元体育会ソッカー部な国会議員!元榮太一郎(参議院議員&弁護士ドットコム株式会社 代表取締役会長)のJリーグを世界一のリーグへ 「第1回:株式会社横浜フリエスポーツクラブ代表取締役COO 上尾和大 Vol.4 」
1993年当時のJリーグと同時期にスタートしたイングランドのプレミアリーグの市場価値は1対1であった。しかし、現在ではかなりの差をつけられている。「どうすればJリーグがプレミアリーグに追いつくほど盛り上がるのか?サッカーに携わる方々の待遇がより良くなるのか?」そんな課題に対して、元体育会ソッカー部の元榮太一郎が動いた。サッカー関係者から話を聞き、実行に移していく新企画。第1弾はJ2リーグに所属する横浜FCの上尾和大社長との対談である。進行役はKING GEARの発起人である金子達仁が務めた。
菊池 康平
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2019/07/12
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ーーちなみに上尾さん、引き継ぎの際は、前任者からどんなアドバイスをもらいました?
上尾:アドバイスと言いますか、なかなかファンが増えていってないというのが横浜FCとしての重要課題であることを引き継いでおります。
試行錯誤しながら色々な手は打っているものの、なかなか伸びていかないのは、スタジアム全体が一体となる雰囲気作りがまだまだ足りないことが要因だと考えています。
今はファン・サポーターの皆さんの声を直接聞きながら、「新しいファンが増えるためにどういう事をしたら良いか」などということをお互いに持ち寄って、新しいものを一つ一つ作っていっている状態です。
元榮:サポーターの数はどの指標で見ていますか?
上尾:まず平均入場者数ですが、2018年は約6000人でした。次にファンクラブ加入数(横浜FCではクラブメンバーと呼ぶ)ですが約2000人くらいです。
元榮:属性はどんな状況ですか?
上尾:男女比はJ2リーグ平均が6:4に対して7:4と男性比率が高いチームです。年代層はリーグ平均が約42歳に対して44歳と平均値を上回っております。
吸収合併があって20年が経ちますが、大きくファン層は変わっていないんですよね。当時20代だった方たちがそのまま長く応援し続けてくれているのが今の横浜FCです。
元榮:新しいファン層の獲得がまさに課題ですね。Jリーガーってアスリートでカッコイイから、女性がもっと来てもいいかと思いますけどね。何かハードルがあるんですか?
上尾:もっと女性が来やすいイベントやスタジアムグルメ等のソフト面を充実させることやスタジアムに屋根がない事などのハード面の原因もあると考えています。
――ドイツのブンデスリーガのスタジアムがまずやっていることは、トイレの整備と増設なんですよ。
元榮:女子は並んでしまうので、あの行列を見たらもう行きたくないとかなりますよね。
――例えばドイツのレバークーゼンのスタジアムは、2006年当時と比べて女性用トイレが100基増えたらしいです。2002年にW杯があった日本のスタジアムはそこから何か増えたとは聞いていませんが、その4年後にW杯が行われたドイツでは、スタジアムがどんどん進化しています。
元榮:トイレを増やせば女性が来て、定着するという成功例ですよね。
――しかも買い物は全部電子マネーでOKになっています。日本のスタジアムに行くと大概どこも大行列ですよね。
元榮:実際にトイレの話は出たことありますか?
上尾:トイレ不足は来場者が1万人近くあると問題となりますが、スタジアムを借りているということもあり、自分たちで増設するというのが、非常に難しい話なんです。
元榮:スタジアムが自分たちの物ではないので簡単に動かせないのですね。
――横浜DeNAベイスターズがそこを取り戻してから観客が激増しましたもんね。
元榮:やはりプライベートスタジアムがないとなかなか難しいんですね。スポンサー企業が色々な恩恵を感じる機会も作りにくいわけですよね、VIPルームもないですし。しっかりとしたサッカースタジアムを作るには、どれくらいの費用がかかるんですか?
――世界のどこへ出しても恥ずかしくないような良いスタジアムを作るなら、400億と言われました。レバークーゼンのスタジアムは、スタジアムの下に最新鋭のフィットネスジムや医療施設が入っていて、380億くらいと聞いてます。
でもそういうのが一切ないボルシアMGなんかは150億くらいで作ったみたいです。
元榮:150億くらいでも魅力的なスタジアムができそうですね。日本でその規模のスタジアムが現れたら国内最高のクオリティーですか?
――吹田スタジアムがそれに近いですね。
上尾:あそこは140億と聞いてます。
元榮:どのくらいで採算とっていくんですかね。
――ドイツの設計事務所によると、今はサッカー場としてペイしようとしたら不可能で、コンサートだったり、ショッピングモール併設、病院併設、コンベンションセンターとしての機能をもたせることでペイをするんです。
上尾さんが仰いましたが、VIPたちの集う場というのを持たせることによってペイしていかないと出来ないけれど、どこもそれをやってペイしていますね。
元榮:ということは国内にそれを輸入しても採算とれますよね。
――Jリーグは「それを輸入して下さい」という事でみんな視察に行かせているんですが、なぜか1つも出来ないんです。なぜですかね?
上尾:単純にまだまだクラブに金銭的な余裕がないというのもありますし、あとは大きな会社がバックにあるのに、そこからお金が出てこないというのは、先ほどの話でもあったように、企業名がチーム名に付けられるなどといった規制緩和があれば、幾ばくかお金も出てきやすくなるのではと思います。
――ネーミングライツというのをスタジアムがしょぼい段階から日本はやってしまったので。例えば日本だと、エミレーツ・スタジアムというのは作る必要がないんですよね。日本は出来ているものに○○スタジアムと名前を冠してしまえば良いので。
プレミアはずっと引っ張りましたから。「スタジアムを作らないとダメ」と言ってやっていたので。ネーミングライツを安売りしなかったんです。エミレーツがお金を出してスタジアムを作っています。それを日本でやらなければいけなかったんです。
元榮:ちなみに企業名や外資規制の緩和などを、今一生懸命に提唱している人は誰かいますか?
ーーいないです。
元榮:どうしてですか?
ーー誰かがやってくれると思っているから。
元榮:みんな誰かがやってくれると思っているという事ですか?どこかのシンクタンクとかに試算してもらいたいものですね。ここらへんを緩和したらこういう企業が入ってきて、年間これぐらいの資金を投下してくれて、こういう選手が取れるようになる。
そうすると入場者もこんなに増えて、放映権もたくさん取れるようになってというような経済効果・波及効果みたいなものを試算して、バーンと出して、「それでもやらないんですか?」みたいにするのが面白いかもですね。
――本気で世界1のリーグを目指したいですよね。
元榮:目指したいですね。
――今、残念ながらJリーグをやっている方々の中に、日本のリーグを世界1にしようと思っている方がほとんどいない気がするんですよ。大前提として才能がある選手がいても、すぐに「どうぞ」とあげちゃうじゃないですか。それが当たり前だと思っている。
それをメッシが日本に来たいという風にしようと考えている人がいない気がするんです。でもメッシやロナウドが日本のCMには出ているわけですよね。彼らをCMで雇うことはできるのに、なぜチームで雇えないんだろうか。
それは日本の財力が全くサッカーに活きていないから。ここを何とかしたいんですよ。
上尾:もっともっと世界のトップリーグに近づけるんだということで、外国籍枠を変更したりと国際的な競争力向上ためにJリーグは変革していっております。
リーグだけではなく各クラブからもっともっと盛り上げていかないといけないですし、ビジネス面でも競争力を上げていかなければならないと考えています。そうしないといくら競争力のあるリーグになったからといっても良い選手を簡単に手放さなければならない状況になりますので。
――実はプロ野球にも同じことが言えて、メジャーを追い越そうと読売巨人軍は作られたはずですけど、今や全くその志がないですよね。
給与形態でメジャーリーグを追い抜こうと努力が成されているようには全く思えませんし、サッカーだけがひどいと言うつもりは全くないですけど、だったらまずは追いつかなくてはいけないし、その次の追い越すことまで考えてやろうよということを訴えたいですよね。
元榮:プレミアと93年では同じ水準だったのであれば、やってやれないことはないですよね。GDPや人口はイギリスより日本の方が上ですしね。
――プレミアリーグの6割は東南アジアでの放映権料で潤っているわけじゃないですか。その東南アジアの人達は、時差があるのでプレミアリーグとJリーグはライバルじゃないんですよ。
「マレーシアやインドネシアの選手が日本で活躍するようになれば、昼間は日本のJの試合を見て、夜はプレミアを見るというサイクルができるんだ。そうなったらお金を出せる」とシンガポールのテレビ局の方からはっきり言われたんですよ。
でも、優れたタイの選手を連れてきているだけで満足してしまっている気がして、そのあたりをちゃんとビジネスとしてやっているのかなと思います。
僕がFC琉球(現J2)に携わったときに、マレーシアのオリンピック代表選手を2人連れて来たんですが、JFLの開幕戦なのにマレーシアの放送局の方が81人も来ましたからね。
Vol.5へつづく
写真:佐藤主祥
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ーーちなみに上尾さん、引き継ぎの際は、前任者からどんなアドバイスをもらいました?
上尾:アドバイスと言いますか、なかなかファンが増えていってないというのが横浜FCとしての重要課題であることを引き継いでおります。
試行錯誤しながら色々な手は打っているものの、なかなか伸びていかないのは、スタジアム全体が一体となる雰囲気作りがまだまだ足りないことが要因だと考えています。
今はファン・サポーターの皆さんの声を直接聞きながら、「新しいファンが増えるためにどういう事をしたら良いか」などということをお互いに持ち寄って、新しいものを一つ一つ作っていっている状態です。
元榮:サポーターの数はどの指標で見ていますか?
上尾:まず平均入場者数ですが、2018年は約6000人でした。次にファンクラブ加入数(横浜FCではクラブメンバーと呼ぶ)ですが約2000人くらいです。
元榮:属性はどんな状況ですか?
上尾:男女比はJ2リーグ平均が6:4に対して7:4と男性比率が高いチームです。年代層はリーグ平均が約42歳に対して44歳と平均値を上回っております。
吸収合併があって20年が経ちますが、大きくファン層は変わっていないんですよね。当時20代だった方たちがそのまま長く応援し続けてくれているのが今の横浜FCです。
元榮:新しいファン層の獲得がまさに課題ですね。Jリーガーってアスリートでカッコイイから、女性がもっと来てもいいかと思いますけどね。何かハードルがあるんですか?
上尾:もっと女性が来やすいイベントやスタジアムグルメ等のソフト面を充実させることやスタジアムに屋根がない事などのハード面の原因もあると考えています。
――ドイツのブンデスリーガのスタジアムがまずやっていることは、トイレの整備と増設なんですよ。
元榮:女子は並んでしまうので、あの行列を見たらもう行きたくないとかなりますよね。
――例えばドイツのレバークーゼンのスタジアムは、2006年当時と比べて女性用トイレが100基増えたらしいです。2002年にW杯があった日本のスタジアムはそこから何か増えたとは聞いていませんが、その4年後にW杯が行われたドイツでは、スタジアムがどんどん進化しています。
元榮:トイレを増やせば女性が来て、定着するという成功例ですよね。
――しかも買い物は全部電子マネーでOKになっています。日本のスタジアムに行くと大概どこも大行列ですよね。
元榮:実際にトイレの話は出たことありますか?
上尾:トイレ不足は来場者が1万人近くあると問題となりますが、スタジアムを借りているということもあり、自分たちで増設するというのが、非常に難しい話なんです。
元榮:スタジアムが自分たちの物ではないので簡単に動かせないのですね。
――横浜DeNAベイスターズがそこを取り戻してから観客が激増しましたもんね。
元榮:やはりプライベートスタジアムがないとなかなか難しいんですね。スポンサー企業が色々な恩恵を感じる機会も作りにくいわけですよね、VIPルームもないですし。しっかりとしたサッカースタジアムを作るには、どれくらいの費用がかかるんですか?
――世界のどこへ出しても恥ずかしくないような良いスタジアムを作るなら、400億と言われました。レバークーゼンのスタジアムは、スタジアムの下に最新鋭のフィットネスジムや医療施設が入っていて、380億くらいと聞いてます。
でもそういうのが一切ないボルシアMGなんかは150億くらいで作ったみたいです。
元榮:150億くらいでも魅力的なスタジアムができそうですね。日本でその規模のスタジアムが現れたら国内最高のクオリティーですか?
――吹田スタジアムがそれに近いですね。
上尾:あそこは140億と聞いてます。
元榮:どのくらいで採算とっていくんですかね。
――ドイツの設計事務所によると、今はサッカー場としてペイしようとしたら不可能で、コンサートだったり、ショッピングモール併設、病院併設、コンベンションセンターとしての機能をもたせることでペイをするんです。
上尾さんが仰いましたが、VIPたちの集う場というのを持たせることによってペイしていかないと出来ないけれど、どこもそれをやってペイしていますね。
元榮:ということは国内にそれを輸入しても採算とれますよね。
――Jリーグは「それを輸入して下さい」という事でみんな視察に行かせているんですが、なぜか1つも出来ないんです。なぜですかね?
上尾:単純にまだまだクラブに金銭的な余裕がないというのもありますし、あとは大きな会社がバックにあるのに、そこからお金が出てこないというのは、先ほどの話でもあったように、企業名がチーム名に付けられるなどといった規制緩和があれば、幾ばくかお金も出てきやすくなるのではと思います。
――ネーミングライツというのをスタジアムがしょぼい段階から日本はやってしまったので。例えば日本だと、エミレーツ・スタジアムというのは作る必要がないんですよね。日本は出来ているものに○○スタジアムと名前を冠してしまえば良いので。
プレミアはずっと引っ張りましたから。「スタジアムを作らないとダメ」と言ってやっていたので。ネーミングライツを安売りしなかったんです。エミレーツがお金を出してスタジアムを作っています。それを日本でやらなければいけなかったんです。
元榮:ちなみに企業名や外資規制の緩和などを、今一生懸命に提唱している人は誰かいますか?
ーーいないです。
元榮:どうしてですか?
ーー誰かがやってくれると思っているから。
元榮:みんな誰かがやってくれると思っているという事ですか?どこかのシンクタンクとかに試算してもらいたいものですね。ここらへんを緩和したらこういう企業が入ってきて、年間これぐらいの資金を投下してくれて、こういう選手が取れるようになる。
そうすると入場者もこんなに増えて、放映権もたくさん取れるようになってというような経済効果・波及効果みたいなものを試算して、バーンと出して、「それでもやらないんですか?」みたいにするのが面白いかもですね。
――本気で世界1のリーグを目指したいですよね。
元榮:目指したいですね。
――今、残念ながらJリーグをやっている方々の中に、日本のリーグを世界1にしようと思っている方がほとんどいない気がするんですよ。大前提として才能がある選手がいても、すぐに「どうぞ」とあげちゃうじゃないですか。それが当たり前だと思っている。
それをメッシが日本に来たいという風にしようと考えている人がいない気がするんです。でもメッシやロナウドが日本のCMには出ているわけですよね。彼らをCMで雇うことはできるのに、なぜチームで雇えないんだろうか。
それは日本の財力が全くサッカーに活きていないから。ここを何とかしたいんですよ。
上尾:もっともっと世界のトップリーグに近づけるんだということで、外国籍枠を変更したりと国際的な競争力向上ためにJリーグは変革していっております。
リーグだけではなく各クラブからもっともっと盛り上げていかないといけないですし、ビジネス面でも競争力を上げていかなければならないと考えています。そうしないといくら競争力のあるリーグになったからといっても良い選手を簡単に手放さなければならない状況になりますので。
――実はプロ野球にも同じことが言えて、メジャーを追い越そうと読売巨人軍は作られたはずですけど、今や全くその志がないですよね。
給与形態でメジャーリーグを追い抜こうと努力が成されているようには全く思えませんし、サッカーだけがひどいと言うつもりは全くないですけど、だったらまずは追いつかなくてはいけないし、その次の追い越すことまで考えてやろうよということを訴えたいですよね。
元榮:プレミアと93年では同じ水準だったのであれば、やってやれないことはないですよね。GDPや人口はイギリスより日本の方が上ですしね。
――プレミアリーグの6割は東南アジアでの放映権料で潤っているわけじゃないですか。その東南アジアの人達は、時差があるのでプレミアリーグとJリーグはライバルじゃないんですよ。
「マレーシアやインドネシアの選手が日本で活躍するようになれば、昼間は日本のJの試合を見て、夜はプレミアを見るというサイクルができるんだ。そうなったらお金を出せる」とシンガポールのテレビ局の方からはっきり言われたんですよ。
でも、優れたタイの選手を連れてきているだけで満足してしまっている気がして、そのあたりをちゃんとビジネスとしてやっているのかなと思います。
僕がFC琉球(現J2)に携わったときに、マレーシアのオリンピック代表選手を2人連れて来たんですが、JFLの開幕戦なのにマレーシアの放送局の方が81人も来ましたからね。
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写真:佐藤主祥