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長距離ランナーの御託・藤原新 Vol.2 ショップ編 「僕の場合、軽さ第一主義ではないですね」

ポジションによる違いはあれ、サッカーは、概ね1試合につき10㎞ほどを走る競技だとされている。ならば、10㎞走っても疲れの少ないスパイクは何か。走りのプロにジャッジしてもらうことはできないものか。というわけで、ロンドン・オリンピックのマラソン日本代表、藤原新選手にご登場をいただくことになった。

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/09/09
<Vol.1はこちらから>

まずは、サッカー・スパイクをズラリと並べた東京渋谷の専門店『GALLERY2』にご協力いただき、片っ端から試着をさせてもらうことに。さて、プロ・ランナーのお眼鏡にかなうサッカー・スパイクは…?

――そもそも、藤原さんがランニング・シューズを選ぶ際の基準は?

藤原「走る時って、足はカカトから爪先にかけて、波打つように動くんです。それを邪魔しないアッパーとソールが備わっていること。それが前提ですかね」

――確か、藤原さんって試合の時は裸足で走っていましたよね。あれ、なんでです?

藤原「靴ズレはガマンできるけど、マメは耐えられない。そういうことです(笑)」

――相変わらずの意味不明なお言葉、ありがとうございます。走るという行為にまったく興味のない元GKにも理解できるよう、ご説明いただけますか?(笑)

藤原「マメができるのは足の裏。靴ズレができるのは足の表。で、マメができる一番の原因っていうのは、ムレなんです。靴下を履かなければ、足の裏のムレを大幅に軽減できる。ただし、その代償として靴ズレはできやすくなる」

――どちらもだいぶ痛そうですけど。

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藤原
「もちろん痛いですよ。でも、靴ズレっていうのは重症化しないんです。痛いし、血が滲んだりはするけど、マメみたいに足の裏がベロ~ンなんてことにはならない。マラソンの場合、足の裏がムケちゃったらゲームオーバーですから」

――ま、藤原さんはプロですから仕方ないですけど、そんな痛い思いをするぐらいなら、そもそも走らなければよいのでは、と思ってしまいます(笑)

藤原「もちろん僕だって痛いのはイヤだし、裸足でシューズを履くのは試合の時だけですよ。練習の時はちゃんと靴下履いてやってますって(笑)」

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――近年、サッカー・シューズの世界では軽量化の流れが急速に進んでいます。若い選手の多くは、スパイクに求める条件の最上位に「軽さ」を置くようになりました。マラソンの世界でも、シューズの軽さというのは重要なんですか?

藤原「大事です。大事ではあるんですけど、僕の場合、軽さ第一主義ではないですね。軽ければベター、なぐらいで。ランニングシューズの世界でも軽さ最優先のモデルがどんどん出てきてますけど、僕には合わなかった」

――そもそも、スパイクの軽さって、それほど大きな意味があるのでしょうか。

藤原「あ、それはありますよ。クルマでいうところのバネ下重量みたいなものですから」

――バネ下重量。タイヤやホイールといった、サスペンションのバネから下についているものの総重量のことですね。自動車の場合、4つあるタイヤとホイールを1kgずつ軽くすれば、クルマ全体で60kgの軽量化に匹敵する、とされています。クルマ好きでもあらせられる藤原さんには自明の理でしょうが、元カーオブザイヤー選考委員として、ちょっと専門的なことを申し上げさせていただきました(笑)

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藤原
「ありがとうございます(笑)。ただ、僕はそれがすべてではないと思うし、ケニアなんかだと、日本だとアマチュア・ランナーでも履かないぞ、みたいな分厚い底の重たいシューズを履いて試合に出てくる選手もいますからね」

――重要な要素ではあるけれど、無頓着の選手もいる、と。

藤原「僕自身もそれがすべてだとは思ってない、と」

――ちなみに、藤原選手にはお気に入りのメーカーとかっておありなんでしょうか。

藤原「お世話に なっているアシックスは別にして、どこが好きかと言われればナイキですかね。ナイキのシューズ、特にレーシングシューズは、アッパーがグニャグニャといっ ていいぐらいなんです。最初に言った、波を打つような足の動きを邪魔しないアッパーっていうのかなあ。ま、特注のシューズに関して言うと、やっぱりアシッ クスが最高なんですけどね」

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Vol.3へ続く

取材協力 『GALLERY2』渋谷店
写真(香川) 清水和良