「覚悟を決めることを絶対に忘れてはいけない」 AK-69が、MV出演のGK冨澤拓海(コリマル・レンジャーズFC)と対談 壁への挑み方を語る
4月には、自身5度目の日本武道館ライブを成功させたAK-69が、スポーツの壁に直面する若者たちを応援する楽曲『Break through the wall』を発表した。次世代アスリートの活躍にスポットライトを当てた楽曲のMusic Videoには、さまざまな壁を乗り越えた経験を持つアスリートたちが登場し、それぞれの想いが語られている。 今回は、AK-69氏とMusic Videoに出演したアスリートの一人で、現在はオーストラリアのコリマル・レンジャーズFCでプレーする冨澤拓海選手とのズーム対談が実現。楽曲の感想や、壁に挑む方法などについて二人の思いが語られた。
白鳥 純一
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2022/07/21
――まずはAK-69さんが、『Break through the wall』に込めたメッセージや想いをお聞かせください。
AK-69:UNDER ARMOURとのコラボレーションで書き下ろした『Break through the wall』は、さまざまな壁に挑む人に向けて書いた楽曲です。それぞれのジャンルで色々な壁がありますが、そこに対して真剣に挑んでいるかどうか。「自分の前にあるさまざまな壁」と向き合ってきた俺にとっても自然なテーマでしたし、これまでに本気で挑んできた俺の想いもこの曲に詰め込みました。
――曲作りの際には、鈴木実沙紀選手(女子ラグビー)、川村怜選手(ブラインドサッカー)など、性別や障がいの壁と闘うアスリートの皆さんともお話されたそうですね。
AK-69:直接対談させていただく機会を頂戴しまして、「向き合っている対象に多少の違いはあるものの、挑む気持ちは同じだ」と改めて感じさせられました。
――『Break through the wall』のコラボレーション企画に参加された、冨澤選手のご感想をお聞かせください。
冨澤:この企画のお話をいただいた時は、「本当に僕でいいのかな…」と言うのが正直な感想でした。この映像は、僕が住んでいるオーストラリアで、早朝3時に起きて撮影しました。外国人の撮影クルーに囲まれ、日本のスタッフさんとズームで仕上がりを確認しながら撮った映像ですが、とてもカッコいい作品に仕上げられた充実感に満ち溢れています。日本にいる家族や友人も見てくれて、Music Videoの感想を言われた時には、何とも言えない嬉しさがありますよね。
――映像には、さまざまなスポーツの壁とたたかうアスリートが登場します。皆さんのエピソードをご覧になられた冨澤選手のご感想を教えて下さい。
冨澤:僕は、身長が168㎝しかないと言うハンデがありながらも、GKとして大好きなサッカーを続ける道を選びましたが、なかには「金銭」や「性別」といったなかなか崩せない壁に挑戦されている方もいらっしゃった。競技は違えども、「壁に立ち向かう姿」はシンプルにカッコ良いと思いましたし、リスペクトする気持ちも大きいです。
――冨澤選手にお聞きします。AK-69さんの楽曲に対する率直な印象を教えてください。
冨澤:実は、Music Video撮影のお話しをいただくまでは、AK-69さんのことを存じ上げていなかったんですが…(苦笑)。今となっては、Spotifyの一番上がAK-69さんの楽曲の指定席になっていて。試合に向かう前や、移動する時によく聴かせていただいています。なので、奥さんからも「また聴いているの?」と言われるんですよ。
AK-69:「知る人ぞ知る存在」なので大丈夫です(笑)
――最近では、冨澤選手の日常生活にAK-69さんの楽曲が溶け込んでいるようですが、お気に入りの曲があれば教えて下さい。
AK-69:深堀しますね(笑)
冨澤:もちろんMusic Video出演させていただいた『Break through the wall』も好きですけど、それ以外では『PPAP』がお気に入りです。
実は、最初にこの曲に興味を持つきっかけは、ピコ太郎さんとか、ジャスティン・ビーバーさんが歌っていた『PPAP』と同じタイトルだったからなんですけど…。『The Race』(2021年6月の11thアルバム)の収録曲を見た時に、タイトルに興味を惹かれて、最初にダウンロードさせていただきました。 実は、ピコ太郎さんが歌っている『PPAP』は、スポーツ選手にも馴染みが深い曲の一つでもあるんです。
海外のチームでは、新たに加わった選手が椅子の上でこの曲を歌って、チームメートの歓迎を受けるという習慣もあったりしますから。
AK-69:面白いお話を聞かせていただいてありがとうございます。僕の作った『PPAP』は、あまりスポーツとは関係なさそうに見える『時計の歌』で、スイスの時計ブランドでもあるPATEK PHILIPPEと、AUDEMARS PIGUETの頭文字から取っているんですけど。意外なところから、スポーツへと繋がっていくものなんですね(笑)。
――AK-69さんの楽曲は、多くのスポーツの選手に親しまれていますが、その理由はどのあたりにあるとお考えですか?
AK-69:色々なデータを見ていると、アスリートの皆さんや経営者、そしてバッドボーイたちに支持してもらっているんですが、彼らに共通しているのは「大志を抱いている」ということですよね。俺は「頑張れ」というだけの安っぽい応援歌は好きじゃないので、「闘っている人を応援したい」といった気持ちでは、曲を書いていないんです。
名古屋という地方で生まれた俺は、ヒップホップが大切にしている地元のアイデンティティを背負って、ここまで活動を続けてきましたし、名古屋を拠点にしながらもインディペンデントで、東京で活躍するメジャーシーンの方々と肩を並べられるように頑張ってきた。これまでにさまざまなハンデに直面し、それらを乗り越えてきた道のりや、その時に感じた俺自身の想いを歌で表現してきました。いわゆる「代表曲」と言われている作品達で歌っているような“闘いに挑む時の気持ち”や、“メンタリティ”に共感していただけたのかなと思っています。どんな環境にいたとしても、それらの想いは変わりませんからね。
――スポーツ選手の入場シーンでも、AK-69さんの楽曲を多く耳にしますが、ご自身では、現状をどのようにご覧になられていますか?
AK-69:単純に嬉しいですよね。野球でも格闘技でも入場曲として使っていただいたり、最近では競艇場でも流していただけているそうです。俺のInstagramを多くのサッカー選手がフォローしていることも知っていますし、ストーリーも見ていただけている。そういう情報を知る度に、喜びを感じますよね。
――冨澤選手にお聞きします。スポーツ選手の目線で、AK-69さんの楽曲がアスリートに絶大な支持を受けている理由はどのあたりにあると思いますか?
冨澤:選手たちは、更衣室や移動中のバスで何かしらの音楽を流しているので、選手間の口コミで広まった部分も大きいのかなと個人的には思います。僕も、Music Video撮影に参加してもらったチームメートに『Break through the wall』を薦めたら、だんだんチームメートが聴くようになってくれて。最近は、僕を見ながら「Break through the wall」って歌ってくれたりもしますからね。しかも英語の発音がめちゃめちゃ良い(笑)。
AK-69:嬉しいですね。オーストラリアの再生は、冨澤選手のおかげだと思っておきます(笑)。自分の曲が世界各国に広がってくれるのは、嬉しいですよね。
――お二人は、これまでの人生で直面したさまざまな壁を、どのように乗り越えて来られましたか?
冨澤:「壁を乗り越えるプロセスを楽しめるかどうか」が大切だと思います。僕はGKなので、時に「シュートを決められてしまう」状況に出くわすこともあります。失点はチームの負けにつながってしまうこともありますけど、練習の時に「シュートを決められる」ことを想定したトレーニングをすれば、その解決策が見つけられるかもしれない。どうやって壁を乗り越えるのか。状況によっては、一旦戻るのか。そのプロセスを考える醍醐味も楽しんでほしいと思います。
AK-69:「出来ない」ことをネガティブに捉えすぎないことが大切ですかね。自分が期待すると、失敗した時にショックを受けてしまうので、いい意味で期待しすぎないこと。「出来なくて当たり前だ」と思うことで、見えるものもあると思うんですよ。
僕らのようなアーティストの世界も、一見すると派手で華やかな仕事なので、憧れの気持ちで目指す人も多い。でも、ちょっとしたことでショックを受けてしまうと、その道を歩み続けることはなかなか難しいかもしれない。上手くいかないことが当たり前で、たまに上手くいった成果や喜びをどれだけ感じられるか。それが大切だと思います。
俺も思い返してみると、「地方で戦うハンデ」があったんですけど、「辛い」とは微塵も感じなかったんですよ。たくさんの失敗を経験しましたけど、「地方なのに、頑張っている俺ヤバくね」と思いながら、自分が成り上がった時の姿を想像しながら頑張ってきた。それしかありませんからね。それだけ頑張らないと大成できない道に進んだから、嫌なら別の道に行くしかない。覚悟を決めることだけは、絶対忘れてはいけないんじゃないかな。
ーースポーツとも共通する部分があるお話しですね。
AK-69:実は、俺は小学校から高校をドロップアウトするまで、剣道をやっていまして。小学校3年生の頃まで試合に出られず、「才能がないな」と思っていた矢先、欠員が出てトップチームに入れてもらえたことがあるんです。
その後、「俺は行けるかもしれない」と勘違いをした俺は、必死に練習するようになって全国大会にも出場できた。良い意味で勘違いをして、自分を乗せていくことは大切ですね。
冨澤:AK-69さんの「覚悟を決めることだけは、絶対忘れてはいけない」という言葉は、僕もとても共感できますね。
いい意味でも悪い意味でも、日本はさまざまなオプションがありますから。以前、僕が住んでいたスペインの街は、失業率50パーセントだったので、選手たちは食べるためにサッカーをしないといけなかったんです。家族を食べさせるために、ビザの有効期限ギリギリまでチームを探すアフリカ系の選手とかも間近に見てきて、本当の意味でのハングリーさも感じた。
チャレンジする目標からは逃げたらダメだけど、もし合わないようなら違う道や選んでもいいと思うんです。まずは自分が乗り越えるべき壁なのかを見極めて、やるなら全力で取り組む。そんな感じでいいのかなと思います。
――「覚悟を決める」ためにやっておくべきことはありますか?
AK-69:「覚悟を決めるべき壁」を見極めるために、いろいろなものを見た方がいいと思います。さまざまな寄り道もした俺が、「人生をかけて挑もう」と思えたのが音楽だったんです。「何となく良いかな…」くらいの感覚で選んでしまうと、挫折した時に道を変えざるを得ない。
「覚悟を決めているかどうか」が、自分の行動も変えますからね。 俺の年齢だとなかなか難しいこともあるかもしれないけれど、若いうちは何度失敗してもやり直しが効きますから。出来るだけいろいろなことに触れてみて、道を決めたら覚悟を据える。それが大切じゃないですかね。
冨澤:僕はこれまでの人生で、「サッカーしかやりたいことがない」タイプだったので、今はサッカーがない時に何をすればいいのかについて悩んでいて。
世界のいろいろな国を見てきましたし、将来は指導者になるのも面白いと思っていますが、今はまだ選手でいたい。僕自身も「サッカー以外を見つけよう」と色々なものに触れているので、皆さんにもさまざまなことを経験して、全力の熱量が注げる対象を探してほしいなと思います。
――今後のお二人の目標は何ですか?
冨澤:僕は、「夢や目標は変わってもいい」と思っているんです。直近の目標は、目の前の試合で勝つことですけど、もっと色々な国を見てみたいなと思うこともありますし、そこで新たな目標も見つかるかもしれない。あえていうなら、「サッカー以外の好きなものを探す」ことが、長期的な目標ですかね。
AK-69:俺は、「ヒップホップシーンのために頑張る」という言葉を、どこか綺麗事のように思っていた節があって。俺がとにかく頑張ってヒップホップを盛り上げたら、どんどんシーンが活性化していく。長らくそういう風に思っていたんですけど、最近は、「まだまだ発展途上であるこのヒップホップシーンをさらに大きくする為の土俵づくりをしたい」という気持ちが芽生えてきました。
自分以外の人たちが輝くことを作れるように本気を出したい。そのために今は全力で走りますし、その後は少しゆっくりしつつ、「豊かな人生を過ごしたい」という意識に変わりつつありますね。
――最後になりますが、ズーム対談のご感想をお願い致します。
冨澤:僕は普段、サッカー関係者とかと話す機会が多いので、別の業界のトップレベルの方とお話しさせていただく時間は、とても貴重な経験になりました。ズームを通しての対談でしたが、AK-69さんがとても規模が大きい話をされていて、率直に感動しました。これからも『Break through the wall』をはじめとするAK-69さんの曲を、あたかも自分の曲のように聴き込んでいきたいと思っています。
AK-69:ビデオに出演されているアスリートとの対談は、僕にとっても刺激的でした。冨澤選手が「ハンディキャップを乗り越えてきた方だ」ということは知っていましたが、それを微塵も感じさせないメンタリティに驚かされました。今度日本に帰国された時は、ぜひ対面でお話ししてみたいですね。
AK-69:UNDER ARMOURとのコラボレーションで書き下ろした『Break through the wall』は、さまざまな壁に挑む人に向けて書いた楽曲です。それぞれのジャンルで色々な壁がありますが、そこに対して真剣に挑んでいるかどうか。「自分の前にあるさまざまな壁」と向き合ってきた俺にとっても自然なテーマでしたし、これまでに本気で挑んできた俺の想いもこの曲に詰め込みました。
――曲作りの際には、鈴木実沙紀選手(女子ラグビー)、川村怜選手(ブラインドサッカー)など、性別や障がいの壁と闘うアスリートの皆さんともお話されたそうですね。
AK-69:直接対談させていただく機会を頂戴しまして、「向き合っている対象に多少の違いはあるものの、挑む気持ちは同じだ」と改めて感じさせられました。
――『Break through the wall』のコラボレーション企画に参加された、冨澤選手のご感想をお聞かせください。
冨澤:この企画のお話をいただいた時は、「本当に僕でいいのかな…」と言うのが正直な感想でした。この映像は、僕が住んでいるオーストラリアで、早朝3時に起きて撮影しました。外国人の撮影クルーに囲まれ、日本のスタッフさんとズームで仕上がりを確認しながら撮った映像ですが、とてもカッコいい作品に仕上げられた充実感に満ち溢れています。日本にいる家族や友人も見てくれて、Music Videoの感想を言われた時には、何とも言えない嬉しさがありますよね。
――映像には、さまざまなスポーツの壁とたたかうアスリートが登場します。皆さんのエピソードをご覧になられた冨澤選手のご感想を教えて下さい。
冨澤:僕は、身長が168㎝しかないと言うハンデがありながらも、GKとして大好きなサッカーを続ける道を選びましたが、なかには「金銭」や「性別」といったなかなか崩せない壁に挑戦されている方もいらっしゃった。競技は違えども、「壁に立ち向かう姿」はシンプルにカッコ良いと思いましたし、リスペクトする気持ちも大きいです。
――冨澤選手にお聞きします。AK-69さんの楽曲に対する率直な印象を教えてください。
冨澤:実は、Music Video撮影のお話しをいただくまでは、AK-69さんのことを存じ上げていなかったんですが…(苦笑)。今となっては、Spotifyの一番上がAK-69さんの楽曲の指定席になっていて。試合に向かう前や、移動する時によく聴かせていただいています。なので、奥さんからも「また聴いているの?」と言われるんですよ。
AK-69:「知る人ぞ知る存在」なので大丈夫です(笑)
――最近では、冨澤選手の日常生活にAK-69さんの楽曲が溶け込んでいるようですが、お気に入りの曲があれば教えて下さい。
AK-69:深堀しますね(笑)
冨澤:もちろんMusic Video出演させていただいた『Break through the wall』も好きですけど、それ以外では『PPAP』がお気に入りです。
実は、最初にこの曲に興味を持つきっかけは、ピコ太郎さんとか、ジャスティン・ビーバーさんが歌っていた『PPAP』と同じタイトルだったからなんですけど…。『The Race』(2021年6月の11thアルバム)の収録曲を見た時に、タイトルに興味を惹かれて、最初にダウンロードさせていただきました。 実は、ピコ太郎さんが歌っている『PPAP』は、スポーツ選手にも馴染みが深い曲の一つでもあるんです。
海外のチームでは、新たに加わった選手が椅子の上でこの曲を歌って、チームメートの歓迎を受けるという習慣もあったりしますから。
AK-69:面白いお話を聞かせていただいてありがとうございます。僕の作った『PPAP』は、あまりスポーツとは関係なさそうに見える『時計の歌』で、スイスの時計ブランドでもあるPATEK PHILIPPEと、AUDEMARS PIGUETの頭文字から取っているんですけど。意外なところから、スポーツへと繋がっていくものなんですね(笑)。
――AK-69さんの楽曲は、多くのスポーツの選手に親しまれていますが、その理由はどのあたりにあるとお考えですか?
AK-69:色々なデータを見ていると、アスリートの皆さんや経営者、そしてバッドボーイたちに支持してもらっているんですが、彼らに共通しているのは「大志を抱いている」ということですよね。俺は「頑張れ」というだけの安っぽい応援歌は好きじゃないので、「闘っている人を応援したい」といった気持ちでは、曲を書いていないんです。
名古屋という地方で生まれた俺は、ヒップホップが大切にしている地元のアイデンティティを背負って、ここまで活動を続けてきましたし、名古屋を拠点にしながらもインディペンデントで、東京で活躍するメジャーシーンの方々と肩を並べられるように頑張ってきた。これまでにさまざまなハンデに直面し、それらを乗り越えてきた道のりや、その時に感じた俺自身の想いを歌で表現してきました。いわゆる「代表曲」と言われている作品達で歌っているような“闘いに挑む時の気持ち”や、“メンタリティ”に共感していただけたのかなと思っています。どんな環境にいたとしても、それらの想いは変わりませんからね。
――スポーツ選手の入場シーンでも、AK-69さんの楽曲を多く耳にしますが、ご自身では、現状をどのようにご覧になられていますか?
AK-69:単純に嬉しいですよね。野球でも格闘技でも入場曲として使っていただいたり、最近では競艇場でも流していただけているそうです。俺のInstagramを多くのサッカー選手がフォローしていることも知っていますし、ストーリーも見ていただけている。そういう情報を知る度に、喜びを感じますよね。
――冨澤選手にお聞きします。スポーツ選手の目線で、AK-69さんの楽曲がアスリートに絶大な支持を受けている理由はどのあたりにあると思いますか?
冨澤:選手たちは、更衣室や移動中のバスで何かしらの音楽を流しているので、選手間の口コミで広まった部分も大きいのかなと個人的には思います。僕も、Music Video撮影に参加してもらったチームメートに『Break through the wall』を薦めたら、だんだんチームメートが聴くようになってくれて。最近は、僕を見ながら「Break through the wall」って歌ってくれたりもしますからね。しかも英語の発音がめちゃめちゃ良い(笑)。
AK-69:嬉しいですね。オーストラリアの再生は、冨澤選手のおかげだと思っておきます(笑)。自分の曲が世界各国に広がってくれるのは、嬉しいですよね。
――お二人は、これまでの人生で直面したさまざまな壁を、どのように乗り越えて来られましたか?
冨澤:「壁を乗り越えるプロセスを楽しめるかどうか」が大切だと思います。僕はGKなので、時に「シュートを決められてしまう」状況に出くわすこともあります。失点はチームの負けにつながってしまうこともありますけど、練習の時に「シュートを決められる」ことを想定したトレーニングをすれば、その解決策が見つけられるかもしれない。どうやって壁を乗り越えるのか。状況によっては、一旦戻るのか。そのプロセスを考える醍醐味も楽しんでほしいと思います。
AK-69:「出来ない」ことをネガティブに捉えすぎないことが大切ですかね。自分が期待すると、失敗した時にショックを受けてしまうので、いい意味で期待しすぎないこと。「出来なくて当たり前だ」と思うことで、見えるものもあると思うんですよ。
僕らのようなアーティストの世界も、一見すると派手で華やかな仕事なので、憧れの気持ちで目指す人も多い。でも、ちょっとしたことでショックを受けてしまうと、その道を歩み続けることはなかなか難しいかもしれない。上手くいかないことが当たり前で、たまに上手くいった成果や喜びをどれだけ感じられるか。それが大切だと思います。
俺も思い返してみると、「地方で戦うハンデ」があったんですけど、「辛い」とは微塵も感じなかったんですよ。たくさんの失敗を経験しましたけど、「地方なのに、頑張っている俺ヤバくね」と思いながら、自分が成り上がった時の姿を想像しながら頑張ってきた。それしかありませんからね。それだけ頑張らないと大成できない道に進んだから、嫌なら別の道に行くしかない。覚悟を決めることだけは、絶対忘れてはいけないんじゃないかな。
ーースポーツとも共通する部分があるお話しですね。
AK-69:実は、俺は小学校から高校をドロップアウトするまで、剣道をやっていまして。小学校3年生の頃まで試合に出られず、「才能がないな」と思っていた矢先、欠員が出てトップチームに入れてもらえたことがあるんです。
その後、「俺は行けるかもしれない」と勘違いをした俺は、必死に練習するようになって全国大会にも出場できた。良い意味で勘違いをして、自分を乗せていくことは大切ですね。
冨澤:AK-69さんの「覚悟を決めることだけは、絶対忘れてはいけない」という言葉は、僕もとても共感できますね。
いい意味でも悪い意味でも、日本はさまざまなオプションがありますから。以前、僕が住んでいたスペインの街は、失業率50パーセントだったので、選手たちは食べるためにサッカーをしないといけなかったんです。家族を食べさせるために、ビザの有効期限ギリギリまでチームを探すアフリカ系の選手とかも間近に見てきて、本当の意味でのハングリーさも感じた。
チャレンジする目標からは逃げたらダメだけど、もし合わないようなら違う道や選んでもいいと思うんです。まずは自分が乗り越えるべき壁なのかを見極めて、やるなら全力で取り組む。そんな感じでいいのかなと思います。
――「覚悟を決める」ためにやっておくべきことはありますか?
AK-69:「覚悟を決めるべき壁」を見極めるために、いろいろなものを見た方がいいと思います。さまざまな寄り道もした俺が、「人生をかけて挑もう」と思えたのが音楽だったんです。「何となく良いかな…」くらいの感覚で選んでしまうと、挫折した時に道を変えざるを得ない。
「覚悟を決めているかどうか」が、自分の行動も変えますからね。 俺の年齢だとなかなか難しいこともあるかもしれないけれど、若いうちは何度失敗してもやり直しが効きますから。出来るだけいろいろなことに触れてみて、道を決めたら覚悟を据える。それが大切じゃないですかね。
冨澤:僕はこれまでの人生で、「サッカーしかやりたいことがない」タイプだったので、今はサッカーがない時に何をすればいいのかについて悩んでいて。
世界のいろいろな国を見てきましたし、将来は指導者になるのも面白いと思っていますが、今はまだ選手でいたい。僕自身も「サッカー以外を見つけよう」と色々なものに触れているので、皆さんにもさまざまなことを経験して、全力の熱量が注げる対象を探してほしいなと思います。
――今後のお二人の目標は何ですか?
冨澤:僕は、「夢や目標は変わってもいい」と思っているんです。直近の目標は、目の前の試合で勝つことですけど、もっと色々な国を見てみたいなと思うこともありますし、そこで新たな目標も見つかるかもしれない。あえていうなら、「サッカー以外の好きなものを探す」ことが、長期的な目標ですかね。
AK-69:俺は、「ヒップホップシーンのために頑張る」という言葉を、どこか綺麗事のように思っていた節があって。俺がとにかく頑張ってヒップホップを盛り上げたら、どんどんシーンが活性化していく。長らくそういう風に思っていたんですけど、最近は、「まだまだ発展途上であるこのヒップホップシーンをさらに大きくする為の土俵づくりをしたい」という気持ちが芽生えてきました。
自分以外の人たちが輝くことを作れるように本気を出したい。そのために今は全力で走りますし、その後は少しゆっくりしつつ、「豊かな人生を過ごしたい」という意識に変わりつつありますね。
――最後になりますが、ズーム対談のご感想をお願い致します。
冨澤:僕は普段、サッカー関係者とかと話す機会が多いので、別の業界のトップレベルの方とお話しさせていただく時間は、とても貴重な経験になりました。ズームを通しての対談でしたが、AK-69さんがとても規模が大きい話をされていて、率直に感動しました。これからも『Break through the wall』をはじめとするAK-69さんの曲を、あたかも自分の曲のように聴き込んでいきたいと思っています。
AK-69:ビデオに出演されているアスリートとの対談は、僕にとっても刺激的でした。冨澤選手が「ハンディキャップを乗り越えてきた方だ」ということは知っていましたが、それを微塵も感じさせないメンタリティに驚かされました。今度日本に帰国された時は、ぜひ対面でお話ししてみたいですね。