男女混合手打ち野球「Baseball5」とは?スーパーバイザーに斎藤佑樹氏「革命起こせる新競技」
「必要なものはボール1個」が特徴の手打ち野球Baseball5で、第2回日本選手権が開催された。このほどBaseball5スーパーバイザーに就任した斎藤佑樹氏が始打式に登場し、会場を沸かせた。 日本代表がワールドカップで2回連続準優勝という好成績を残している新競技。昨年は日本代表が「侍ジャパン」に仲間入りし、今回の日本選手権も「侍ジャパンチャレンジカップ」と称している。
Baseball5日本選手権への積極的な姿勢
ライトグレーのスーツに身を包んだ斎藤佑樹氏がアリーナに登場すると、その場が歓迎ムード一色となった。斎藤氏は挨拶を終えると打席に進み、始球式ならぬ「始打式」に臨んだ。
投手のいないBaseball5では、自分の“トス”を素手で打つ。外野はなく内野のみ。
普通ならば守備につくのは5人だが、齋藤氏の始打式には我も我もと10人以上も守備につき、あっけなく内野ゴロとなった。それが悔しかったのか、異例の「もう1回」を要望し、再度打席に立った斎藤氏。
ヒットを打つのは難しかったようだが、その後参加全選手とともに笑顔で写真に収まった。
スーパーバイザー就任会見で斎藤氏は、自身が北海道に建設中の新球場にBaseball5用のフィールドを作っていると明かした。全日本野球協会の山中正竹会長が「これから広報に力を入れていきたい」という新競技の普及に向けて、願ってもない強力な味方が加わった。
「最初はアンバサダーというお話をいただきましたが、広告塔として発信するだけでなく、自身が意見を出し、場所作りやコミュニティ作りなどを、協会の方たちと話し合いながら作っていきたい。それで『スーパーバイザー』という役割にしていただきました」
Baseball5スーパーバイザーとしての名刺の裏には、Baseball5のフィールド図を入れる“凝り”よう”だ。試合が始まってからも、斉藤氏は二つのコートサイドを歩き回り、18歳以下のユースと一般のオープン両方の試合を熱心に視察した。時には望遠レンズ付きのカメラを構え、あるいは自らのスマホを手に撮影するなど、積極的な姿勢を見せていた。
2017年生まれの新競技「Baseball5」とは
Baseball5の大きな特徴は、バットもグローブも使わない手打ち野球であること、そして男女混合の5人制であることだ。2017年に世界野球・ソフトボール連盟(WBSC)が野球・ソフトボール競技の振興のために採用し、普及に努めている。現在では70ヶ国以上の国でプレーされているアーバン(都市型)スポーツだ。
日本選手権の会場では前回に続いてDJがクラブ音楽を流し、スタジアムDJが生実況。野球とは違うエンタメ空間を演出する。
国際大会としては2021年に第1回、2024年に第2回ワールドカップが開かれ、日本代表はいずれもキューバに次ぐ準優勝を勝ち取った。その間アジアカップも開催され、2024年に日本はアジアチャンピオンに輝いている。
野球のように大がかりな設備や道具を必要せず、世界大会へのハードルが低いだけに、率先して力を入れる国が続々と出てきている。
12/31付WBSC世界ランキングで日本はキューバ、台湾、フランスに次ぐ4位。世界一への道は近いようでなかなか険しい。世界で勝っていくには技術もパワーも必要で、発展途上ながら奥が深い競技だ。
野球の裾野を広げると同時に、世界へ羽ばたける競技
斎藤氏とBaseball5の出会いは2023年だった。斎藤氏が出身である群馬県で「球都桐生」プロジェクトのアドバイザーとして参加。公園でのイベントで子どもたちと一緒にBaseball5を体験した。
ゴムのボールを自分でトスして素手で打つ。子どもからお年寄りまで狭い場所でも気軽に楽しめるスポーツとして、Baseball5は大きく広がる可能性を持っている。
こうした「入口」の役割の一方で、日本代表選手が身近にいて指導を受けることができ、多くの人に世界への可能性があるのもこの競技の特徴だ。まだ2回目だが、日本選手権は各代表選手がそれぞれのチームを率いて戦う、日本最高レベルの頂上決戦なのだ。
ユースの部には有名校の高校球児も参戦
1月13日にアリーナ立川立飛で行われた「侍ジャパンチャレンジカップ 第2回Baseball5日本選手権」では、オープンの部、ユースの部それぞれで予選を勝ち抜いた8チームがしのぎを削った。5イニング制で2セット先取。一日の大会で決勝までの14試合すべてを行う。
オープンの部では5STARsが昨年優勝のジャンク5を初戦で破り、決勝ではGIANTSとの激闘の末初優勝した。
初優勝した5STARsは日本代表でもある六角彩子が立ち上げたチーム
ユースの部では、横浜隼人高校チームの一つである「横浜隼人Agressive」が優勝。ユースでは現役高校球児たちが参加しているのも大きなポイントだ。参加チームには横浜隼人、市立船橋、日大二&中京大中京と錚々たる学校名が並んでいる。
「Baseball5は、新たなスポーツとして革命を起こせると確信しています。この日本選手権に現役の高校球児が出場できることは、日本の野球界がすごく大きな一歩を踏み出したと感じています。今まで他競技に参加するということが良しとされなかった中でまずそこをクリアできた」
自身が高校野球に打ち込み、今は取材する立場となって高校球児の身近にいる斎藤氏。自由に躍動する高校生たちに向ける目は温かかった。
Baseball5は2026年ユースオリンピックの正式競技として取り入れられることが決まっており、2025年はユースアジアカップ、ユースワールドカップが予定されている。今回の大会を通じて代表選考も行われる。日本でもアンダー世代への普及・強化が求められていくだろう。
Baseball5用のフィールド作りに着手、いずれは選手としても?
日本選手権後すぐに、斎藤氏は「野球場にベースボール5のフィールドをつくる」というタイトルで公式YouTubeを更新した。北海道に手作りで建設途中の野球場にBaseball5用のスペースを加える作業。自ら草刈り機を手に悪戦苦闘する姿には本気度が窺えた。
会見では自作のフィールドについて「実際に見たらショボいと思われるでしょうけど」と前置きした上で、「東京にも作れるかもしれないし、その手軽さも含めてこの競技の可能性だと思います」と笑顔を見せた。
「自身がプレイする可能性」を問われた際には「あると思います」と答えた。
老若男女が楽しめるスポーツだけに、いずれ斎藤氏本人がプレイしたり、自らのチームを持ったりする夢も広がる。
多くのチームが集まる大会はまだ少ないだけに、いつか「斎藤佑樹杯」が生まれることもあるかもしれない。ファンにとっても楽しみが増えた。