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奇跡を追い求めて!富樫勇樹の熱きパリ五輪への決意

富樫勇樹、その名を知らぬ者はいない。彼は新潟県の小さな町で生まれ、167cmという日本のバスケットボール界では小柄な体格にもかかわらず、その存在感は巨大だ。彼が持つスピード、高確率のシュート、そして何よりも強い意志は、常に彼をトップへと導いてきた。※トップ画像:撮影 / 軍記ひろし

Icon       池田 鉄平 | 2024/06/04

小さな巨人の軌跡、逆境を越えて


プロキャリアのスタートは2012年、まだ19歳の時だった。Bリーグ・千葉ジェッツふなばしに所属する彼は、その年、新人賞を獲得し、早くも注目の的となった。その後、NBAチームとの契約を果たし、世界の舞台でもその才能を証明してみせた。彼のプレイは観る者を魅了し、多くのファンを虜にしてきた。

しかし、彼の物語はただの成功の連続ではない。富樫は挑戦と逆境の連続だった。小柄な体格は、バスケットボール選手としては明らかなハンディキャップ。しかし、彼はそのサイズを武器に変えた。低い重心と俊敏な動きは、対戦相手を翻弄し、彼を特別な存在にした。

可能性が1%だったとしても、勝利を引き出す実力が今の代表にはある

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撮影 / 軍記ひろし
2023年のFIBAバスケットボールワールドカップでは、日本代表チームのキャプテンとして、彼は新たな歴史を刻んだ。日本代表は48年ぶりに自力で五輪出場権を獲得し、その瞬間、彼の胸に溢れたのは言葉にできない喜びだった。「僕個人のことは置いておいて、日本のバスケットボール界にとって五輪に出続けることは非常に意味のあることだと思っていました。」と語るその言葉には、彼の深い責任感と誇りが溢れていた。

長い合宿期間中、彼は仲間との絆を深めた。「ごはんも基本は選手たちと。僕はほぼ毎日(渡邊)雄太と外食していたんですけど、そこに比江島(慎)や原(修太)、馬場(雄大)がたまにやってきたり、若手の河村(勇輝)や富永(啓生)を連れて行ったり…」と語るその姿には、チームリーダーとしての彼の一面が見える。オフの時間でも、自然とチームを引っ張っていた。

「たとえ可能性が1%だったとしても、勝利を引き出す実力が今の代表にはある」と語る富樫の言葉には、確固たる自信がある。それは、ワールドカップでの3勝という実績に裏打ちされたものだ。彼は次のパリ五輪を見据え、さらなる高みを目指している。「まずはトップ10に入っているチームをひとつ倒して、世界を変えていきたい。」その言葉には、彼の揺るぎない決意が感じられる。

富樫は、試合でどんな大きな選手を前にしても臆することなく挑む。撮影クルーが密着したとき、その冷静な姿に驚かされた。「いちばん大事なのはメンタルを保つことだと思うんです。」と彼は語る。技術だけではなく、強いメンタルが彼のプレイを支えている。

挑戦の火を絶やさない小さな巨人、未来への視線

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撮影 / 軍記ひろし
バスケットボール界では、今年31歳となった富樫はベテランと呼ばれる年齢に達した。しかし、その挑戦心は衰えを知らない。「僕がちょうどプロ選手になった頃は五輪に出ることなんて想像しなかった。この10年あまりの日本バスケの成長は選手としてすごくうれしい。それをもっと続けられるように、良い結果をパリで残したい。」と語る彼の眼差しは、未来を見据えている。

富樫勇樹のトレーニング風景は、その強靭なメンタルと鍛え抜かれた身体の象徴だ。彼の一日を追うと、朝早くから始まるトレーニングは、決して楽なものではない。彼の体は167cmと小柄だが、その筋肉はしなやかであり、瞬発力と持久力を兼ね備えている。

「毎日のトレーニングは自分を信じるための基盤です」と富樫は語る。彼の練習は、シュート練習やドリブルの反復だけでなく、メンタルトレーニングも重視している。バスケットボールは肉体だけでなく精神のスポーツでもある。試合中のプレッシャーに打ち勝つために、富樫は瞑想やイメージトレーニングを取り入れている。「どんなに厳しい状況でも、自分が成功する姿を思い描くことが大切なんです。」

その成果は、試合での冷静なプレイに現れている。彼はコート上で常に落ち着いており、どんなプレッシャーの中でも自分を見失わない。「バスケットボールはチームスポーツなので、仮に自分が悪かったとしても自分ひとりのせいで負けたとは思わない。それはメンバーに対しても同じです。」彼の言葉には、チームへの信頼と自分への責任感が滲み出ている。

パリ五輪で、再び奇跡を起こすための取り組み

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撮影 / タケダユタカ
パリ五輪に向けて、富樫はさらなる高みを目指している。その一環として、彼はBリーグの同じチームでプレイする若手選手、金近廉の成長を支援している。「今個人的に期待しているのは金近選手。W杯ではギリギリで代表メンバーから外れてしまい、悔しい思いをしているのを知っているので、ミスを恐れずにトライして欲しいと全力で伝えています。」富樫は自身の経験をもとに、次世代の選手たちを導くことにも力を注いでいる。

その姿勢は、若手選手たちにも大きな影響を与えている。「富樫さんは、どんな時でも前向きで、僕たちに自信を与えてくれる存在です。」と語るのは、同じく代表チームの一員である河村勇輝だ。富樫のリーダーシップとメンタルの強さは、若手選手たちにとって大きな手本となっている。

激動のワールドカップが終わった後、彼はアメリカでNBAを観戦し、その様子をSNSにアップした。八村塁からも「よかったね」と声をかけられた。「W杯の盛り上がりを見て、次の五輪はなんとしても出たいと強く思っている選手はたくさんいる。」その言葉には、彼自身の情熱とともに、チーム全体の士気を高める意図が感じられる。

富樫は、今もなお進化し続ける。「Bリーグができて注目度が増し、選手のモチベーションも上がってより高いレベルで競い合えている。それが、日本代表の強化にも直結する『いい循環』になっているのかなと思う。」彼は日本バスケットボール界全体の成長を見守り、その一翼を担っている。

「僕がちょうどプロ選手になった頃は五輪に出ることなんて想像しなかった。この10年あまりの日本バスケの成長は選手としてすごくうれしい。それをもっと続けられるように、良い結果をパリで残したい。」彼の言葉には、未来への希望と揺るぎない決意が感じられる。

富樫勇樹の物語はまだ続く。パリ五輪という新たな舞台で、彼は再び奇跡を起こすだろう。その背中には、日本バスケットボール界の希望と未来が託されている。彼の挑戦は、これからも多くの人々に勇気と感動を与え続けるに違いない。