株式会社製の高感度磁気センサー『MI(エムアイ)センサ』を採用し、毎秒50回転に迫るプロ野球選手の投球を検知可能とした。
よって、打者を打ち取るための重要な要素であるボールの「キレ」や「伸び」、そして「重さ」のような、これまで感覚で語られていた球質の表現を数値化することが可能となる。
野球指導者にとっても、感覚的な指導ではなく数値に裏付けされた練習メニュー作成につながり、より効率的かつ精度の高い指導が行われることが期待できるのだ
完成発表会では、開発に携わった國學院大學人間開発学部健康体育学科の准教授・神事努氏が、『MAQ』の効能、そして今後どのように活用されていくかを説いた。
神事:従来、ボールの球質を評価しようとした場合、その速度から速い、遅い、何キロなのか。具体的にはその程度にしか見極めることができませんでした。しかし、現場の選手からすればそれだけでは不十分。実際に打てないボールは、「球速だけでは測れない」と言われてきたからです。
そういった部分に関して『MAQ』という製品は、表現が曖昧だった球質を「見える化」することで、ボールの全体的な評価がしやすくなる、ということになります。
そもそも何故、回転数を数値化する必要があるのか。
解説すると、これは様々な研究で分かってきたことなのですが、「球速が遅いわりに回転速度が大きい」投手と、「球速が速いわりに回転速度が小さい」投手がいる、ということが分かってきたのです。
例えば、上原浩治投手(現、シカゴ・カブス)はそうなのですが、球は140キロ前後であまり速くはなくても、キャッチャーミットに収まるまでに失速せず、伸び上がっているように見えますよね?実際に試合を見ていても、ボールの下っつらを擦ってフライを打ち上げてしまう打者が多いです。この上原投手のようなストレートが「球速が遅いわりに回転速度が大きい」ということ。
逆に、160キロのボールを投げても簡単にホームランを打たれてしまう投手は、「球速が速いわりに回転速度が小さい」。そういった球質になってしまっている、ということになります。
なので球速だけを見るのではなく、回転数も計測し、両方の関係性を見てみる。すると、打ち取れる投手の特徴が分かってくる。なので回転数の数値化は投手を評価する上で必要になってくるのです。
このように球質を「見える化」できるようになることで、今まで見えてこなかったものが見えてくる。いえ、見ざるを得ない、評価せざるを得ない時代に突入していきます。それを実現していくこの『MAQ』が、野球だけでなく、様々なスポーツに可能性を生んでくれることを期待しています。
神事氏が言うように、ミズノはすでに硬式野球だけでなくソフトボールなど様々なボールに応用することを目指し、『MAQ』のようなIT技術によってスポーツライフをより快適にするための研究開発を進めているという。
そうなると、3年後に迫っている東京五輪でも野球、あるいは他の球技で『MAQ』の技術が使用されているかもしれない。となれば日本スポーツ界のレベルは確実にステップアップしていくことになるだろう。
ストレート、カーブ、フォークをそれぞれ2球ずつ投球し、『MAQ』でボールを分析。三浦投手がどのような球質なのかを実際に数値化していった。
①ストレート
まずはストレート。球速116キロで、回転数は30と計測された。
116キロでは25〜27回転が平均ということで、三浦氏が投げたストレートは速くはないが回転数が大きく、打者を打ち取りやすい球質だということが分かった。
②カーブ
続いてはカーブ。球速76キロで、回転数は29と計測された。
初めに投げたストレートの球速で回転数が30だったことを考えれば、このカーブは球速のわりに相当回転数が大きく、かなりの変化をしていることが分かる。遅い球に回転数を加えるためには技術が必要なため、三浦氏がどれだけ高い技術を持っているかが伺える。
③フォーク
最後はフォーク。球速は89キロで、回転数はわずかに4と計測された。
回転数が大きければ大きいほど重力への抵抗力を生み出し、ボールが伸びていくようになるため、このフォークは重力に逆らわずに打者の手前でスッと落ちていくボールだということが分かる。
この3球種を分析してみると、“球速と回転数のミスマッチ”によってそれぞれのボール特有の変化を生み出していることが明確化した。
つまり、これまで「ストレートは速くて伸びる」「カーブは遅くて曲がる」「フォークは手元で落ちる」というように、見たままをそう表現をしていたが、何故そうなるのか、その理由がハッキリと証明されたということだ。
実際に体験した三浦氏は、『MAQ』についてこのように語った。
三浦:今までボールのキレというのは自分の感覚しか測るものがありませんでした。例えば、リリースして初速と終速があまり変わらなければ「手元で伸びている、いいボールだな」というように、自分が投げてどう思うか。そういう形でしかボールを見極める上での判断材料がなかったので、投球していく上では1ついい目安ができたなと感じています。
またテータとしても残せると思うので、投手が調子が悪い時に『MAQ』のデータを見返せば、調子を取り戻す上でとても役立つのではないでしょうか。
ファン目線で言うとすれば、投手が良いボールを投げ込めているかどうかという部分に関しては、テレビに表示されるスピードガンの球速しか情報がなかった。それを考えると、回転数という新たな情報が数値化されることによって、さらに野球を楽しく見れるんじゃないかなと思いますね。
そしてプロだけではなくアマチュア野球にも活用できるといいですね。例えば、中学生のチームに使うとすれば、選手全員に『MAQ』を投げさせて、回転数が大きい子を投手にする、という使い方もありだと思います。一人ひとりどのポジションが一番適正があるのかという判断は難しいので、選手の可能性の見極めにおいても有効利用できるんじゃないかと感じています。
三浦氏は『MAQ』に対してプロスポーツ界だけでなく、アマチュア、そしてファンに至るまで様々な可能性を感じていた。
そういった可能性が実現していき、次々と導入されていくことになれば、スポーツシーンを根底から変え、新たな時代へと移行することになるだろう。
今後、『MAQ』はプロ野球・大学野球などで実証テストを積み重ねていき、2018年春に向けて研究開発を進行中。各チームが即導入ということになれば、来季のプロ野球からは目が離せない。
ミズノ公式サイト:http://www.mizuno.jp/