フットサル日本代表、諸江剣語を密着取材 vol.2~チーム練習編~ 「監督の意図を理解し、コミュニケーションを円滑にしてチーム作りに貢献する」
チーム練習の開始予定時刻から30分ほど前、練習場所の墨田区総合体育館メインアリーナには、すでに準備をすませてチームメイトと談笑する諸江剣語の姿があった。
瀬川 泰祐(せがわたいすけ)
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2017/05/31
<vol.1はこちらから>
そして、いつものように、フウガドールすみだの須賀監督が選手たちに一声かけて、練習がスタートする。監督によって練習メニューの説明とグループ分けがなされたあと、さっそく諸江の特長が表れた。
そして、いつものように、フウガドールすみだの須賀監督が選手たちに一声かけて、練習がスタートする。監督によって練習メニューの説明とグループ分けがなされたあと、さっそく諸江の特長が表れた。
自分のグループ内でトレーニングの理解が浅い選手がいると、必ず声をかけて身振り手振りを交えて、戦術の意図や動きを説明し、グループ内の練習をうまくオーガナイズしていくのだ。
「あれは、守備の確認のための練習でした。でも意図を理解していないと、練習の意味が半減してしまうんですよ。だから、理解できていない選手には、監督の考えを伝えるようにしています。
あとは、意図的に声を出すようにしていますね。動き方は監督に説明されているので予定調和なんですけどね。別にわざわざ声を出して指示する必要がなくても、実際の試合を想定して“残れ”とか“中を切れ”といったように、どうしてほしいかを後ろから声を出すようにしています。
試合を想定しながら練習しているので、試合と同じように声をだして、選手間でコミュニケーションをとることを大事にしています。」
写真:練習中、周囲に気を配りながら指示をだす諸江剣語
さらに、練習メニューの合間も、頻繁に新加入選手や外国人選手と会話をする姿が目立った。須賀監督の意図を汲み取って、他の選手に伝える言語能力をもつ諸江のニックネームは「ピッチ上の監督」。
どのチームも引退や移籍によって選手が入れ替わり、チームづくりが非常に難しい時期だが、諸江はチームのキャプテンとして、ピッチ内外で、多くのチームメイトと積極的にコミュニケーションをとることが出来る。常にチームのために行動することが当たり前のようにできるからこそ、監督からの信頼も厚いのだろう。
そして、練習の最後に行われた紅白戦は、まるで本番の試合さながらの雰囲気となった。フウガドールすみだの紅白戦はいつも激しくなる。理由は単純明快。データが収集されているからだ。
マネージャーが紅白戦のデータをとり、リアルタイムで集計する。
誰が出ているセットでは失点が多い・少ない、得点が多い・少ないといった傾向が、全てデータに出てしまうのだから、紅白戦は本番の試合そのもの。
チーム内での激しい競争が、選手たちの能力をさらに上に押し上げていく。この日も諸江は得意の1対1でチャンスを生み、危機察知能力を活かしてピンチの芽を何度も摘んでいた。
写真:フィジカルトレーニングの疲れを残しながらも動きにキレがあった諸江剣語
諸江剣語という人間が、なぜチームにとって重要な存在なのか。
諸江剣語という人間が、なぜチームにとって重要な存在なのか。
今シーズンよりフウガに新しく加入した岡村康平は、諸江の存在をこう語る。
「フウガに移籍が決まって、すぐに連絡をくれたのが剣語さんでした。“わからないことがあったらなんでも聞いてくれ”って。加入してからも、オープンに接してくれているので、こちらが話しかけやすいんです。
一方的に教えようとはせずに、こっちが質問しやすい雰囲気を作り上げてくれていますね。このチームを背負っているという責任感は誰よりも強いなと感じます。」
プレーの質が高いとか、キャプテンシーがあるというだけでなく、不安定になりがちなチームをより良い方向に導くような存在感や姿勢こそが、監督に重宝される理由なのだろう。
ピッチ内で高いパフォーマンスを発揮しつつ、ピッチ外でもチームメイトとコミュニケーションを取り、全体を見渡し周囲に気を配る。こうしてチーム作りを助けながら、高いレベルでチームに貢献することができる人間性こそが、諸江の最大の武器だ。
写真:練習試合の合間に、率先して濡れたピッチをモップ掛けする姿も。
この1、2年の間に、長年にわたってチームを支えてきた選手たちが引退した。名実ともに、精神的な支柱としてチームに不可欠な存在となった今の諸江には、重圧を背負って楽しむだけの覚悟がある。
次号は心身ともに充実した諸江のインタビューをお届けする。
※vol.3に続く http://king-gear.com/articles/357
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取材・文・写真:瀬川泰祐