オリンピック選手も履いた高機能・卓球シューズ!ミズノ『ウエーブドライブ』&『ウエーブメダル』とは。
日本代表選手の世界大会での大躍進が日本中に感動をもたらし、かつてないブームとなっている「卓球」。今回は、ミズノ(ミズノ株式会社:代表取締役 水野明人)が40年以上に渡り研究開発をし続けている「卓球シューズ」の企画開発担当者の中谷氏に、今一押しの2タイプのシューズについて熱く語っていただいた。
佐久間秀実
|
2017/12/28
日本で卓球シューズ着用が定着したのは1950~60年代と言われていて、当時のシューズは、布地で底にはスポンジやゴムが貼られただけのシンプルな形状で、いわゆる「室内履き」となっていた。
ミズノでは、1970年代年頃から卓球シューズの販売を開始し、波形や角度をつけた溝など、グリップ力を高める工夫をしていた。1980年代に入ると、アウトソールに使用するゴムの開発も進み、グリップ力・耐久性・軽量性の向上等で、ソールの性能が飛躍的にアップした。
そして、1990年代以降から現在にかけて、デザイン性も高まり、衝撃吸収材を含めたミッドソールやアッパー素材等に関しても目覚ましい進化を続けている。
<参照:卓球王国 『卓球グッズ2016』 2016年7月号別冊 P53>
ミズノ株式会社
グローバルフットウエアプロダクト本部
ラケットスポーツシューズ担当
中谷俊貴氏
――最近、卓球ブームを感じますね。
中谷:昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで日本人選手達が大活躍をしてからメディアで注目されるようになり、学校で卓球部の新入部員が増加し、空前の卓球ブームとなっていますね。
――今回のシューズについて教えていただけますか。
中谷:今回紹介するシューズは、「軽量・素足感覚重視のシューズ」と「安定・クッション重視のシューズ」の2つのタイプとなります。
「ウエーブドライブ」
このグレーとイエローのシューズは軽量・素足感覚を重視した「ウエーブドライブ」というモデルです。このシリーズは、10年以上展開し続けており、ミズノの卓球シューズと言えば、「ウエーブドライブ」と言うほど認知度があります。その中で、ハイエンドモデルが「ウエーブドライブZ」です。スポーツ庁のハイパフォーマンス・サポート事業として共同開発研究し誕生しました。2016年から販売しています。
このシューズのコンセプトは、プレーヤーの動きを加速させる、です。ソールに斜め方向の溝を付けて内側に捻り易くすることで、プレーヤーの1歩目の蹴り出しの力がより力強くなるように導きます。実際に、昨年のリオオリンピックで福原愛選手が履いて活躍していただきました。
「ウエーブメダル」
もう1つの安定・クッションタイプのシューズは、「ウエーブメダル」としてなります。ここ数年でかなり人気が上がっていますね。このシューズは、ソールに厚みがあり安定感があり、デザイン性も支持されています。元来、卓球シューズは真っ白ベースに色が少しだけは入ったシューズが多かったのですが、デザイン性に高い評価を得ていまして、学生さんを中心に履いていただいています。
――「ウエーブドライブ」と「ウエーブメダル」のソールに違いがありますか。
中谷:あります。「ウエーブドライブ」は、ソールのラバー部分を減らし、薄底にしてコートを掴みやすくすることで加速性能を高めています。
「ウエーブメダル」は、ソールの形状を一面フラットにしており、コート上でしっかりと踏ん張りやすいような構造にしています。こちらは安定性重視なので、サイド方向に動いた時にぶれないように補強を重ねています。
――ソール以外に違いはありますか?
中谷:はい、あります。「ウエーブドライブ」は、素足感覚をコンセプトにしています。プライムスキンと言うマイクロファイバー繊維の人工皮革を使用してアッパーを作成しているので、足馴染みが良いシューズです。そして、ダイナモーションフィットという少し伸縮性があるメッシュ素材を内甲側に採用することにより、プレー中の屈曲時にも足にアッパーがピタッと吸い付きパワーロスを減らします。
――外見が、フットサルシューズみたいですね。
中谷:確かに、近いですね。実際にデザイン性が高いフットサルシューズを好んでプレーする選手も何人かいます。
――カラーリングについては、いかがですか。
中谷:この数年で色目があるシューズが増えています。シーズン毎に様々なカラーのシューズを出しています。
――他に特長は、ありますか。
中谷:卓球シューズの重さは、他のインドアシューズに比べると比較的軽いです。ちなみに今回紹介した「ウエーブドライブ」と「ウエーブメダル」の差は約20gです。
――その20gでも動いてみると違うのでしょうか。
中谷:プレースタイルによりますが、違いますね。卓球の台の前で勝負するスピードを重視するような選手は、細かいステップをし易い薄底で軽いシューズを履いたり、逆にカットで対抗する選手は後ろで踏ん張るシーンが多いので踵にクッション性があるものを選ぶ傾向があります。あと、ワイドタイプのシューズもあるので、様々なプレーシーン、スタイル、選手の要望に応えることができるラインナップになっています。
――企画から完成まで、どれほどの期間を要しましたか。
中谷:最低でも2年以上かかりますね。多くの関係者や選手達と話し合って精度を上げていきます。アイディアから始まり、実際にどのような形状で素材や仕様にしていくか、機能性に問題ないかと、サンプルを何度も作り直して完成にまで至りました。
――特に、どこに時間がかかりましたか。
中谷:ソールです。金型を作る作業は、骨が折れます。コンセプトに基づいた設計をどうやって形にしていくか、一度作ってしまうとなかなか修正が難しいので、準備段階での精度アップが求められます。
――2タイプのどちらのシェアが多いですか。
中谷:2、3年前までは軽量タイプが人気だったのですが、最近では安定タイプの人気が伸びていまして、軽量タイプを追い越す勢いで成長しています。
――どういった理由が考えられますか。
中谷:プレースタイルがよりパワフルでスピードが求められてくるので、それに耐えるシューズが好まれてきているのかなと思いますね。
――耐久性は、いかがですか。
中谷:卓球シューズは、他の種目と比べると、ソールの前足部分が減りやすいので厚みを持たせています。
――踵に関しては、いかがですか。
中谷:ミズノのシューズはフィッティングの良さに定評があります。フィッティングの良さは、踵の食いつきが大切で、動いた時にかかとがずれ、パワーロスにならないようにしています。卓球は足を寝かせながらボールを打つという独特の動きが多いので、フィッティングを妨げないように適度な柔らかさも必要です。
インソールは、まず踵をしっかり固定し、中足部に盛り上がりを付けることで中足部をしっかりと押し上げて指でコートを踏ん張りやすくなるようにしています。ミズノでオリジナルのインソールを作る選手もいます。
――最後に、今後の展望について教えていただけますか。
中谷:これからも選手のサポートをして、選手に活躍をしていただきたいです。また、卓球界を引っ張っていけるようなブランドであり続けたいです。そして、モデルやカラーリング、機能面で進化し続け、お客様に喜んでいただけるような商品をつくりたいです。 (了)
ミズノ 卓球シューズ
http://products.mizuno.jp/c/category/tabletennis/shoes/
取材協力/ミズノ株式会社
写真提供/ミズノ株式会社
取材写真/佐久間秀実
ミズノでは、1970年代年頃から卓球シューズの販売を開始し、波形や角度をつけた溝など、グリップ力を高める工夫をしていた。1980年代に入ると、アウトソールに使用するゴムの開発も進み、グリップ力・耐久性・軽量性の向上等で、ソールの性能が飛躍的にアップした。
そして、1990年代以降から現在にかけて、デザイン性も高まり、衝撃吸収材を含めたミッドソールやアッパー素材等に関しても目覚ましい進化を続けている。
<参照:卓球王国 『卓球グッズ2016』 2016年7月号別冊 P53>
ミズノ株式会社
グローバルフットウエアプロダクト本部
ラケットスポーツシューズ担当
中谷俊貴氏
――最近、卓球ブームを感じますね。
中谷:昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで日本人選手達が大活躍をしてからメディアで注目されるようになり、学校で卓球部の新入部員が増加し、空前の卓球ブームとなっていますね。
――今回のシューズについて教えていただけますか。
中谷:今回紹介するシューズは、「軽量・素足感覚重視のシューズ」と「安定・クッション重視のシューズ」の2つのタイプとなります。
「ウエーブドライブ」
このグレーとイエローのシューズは軽量・素足感覚を重視した「ウエーブドライブ」というモデルです。このシリーズは、10年以上展開し続けており、ミズノの卓球シューズと言えば、「ウエーブドライブ」と言うほど認知度があります。その中で、ハイエンドモデルが「ウエーブドライブZ」です。スポーツ庁のハイパフォーマンス・サポート事業として共同開発研究し誕生しました。2016年から販売しています。
このシューズのコンセプトは、プレーヤーの動きを加速させる、です。ソールに斜め方向の溝を付けて内側に捻り易くすることで、プレーヤーの1歩目の蹴り出しの力がより力強くなるように導きます。実際に、昨年のリオオリンピックで福原愛選手が履いて活躍していただきました。
「ウエーブメダル」
もう1つの安定・クッションタイプのシューズは、「ウエーブメダル」としてなります。ここ数年でかなり人気が上がっていますね。このシューズは、ソールに厚みがあり安定感があり、デザイン性も支持されています。元来、卓球シューズは真っ白ベースに色が少しだけは入ったシューズが多かったのですが、デザイン性に高い評価を得ていまして、学生さんを中心に履いていただいています。
――「ウエーブドライブ」と「ウエーブメダル」のソールに違いがありますか。
中谷:あります。「ウエーブドライブ」は、ソールのラバー部分を減らし、薄底にしてコートを掴みやすくすることで加速性能を高めています。
「ウエーブメダル」は、ソールの形状を一面フラットにしており、コート上でしっかりと踏ん張りやすいような構造にしています。こちらは安定性重視なので、サイド方向に動いた時にぶれないように補強を重ねています。
――ソール以外に違いはありますか?
中谷:はい、あります。「ウエーブドライブ」は、素足感覚をコンセプトにしています。プライムスキンと言うマイクロファイバー繊維の人工皮革を使用してアッパーを作成しているので、足馴染みが良いシューズです。そして、ダイナモーションフィットという少し伸縮性があるメッシュ素材を内甲側に採用することにより、プレー中の屈曲時にも足にアッパーがピタッと吸い付きパワーロスを減らします。
――外見が、フットサルシューズみたいですね。
中谷:確かに、近いですね。実際にデザイン性が高いフットサルシューズを好んでプレーする選手も何人かいます。
――カラーリングについては、いかがですか。
中谷:この数年で色目があるシューズが増えています。シーズン毎に様々なカラーのシューズを出しています。
――他に特長は、ありますか。
中谷:卓球シューズの重さは、他のインドアシューズに比べると比較的軽いです。ちなみに今回紹介した「ウエーブドライブ」と「ウエーブメダル」の差は約20gです。
――その20gでも動いてみると違うのでしょうか。
中谷:プレースタイルによりますが、違いますね。卓球の台の前で勝負するスピードを重視するような選手は、細かいステップをし易い薄底で軽いシューズを履いたり、逆にカットで対抗する選手は後ろで踏ん張るシーンが多いので踵にクッション性があるものを選ぶ傾向があります。あと、ワイドタイプのシューズもあるので、様々なプレーシーン、スタイル、選手の要望に応えることができるラインナップになっています。
――企画から完成まで、どれほどの期間を要しましたか。
中谷:最低でも2年以上かかりますね。多くの関係者や選手達と話し合って精度を上げていきます。アイディアから始まり、実際にどのような形状で素材や仕様にしていくか、機能性に問題ないかと、サンプルを何度も作り直して完成にまで至りました。
――特に、どこに時間がかかりましたか。
中谷:ソールです。金型を作る作業は、骨が折れます。コンセプトに基づいた設計をどうやって形にしていくか、一度作ってしまうとなかなか修正が難しいので、準備段階での精度アップが求められます。
――2タイプのどちらのシェアが多いですか。
中谷:2、3年前までは軽量タイプが人気だったのですが、最近では安定タイプの人気が伸びていまして、軽量タイプを追い越す勢いで成長しています。
――どういった理由が考えられますか。
中谷:プレースタイルがよりパワフルでスピードが求められてくるので、それに耐えるシューズが好まれてきているのかなと思いますね。
――耐久性は、いかがですか。
中谷:卓球シューズは、他の種目と比べると、ソールの前足部分が減りやすいので厚みを持たせています。
――踵に関しては、いかがですか。
中谷:ミズノのシューズはフィッティングの良さに定評があります。フィッティングの良さは、踵の食いつきが大切で、動いた時にかかとがずれ、パワーロスにならないようにしています。卓球は足を寝かせながらボールを打つという独特の動きが多いので、フィッティングを妨げないように適度な柔らかさも必要です。
インソールは、まず踵をしっかり固定し、中足部に盛り上がりを付けることで中足部をしっかりと押し上げて指でコートを踏ん張りやすくなるようにしています。ミズノでオリジナルのインソールを作る選手もいます。
――最後に、今後の展望について教えていただけますか。
中谷:これからも選手のサポートをして、選手に活躍をしていただきたいです。また、卓球界を引っ張っていけるようなブランドであり続けたいです。そして、モデルやカラーリング、機能面で進化し続け、お客様に喜んでいただけるような商品をつくりたいです。 (了)
ミズノ 卓球シューズ
http://products.mizuno.jp/c/category/tabletennis/shoes/
取材協力/ミズノ株式会社
写真提供/ミズノ株式会社
取材写真/佐久間秀実