長距離ランナーの御託・藤原新Vol.4ショップ編 「アスレタって、履いた感じが物凄くアシックスっぽい」
ロンドン・オリンピックのマラソン日本代表、藤原新選手が選ぶ「10㎞走っても疲れの少ないスパイク」。前回の記事では、プーマのエヴォスピードは無評価の一方、パラメヒコを絶賛した。今回取り上げるのはニューバランスとアスレタ。ランニングシューズメーカー、新興メーカーの評価はいかに?
金子 達仁
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2016/09/16
<インタビュー第1回はこちら>
<インタビュー第2回はこちら>
<インタビュー第3回はこちら>
――それでは、ニューバランス行ってみましょうか。 FURON 2 PRO 。言うまでもなく、もともとはランニング・シューズのメーカーです。
藤原「あ、ダメだ。これじゃ長い距離は走りたくない」
――あらま。なぜでしょう。
藤原「アッパーが食い込むんです。ほら(といって、履いているシューズで爪先立ちをしてみせる)」
――なるほど。ちょうどインフロントの部分あたりに大きなでこぼこができていますね。
藤原「これ、一歩走るごとにこの凹凸が生まれるわけですよね。言い方を変えると、一歩ごとに足の一定部分に圧力がかかることになる。これで長い距離を走ったら、かなり痛くなってくるんじゃないかな」
――お気に召さなかったようで。では、同じくニューバランスのビザロプロを行ってみましょうか。
藤原「ああ、これもダメです。さっきのもそうだったけど、まずアッパーが固い。長距離をストレスなく走れるタイプのシューズじゃないですね。全体的に固い印象がするし、どちらかというとダッシュを重視して作られてるって気がする」
――なるほど。では、今度は藤原さんが絶対に履いたことがないであろうメーカーいってみますか。まずは、アスレタ。
藤原「あれ?」
――どうしました?
藤原「アスレタって、ブラジルのメーカーですよね」
――もともとは。ただ、このシューズに関しては日本で企画、デザインされたものと聞いています。
藤原「なんでだろう、履いた感じが物凄くアシックスっぽい」
――うわ、ちょっとびっくりしました。
藤原「なんでです?」
――聞くところによると、アスレタがスパイクを開発するにあたって、元アシックスの方が中心になっていたという話でしたので。さすがというか、ランナーの足って敏感なんですねえ。
藤原「足入れ感とか、アッパーの包み込んでくれる感じとか、ホントにアシックスっぽい。ただ、これがサッカー・スパイクだからなのかわかりませんけど、足裏から妙な突き上げがあるのは気になるかな。走れることは走れると思うんですけど」
――ほ~お、実はヴェルディの永井秀樹選手も足裏からの突き上げが気になる、と言っていたそうです。
藤原「お、じゃシロート目線もあながち間違ってなかったってことですね(笑)」
というわけで、ここから約2時間、次から次へと試着を重ねた藤原選手。中には学生時代に陸上競技をやっていたという店員さんが「ぜひ藤原さんに試していただきたい」と持ってきてくれたモデルがあったりと、大いに盛り上がった第一次選考となりました。
――ではそろそろ、実際にサッカー場へ持っていくスパイクを決めていただきたいのですが。
藤原「何足でもいいんですか?」
――何足でも。
藤原「あ~僕の好みだけで選ぶとすると、天然皮革のスパイクが多くなっちゃうかな」
――かまいませんが、でも、なぜ?
藤原「天然皮革って柔らかいし、自然なんですよね。これが人工的な素材になると、メーカーによっては、ランナーからすると“こりゃ致命的でしょ”っていいたくなるぐらい、アッパー部分に不自然なたわみができちゃうモデルがあった。その点、天然皮革のアッパーは足のどんな動きにもスムースについてきてくれるというか」
――メーカーごとの特徴、みたいなのはありましたか? アディダスならアディダスの味、みたいなものは。
藤原「それはあんまりなかったですね。というか、モデルが違うと履き味も全然違うっていうのが普通みたいで。たとえばアディダスだと、天然皮革を使ったパティークグローロっていうモデルは試着した中でもナンバーワンかなってぐらいいい感じだったんですけど、人工の素材を使っているメッシのモデルとかは、何がイヤなのかわかんなくなるぐらいイヤでした(笑)。とても同じメーカーが作っているとは思えないぐらいで、とにかく走りにくそう(笑)」
――全体を通じて、ランニングシューズとの違いみたいなものは感じました?
藤原「なんて言うんですかね、足の甲の部分にある…物凄く長いヤツもあれば、比較的短いヤツもある…」
――ベロ?
藤原「ベロ!(笑)すごく気になりました。ランシューにはないものなので」
――あ、そうか、ランニングシューズにはないか、あれ。
藤原「サッカーシューズに“ボールを蹴る”という機能が求められてることの証ですよね、ある意味。でも、純粋に走ることだけを考えるなら、はっきりいって邪魔(笑)」
――個人的には80年代から続くプーマの白ベロとか、めちゃくちゃ好きなんですが…。ま、それはともかく、そろそろ最終選考に残った何足かを、発表していただきましょうか。
藤原「了解です。まずは――」
Vol.5へ続く
取材協力 『GALLERY2』渋谷店
写真/㈱カルーテ菅優樹
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<インタビュー第3回はこちら>
――それでは、ニューバランス行ってみましょうか。 FURON 2 PRO 。言うまでもなく、もともとはランニング・シューズのメーカーです。
藤原「あ、ダメだ。これじゃ長い距離は走りたくない」
――あらま。なぜでしょう。
藤原「アッパーが食い込むんです。ほら(といって、履いているシューズで爪先立ちをしてみせる)」
――なるほど。ちょうどインフロントの部分あたりに大きなでこぼこができていますね。
藤原「これ、一歩走るごとにこの凹凸が生まれるわけですよね。言い方を変えると、一歩ごとに足の一定部分に圧力がかかることになる。これで長い距離を走ったら、かなり痛くなってくるんじゃないかな」
――お気に召さなかったようで。では、同じくニューバランスのビザロプロを行ってみましょうか。
藤原「ああ、これもダメです。さっきのもそうだったけど、まずアッパーが固い。長距離をストレスなく走れるタイプのシューズじゃないですね。全体的に固い印象がするし、どちらかというとダッシュを重視して作られてるって気がする」
――なるほど。では、今度は藤原さんが絶対に履いたことがないであろうメーカーいってみますか。まずは、アスレタ。
藤原「あれ?」
――どうしました?
藤原「アスレタって、ブラジルのメーカーですよね」
――もともとは。ただ、このシューズに関しては日本で企画、デザインされたものと聞いています。
藤原「なんでだろう、履いた感じが物凄くアシックスっぽい」
――うわ、ちょっとびっくりしました。
藤原「なんでです?」
――聞くところによると、アスレタがスパイクを開発するにあたって、元アシックスの方が中心になっていたという話でしたので。さすがというか、ランナーの足って敏感なんですねえ。
藤原「足入れ感とか、アッパーの包み込んでくれる感じとか、ホントにアシックスっぽい。ただ、これがサッカー・スパイクだからなのかわかりませんけど、足裏から妙な突き上げがあるのは気になるかな。走れることは走れると思うんですけど」
――ほ~お、実はヴェルディの永井秀樹選手も足裏からの突き上げが気になる、と言っていたそうです。
藤原「お、じゃシロート目線もあながち間違ってなかったってことですね(笑)」
というわけで、ここから約2時間、次から次へと試着を重ねた藤原選手。中には学生時代に陸上競技をやっていたという店員さんが「ぜひ藤原さんに試していただきたい」と持ってきてくれたモデルがあったりと、大いに盛り上がった第一次選考となりました。
――ではそろそろ、実際にサッカー場へ持っていくスパイクを決めていただきたいのですが。
藤原「何足でもいいんですか?」
――何足でも。
藤原「あ~僕の好みだけで選ぶとすると、天然皮革のスパイクが多くなっちゃうかな」
――かまいませんが、でも、なぜ?
藤原「天然皮革って柔らかいし、自然なんですよね。これが人工的な素材になると、メーカーによっては、ランナーからすると“こりゃ致命的でしょ”っていいたくなるぐらい、アッパー部分に不自然なたわみができちゃうモデルがあった。その点、天然皮革のアッパーは足のどんな動きにもスムースについてきてくれるというか」
――メーカーごとの特徴、みたいなのはありましたか? アディダスならアディダスの味、みたいなものは。
藤原「それはあんまりなかったですね。というか、モデルが違うと履き味も全然違うっていうのが普通みたいで。たとえばアディダスだと、天然皮革を使ったパティークグローロっていうモデルは試着した中でもナンバーワンかなってぐらいいい感じだったんですけど、人工の素材を使っているメッシのモデルとかは、何がイヤなのかわかんなくなるぐらいイヤでした(笑)。とても同じメーカーが作っているとは思えないぐらいで、とにかく走りにくそう(笑)」
――全体を通じて、ランニングシューズとの違いみたいなものは感じました?
藤原「なんて言うんですかね、足の甲の部分にある…物凄く長いヤツもあれば、比較的短いヤツもある…」
――ベロ?
藤原「ベロ!(笑)すごく気になりました。ランシューにはないものなので」
――あ、そうか、ランニングシューズにはないか、あれ。
藤原「サッカーシューズに“ボールを蹴る”という機能が求められてることの証ですよね、ある意味。でも、純粋に走ることだけを考えるなら、はっきりいって邪魔(笑)」
――個人的には80年代から続くプーマの白ベロとか、めちゃくちゃ好きなんですが…。ま、それはともかく、そろそろ最終選考に残った何足かを、発表していただきましょうか。
藤原「了解です。まずは――」
Vol.5へ続く
取材協力 『GALLERY2』渋谷店
写真/㈱カルーテ菅優樹