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苦悩のその先へ。2度の五輪を経験した西岡詩穂の新たなる挑戦Vol.1「積み重ねてきたことが自信に変わる喜びが一番の魅力」

東京オリンピックに向けて各競技で強化が進んでいる中で、筆者がもっとも期待している競技の一つがフェンシングだ。太田雄貴会長を筆頭に、協会スタッフや選手たちが一体となって、強化と普及の2つの側面から改革を推し進めているからだ。先日、筆者は、東京五輪の注目競技であるフェンシングの日本代表が活動するナショナルトレーニングセンターを訪れた。若い選手の台頭が目立つ女子フェンシング界だけに、練習場にいる選手の中には、まだあどけなさが残るものも多い。その中で、外国人のように長い手足とスラリとした身長のせいか、ひときわ存在感を放つ美人フェンサーがいる。女子フルーレのエース、西岡詩穂だ。過去2大会連続でオリンピック出場中の豊富な経験なエースに、東京への決意を語ってもらった。

Icon segawa.taisuke1 瀬川 泰祐(せがわたいすけ) | 2018/05/11
フェンシングを始めようと思ったきっかけを教えてください。

私が小学校6年生の時に、父の勧めで始めたのがきっかけです。もともと父は、“娘に何かスポーツをやらせたい”と考えていたようで、和歌山北高校フェンシング部の監督さんが父に「小6の娘がいるなら、フェンシングをやらせてみないか?」と声をかけてもらったらしく、そんな大人同士の軽いノリがきっかけで始めたという感じです(笑)。

自分の意思で始めたわけではなかったということですね。抵抗はありませんでしたか?

ものすごく抵抗ありました。“絶対イヤだ”って(笑)。“とにかく一回観に行ってみよう”って言われて、半ば無理やり連れて行かれて、はじめてフェンシングをやっているところをみたら、それまで私がみたこともないような動きだったので、子供ながらに「全然かっこよくない!」って思っちゃったんです(笑)。でも今度は「一回やってみなよ」って言われて、半強制的に剣を握らされて、フェンシングを始めることになりました。そのまま嫌々ながら続けていましたが、小学生の私に対して、高校生のお兄さんやお姉さんがものすごく優しく接してくれるんで、そこにいる人たちが好きになってしまい、そのまま、大好きな人たちと一緒にいたくてフェンシングを続けたという感じです。

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フェンシングが嫌いだった少女が、真剣にフェンシング取り組むようになったきっかけはなんだったのでしょうか? 

中学生になって、試合にも出るようになると、試合で負けることを経験しますよね。そもそもフェンシングが好きじゃないから、練習も真面目にやらなかったんです。だから負けて当たり前なんですけど、同じ年の子にボコボコにされたりすると、悔しくなってしまって一丁前に泣くんですよ。すると「練習しないんだから、当たり前でしょ」って父に怒られて。私も「まあ、そうだけど・・・」って不貞腐れて(笑)。でも、中2の冬の全国大会で負けた時に、監督に「本気で勝ちたいのなら、毎日練習においで」って言われたんです。そこから毎日練習に行くようになって、中3の夏に、はじめて全国大会で優勝した時に、「あ、楽しいな」って思って。はじめて勝つ喜びを知ることができたんです。もしあの時、勝たせてもらっていなかったら、いまはフェンシングをやってないかもしれませんね。

 もともとフェンシングが嫌いだった西岡選手が、いま感じているフェンシングの魅力とはなんでしょう?

対人競技なので、目の前の相手を負かしたときの気持ちの良さですかね。あとは、作戦を自分で考えて、その戦略がぴったり当てはまって勝利できた時は、今まで積み重ねてきたことが自信に変わるんです。その時の喜びが一番の魅力かもしれないですね。


第二話


取材・文・写真:瀬川泰祐