Dscn3958  2

高速スプリンターが世界で戦うための陸上スパイク!ミズノ『クロノインクス』とは。

日本のトップスプリンターが世界を相手に高速で走ることを可能にした陸上短距離専用スパイク「クロノインクス」シリーズ。今回は、ミズノ株式会社(代表取締役社長:水野明人) で長年に渡り陸上スパイクの企画・開発に携わる河野氏に、誕生秘話・機能面・今後の展望について話していただいた。

Icon 22d3205e be9b 4127 a8b9 c79a36b16411 佐久間秀実 | 2018/03/19
Thumb dscn3954  2

ミズノ株式会社

コンペティションスポーツ事業部 事業企画部 
事業企画2課
陸上競技担当 専任職
河野光裕氏  

――スパイクの名前の由来

河野:こちらの「クロノインクス」はトップアスリートが使うスパイクで、2000年に完成形ができて以降17年以上にも渡ってほぼ同じものを採用しています。  

まず、短距離走は短い時間を競い合うスポーツなので、クロノグラフやクロノメーターから連想して名前に「クロノ」を付けることにしました。そしてその当時、ミズノが契約していた選手が世界を転戦しながら活躍する姿をイメージしてインターナショナルエクスプレス(国際超特急)が思い浮かび、それを略して「インクス」としました。最終的に、「クロノ」と「インクス」を合わせて「クロノインクス」という名称になりました。

Thumb sh u1ga180101  2 ――「クロノインクス」の特長

河野:短距離用のソールは全てが硬いナイロン製のプレートでできていて、反発性が高く捻じれを防いでくれます。これにより高速で走る際にプレートの捻じり戻しがあるので足の動きがスムーズになります。この捻じり戻しの力は強いものなのでしっかりとした筋力がある選手でないと怪我をする恐れがあります。「クロノインクス」は鍛え上げたトップアスリートにお勧めしています。  

Thumb sh u1ga175054  2 リオデジャネイロオリンピック4×100mリレーで銀メダルに輝き、200mにも出場した飯塚翔太選手のモデル「クロノオニキス」のプレートにはカーボンシートが入っていて、さらに硬く設計されています。
 
Thumb 17ssiidukamain
「クロノオニキスを使用する飯塚翔太選手」
 

Thumb dscn3945

――スパイクピンの位置について 


河野:1996年頃に契約選手の足の形状や動きを解析装置を使って徹底的に研究しました。そして、足の骨の構造を考えて、母趾球、小趾球、つま先が地面に着いた時にスパイクピンがしっかりと刺さる位置に取り付けています。ただトップ選手は足の接地時間が短いので、スムーズに足が前に転がるようにスパイクピンを付けています。  

それまでは選手本人から感覚を聞いてスパイクピンを付ける位置を決めていましたが、解析の結果に基づいて我々からも提案をしながら開発ができるようになりました。後に高速度カメラやモーションキャプチャーが出てきたことにより分析結果が進化してきています。骨の位置が変わることは想定できないので、今後もスパイクピンの位置はほぼ変わらないと思います。  

――踵について

河野短距離選手は基本的に踵が地面に着かないので接地を前提としないシンプルな形状にしています。日本人選手はこれまで海外の指導の影響を受け、つま先を中心に地面に接地して走るフォアフット走法が主流でした。

その後、つま先接地だとレース後半に脚への負担が高いため、足を自然にフラットに着くほうが良いというミッドフット走法が出てきました。これは長距離を走るようにつま先を少し上げてフラットな状態で足裏を着き、踵が着く時間を短くしながら地面から受ける反発力を生かして前へ進むということになります。

現在では上記の2つの走法がありますが、クロノインクスは主につま先で接地をして走るフォアフット走法向けで、筋力の強い選手のために設計されたスパイクになります。


Thumb sh u1ga180101 03  2 ――紐とストラップについて
 

河野:紐は山でダイナマイトを爆発させるときに岩が飛び散らないように被せる防爆シート用の強力糸を使用しています。非常に軽くて強いシューレースで、一度締めたらブレないような強固さを保つことができます。ミズノでは陸上スパイクのみに採用していて、脚への負担を減らしてスピーディーに走るための軽さを徹底的に追求しています。また、フィットしやすいストラップを採用し、踵のフィット性と足の甲周りのホールド性が高い構造となっています。

Thumb dscn3952  2

――シューズ設計について


河野他の競技と比べてソールの角度が大きい設計となっています。つま先からスムーズに接地ができてブレーキがかかりにくいフォアフット走法向けの設計です。

――今後の展望について

河野:陸上は、選手の走力により結果が伴うスポーツですが、95%が選手の実力で、スパイクによるものは残りの5%程度だと思っています。これからも、この5%に我々の人生・魂の全てを込めて作り上げていきたいですね。  (了)  

ミズノ・クロノシリーズ
http://products.mizuno.jp/c/category/track_field/spike/chrono

取材協力/ミズノ株式会社
写真提供/ミズノ株式会社
取材写真/佐久間秀実