BC神奈川・乾真大投手が「全てを出し切った」10奪三振で16年の選手生活にピリオド
信濃グランセローズの優勝で16年目のシーズンを終えたルートインBCリーグだが、今年も多くの選手がグラウンドに別れを告げた。北海道日本ハムや巨人を経て、今シーズンは 神奈川フューチャードリームスでプレーする乾真大投手(兼任コーチ)もその一人だ。 8月30日に行われた引退試合に「思い残すことなく、今まで磨きあげた技術を存分に出したい」と先発のマウンドに上がった乾投手は、7回途中まで133球を投げて被安打6、2失点(自責点1)、10奪三振の好投で、チームの勝利(3-2)に貢献した。
白鳥 純一
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2022/09/29
7回途中まで133球を投げて2失点(自責点1)、10奪三振の好投を見せた乾投手。5回と6回にはマウンドで雄叫びを上げるなど、気持ちの込もった投球を見せ、今季初の地区優勝と、BCLチャンピオンシップ出場を果たした茨城アストロプラネッツ打線を抑えた。
7回途中でマウンドに降りる際には、川村丈夫監督からは、「お疲れさま」と労いの言葉をかけられたという。
現役最後のマウンドで、勝利を手にした乾投手は、お立ち台にも登場した。
乾:本日は、僕の引退試合として行っていただき、本当にありがとうございました BCリーグの選手の中には、心の中ではもう「現役は今年まで…」と決めている選手もいる中で、このような試合をしていただけたこと感謝しております。
野球を始めて、いきなり「東洋大姫路高校に行きたい」言った僕を、何も言わずに送り出してくれた両親に、まずは「ありがとう」と伝えたいです。 そこから、たくさんの色々な方に出会い、苦しい時に手を差し伸べてくれたり、叱咤激励してくれたこともあり、出会いに恵まれた野球人生でした。
正直、NPBでは、思ったような成績は残せませんでしたが、「野球できなくなる」と思った時に、ルートインBCリーグの富山GRNサンダーバーズにお声がけいただき、野球人生を繋いでくれたこと。
そして、その後の神奈川フューチャードリームスでも、3年間プレーさせてもらえたことに感謝しています。 今日で選手生活は終わりますが、思い残すことなく練習や試合を通じて、自分自身を磨いてきたことを全て出し切れたと思います。
乾: 僕は野球が大好き、その中でも特に関心がある「投げることに関する研究」に関しては、引退後も続けていこうと思いますし、選手たちのサポートも続けていかなければいけないと思っています。本当に思い残すことなく野球ができました。ありがとうござました。
その後の引退のセレモニーでは、乾投手からの挨拶に続いて、各球団で乾投手と共に過ごした選手・監督たちからのメッセージも紹介された。
――富山GRNサンダーバーズ(2018-2019年所属)時代の選手・監督からのメッセージ
伊藤智仁氏・東京ヤクルトスワローズ一軍投手コーチ:12年間、現役お疲れ様でした。乾が北海道日本ハムファイターズ、読売ジャイアンツで投げている印象は、力んでチカラいっぱい投げているだけの印象でしたが、富山でいろんなことに挑戦して少しは成長したピッチャーになりましたね。これからは、後進の指導にあたり現役時代の様に力まず、肩の力を抜いて頑張ってください。また、ゆっくり酒でも飲みましょう。
松山 真之投手・オリックスバファローズ:乾さんお久しぶりです。乾さんは富山で何も分からない僕に、1から練習を教えてくれました。今の僕があるのは間違いなく乾さんのお陰です。本当に感謝しかありません。乾さんの今後のご健康とご活躍を、心よりお祈りしています。12年間お疲れ様でした。
湯浅京己投手・阪神タイガース:乾さん、12年間お疲れ様でした。乾さんと出会えたことは、自分の人生の大切な宝物です。富山時代、毎日一緒にキャッチボールをさせてもらったり、トレーニングの方法を教わったりと、自分にとって、乾さんはとても大きな存在でした。
たくさんアドバイスを頂き、乾さんのおかげで成長できたと言っても過言ではありません。本当に心から感謝しています。これからたくさん投げることで恩返しをしていきたいと思っています。少しゆっくりして頂いて、時間ができたら、今度は自分が投げる姿をぜひ見に来てください。本当にお疲れ様でした。
――神奈川フューチャードリームス 前監督からのメッセージ
鈴木尚典氏・神奈川フューチャードリームス前監督・横浜DeNAベイスターズ一軍打撃コーチ:乾コーチ、12年の現役生活お疲れ様でした。乾コーチと2年間一緒にやってきた中で、1番記憶に残っているのは、初年度 2020年シーズンのプレーオフ優勝決定戦のマウンドです。
新規参入初年度 神奈川フューチャードリームスの優勝がかかった試合で乾コーチにマウンドを託し、シーズンの中でも最高のパフォーマンスをしてくれたことは若い選手の刺激にもなり、チームにとっても、監督としても最高の思い出になりました。
今日で現役は引退するということですが、乾コーチの野球人生は続いていくと思っています。まだまだ野球には携わっていってくれると思いますし、フィールドは違ってもこれからも共に野球界を盛り上げていければと思います。
乾コーチ12年間本当にお疲れ様でした。今日乾コーチが投げる姿を見たかったです。また乾コーチに会えるのを楽しみにしています。
引退セレモニーの最後には、北海道日本ハム、読売ジャイアンツで乾投手と共にプレーし、今も栃木ゴールデンブレーブスで選手生活を続ける吉川光夫投手兼任コーチが登場し、花束を贈呈した。
――北海道日本ハムファイターズ時代(2010-2016年所属)の選手・監督からのメッセージ
谷口雄也氏・株式会社ファイターズスポーツ&エンターテイメント:乾投手、長い現役生活お疲れ様でした。私は昨年にプロ野球11年間の現役生活を、同期であり同僚であった斎藤佑樹氏とファイターズのユニフォームを脱ぐこととなりました。
本日の乾投手の最後の勇姿にて、同期入団で、現役としてユニフォームを着続けたのは、東北楽天ゴールデンイーグルス・西川遥輝選手、たった一人となりました。
乾さんとの出会いは2010年。甲子園、大学野球界の大スターと同じユニフォームを着ることは夢にも思いませんでした。
年齢が離れていても弟のように接してくれた毎日。 投手目線、野手目線での野球談議。
休みの日にはゴルフや旅行にも行きましたね。チームが変わっても食事に誘えばいつでも駆けつけてくれました。本当に優しいお兄さんです。
NPBから離れ、環境が変わり大変苦労もしたことだと思います。『自分の仕事場は野球場のマウンド、どこにいても18.44mの距離は変わらない』と遠くから乾投手を応援していると、そんな想いが伝わってきました。
誰よりも野球が大好きで、誰よりもあきらめの悪い乾投手。実にピッチャーらしい性格ですよね。この先もきっと大好きな野球に携わるのだと思います。独立リーグでは選手兼任コーチとして経験やアドバイスを受けた選手もたくさんいるかと思います。きっとこの先、乾コーチの想いを乗せてたくさんの選手が野球界やNPBで活躍してくれることでしょう。
少し余談にはなりますが、来年3月より、北海道北広島市に開業する【エスコンフィールドHOKKAIDO】にも皆さまぜひ遊びに来てください。
また、今回お声掛けしていただいた神奈川フューチャードリームス様、関係者の皆さま、対戦相手の茨城アストロプラネッツ様、野球界の発展のために多大なるご支援を賜りますスポンサー様、一生懸命夢に向かっている選手を応援してくれるファンの皆さま、貴重なお時間をいただきありがとうございました。乾投手、これまでの野球人生、ナイスピッチング!!
斎藤佑樹氏・(株)斎藤佑樹代表取締役:乾、現役生活お疲れ様でした。NPBにいたときよりも、いい環境でプレーできてはいないはずなのに、数年前、乾は僕にこう言いました。「年々野球が楽しくなってきてるんだよ、だからまだまだ続けたい」と。その言葉を聞いて、乾よりも長く現役でプレーすることが僕の目標の一つになりました。
結局、昨年引退した僕よりも、乾のほうが長く現役を貫きました。よくここまで投げ続けたね。すごいよ、心からすごいと思うよ。人に優しく自分に厳しい努力家の乾投手、まずはその頑張り続けてきた体と心を休めてください。
そして、お世話になった野球界への恩返しを、これから一緒にしていけたら嬉しいです。神奈川フューチャードリームスのファンの皆さん、乾をここまで支えていただきありがとうございました。親友としてお礼を申し上げます。
NPB通算成績 (2011〜17)
74試合 1勝2敗 2H 86回投球回 83奪三振 防御率5.65
BCL通算成績(8月23日時点)
92試合 31勝 10敗 4S 6完投
428回2/3投球回 458奪三振 防御率2.58