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スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲⑤「岡崎慎司がこのモデルを愛用する理由」

東京ヴェルディの永井秀樹選手が「スパイクの履き比べ」をする「スパイク・ウォーズ」。今回は天然皮革の中から、カンガルー革のスパイクのみを履き比べ。マスター永井はミズノの『バサラ101 JAPAN』に、どんな評価をくだすのか?

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/11/02
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──続いてはミズノのバサラでございます。本来、カンガルーということであればモレリアになるのですが、アシックスのDSライト同様、マスターにはすでに履いていただいたので、今回は違ったタイプをお持ちしました。

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マスター永井
「どうでもいいけど、白と黒とオレンジ。ジャイアンツ・カラーだね。読売グループにはぴったりかも(笑)」 

──ホントにどうでもいいです(笑)。では、まずは履いてみてのご感想を。

マスター永井「はあ~~~~」

 ──いきなりため息ですか。

マスター永井「若い選手って、こういうのが好きなのかなあ。俺はダメだ、こういうスパイク」
 
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──何がダメなんでしょう。

マスター永井「痛い。違和感だらけ。いろんなところがゴツゴツしてる。これがモレリアだと、足を入れてもノーストレスなんだけど、これはストレスだらけ。まるで違う」 

──ただ、バサラはバサラでトッププロにも使用されているモデルではあります。日本代表の岡崎選手が代表例ですが。

マスター永井「ああ、わかるなあ。彼みたいなタイプなら、これ、いいかもね。ウチで言うと、高木大輔とか、他のチームでいうとグランパスの永井選手とか」

 ──その心は?

マスター永井「ショートスプリントが武器の選手。短い距離を爆発的にガッと出る。そういう選手には向いてると思う。モレリアが『いかに最高のボールタッチを提供するか』っていうスパイクだとしたら、これは陸上競技のスパイクっぽいのよ。蹴ることよりも走ることに特化してるっていうか」

 ──なるほど! 最近はスパイクにダッシュ力を求める選手が増えてきておりますが、それでいながらアッパーはカンガルーがいいということになりますと、このバサラあたりはドンピシャなのかもしれません。

マスター永井「ね? スプリントが大事なんだけど、ある程度はボールタッチの感覚にもこだわりたい、みたいな。もちろん、ボールタッチの回数が多い選手はモレリアを選ぶんだろうけど、岡崎選手みたいなタイプは、こっちの方がいいのかも」

 ──いま、各メーカーがポジション別、タイプ別のスパイクを売り出してるじゃないですか。あれってどこか眉唾というか、大して違いがないものを宣伝の力でより分けてるだけかなと思わないこともなかったんですが(笑)。

マスター永井「俺もそう思ってた(笑)。でも、どうやらホントにそういう時代になってきてるのかもね。ミズノにしても、もしウェーブイグニタスしか履いていなかったら、バサラしか履いていなかったら、そういうスパイクしか作れないメーカーなのかと思っちゃうところだけど、モレリアも作ってるわけだから。それでいながら、全部がモレリアのテイストになるどころか、まるで違ったモデルも出してるわけでしょ。これは、間違いなくメーカーは意図してるし、あと、ユーザーもそれを求めてるってことなんだろうね。俺らが小僧だったころとは、その点がはっきり違う(笑)」
 
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──スパイク選びは重要になってきますね。

マスター永井「だね。このバサラって、ちょっと走ってみてわかったんだけど、いつのまにか重心がつま先の方に寄ってくのよ。自然とダッシュしやすいように」 

──まさに陸上競技の短距離用スパイクですね。

マスター永井「巡行用じゃないけどね。岡崎選手がこのモデルを愛用してる理由が、いよいよ見えてきた気がする(笑)。ダッシュが効いて、鋭いターンが効いて、ボールタッチをする部分はカンガルー。というか、これって岡崎選手のプレースタイルそのもののスパイクじゃない(笑)」 

──万人のため、というよりは岡崎選手のため?(笑)。

マスター永井「そこまでは言わないけど、でも、こういうのって面白いよね。みんなから愛されるモデルを作る一方で、嫌われてもいい、反発されてもいい、ごく一部の人間から熱狂的に支持されれば、みたいなスパイクを作るのって。最初、本田選手の使用モデルを履いた時はミズノってメーカーが理解できなかったけど、いまならよくわかる。モレリアがあるから、ウェーブイグニタスやバサラみたいなとんがったモデルも作れたんだろうなって」 

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──果たしてスパイクは進化してるのかっていうのは、この企画を始めてからずっとつきまとっていた疑問だったんですけど、どうやら、答えも見えてきたようです。

マスター永井「進化はしてるね。一足だけを見たらわかりにくいけど、比べてみれば見えてくる。進化してるし、影響もしあってる。やっぱ面白いわ、スパイクって」 

取材協力/東京ヴェルディ1969
写真/㈱カルーテ 菅優樹   写真編集 榎本貴浩