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ヨコハマ・フットボール映画祭の福島成人がオススメする 「STAYHOME」のサポーターが見るべきサッカー映画・映像作品

新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、世界中のほとんどの国でスポーツが出来ない、見られない日々が続いている。 命に関わるやむを得ない事態を加味しても、ヨーロッパ各地のフットボールリーグはシーズン佳境に差し掛かり、日本のJリーグも2020年シーズン開幕を迎えたばかりという状況での先の見えない中断は、サポーターの皆さんの鬱々として過ごす日々を加速させてしまっていることだろう。今回は、ヨコハマ・フットボール映画祭の実行委員長を務められている福島成人氏にインタビュー。世界各国のサッカー映画に精通している福島氏に、社会の事情によりやむなく「STAYHOME」を強いられているサポーターの皆さんに、こんな機会だからこそ見てほしいサッカーをテーマにした映画や映像作品についてお伺いした。

Icon     白鳥純一 | 2020/05/15

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Photo by Satomi Asano

ヨコハマ・フットボール映画祭は、世界で年間100本近く制作されるサッカーをモチーフにした作品のなかから、ボールが蹴りたくなる作品、サッカーを観たくなる作品、サッカーを通じて世界を知れる作品をセレクトして上映するアジア初のサッカー専門映画祭。 

2011年の初開催以来、今年で10回目。
2020年の映画祭は1月25~31日まで、横浜市開港記念会館、シネマジャックアンドベティで開催された。

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ヨコハマ・フットボール映画祭で上映された『スタディオン』の出演者、監督、プロデューサー。この日のためにチェコから来日した。

セレソン復活の裏側を追ったドキュメンタリー番組「オール・オア・ナッシング ~サッカー ブラジル代表の復活~」

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Amazon Prime Videoにて独占配信中
 
福島さんが「まず見てほしい」と語るのが、2019年のコパ・アメリカで優勝したブラジル代表の裏側に迫ったドキュメンタリー番組「オール・オア・ナッシング ~サッカー ブラジル代表の復活~」(ALL OR NOTHING BRAZIL NATIONAL TEAM)だ。


 ブラジルで行われた2019年大会は、U23サッカー日本代表が招待国として参加したということもあり、印象に残っている方も多いのではないだろうか。 

2002年の日韓ワールドカップ優勝、2007年のコパ・アメリカ優勝以降、低迷が続くブラジル。2016年のブラジルワールドカップでは、自国開催でありながらも準決勝でドイツに1-7で惨敗(ミネイロンの惨劇)したことなどもあり、国民の期待や情熱も薄れているような状況だった。

自国ブラジルで開催されたコパ・アメリカで、王者ブラジルの復活を選手や監督、そしてトレーナーをはじめとする裏方のスタッフなど、さまざまな角度から描いた作品だ。    

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ーーオススメするポイントは何ですか?
 

福島:ブラジル代表と言えば世界で一番愛されているチームの一つと言って良いと思うのですが、最近は低迷が続き、選手も小粒で、正直、人気がかなり下がってきていますよね。

でも、僕はこの作品を見て、もう一度ブラジル応援したくなりましたね。合宿に遅刻しながらも、颯爽とヘリコプターでやってくるネイマールの相変わらずな『お騒がせ』ぶりの様子、チッチ監督やダニエウ・アウヴェスが持つカリスマ性など、選手たちの魅力的なエピソードが盛りだくさんの作品です。

ーー 印象的なシーンはどこですか?

福島:かつて、ブラジルワールドカップの時にドイツに大敗を喫した、ミネイロンスタジアムで行われるアルゼンチン戦の試合前のシーンですね。

チッチ監督が、「結局は勇気なんだ」と言う話をするのですが、選手たちに積極的に話しかけたり、(サッカーに対する)熱い気持ちに感銘を受けました。 

また、映像がめちゃ綺麗かつ構成がとても巧み。それぞれの試合が開催される街の出身選手のエピソードとその街の文化や風景がフィーチャーされていれて、ブラジルに行きたくなります。

昔、ブラジル代表を応援していたけれど、最近の状況はわからないというセレソンファン、サッカーファンにはぜひとも見ていただきたい作品です。    

「オール・オア・ナッシング ~サッカー ブラジル代表の復活~」



サッカーをする原点が見られる「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」 

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©Next Goal Wins Limited.

 
2001年に行われたワールドカップ予選で、オーストラリア代表に31対0で記録的な惨敗を喫したアメリカ領サモア代表。 ほとんどがアマチュア選手で構成されたチームは、FIFAランキング最下位。

「世界最弱」とまで言われ、嘲笑の目に晒されていたアメリカ領サモア代表チームに、ある日オランダ人のロンゲン監督が就任し、4年後の予選で初勝利を目指す姿を追ったドキュメンタリー。2020年のアカデミー賞脚色賞(『ジョジョ・ラビット』)を受賞したタイカ・ワイティティ監督によるリメイクも決まった注目の作品だ。 

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©Next Goal Wins Limited.

ーー
オススメするポイントは何ですか? 

福島:先ほどのブラジル代表とは対照的に、「世界最弱」のアメリカ領サモア代表。

当然、チームのレベルは低いし、環境も不十分。南太平洋の陽気なノリの選手たちと、真面目で厳しいオランダ人プロ監督と当初は衝突ばかり。その文化的な壁を勝利という共通の目標で乗り越えていくさまがサッカーの本質を伝えてくれます。

 特に印象的なのが、代表チームのDFで、男性の身体と女性の心を持ったトランスジェンダーのジャイヤ・サエルア選手。元々サブメンバーとしてチームに参加しますが、最終的にレギュラーを奪取し、活躍を見せます。

この作品は、強くなっていく過程はもちろん、「なぜサッカーをするのか」といったような、サッカーをする原点のようなものが感じられる作品だと思います。
  


英国サッカー文化を的確に再現「ザ・イングリッシュ・ゲーム」

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Netflixオリジナルシリーズ『ザ・イングリッシュ・ゲーム』独占配信中

19世紀末のイングランド。サッカーはようやく統一ルールが定められ、
多くのチームがFAカップ獲得を目指していたが、まだまだ上流階級のチームがその栄誉を独占していた。

果たして、工場労働者チームはその牙城を崩すことはできるのか?
人気ドラマ「ダウントンアビー」シリーズのスタッフによる本格的なサッカー歴史ドラマだ。

ーー オススメする理由は何ですか? 

福島:二人の主人公が競い合いながら、時代を変えていく、という正統派の歴史ドラマで、サッカー好きじゃなくても楽しめるつくりになっています。

主人公の一人は、サッカーの実力を買われて、スコットランドからイングランド北部の綿織物工場のチームにやってくる。当時はサッカーによる報酬は認められていないので、隠れプロです。

チームに新しい戦術を持ち込み、
労働者階級初のFAカップ制覇を目指すのですが、サッカー界を牛耳る上流階級の嫌がらせや、日々の生活の問題で、なかなか思うようには進まない。

もう一人の主人公は、銀行家の息子で、サッカー協会のメンバー。パブリックスクールのOBで作ったチームで、FAカップを3度優勝と絵にかいたような勝ち組。

しかし、父親との確執や、夫婦の問題を乗り越えることで人間的に成長を果たし、何がサッカーにとって大切なのかを考えようになる。
友情、裏切り、恋愛、ファンの暴動など、見所が盛りだくさんの王道ドラマです。 

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Netflixオリジナルシリーズ『ザ・イングリッシュ・ゲーム』独占配信中

ーー
 印象的なシーンはどこですか?

福島:上流階級の優雅な暮らしと、労働者階級のリアルな生活の対比を軸に、当時のイングランドの文化、風俗の再現度がとても高くて驚かされます。

また、上流階級のチームは、肉弾戦上等な荒いプレーを好むのですが、決闘主義的な気風が感じられてなるほどと思いますね。キングギアの読者の方々には、当時のユニフォームも見所なんじゃないでしょうか?


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ナポリ時代のマラドーナを描いた『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』も期待大!!

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© 2019 Scudetto Pictures Limited.

ーー ナポリ時代のディエゴ・マラドーナ選手を描いた作品とのことですが、見どころを教えてください。

福島:マラドーナの新作ドキュメンタリー『ディエゴ・マラドーナ 二つの顔』が近日劇場公開されます。

たぶん、キングギアの読者の皆さんにとっては「またマラドーナの映画?」という思いがあると思います。正直、自分も最初に制作のニュースを聞いたときには、期待値は低かったです。

ただ、実際に観てみると、初めて見る映像が豊富で、マラドーナの全盛期の輝きと影響力、そして、マフィアとの交際や、コカイン服用というダークサイドへの転落の悲劇性が見事に描かれていました。昨年のカンヌ映画祭の高い評価や、イギリスのアカデミー賞ノミネートといった結果が納得できます。

当時は今ほど、ディフェンダーもメディアも優しくなく、マラドーナがいかに厳しい状況で戦っていたのかが再確認できると思います。ぜひ、改めて映画館でディエゴにしびれてください。

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ーー 最後に、「STAY HOME」を続けるサポーターの皆さんに、サッカー映画の魅力を教えて下さい。

福島:
「サッカーは世界で最も愛されているスポーツ」というフレーズを証明するように、今回紹介した作品は、時代も、場所も、レベルもそれぞれ違うのですが、逆にサッカーを知っていることで、それぞれの登場人物人物の気持ちや、文化の違いをリアルに体感できるのがサッカー映画の良さと思います。

他にも沢山のサッカー映画がインターネットで楽しめますので、気持ちだけでも観戦旅に出てみてください。  


写真提供:
Satomi Asano
©Next Goal Wins Limited.
© 2019 Scudetto Pictures Limited.

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