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〔スパイク・ウォーズ/エピソードⅥ・カンガルーの逆襲⑧〕「パラメヒコとコパ・ムンディアル。頂上決戦の結果は…?」

東京ヴェルディの永井秀樹選手が「スパイクの履き比べ」をする「スパイク・ウォーズ」。今回は天然皮革の中から、カンガルー革のスパイクのみを履き比べ。全てを履きおえたマスター永井は、どんな評価をくだすのか?

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/12/16
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──さて、6足のカンガルー・モデルを試し履きしていただいたわけですが、いよいよ恒例の採点発表に参りたいと思います。まずは6位からお願いします。

マスター永井「70点。アシックスの2002」

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──ま、そうじゃないかとは思っておりました。ずいぶんインプレッションしょっぱかったですもんね。

マスター永井「こらこら(笑)。ただ、今回履かせてもらったモデルの中では、正直、一番響くものがなかったのは事実なんで。アシックスのスパイクということで、DSライトみたいなきめ細かさというか、かゆいところに手が届くような繊細な感覚をオートマチックに期待しちゃってたところがあったんだけど、足を入れた瞬間から違和感があったんだよね。単純に俺の足の形との相性の問題かもしれないけどさ」  

──ただ、かなり厳しいコメントが出たにも関わらず、採点は70点とまずまずなんですね。今回の中では最下位ですが、過去のモデルと合わせればミドルクラス。

マスター永井「ま、そこはカンガルーだし。履いてみて痛いとか、こりゃケガが怖いぞ‥‥みたいなことは一切ないからね 」 

──なるほど、では5位は?


マスター永井「80点。ミズノのバサラ」

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──ミズノのスパイクを取り上げるのはこれで4足目ですが、モレリアが95点、モナルシーダが75点、本田圭佑モデルのウェーブイグニタスが55点でした。バサラに80点をつけるということは、岡崎が本田に勝ったと。そういうことになりますね(笑)。

マスター永井「なるのか?(笑) ま、一つ言えるのは、モレリアやモナルシーダと違って、このバサラにしてもウェーブイグニタスにしても、ハナから万人受けしようなんて考えてないってことだよね」  

──ほう。


マスター永井「昔のスパイクって、志としてはすべてのモデルが万人受けを目指してて、でも価格との兼ね合いでアッパーの質を落とさざるをえないとか、ステッチにかける手間を減らしたりとかで、結果として万人受けはできないモデルがあったってことだと思うんだ。でも、バサラを履いてみて、ミズノはモデルごとにまったく違う方向性を持たせてるってことがよくわかった。というか、それが最近のスポーツメーカーの考え方なんだろうね」  

──確かに、昔はプーマのスパイクが好きな人は何を履いてもプーマが好きでしたもんねえ。でも、いまではエヴォスピードとパラメヒコ、同じメーカーのものとは思えませんし──。では、4位をお願いします。


マスター永井「80.5点。アスレタ」
 
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──お、ついに小数点以下を入れてきましたか(笑)。

マスター永井「そうしないと同点ばっかりになっちゃうからさ。このモデルに関しては、ソールからの突き上げが強すぎるって泣きどころがあるんだけど、アッパーの感触は素晴らしいし、何より、我が道を行くというか、独自路線を突っ走ってるところがかっこいいよね。問題点についてはメーカー側も把握してるみたいだし、これからどんどんと手が加えられてよくなっていくモデルだと思う」  

──世界中のスポーツメーカーが自分たちのエンブレムやラインをいかに目立たせるか腐心してきた中で、真っ黒いスパイクっていうのは、逆にインパクトありますもんね。あれ、あいつ何履いてるんだって。


マスター永井「昔は契約してくれるメーカー募集してますってサインだったんだけどね、真っ黒いスパイクって。ま、今後に期待していきたいメーカーでありモデルってことで」  

──では、3位を。

マスター永井「85点。ディアドラ」
 
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──おお、かなりの高得点!

マスター永井「だいぶ古典的なモデルではあるんだけどね。人工皮革に慣れた若い子にとっては、アッパーが分厚すぎる、重すぎるって感想も出てくると思う。ただ、俺にとってのサッカーっていうのは、走るのももちろん大事だけど、ボールを止めるってことはそれ以上に大事なんだ。その点、このディアドラは履いた瞬間に、あ、止めやすそうだってインスピレーションが走った。俺にとってはそれだけでもう十分」  

──あれ、ちょっと待ってください。ディアドラが3位ということは、残る2足はプーマのパラメヒコとアディダスのコパムンディアルということになります。アディダス対プーマ。両者にとっては絶対に負けられない闘いですが、マスター、ここで独断と偏見で答えを出してしまわれるわけですね!

マスター永井「というか、それを期待してやらせてるくせに(笑)。はいはい、独断と偏見で答えを出しましたよ」

──では、2位は?

マスター永井「断腸の思いで‥‥」  

──思いで?


マスター永井「100.5点」  

──100.5点? ということは、アシックスDSライトが守ってきたスパイクウォーズの王座が移動したということですね? で、どっち?

マスター永井「だから断腸の思いだってば」

──ということは、マスターが長年お世話になってきた‥‥?

マスター永井「はい、2位はパラメヒコです。1位はコパムンディアル。101点」
 

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──なんと、宿命の対決は弟クンに軍配ですか? マスターは3兄弟の長男ですが、それでもいいんですか?

マスター永井「たいていの人には言ってることが意味不明だよ(笑)。プーマを作ったルドルフ・ダスラーがお兄さんで、アディダス作ったアドルフ・ダスラーさんが弟なんだっけ? 俺だって達ちゃんに聞くまではそんな話知らなかったし(笑)」

──失礼しました(笑)。でも、この採点結果は、日本に何人いるかわからないコパムンディアル史上主義者には歓喜を、パラメヒコ偏愛主義者には衝撃を与えるのではないでしょうか。少なくとも、FC東京の前田選手は喜び、大宮の播戸選手がガッカリするのは間違いない。マスターは長年プーマを履き続けてきた方だけに、なおさらです。なんかこう、高田延彦が東京ドームで武藤敬司に敗れた時のようなインパクトが。

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マスター永井
「いよいよ意味不明(笑)。どっちも素晴らしいスパイクだけど、しなやかさ、なめらかさ、包み込む感じとかが、ほんの少しずつ、コパムンの方が上に思えたんだよね。あと、佇まいの気高さ。マジでクリアケースに入れて、家のリビングに飾っておきたいと思うもん」  

──ああ、見慣れすぎたパラメではそこまで思えませんものね。

マスター永井「そうなのよ。でも、パラメとコパムン、左右一足ずつ履くっていうのは、マジでちょっと考えとくことにする。この2足って、そういうことができる世界唯一の組み合わせかもしれないし」(了)

取材協力/東京ヴェルディ1969
写真/㈱カルーテ 菅優樹