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侍ジャパンを支える男が語るギア「準備が命の仕事」

WBCが幕を閉じ、いよいよ本日にプロ野球が開幕!準決勝のアメリカ戦から帰国した杉本さんに大会を振り返って頂いた。また「野球のギアは進化しているのか?」など知られざる話も伺った。

Icon 16466945 810048175800857 1247399717 n 菊池 康平 | 2017/03/31
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――WBCはお疲れ様でした。手に汗を握りテレビの前で応援していました。アメリカに負けた時は大きな喪失感でしばしの間、身体に力が入らない時間がありました。杉本さんは当事者ですので物凄く悔しい思いをされたと思いますが、今回のWBCを振り返り感じることを教えてください。  


杉本  準決勝は本当にしびれました。一発勝負、負けたら終わりだったので。 8回裏、筒香選手のライトフライのときはベンチ裏にいましたが全員が「行ったー!」 と大声で叫びました。  

東京からアリゾナへ移動し、アリゾナではリラックスした雰囲気で練習していましたが、ロスに移動してからはチーム内にも独特の緊張感があったような気がします。

結果は残念でしたが、これだけのトップ選手が集まりその選手が本当に極限の緊張感や状態で試合をしている姿を近くで見させて頂き本当に感動しました。
 

チームスタッフとして帯同させて頂き、1球に対してここまで一喜一憂しながら野球を見る経験はなかなか味わえないと思うので本当に良い経験をさせて頂いたと思っています。    

――振り返り頂きありがとうございます!用具の話に戻りますね。言いにくいかもしれないですけれど、用具係として失敗したエピソードや教訓を得たエピソードなどありますか?  

杉本 失敗は数え切れないほどあります(笑)  

――そうなんですか!  

杉本 選手のユニフォームが大きすぎたり逆にパンパンで小さかったり。 ただ出来る限りその様なミスがないように心がけています。 ユニフォームに限らず、何か選手が実際のプレーに支障をきたすような大きいミスは自分ではないと思っています。  

――準備に準備を重ねてミスを事前に防いでいるのですね?
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杉本 そうですね。準備が命だと思っています。今回のWBCは2月22日に宮崎に集合でしたので、その日に向けてもう何ヶ月も前から準備して用具やアパレルを発注していました。  

何かあった時の事を想定して準備はしてきたつもりなので、今回も大きな問題はなかったと思っています。 ただ途中で選手の入れ替えが発生するアクシデントがあり、代わりの選手が合流する日まで数日しかありませんでした。  

運よく何とか間に合わすことが出来たので本当に胸をなでおろしました。 特にユニフォームはなければ試合に出れませんからね。  

――続いて用具についての質問ですが、例えばサッカーのスパイクはこの10年間で凄くカラフルになったり、余分なものを削ぎ落として、どんどん軽くなったりと色々な面で進化してきました。野球のギアに関しての進化やトレンドなどあったら教えてください。  

杉本 正直バットや、グラブっていうのはそんなに変わってないと思います。 バットは木材で作るものなので、材と形と重量の問題しか基本的にはないんです。 その為、バットに関してはこれから新しい物が入ってくるっていうのはちょっと考えにくいと思います。  

――これまでの歴史を振り返ってもなかなか変化はしそうもないですね。  

杉本 野球ってやっぱり歴史があるものですので。  

――杉本さんがこれまで販促をやられてきたなかで、バットの形やグリップの変化など何か気付いた点はありますか?  

杉本 基本的には長距離バッターはヘッドの効いたバット、中距離バッターはカウンターバランスのバットを使用しています。  

私はプロ球団を9年間担当させて頂きましたが、バットとグラブは正直そんなに変わってないと思います。  

スパイクに関してはもちろん9年前に比べるとかなり軽量化されていると思います。ラスト(足型)の改良は定期的に行っています。野球のギア(グラブ、バット、スパイク)の中で1番進化しているのがスパイクですかね!  

――選手はスパイクのどの点にこだわりをみせるんですか? 例えば、走塁時のダッシュや守備のはじめの一歩の瞬発力にこだわるとか。それともバッティングの時のグリップ力の踏ん張りにこだわりをみせるなど色々あるじゃないですか。
 
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杉本 選手が1番こだわっていることにスパイクを合わせていますね。

例えば走塁だったら「出来る限り軽くしてほしい」というリクエストがきますし、
ピッチャーだったら「重量ではなくて、より安定したスパイクがほしい」とリクエストがきます。

バッターだったらバッターボックスに立った時にできる限りフラットな感じで立ちたいというようなリクエストなどありますね。  

――ポジションによってそれぞれ違うんですね。  

杉本 本当に選手それぞれこだわる所が違います。ただ共通している点は疲労度などを考えるとやはり軽いスパイクを履きたいと思っている選手が多いと思います。

ただ100Kgくらいある選手が軽いスパイクを履くと、逆に足への負担が大きくなりすぎることがあるので、重量がある選手に関しては、そんなに軽くないスパイクを履いているケースが多いと思います。  

――試合中にバッティングの時と守備の時にスパイクを履き替える選手はいますか?  

杉本 今は減ってきましたけどいますね。球場によって替えたりします。甲子園と東京ドームだったら、土と人工芝なので、スパイクを変える選手もいます。  

――ヨーロッパ組のサッカー選手に話を聞くと、日本に帰国したら固定式で、向こうだとミックスソールでプレーしているみたいです。  

杉本 ピッチによって替えてるんですね。今は人工芝の球場が多いですが共通しているのはバッターボックスとマウンドは土なんです。

野手は甲子園だったらずっと金具のスパイクでプレーしたり、東京ドームだったら打席の時は金具でプレーし、守備の時はプラスチックのポイントのスパイクを使います。

それこそサッカーの固定式のスパイクに近いですね。球場によっても変わってくるっていうことです。
 

――例えばサッカーでは派手な赤とかオレンジのカラーや、左右違うカラーのスパイクを履いている選手も多いのですが、色でアピールしている選手などはいるんですか?  

杉本 プロ野球の場合は12球団とも球団ごとにカラーが指定されています。ですから、あまり一人だけ派手なスパイクを履くといったことはないです。  

――だから新庄剛志(元選手)さんはリストバンドだけを派手にしたりしていたんですね!  

杉本 日本の野球の用具に関してのルールは厳しいと思います。グラブのカラーにしてもスパイクのカラーにしても。今はリストバンドの使用できるカラーも決まっています。「ラインは両サイドに1本まで」とか本当に細かく決まっています。  

――それは日本代表の活動においてもですか?  

杉本 もちろんそのままNPBのルールに準じている状況です。スパイクだったらネイビーをベースに、メーカーラインはシルバー、あとゴールドやレッドの配色を少し入れて良いよ!みたいな感じです。

ミズノもそれに準じて本体はネイビー、ランバードマークはシルバー、ステッチはレッドにしました。  

――自由なのは唯一手袋くらいですかね?  

杉本 そうですね、手袋は自由です。  

――手袋が唯一選手の個性が発揮できる場所なんですね。  

杉本 そうですね…。まぁ、代表の場とオールスターの場は違うんですよね。オールスターの場合はいかに派手に目立つかが大事な側面もあります。  

代表の場合はちょっと目立ちたいとか、そういうのは正直そんなにないと思います。やはり国を背負って戦うので、目立ちたいというよりもシーズン用のままで少しカラーをチェンジしているくらいの選手が多いです。  

オールスターは華やかな場でもあるので、私達もオールスターの時は派手目なものを用意します。  

――サッカーの場合はワールドカップですと、選手はアピールしようと金髪にしたりとか 赤髪にしたりする選手もいましたが、野球の場合はそのような色の髪の選手はいないですよね。これはなぜですか?  

杉本 サッカーと野球はやはり違うんですね。何が違うのかわかりませんが、やはり伝統なのかなって思います。サッカーはサッカーの良さがあって、野球は野球の古き良き伝統っていうのがあって、それぞれの良さがあって良いんじゃないですか  

――せっかくなので、ミズノ商品の野球ギアの話をちょっと聞きたいのですが、他ブランドにはない強みを教えてください。

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杉本 まずはクラフトマンの技術が挙げられます。また弊社にはグラブ、バット、スパイクの自社工場があります。そこが他社との違いだと思います。  

すべて細かく指示も出来ますし、選手に言われた事をそのまま工場に伝えられる事に繋がりますので間に入る人数が少なくなります。
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出来る限り選手と工場が直接やりとりすることで1
番選手が望む物が出来ると思うので、そこの距離感が近いのがミズノの強みだと思いますね。
それに加えてクラフトマンの技術も素晴らしいものがありますので。  

――最後の質問なんですが、杉本さんの今後の目標と杉本さんのように深く野球に関わりたい学生などが沢山いると思うので、そういう方々にメッセージをお願いします。  

杉本   今後のビジョンで言うと私の場合は今回のWBCで侍ジャパンの担当は最後だと思うので 次の担当者に今回体験したことを伝えていくことが私の大事な仕事だと思います。

またプロ野球やアマチュア野球に携わる部署にいるので、プロ野球の担当者が抱えている問題などを一緒に解決したり、社会人、大学、高校などを今後は担当することになるのでそこで結果を残せるように頑張りたいと思います。    

メッセージを言えるような立場ではありませんが、私の場合はビジョンだけは昔から ハッキリしていました。中学生の時にプロ野球選手がダメだったらミズノに入りたいって決めたんです。

中学の時、神戸からミズノが好きでよく淀屋橋にあるミズノ淀屋橋店に通っていました。そこで接客してもらった方がすごくいい人で。プロがだめだったらミズノに入りたいなって。

もちろん大学までプロ野球選手を目指して野球をしてきました。 自分の実力では無理だとプロ野球を諦めた時に自然にミズノでプロ野球の仕事をしたいという目標になりました。  

私の場合は本当に運が良いんです。希望した会社に入れて、プロ野球の仕事をしたいって想い続けたら3年目に叶い、9年間プロ野球の仕事をしながらいつかはやりたい!と思っていた全日本(侍ジャパン)の担当が出来て。 本当に恵まれてるなって思います。 もちろん人一倍「やりたい!」っていう想いは上司に伝えてきました。

  ――その強い想いがやりたいことを引き寄せてきたんですね。  

杉本 そうですね。想わないと叶わないと思うので。 あとは本当に野球が好きなんでしょうね。  

――叶えたいことを想い続け伝えることが大事ですね。 WBCの最中にお時間を頂きまして本当にありがとうございました!(了)


取材協力/ミズノ株式会社

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