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カトリエの「マイ・ファースト・スパイク」第7回 柳楽雅幸(台湾女子代表監督)Vol.2 「みんなでお金を集めて、チームの用具を買う!?」

台湾女子代表監督の柳楽雅幸さんに、「30年前の日本のようだ」という、台湾サッカーの環境について伺います。チームに入って早々、柳楽さん自らお金を集め、用具を揃える所から取り組んだそうです。(加藤理恵)

Icon kinggear icon KING GEAR編集部 | 2017/03/31
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加藤:台湾女子代表の選手は、どんなメーカーのスパイクを履いていますか?

柳楽:いまはナイキが多いかな。ナイキ、アディダス、アシックス…。そういえば、台湾の女子リーグである代表選手が、ナイキのくるぶしまであるスパイクを履こうとしたら、レフェリーがダメだって言ったんですよ。

加藤:え!? でも、あれって他の国ではみんな履いていますよね。

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柳楽:スパイクの足首の部分とストッキングの境目の色が違うからという、おかしな理由で。その後、結局OKにはなったんですけど。

加藤:選手たちはどういった視点でスパイクを選ぶのでしょうか。

柳楽:おそらく、デザインかな(笑)

マネージャー:台湾ではナイキとアディダス以外は、入手しにくいというのもあります。

柳楽:ちなみに彼はスパイクマニアで、あれは何年もののスパイクだとかいつも言っているんですよ(笑)

加藤:へぇ~! いま台湾代表選手の中で人気のスパイクは何ですか?

マネージャー:アディダスでは『エックス』シリーズと『ステラパック』シリーズ。ナイキはバラバラですね。『マーキュリアル』とか。

加藤:GKグローブは?

マネージャー:日本から持ってきた、イングランドのメーカーのセルスです。

柳楽:手袋に関しては日本人のGKコーチがいるので、彼が日本で用意して持ってきてくれたものを使わせてもらったりしています。

加藤: GKグローブを台湾で入手するのは難しいのですか? マネージャー:こだわらなければあります。でも、そもそもサッカー用品店がないですから。

柳楽:指導し始めて感じましたが、用具が不足していますね。台湾にもサッカーメーカーはありますが、良い物はなかなかないですし。

アディダス、ナイキ、プーマ、ミズノ、アシックスも一応は売っていますが、種類も数も少なくて、型も少し前の物だったり。なので、選手はインターネットで買ったり、日本に遠征に行った時に買ってきたりしています。

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加藤:代表選手であっても、用具を揃えるのに一苦労なんですね…。

柳楽:そう。特に『ピステ』というナイロン生地でできている、ちょっと寒くなった時に着る物なんかは台湾にないんです。あと、僕が代表チームに入った時、選手は取替え式のスパイクを履く習慣がなくて、持っていませんでした。

雨が降っていても普段使っているスパイクを平気で履いている。だから、まず選手達にスパイクを買いました。僕達でお金を集めて、日本に行って取り寄せて。取替のスパイクを。

加藤:わぁ、お金集めから…。そこまでしても道具が必要だ、大事だと思ったんですね?

柳楽:もちろん。選手には「遠征に行く時は、最低でもスパイク2足は持って来い」って言っています。彼女たちはいままでそういう習慣がなかったから。ユニフォームにしても1着しか作らない。だから、雨の日の試合でビチョビチョになったユニフォームを、ハーフタイムに絞ってまた着て、後半に臨むんです。

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加藤:えー!! そんな状況なんですか。ちなみにユニフォームのメーカーはどこですか?

柳楽:台湾のトアスタというメーカーです。これがね、良くないのよ~(笑)。サイズもバラバラで縮むし、チャックもすぐ壊れちゃう。

加藤:道具をきちんと準備する大切さは痛感しますか?

柳楽:ちゃんとサッカーをするために、我々は選手に「良い準備をしろ」と言うじゃないですか。良い準備とは、用具やスパイク、着るものからしっかりすることだと思うんです。そうじゃないと、自分のプレーが100%の力で出せないし、それは当たり前の事だと僕は思っています。

加藤:用具の準備は、ちゃんとウォーミングアップをすることと同じくらい大切なんですね。

柳楽:だって、スパイクがなければ試合はできませんから。僕は練習の時から、試合と同じ環境、条件で練習しようと、レガース(すね当て)をつけさせています。それはもう染み付いて、必ずするようになりました。道具も含めてのパフォーマンスだと思います。

加藤:代表選手でその感じだと、30年後の台湾のために子供たちの育成に力を入れたくても、道具を揃えるのが大変なんじゃないですか? マネージャー:それが、子供用の用具は意外と多いんですよ。アディダスやナイキの物が入ってきています。むしろ子供の商品の方が、多い事もあります。

加藤:へぇ! では子供達がサッカーをする環境は、それなりに整っているのでしょうか?

柳楽:決して良くはないと思いますけど、サッカースクールもだいぶ増えて来たみたいですし、親も一緒になって積極的にやるようになっています。台湾の子供達、良いスパイクを履いているんですよ!

加藤:ナイキやアディダスの?

柳楽:そうですね。もちろん子供ですから、トレシューのようなソールがイボイボのシューズから買うんですけれど。ただ中学校や高校に行くと、サッカー人口が減っていくんですよね…。要するに、選手の受け皿がないんです。

加藤:サッカーを続けたくても、できる環境がないんですね。

柳楽:台湾の高校で、今年の大会に参加した女子サッカー部は4校しかありません。大学も4校。部活以外でやれるクラブもない。そして、指導者の問題もあります。あとは韓国にちょっと似ているんだけど、女子がサッカーをしてもしょうがないとか、教育の考え方の問題もありますね。

加藤:サッカーを続ける未来図が描きにくい、人々の生活に浸透していないということでしょうか?

柳楽:例えば日本の体育では、水泳やバスケット、サッカー、色んな競技をやりますよね?でも台湾の場合、学校体育にサッカーが入っていないんです。だからいま、日本でいう文部省とサッカーを体育に入れましょうと話をしています。でも、なぜすぐにそれが出来ないかと言うと、学校の先生がサッカーを知らないから。

加藤:先生たちもサッカーをしたことがなく、学ぶ機会もなかったんですね。

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柳楽:もし学校体育にサッカーが入って、サッカーの楽しさを知る機会が増えていけばもっと変わっていくし、彼らが大人になった時に、サッカーに携わって、楽しさを広めていく人が増えると思うんです。

加藤:まずは身近に、気軽にやれるスポーツとして感じてもらいたいですよね。



<Vol.3に続く>  4月3日公開予定

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