なぜ水中から陸上に?元水泳メダリストの星奈津美が東京マラソンへ挑戦!「Vol.3 フルマラソンデビューまでいよいよあと2日!!」
ロンドン五輪とリオ五輪で200mバタフライに出場し、2大会連続で銅メダルを獲得した星奈津美さん。そんな星さんは2016年10月に引退し、現在は今週末25日に開催される東京マラソン2018に向けて最終調整中だ。Vol.3では目前に迫った初めてのフルマラソンへの想いなどを聞いた。
菊池 康平
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2018/02/23
Vol.2はこちらから
――今年に入ってからはどんな練習をしていたんですか?
星:1月14日に西岡コーチと実際の東京マラソンのコースの試走に行きました。都庁からスタートをして30km弱くらいまで走りました。ハーフ以上の距離を本番までに体験したかったので。
――どのくらいの時間で走ったんですか?
星:トータルで4時間くらい走って、実際にコースのアップダウンも経験できましたが、足にきましたね。信号で止まると最初は平気でしたが、後半は止まると走り出す瞬間に重さがずっしりきて、きつかったです。
――未知の30Km近くの距離を経験出来て良かったですね!走り終えた時にメチャクチャしんどくなかったですか?僕は数時間動けなくなりましたよ。
星:足がよくわからない感じになってました。足を踏み出す度に「痛い痛い」と言いながら帰りましたよ。
西岡:でもリズムは良かったですよ。初めてフォーム診断をした時から、練習の回を重ねる度に動きがかなり良くなってきています。
最初の練習の時は腰が落ちていたり姿勢が少し良くなかったのですが、アドバイスしながら練習しているとすぐに伝えたことを実行できるんですよ。やはりトップアスリートですね!試走を見ても、レースペースに近いペースで走っていたので。
――東京マラソンでの目標タイムを教えてください。
星:まずは完走です。できれば4時間半を切れれば嬉しいです。1月30日に東京マラソンのコースの残り(約16km)を走りました。あとは、今やっている10Km前後の練習を続けながら、疲労を抜いて、体調管理を徹底していく状態です。
――今は水泳時代の気持ちや身体の状態に近いんですか?
星:なんか重ねて考えるときはあるんですよ。走っていても、最初から最後まで足が軽い日もあれば、良くない日は最初から足が重くて最後まで重い時もあったり、途中から軽くなってくる時もあったり。そういうのって水泳でもあったんですよ。
でも水泳は何十年かやっていたので何となく原因がわかり、対処法がありましたが、 走りに関してはまだ経験が浅いので、その理由や要因がわからなくて、そこが難しいなと思います。
――経験を重ねて慣れていくことで解消される課題ですね。
星:ですね!まだ走って半年ちょっとなんで焦らずやっていきます。
――このタイミングで「NO」とは言えないかもしれないですが、走り始めて良かったと思いますか?
星:走り始めてよかったですよ!!なんか選手やめてから、何にもなくて。最初のほうは楽だなと思ってたんですけど、段々こんなんでいいのかな?と思いだして。
「何にも辛いことしてないな」という罪悪感みたいなものがしばらくあったんです。やっぱり何か頑張るとか、目指すというのは、必要だなと改めて思いましたよ。
――何か目標がないと生活にもメリハリがでないですもんね。
星:今は東京マラソンという目標があって楽しいです!
――ギアの話も聞かせてください。走る際はどんなシューズを履いているんですか?
星:ウェーブライダー21を履いています。
写真=ミズノ株式会社
――ランニングシューズにこだわりはありますか?
星:履き比べたことがないのでそんなにありませんが、今まで履いているミズノのシューズは足にフィットしてますよ。
――現役の時に水泳用具に対するこだわりはありましたか?
星:特に水着は、今は何回か着るとすぐに水を弾かなくなる様なことはあまりなくなってきたんですが、最初に着る物の方が、よく水を弾いたりするので、新品もしくは新品に近いものを着たいという選手が多いんです。でも私は、新品よりも何回か着たものじゃないと嫌なんですよ。
――身体になじんだ物が良いというこだわりですね!
星:そうですね。新品だと固い感じというか、なんかきつ過ぎちゃって、その締め付けが苦手で。
――選手によっては水着を1回着たら捨ててるのでコストがかかるという話を聞いたことがあります。
星:そういう選手もいますね!私は3枚、4枚支給されても1枚しか使わなかったということもあるくらい身体になじんだ物がいいというこだわりはありました。
――ゴーグルは?
星:最新のものが私には合わなかったんです。飛び込んだ時に水が入ってしまったことが練習であって。水が入るかも!?と思うと、思いっきり飛び込めないんです。
水が絶対入らない私の骨格にフィットした何度も使ったゴーグルを使ってました。一貫して、自分にフィットするものがこだわりです。
――キャップは?
星:日本人選手はメッシュのキャップをかぶった上に、ゴムのシリコンのキャップをかぶるんです。合計2つかぶるという事です。
キャップには大きい小さいくらいの違いしかないんですけどね。あとはかぶり方としては耳を出す、出さないのこだわりは人によってあります。
――星さんはどっちでしたか?
星:私は耳を出さない派でした。水に入った時に少しでも耳の部分の抵抗を無くす為です。ただ耳までかぶると音が遮断されてしまって、声援とかも聞こえないので、違和感もありましたが慣れたら大丈夫でしたね。
――声援は聞こえたほうがいいんですか?
星:私は聞こえたほうが安心する感じはありましたね。泳いでいるときに聞こえないと孤独な感じがするんですよ。それが理由で、耳までかぶらない人もいたりします。
――初めて知りました!あとはメッシュのキャップの上にゴムキャップをかぶることも初めて知りましたよ。
星:わりと当たり前になっているんですけど、ゴムキャップをいきなりかぶると、髪にくっついてしまって、髪が引っ張られて痛かったりするんですよ。
外国人の選手は、それをやらないんで不思議がられるんです。 「なんで日本人は2枚もかぶってるんだ」って。
――それは男子もなんですか?
星:男子もですね。髪の毛が短い人はもしかしたら1枚だけかぶってるのかもしれませんが。髪が絡まることもないと思うので。
――私も含め、読者の皆さんも2枚かぶっていることは恐らく知らなかったのではと思います。星さんがマラソンを始めたと聞いたらみんな驚くんではないですか?
星:走っていると言うとびっくりされますね。水泳界にいる人は走るのが嫌いな人が多いので(笑)よくやるね、凄いね!とは言われます。
――最後に東京マラソンに向けて今の心境を教えてください。
星:もちろん楽しみもありますが、42.195Kmって長いじゃないですか。その中でどう自分のコンディションが変わっていくのかなっていう不安はあります。
水泳のレース中は、何も考える暇もないくらい数分で終わるので、飛び込む前のほうが緊張するんですけれど、マラソンは色んなことを考える時間もあったり、自分との戦いが何時間も続くのでどうなるかな?という不安はありますね。
でも楽しみです。まずは完走を目標にしていきます!
(了)
【プロフィール】
星 奈津美
Natsumi Hoshi
■生年月日:1990 年 8 月 21 日
■出身地:埼玉県 越谷市
■春日部共栄高校~早稲田大学卒~スウィン大教
2014 年
ミズノ株式会社入社 ミズノスイムチーム所属
2017 年 4 月~
東洋大学非常勤講師
2017 年 6 月~
(公財)日本水泳連盟 アスリート委員
【略歴】
競泳を始めたのは 1 歳半の時にベビースイミング教室に通い出したのがきっかけだった。
鷺後小学校・栄進中学校を経て春日部共栄高校に進学すると、1、2 年生の時にはインターハイの 200mバタフライで 2 連覇を達成した。
3 年生の時には、日本選手権 200mバタフライ決勝で、高校新記録 2 分 07 秒 38 をだして 2 位となり、北京オリンピック代表に選ばれた。
早稲田大学・スウィン大教に籍を置きながら競技を継続、2014 年にミズノ株式会社に入社し競技を続ける。
その間、2015 年 8 月 世界水泳選手権 200m バタフライ決勝で、競泳女子の日本選手として大会史上初の金メダル獲得の他、3 大会連続のオリンピック出場・2 大会連続でメダルを獲得した。
2016 年 10 月 国民体育大会をもって現役引退。現在、ミズノスイムチーム コーチを務めながら、水泳の普及活動を行っている。
【経歴】
2006 年 高校 1 年 インターハイ 200m バタフライで初めての全国大会優勝
2007 年 ジュニアパンパシフィック大会にて初の日本代表入り
2008 年 北京オリンピック 200m バタフライ 10 位
2010 年 パンパシフィック選手権 200m バラフライ 5 位
2011 年 国際大会代表派遣選考会 200m バラフライ優勝 日本新記録(2:06.05)
世界水泳選手権 200m バタフライ 4 位 日本新記録更新(2:05.91)
2012 年 ロンドンオリンピック代表選考会 バラフライ優勝 日本記録更新(2:04.69)
ロンドンオリンピック 200m バタフライ 銅メダル獲得
日本学生選手権 200m バタフライ 4 連覇達成
2013 年 世界水泳選手権 200m バタフライ 4 位
2014 年 パンパシフィック選手権 200m バタフライ 準優勝
アジア大会 100m バタフライ 4 位 200m バタフライ 準優勝
2015 年 世界水泳選手権 200m バタフライ 優勝
※日本競泳女子選手では大会史上初の金メダル
2016 年 日本選手権 200m バタフライ 7 連覇
リオデジャネイロオリンピック 200m バタフライ 銅メダル獲得
※2 大会連続メダル獲得は、日本人女子 3 人目
――今年に入ってからはどんな練習をしていたんですか?
星:1月14日に西岡コーチと実際の東京マラソンのコースの試走に行きました。都庁からスタートをして30km弱くらいまで走りました。ハーフ以上の距離を本番までに体験したかったので。
――どのくらいの時間で走ったんですか?
星:トータルで4時間くらい走って、実際にコースのアップダウンも経験できましたが、足にきましたね。信号で止まると最初は平気でしたが、後半は止まると走り出す瞬間に重さがずっしりきて、きつかったです。
――未知の30Km近くの距離を経験出来て良かったですね!走り終えた時にメチャクチャしんどくなかったですか?僕は数時間動けなくなりましたよ。
星:足がよくわからない感じになってました。足を踏み出す度に「痛い痛い」と言いながら帰りましたよ。
西岡:でもリズムは良かったですよ。初めてフォーム診断をした時から、練習の回を重ねる度に動きがかなり良くなってきています。
最初の練習の時は腰が落ちていたり姿勢が少し良くなかったのですが、アドバイスしながら練習しているとすぐに伝えたことを実行できるんですよ。やはりトップアスリートですね!試走を見ても、レースペースに近いペースで走っていたので。
――東京マラソンでの目標タイムを教えてください。
星:まずは完走です。できれば4時間半を切れれば嬉しいです。1月30日に東京マラソンのコースの残り(約16km)を走りました。あとは、今やっている10Km前後の練習を続けながら、疲労を抜いて、体調管理を徹底していく状態です。
――今は水泳時代の気持ちや身体の状態に近いんですか?
星:なんか重ねて考えるときはあるんですよ。走っていても、最初から最後まで足が軽い日もあれば、良くない日は最初から足が重くて最後まで重い時もあったり、途中から軽くなってくる時もあったり。そういうのって水泳でもあったんですよ。
でも水泳は何十年かやっていたので何となく原因がわかり、対処法がありましたが、 走りに関してはまだ経験が浅いので、その理由や要因がわからなくて、そこが難しいなと思います。
――経験を重ねて慣れていくことで解消される課題ですね。
星:ですね!まだ走って半年ちょっとなんで焦らずやっていきます。
――このタイミングで「NO」とは言えないかもしれないですが、走り始めて良かったと思いますか?
星:走り始めてよかったですよ!!なんか選手やめてから、何にもなくて。最初のほうは楽だなと思ってたんですけど、段々こんなんでいいのかな?と思いだして。
「何にも辛いことしてないな」という罪悪感みたいなものがしばらくあったんです。やっぱり何か頑張るとか、目指すというのは、必要だなと改めて思いましたよ。
――何か目標がないと生活にもメリハリがでないですもんね。
星:今は東京マラソンという目標があって楽しいです!
――ギアの話も聞かせてください。走る際はどんなシューズを履いているんですか?
星:ウェーブライダー21を履いています。
写真=ミズノ株式会社
――ランニングシューズにこだわりはありますか?
星:履き比べたことがないのでそんなにありませんが、今まで履いているミズノのシューズは足にフィットしてますよ。
――現役の時に水泳用具に対するこだわりはありましたか?
星:特に水着は、今は何回か着るとすぐに水を弾かなくなる様なことはあまりなくなってきたんですが、最初に着る物の方が、よく水を弾いたりするので、新品もしくは新品に近いものを着たいという選手が多いんです。でも私は、新品よりも何回か着たものじゃないと嫌なんですよ。
――身体になじんだ物が良いというこだわりですね!
星:そうですね。新品だと固い感じというか、なんかきつ過ぎちゃって、その締め付けが苦手で。
――選手によっては水着を1回着たら捨ててるのでコストがかかるという話を聞いたことがあります。
星:そういう選手もいますね!私は3枚、4枚支給されても1枚しか使わなかったということもあるくらい身体になじんだ物がいいというこだわりはありました。
――ゴーグルは?
星:最新のものが私には合わなかったんです。飛び込んだ時に水が入ってしまったことが練習であって。水が入るかも!?と思うと、思いっきり飛び込めないんです。
水が絶対入らない私の骨格にフィットした何度も使ったゴーグルを使ってました。一貫して、自分にフィットするものがこだわりです。
――キャップは?
星:日本人選手はメッシュのキャップをかぶった上に、ゴムのシリコンのキャップをかぶるんです。合計2つかぶるという事です。
キャップには大きい小さいくらいの違いしかないんですけどね。あとはかぶり方としては耳を出す、出さないのこだわりは人によってあります。
――星さんはどっちでしたか?
星:私は耳を出さない派でした。水に入った時に少しでも耳の部分の抵抗を無くす為です。ただ耳までかぶると音が遮断されてしまって、声援とかも聞こえないので、違和感もありましたが慣れたら大丈夫でしたね。
――声援は聞こえたほうがいいんですか?
星:私は聞こえたほうが安心する感じはありましたね。泳いでいるときに聞こえないと孤独な感じがするんですよ。それが理由で、耳までかぶらない人もいたりします。
――初めて知りました!あとはメッシュのキャップの上にゴムキャップをかぶることも初めて知りましたよ。
星:わりと当たり前になっているんですけど、ゴムキャップをいきなりかぶると、髪にくっついてしまって、髪が引っ張られて痛かったりするんですよ。
外国人の選手は、それをやらないんで不思議がられるんです。 「なんで日本人は2枚もかぶってるんだ」って。
――それは男子もなんですか?
星:男子もですね。髪の毛が短い人はもしかしたら1枚だけかぶってるのかもしれませんが。髪が絡まることもないと思うので。
――私も含め、読者の皆さんも2枚かぶっていることは恐らく知らなかったのではと思います。星さんがマラソンを始めたと聞いたらみんな驚くんではないですか?
星:走っていると言うとびっくりされますね。水泳界にいる人は走るのが嫌いな人が多いので(笑)よくやるね、凄いね!とは言われます。
――最後に東京マラソンに向けて今の心境を教えてください。
星:もちろん楽しみもありますが、42.195Kmって長いじゃないですか。その中でどう自分のコンディションが変わっていくのかなっていう不安はあります。
水泳のレース中は、何も考える暇もないくらい数分で終わるので、飛び込む前のほうが緊張するんですけれど、マラソンは色んなことを考える時間もあったり、自分との戦いが何時間も続くのでどうなるかな?という不安はありますね。
でも楽しみです。まずは完走を目標にしていきます!
(了)
【プロフィール】
星 奈津美
Natsumi Hoshi
■生年月日:1990 年 8 月 21 日
■出身地:埼玉県 越谷市
■春日部共栄高校~早稲田大学卒~スウィン大教
2014 年
ミズノ株式会社入社 ミズノスイムチーム所属
2017 年 4 月~
東洋大学非常勤講師
2017 年 6 月~
(公財)日本水泳連盟 アスリート委員
【略歴】
競泳を始めたのは 1 歳半の時にベビースイミング教室に通い出したのがきっかけだった。
鷺後小学校・栄進中学校を経て春日部共栄高校に進学すると、1、2 年生の時にはインターハイの 200mバタフライで 2 連覇を達成した。
3 年生の時には、日本選手権 200mバタフライ決勝で、高校新記録 2 分 07 秒 38 をだして 2 位となり、北京オリンピック代表に選ばれた。
早稲田大学・スウィン大教に籍を置きながら競技を継続、2014 年にミズノ株式会社に入社し競技を続ける。
その間、2015 年 8 月 世界水泳選手権 200m バタフライ決勝で、競泳女子の日本選手として大会史上初の金メダル獲得の他、3 大会連続のオリンピック出場・2 大会連続でメダルを獲得した。
2016 年 10 月 国民体育大会をもって現役引退。現在、ミズノスイムチーム コーチを務めながら、水泳の普及活動を行っている。
【経歴】
2006 年 高校 1 年 インターハイ 200m バタフライで初めての全国大会優勝
2007 年 ジュニアパンパシフィック大会にて初の日本代表入り
2008 年 北京オリンピック 200m バタフライ 10 位
2010 年 パンパシフィック選手権 200m バラフライ 5 位
2011 年 国際大会代表派遣選考会 200m バラフライ優勝 日本新記録(2:06.05)
世界水泳選手権 200m バタフライ 4 位 日本新記録更新(2:05.91)
2012 年 ロンドンオリンピック代表選考会 バラフライ優勝 日本記録更新(2:04.69)
ロンドンオリンピック 200m バタフライ 銅メダル獲得
日本学生選手権 200m バタフライ 4 連覇達成
2013 年 世界水泳選手権 200m バタフライ 4 位
2014 年 パンパシフィック選手権 200m バタフライ 準優勝
アジア大会 100m バタフライ 4 位 200m バタフライ 準優勝
2015 年 世界水泳選手権 200m バタフライ 優勝
※日本競泳女子選手では大会史上初の金メダル
2016 年 日本選手権 200m バタフライ 7 連覇
リオデジャネイロオリンピック 200m バタフライ 銅メダル獲得
※2 大会連続メダル獲得は、日本人女子 3 人目