苦悩のその先へ。2度の五輪を経験した西岡詩穂の新たなる挑戦Vol.3「チームでメダルを獲りたい」
若い世代の台頭が著しい日本のフェンシング界において、過去2大会連続で五輪に出場し豊富な経験を持つ女子フルーレのエース、西岡詩穂。第一話ではフェンシングを始めたきっかけやその魅力を、第二話では、フェンシングの競技特性や、ご自身のフェンシングスタイルを語ってもらった。第三話では、2020年に向けて、今取り組んでいることや東京への決意を語ってもらった。
瀬川 泰祐(せがわたいすけ)
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2018/05/16
東京に向けて、いま取り組んでいることはありますか?
実は、いま、自分のフェンシング技術をもう一度作り直してみようと思い、取り組み始めたばかりなんです。ずっと何かを変えてみたいと思っていて、コーチも同じように考えていたようなので。もしかしたらフェンシングスタイル自体を大きく変えるかもしれないです。あとはメンタル面ですね。今は、自分のことはもちろんですが、チームのことも考えなくてはいけないので、考えすぎて溜め込まないように、吐き出す場を作るという意味も兼ねて、メンタル面のアドバイスを受けてみようかなと思っています。
この時期にフェンシングを変えるというのは勇気がいることでは?
オリンピックまであと2年という時にフェンシングを変えるって、なかなか無謀なことだと思うんですけど、でも、そこまでしても変えたいっていう気持ちが出てきてしまっているので、その気持ちにとことん付き合って、変えていきたいなと思っています。昨年末に行われた全日本選手権では、変えたいという気持ちを持ったまま、迷いが出てしまっていた大会でしたね。
今まで培ってきたものを一旦捨てて再構築するというのは、大きな苦しみが伴うと思いますが、その覚悟はもうできていると?
そうですね。むしろ苦しみしかないんじゃないかって思うんですけど、それを乗り越えて物にすることができれば、東京オリンピックでもメダルを取ることができるんじゃないかって信じています。
キングギアは道具をフォーカスする媒体でもあるのですが、道具へのこだわりは何かありますか?
さっきの話と被るんですけど、まさにちょうど今、道具も変えようかと悩んでいるところなんですよ。グリップや剣の重さや硬さも変えてみようかと。持った時に重く感じる方がいいか、軽いと感じるくらいの方がいいか、柔らかい方がいいか硬い方がいいかといった剣の感覚は、個人個人で全然違うと思うんですけどね。それが吉と出るか凶と出るかは、やってみないとわかりませんけどね。
いままさに自分のフェンシングを見直している最中とのことですが、目標とする選手や憧れの方はいますか?
うーん、目標とは違うんですけど、リオ五輪が終わって引退されたイタリアの選手で、オリンピックで4大会メダルを取り続けたベッツァーリ選手という方がいて、私がフェンシングを始めたばかりの頃に、その選手が世界大会でドイツの選手と一本勝負をする映像をみたんです。その試合でベッツァーリ選手がみせた一本に対する気迫が、命を賭けているんじゃないかって思うくらい凄くて、“フェンシングってこういう競技なんだ”っていうのを初めて感じました。またその時に“私も光る大ピストの上でこういう試合をやりたい”って初めて心から思ったことを覚えています。
では西岡選手は試合中は、声を出して気迫を前面に出すのですか?
そんなことないんですよ(笑)。団体戦だと声が出るんですけど、個人戦になると内に秘めるタイプになってしまうらしく。自分でもよく分からないんですけど、コーチから、そう言われています(笑)。
これから東京に向けて苦しい時期が続くと思いますが、カギになる人は?
そうですね、家族ですかね。家族とは年に1回か2回しか会わないんですけど、実家に帰った時は、本当に癒しの時間です。今年の初めも家族でUSJに遊びに行ったんですけど、どれだけ私が落ち込んでても、いつもと同じように接してくれるのが一番ありがたいですね。妹とは一緒に住んでるんですが、彼女もフェンシングをずっとやってきたので、良き理解者でもあります。天真爛漫な性格なので、こっちが笑っちゃう感じ(笑)。一人でいるとずっと同じことを考えて落ち込んでしまったり、考えすぎてしまうんですけど、妹が家にいて、アホなことをされると、嫌なことも忘れられますしね。
素晴らしい家族愛ですね。そんな支えがあっての競技人生だと思いますが、今後の目標を聴かせてください。
リオでフェンシング人生が終わると思いながら、結局、2020年の東京五輪を目標にやり続けているので、今は東京でフェンシング人生を終えるつもりでやっています。東京でフェンシングを終えるならメダルを取って終わりたいし、メダルを取るんだったらチームで取りたい。ロンドン五輪で、男子フルーレが団体戦でメダルを取った時に、“”私もチームでメダルを取りたい“って思ったんです。そのためにも、まずはアジア選手権ですね。東京オリンピックに向けては、韓国や中国が一番のライバルになるので、まずはそこに絶対に勝つというのが直近の目標ですね。
2020年の東京では、新しい西岡詩穂が見れることを期待しています。
はい、頑張ります。今日はどうもありがとうございました。
取材・文・写真:瀬川泰祐
実は、いま、自分のフェンシング技術をもう一度作り直してみようと思い、取り組み始めたばかりなんです。ずっと何かを変えてみたいと思っていて、コーチも同じように考えていたようなので。もしかしたらフェンシングスタイル自体を大きく変えるかもしれないです。あとはメンタル面ですね。今は、自分のことはもちろんですが、チームのことも考えなくてはいけないので、考えすぎて溜め込まないように、吐き出す場を作るという意味も兼ねて、メンタル面のアドバイスを受けてみようかなと思っています。
この時期にフェンシングを変えるというのは勇気がいることでは?
オリンピックまであと2年という時にフェンシングを変えるって、なかなか無謀なことだと思うんですけど、でも、そこまでしても変えたいっていう気持ちが出てきてしまっているので、その気持ちにとことん付き合って、変えていきたいなと思っています。昨年末に行われた全日本選手権では、変えたいという気持ちを持ったまま、迷いが出てしまっていた大会でしたね。
今まで培ってきたものを一旦捨てて再構築するというのは、大きな苦しみが伴うと思いますが、その覚悟はもうできていると?
そうですね。むしろ苦しみしかないんじゃないかって思うんですけど、それを乗り越えて物にすることができれば、東京オリンピックでもメダルを取ることができるんじゃないかって信じています。
キングギアは道具をフォーカスする媒体でもあるのですが、道具へのこだわりは何かありますか?
さっきの話と被るんですけど、まさにちょうど今、道具も変えようかと悩んでいるところなんですよ。グリップや剣の重さや硬さも変えてみようかと。持った時に重く感じる方がいいか、軽いと感じるくらいの方がいいか、柔らかい方がいいか硬い方がいいかといった剣の感覚は、個人個人で全然違うと思うんですけどね。それが吉と出るか凶と出るかは、やってみないとわかりませんけどね。
いままさに自分のフェンシングを見直している最中とのことですが、目標とする選手や憧れの方はいますか?
うーん、目標とは違うんですけど、リオ五輪が終わって引退されたイタリアの選手で、オリンピックで4大会メダルを取り続けたベッツァーリ選手という方がいて、私がフェンシングを始めたばかりの頃に、その選手が世界大会でドイツの選手と一本勝負をする映像をみたんです。その試合でベッツァーリ選手がみせた一本に対する気迫が、命を賭けているんじゃないかって思うくらい凄くて、“フェンシングってこういう競技なんだ”っていうのを初めて感じました。またその時に“私も光る大ピストの上でこういう試合をやりたい”って初めて心から思ったことを覚えています。
では西岡選手は試合中は、声を出して気迫を前面に出すのですか?
そんなことないんですよ(笑)。団体戦だと声が出るんですけど、個人戦になると内に秘めるタイプになってしまうらしく。自分でもよく分からないんですけど、コーチから、そう言われています(笑)。
これから東京に向けて苦しい時期が続くと思いますが、カギになる人は?
そうですね、家族ですかね。家族とは年に1回か2回しか会わないんですけど、実家に帰った時は、本当に癒しの時間です。今年の初めも家族でUSJに遊びに行ったんですけど、どれだけ私が落ち込んでても、いつもと同じように接してくれるのが一番ありがたいですね。妹とは一緒に住んでるんですが、彼女もフェンシングをずっとやってきたので、良き理解者でもあります。天真爛漫な性格なので、こっちが笑っちゃう感じ(笑)。一人でいるとずっと同じことを考えて落ち込んでしまったり、考えすぎてしまうんですけど、妹が家にいて、アホなことをされると、嫌なことも忘れられますしね。
素晴らしい家族愛ですね。そんな支えがあっての競技人生だと思いますが、今後の目標を聴かせてください。
リオでフェンシング人生が終わると思いながら、結局、2020年の東京五輪を目標にやり続けているので、今は東京でフェンシング人生を終えるつもりでやっています。東京でフェンシングを終えるならメダルを取って終わりたいし、メダルを取るんだったらチームで取りたい。ロンドン五輪で、男子フルーレが団体戦でメダルを取った時に、“”私もチームでメダルを取りたい“って思ったんです。そのためにも、まずはアジア選手権ですね。東京オリンピックに向けては、韓国や中国が一番のライバルになるので、まずはそこに絶対に勝つというのが直近の目標ですね。
2020年の東京では、新しい西岡詩穂が見れることを期待しています。
はい、頑張ります。今日はどうもありがとうございました。
取材・文・写真:瀬川泰祐