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【動画あり】代表入りはケガの功名⁉玉置大嗣が語るアクロバティックスポーツ・セパタクロー

皆さんはアクロバティックなスポーツと言えばどんな競技を思い浮かべるだろうか? これまで数十種類の競技を取材してきたが私が思うに、見た目で一番分かりやすくアクロバティックな競技はセパタクローだと思う。 聞き慣れない競技名にどんなスポーツかイメージがつかない人も多いかもしれない。すごく平たく表現するならばセパタクローは“足でやるバレーボール”で、東南アジアで盛んな競技である。 12月28日、29日に全日本選手権が開催される予定となっているセパタクローだが、その大会に合わせて競技内外で頑張る選手がいる。 それが日本代表で国内強豪チームの1つ、SC TOKYO所属の玉置大嗣選手だ。彼は現役選手でありながら、SNSを中心とした情報発信を積極的に行い、ほぼ一般の観客がいなかった全日本選手権に100人集客すべく奔走する。

Icon 19441337 1436670123094269 1330815580 n 森 大樹 | 2019/12/20
セパタクロー:東南アジア発祥の競技。マレー語で「蹴る」を意味するセパ、タイ語で「籐で編んだボール」を意味するタクローを組み合わせた造語。現在は籐製を模したプラスチックのボールを使用している。コートおよびネットはバドミントンと同じ。種目は主に4人1組のクワッド、3人1組のレグ、2人1組のダブルに分かれる。


アクロバティックさへの憧れと柔軟性不足の現実

‐まずはセパタクローに至るまでのスポーツの経歴から教えてください。

小学校の時から水泳、柔道、サッカー、高校からはバスケットボールをやっていました。競技歴として一番長いのはセパタクローで、8年目に突入しています。
サッカーではキーパーをやっていたのですが中学生までは背が大きくなくて、なかなか芽が出ませんでした。それで高校からはサッカーを止めて仲良かった友達とバスケットボール部に入ることにしたんです。
セパタクローと出会ったのは大学からですね。本当はバスケットボールサークルに入って楽しいキャンパスライフを送るつもりだったのですが、新入生歓迎会を回ってる中でセパタクロー部があってほぼ即決で入ることを決めました。間近で先輩が決めるローリングアタックを見て、そのアクロバティックさに惹かれ、自分もこれをやりたい!と思ったんです。

-足を高く上げたり、ジャンプしたりとかなりの身体能力が必要になりそうです。

柔軟性が必要にはなってきますね。
元々自分もそんなに体が柔らかい方ではありませんでした。
そのせいで始めてすぐに両足ともひどい肉離れをしてしまいました。治りかけの段階でプレーしてまた再発するという感じで結局1年ぐらいまともにプレイできない期間が続いたんです。そこから体の柔軟性を鍛えることに力を入れるようになっていきました。

‐足を使うという点を考えると代表にもサッカー出身の選手が多いのでしょうか?
男子はサッカー出身が多いです。ただ、代表の中には高校まで野球でピッチャーをやっていた人もいます。女子は結構バラバラですね。

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今では180度開脚ができるほどに体が柔らかくなった

本場で味わった明確な”差”とポジション転向で見えた光

‐セパタクローは東南アジアで盛んな競技とのことですが、日本との違いをどのようなところに感じますか?

大学2年生になった時にセパタクローの本場タイに行く機会があったのですが、いろいろな面で日本との圧倒的な差を感じました。現地の選手の実力はもちろんのこと、ストリートでセパタクローをやるくらい文化として競技が根付いていていたんです。
タイのセパタクローの大会は賞金が出たりもしますし、代表選手になれば国からお金も出るので夢があります。実際それを掴むために地方から頑張って代表に入っている選手が多いんです。タイには「セパタクロードリーム」があると言えるかもしれませんね。
ちなみに東南アジアが強い影響でセパタクローは実は世界選手権よりアジア大会の方がレベルが上なんです。世界選手権は毎年ありますがアジア大会は4年に1回しか行われません。

‐アタッカーに憧れてセパタクローを始めた玉置さんですが、現在はサーバーを務めています。

膝のケガでポジション転向したからですね。タイの人たちはコンクリートの地面でも普通にプレーするのですが、自分も現地に行ったときにそこで一緒にやっていたら膝を痛めてしまいました。結局帰国してからも壊した膝は治らず、それまでやっていたハードな動きを求められる※アタッカーをやめてサーバーに転向した形です。
サーバーは背が高いほうが有利ということもあり、転向がきっかけとなって8ヶ月後の世界選手権の日本代表に初招集されました。

※3人1組のレグ種目は攻撃担当のアタッカー、サーブ担当のサーバー、トス担当のトサーに大きく役割が分けられる。

‐転向がきっかけになって日本代表への道が開かれたわけですね。それぞれのポジションの特性を教えてもらえますか?

アタッカーは一番総合的な力を求められるポジションだと思います。
まず、飛んで着地して起き上がってを繰り返すので一番体力、身体能力が求められます。空中で瞬時に相手コートのどこに打つかを判断する必要もあります。
また大抵の場合はサーバーに対してボールを投げる役割もアタッカーが担います。
レグ種目ではサーバー以外のプレーヤーが手でサーバーに対してボールを上げ、それを相手コートに打ち込むところからプレーが始まります。
激しい動きをしつつもサーブの時は冷静になってサーバーと積極的なコミュニケーションを取りながら、精度の高い球を上げることが求められます。

サーバーはプレーのスタートの所に関わるのでゲームメイクの役割を担っています。強く打ち込む人もいればコースを狙ったり、緩急をつける選手もいます。サーブはデュースになると1本ずつ相手チームと交代になりますが、それまでは3本毎に変わります。その3本の中で組み立て方を工夫していきます。自分はガンガン打ち込んでエースを狙っていくことが多いですね。

もう一人はトサーといって、バレーボールで言うところのセッターですね。アタッカーの調子を見ながら一番打ちやすい場所に試合状況や相手の特性を見極めながらトスを上げ続ける必要があるので、一番ボールコントロールがうまくてレシーブが固い選手がやります。
基本的には守りの選手でチームの状況を俯瞰して見ながらまとめる役割を担います。大体トサーがキャプテンをやるパターンが多いですね。 

‐セパタクローをする上で一番大切なことは何ですか?

前提としてセパタクローのように3人1組でチームを組んでコートに立つ競技はなかなか珍しいと思うんですよね。ボールを上げる側と受ける側が直接プレーに関わる人とすると、そこに絡まない選手が1人出てきます。
そのプレーに絡まない1人が他の2人を客観的に見て、コミュニケーションを取らないとうまくいかないんです。良くない点があれば会話をして修正をしていく必要があります。
正直コミュニケーションが増えるとチームメイトとぶつかることも多いです。そこを上手くやっていかないと強くなれないと思いますね。
僕は2年半前から子どもたちにセパタクロースクールを開いているのですが、それも競技そのものを教えるというよりはプレーを通して学べるコミュニケーションについて指導しているという感じです。

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‐練習中もチームメイトと話し込む場面が多くありましたね。ところで練習を見る限り、似たシューズを履いている選手が多いようですが、何か理由があるのでしょうか?

実はこれはタイの上履きなんです。セパタクローではインサイドの部分を使うのでそこが平たいもので、かつ競技が盛んなタイで一番ポピュラーな靴ということでほとんどの選手がこれを使っています。

【後編へ続く】

<取材・文・写真・動画制作=森 大樹>

〇第30回全日本セパタクロー選手権大会
日時:2019年12月28日(土)、29日(日)
(両日9:00開場、28日11:00試合開始、29日10:00試合開始)
場所:駒沢オリンピック公園総合運動場・屋内球技場
※観戦無料・入退場自由
※玉置選手はSC TOKYO wingsとして出場予定
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