最速タイムへと導くランニングシューズ『New Balance HANZO』vol.1「日本人が勝つためのレーシングシューズを」
ニューバランス ジャパン(株式会社ニューバランス ジャパン:代表取締役社長 冨田智夫)が、日本人ランナーが記録を更新し他のランナーから勝利を奪い取るために生み出したマラソンシューズ『HANZO(ハンゾー)』シリーズ。その企画開発担当者で、ニューバランス ジャパンが誇る武田氏に、誕生エピソードについて語っていただいた。
佐久間秀実
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2017/12/21
――まずは、「ハンゾー」の誕生話からお聞かせいただけますか。
武田:ニューバランス社内にある目標の1つに、ランニングでベストブランドになるということがあります。ランニングに関して考えた時に、オリンピックに出場する選手から日々のダイエットや健康管理をするような様々なランナー達が純粋に、「ニューバランスのランニングシューズを1足買いたい!」と言ってくれることがベストなゴールだと思っています。
ニューバランスは、ランニングカテゴリーを最も注力していますが、フルマラソンのランナーピラミッドで言うと完走レベルの所に最も強い状況にあり、完走、サブ5、サブ4、サブ3と言うようにボトムアップ戦略で商品構成をしてきました。
ランニングシューズ作りを始めた頃は、全体のシェアが6、7%で、徐々に10%に近い所まで伸びてきましたが、そこから頭打ちとなって一向に伸びなくなりました。そこで、マラソンランナーの意見調査や実際の使用率を見てみると、サブ4を境にガクンとニューバランスのシェアが落ちていることが分かりました。
――それから、どうされましたか。
武田:結局、シリアス層はトップのエリートランナーを見ていて、その人達が履いているという信頼感を基にマラソンシューズを選んでいます。故に、トップでのシェアが上がらないと、ニューバランスとして描いているベストランニングブランドにはなれないという危機感がありましたね。
まず、日本人が勝つためのレーシングシューズを作ろうというところが1つあります。そして、もう1つは、ここ最近のレーシングシューズカテゴリーは世の中に新しいものが出てきていない状況なので、マーケットに対してカンフル剤となる新しいものを提案することで活性化したいということもあります。それら2つの理由により開発することになりましたね。
ニューバランスは、本社があるボストンに開発デザイン機関があり日本国内にもデザインとデベロップメントの機関があるので、日本国内で企画をして自分達で絵を描いたり物を作ることができるユニークな環境がある会社でもあります。
――日本人に向けた足型のシューズは、外国の方の足に合うのでしょうか。
武田:実際、ボストンの研究機関である「Sports Research Lab」のメンバーが来日して、日本人のエリートランナーの足型を3Dスキャナーで測定したり、走るフォームやどこで足を接地しているかというのも見ました。よく日本人は足幅が広いと言われていますが、きちんと検証してみると本当に幅広ということも再確認できました。
欧米のランナーは人差し指が結構長めで少し尖がったような足型をしていますが、日本人は親指から小指までの傾いている角度がフラット気味でして、四角い感じの足型をしている人が多く幅が広い傾向にあります。踵に関しては、欧米のランナーとあまり変わらなく、踵を従来通りとして前足部が広いという日本とアジアのランナーが対象になるようなラスト(木型)に合わせて1代目を作りました。
アメリカで「ハンゾー」シリーズに興味があるランナーが多いです。足入れをして合う人がいればそうでない人もいますが、例えば、女子1500m世界チャンピオンの選手やトライアスロンで優勝したドイツ人選手もハンゾーを履いています。
――物凄くカッコイイですよね。
武田:ありがとうございます。忍者ロゴが外人ランナーには刺さりますよね。
元々、ニューバランスにはトラックスパイクもあり、そのテーマがサイレントハンターと言いまして、日々黙々とトレーニングを積んだ人が最後に大物を狩る、勝利するというのを1つのストーリーにしている中で、アメリカのトラックスパイクは実際に隼がデザインのモチーフとなっていました。
アメリカの工場の近くに隼が良く飛んできたりして社員からは身近な存在で、隼は鳥の中でかなり速くて獲物を狩る瞬間までジーッと待って最後に狩るというのが、トラック競技の選手達が勝っている姿とイコールになるということがありました。
日本人ランナー向けのサイレントハンターを考えた時に、速く走って物音を立てなくて最後に大きな仕事をするのは「忍者しかいない!」と思いました。
――デザインについて教えていただけますか。
武田:ミッドソールも手裏剣や刀の切っ先等で切った感じのエッジの効いたデザインで構成されています。アウトソールも手裏剣ぽくしています。コンクリートに引っ掛るニューバランス独自のダイナライドと言う素材のアウトソールとなっています。
こちらをカットしていくのですが、「ハンゾー」は勝つためのシューズなので、速く走ってもらうためには反発力が必要でして、ベースがプラスチックの上に特殊素材のラバーを圧着し1歩1歩力を加えて曲げると戻るので、その戻る力を前足部の蹴り出しの所に持ってくると蹴り出しの際にシューズの返りが良くなります。
――「HANZO S」の特長を教えていただけますか。
武田:これは1番エリート向けのモデルとなります。箱根駅伝や実業団の選手、マラソン2時間台から表彰台までをカバーするものになっています。1秒1分を縮める所にこだわっていますね。
ダイナライドというものを搭載したミッドソールは、ニューバランスの中で1番軽量のレブライトと言う素材と、前足部にラピッドリバウンドと言うニューバランスの中で最も反発する素材を組み合わせたことにより、軽量性と反発性を兼ね備えており、次のフォワードモーションをサポートしてくれます。
実際、このような感じで作っていまして、日本人ランナーはストライドを大きくとって踵からがんがん接地するというよりは、歩幅が小さくて真ん中から前の方で素早く接地して抜けるという傾向が多いので、最も踏み付け時に反発性が必要な真ん中から前の所にラピッドリバウンドと言う素材を搭載しています。
全体的に軽量にしなければならないというのが靴づくりの中で難しく、削れば軽くなりますが、トップランナーの足をしっかりホールドしてあげなければならないので、「ハンゾーS」に関しては全面メッシュですが、メルトメッシュと言う軽量素材を使用しています。
vol.2へ続く。
『New Balance HANZO』
http://www.newbalance.co.jp/running/nb_hanzo/
取材協力/株式会社ニューバランス ジャパン
写真提供/株式会社ニューバランス ジャパン
取材写真/佐久間秀実