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無名から日の丸を背負う存在へーサッカー日本代表“伊東純也”の軌跡
圧倒的なスピードと正確なクロスを武器とする伊東純也。日本代表のフォワードで、フランス1部リーグのスタッド・ランスで活躍中だ。無名だった学生時代や、海外での奮闘の日々、唯一無二のクロス技術解説など紹介していく。※トップ画像出典/Getty Images
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無名の存在からの逆転劇ー伊東純也のサッカー人生の軌跡
伊東純也ー現在は日本を代表する選手だが、学生時代の伊東は無名の存在だった。
小学1年生のときに地元のサッカーチームに入った。伊東はそのころを「最初はただ、友だちと楽しくやれれば良かった」と振り返る。
高校時代も県予選の成績はベスト32程度のチームで、日本代表選出は夢物語だった。彼のの才能が公になったのは大学時代。「関東1部リーグだったのもそうですけど、家から通えたので。寮生活がないのが良かった」と選んだ神奈川大学で大きく成長した。
2015年に当時J1のヴァンフォーレ甲府に入団。「大卒なのでなるべく早くステップアップしたかった」と翌年には柏レイソルに移籍した。
国内で着実に実績を積むと「海外への思いは全くなかった」としながらも、2019年にベルギーのKRCヘンクへ移籍。加入初年度にリーグ優勝に貢献すると、2021-22シーズンではアシスト王のタイトルを獲得した。
2022年7月から舞台を現在のフランスへ。ベルギーとフランスの違いを問われると「フランスリーグはベルギーのパワーアップ版ですね。フィジカル、スピードともに上がったと体感してます」と話した。移籍初年度の自己採点は70点。100点に届くために足りない部分は“得点力”だと言う。「ゴール数が3つだったんですけど、これは僕のキャリアで最低だと思う。少ないなと。アシストを作っているところは多いのは確かにあるんですが」。決定機でのシュートミスが目立ち、シーズン序盤の好調を続けることができなかった。それでも、チャンスメイク数ではリーグ3位の成績を残すなど、チームの勝利に貢献した。
そんな伊東らしさが光るシーンがあった。第23節ル・アーヴル戦で、伊藤はPKを任されるが失敗。しかし、キーパーが先に動いていたため蹴り直しに。普通であれば同じキッカーが蹴るところだが、伊東は他の選手にすんなりと譲った。「蹴りたそうにしているやつがいたので任せました。雨が降っていて蹴りづらい状況だったので、僕は外しそうだなと思ったんです」。我が強い選手が多いアスリートの世界。ときには一歩引くことが大事だが、それが出来ない選手が多いなかで伊東は物事を常に俯瞰で見ている。「このPK外したのも、1日2日は引きずりましたよ」と笑ったが、その冷静さがチームを勝利に導いた。
2022年 W杯の振り返りとこれからのビジョン
2022年のW杯は貴重な体験だった。ドイツとスペインをそれぞれ2-1で破り、自チームに戻ったときにはチームメイトからも驚かれたと笑顔で振り返る。また、代表ではそれまで練習すらしていなかったウイングバックのポジションに対応してみせた。「チームでは守りの位置はやってなかったので『ディフェンスできるんだなお前』と」チームメイトから一目置かれるようになったという。
31歳を迎えた伊東。今後のビジョンを問われると「今だったらフランスでアシスト王を取るとか、ゴール数を増やしてリーグを代表する選手になりたい」とさらなる成長を目標に挙げた。
自他共に認めるクロス技術を本人が徹底解説
元・日本代表の内田篤人も「ピカイチだと思う」と唸るのが、伊藤の“クロス”だ。その蹴り方や意識など、一流の極意を本人が解説した。
クロスでの意識について問われると、伊東は「最終的には感覚」と前置きした上で「見たところにちゃんと出そうと。あとは、ゴール前に走ってくる人がどれぐらいのスピードで走っているのかを見て『このあたりに来るだろうな』という予測は大事にしています」と説明。ゴール前に上がってくる選手も、前田大然などのダッシュで入る選手や、上田綺世のように先に待って受ける選手など多岐に渡るが「前田の時は低くて速いボールをキーパーとディフェンスの間に入れるようにしています」と、対応を変えていると言う。人に焦点を合わせるのではなく、空間を意識しているのだ。
アーリークロスを上げる際はインパクトを重視し、力を込めやすい内側寄りの位置にボールを置くのが伊東のスタイル。他にも「ニアだけは越そうと意識しています。ディフェンスが間に合ってなかったら、速くて低い球を間に入れるのが相手は一番嫌なので、それを狙います。ディフェンスが間に合っているなら、それだけは越さないといけないなと。あそこで跳ね返されたら最悪なので」と語った。蹴り方は、場合によって変化させる。落ちる軌道のクロスは、最も力が加わりやすい角度から踏み込み、ボールの下側に足を当てる。回転をかけるときはボールを外側に置き、こすり上げるイメージで蹴り上げる。
伊東は「クロスに関しては自分が一番うまいと思います」と頷く。断言できるまでに鍛錬を積み上げた技術力が、今後も日本を引っ張っていく。
DAZN『内田篤人のFOOTBALL TIME』#185伊東純也がフラッとやってきた!より
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