俳優が語るギア Vol.4 勝村政信「元旦にキングカズ、北澤、前園と自主トレをする53歳」
フットブレインの司会でお馴染みの俳優・勝村政信。53歳を迎えても、現役でサッカーを続けるフットボーラーでもある。歳を重ねても「サッカーがうまくなりたい!」という心を持ち続け、プロ選手とともにトレーニングをする男が語る、サッカーと芝居の共通点とは?
菊池 康平
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2016/12/01
<インタビュー第1回はこちら>
<インタビュー第2回はこちら>
<インタビュー第3回はこちら>
菊池:今年で53歳を迎えられた勝村さんですが、未だにサッカーを続けていられる秘訣はありますか? キングカズさんよりも年齢は上ですよね。
勝村:今年の元旦に、カズさんのグアムキャンプに一緒に行きましたよ。「何やってるんだろ俺!」って思いながら(笑)。朝練だけでしたけど、スタッフが止めないのよ。止めるだろ普通、俺、最年長だぞって(笑)
菊池:しかも、勝村さんはプロサッカー選手ではないですもんね。
勝村:でも、嬉しかったなぁ。周りにいるのは神様ばっかりで。きーちゃん(北澤豪)もいたし、ゾノちゃん(前園真聖)もいたし。松井大輔くんもいたし。他にもFC横浜の現役選手。笑
菊池:錚々たるメンバーですね!
勝村:何で俺、一緒に走ってるんだろうって思いましたから。
菊池:しかも元旦から。
勝村:おじいさんなのに(笑)。やっぱり、続けることですよ。サッカーが好きだし、今でも上手くなりたいもん。
菊池:今でも上手くなりたい!という想いを持ち続けていることが凄いです。現在は週に何回くらい、ボールを蹴っているのですか?
勝村:仕事のスケジュール次第ですが、週に1〜2回くらいですかね。いつもの練習日に仕事で行けない時は、平日の夕方にトリプレッタというチームの小学生のカテゴリーとかに混ざって蹴ってます。
菊池:そうなんですね。出来る時に、時間を見つけて練習しておこうと。
勝村:後ろから子供達の足を削ってますから(笑)。「ずるいよ」って言ってくるけど「こんなの世界では当たり前だよ」って(笑)
菊池:勝村さんとは、よく試合をさせてもらっていますが、凄く走っていて、ピッチの中では年齢がわからないほどです。なぜそれほど走れるのでしょう?
勝村: 続けているからでしょうね。ただ最近は、抜いた相手に追い越されるという特殊な事件が起きるんですよ。笑。もう自分の中ではわからない現象が起こりはじめていて。
菊池: 抜いたのに、その相手が目の前に現れるってことですね(笑)
勝村: マジックです。抜いても嬉しいのは一瞬だけという…。そういえばスパイク関連の話として、ガンバ大阪の吹田スタジアムの、こけら落としのOB戦に呼んで頂いたことがありました。
ちょうどその日のロケが石川県の金沢で終わって「金沢打ち上げをやろう!」ってことになったんですよ。朝一でサンダーバードという列車に乗って金沢から大阪に行って試合をして、そのままサンダーバードに乗って、金沢に戻って打ち上げをしました。
菊池: ハンパない体力とサッカー愛ですね!!
勝村: こけら落としだから当然です。笑。こけら落とし用のスパイクをということで、笑、ガンバカラーのスパイクをミズノから送って頂いて。青と黒の、素晴らしいスパイクでした。
菊池: どんなメンバーが参加していたのですか?
勝村: 豪華なガンバOBの皆様です。釜本さんもいらして、豪華なOBの前に来て「ボール取りにくんなよ!」って脅かしてました(笑)
菊池: 怖いですね(笑)
勝村: 豪華な大人たちが「はいっ!」って。笑
菊池: さすが世界の釜本さんです。話は変わりますが、サッカーへのこだわりと俳優としてのこだわりに共通点はありますか? 舞台上のポジショニングとサッカーでのポジショニングなどの考え方は、似ているのでしょうか?
勝村: 僕は芝居を始めた頃から「サッカーと芝居は同じ」と言い放ってます。笑。いま、ポジショニングという言葉が出ましたが、演劇だと「ミザンセーヌ」と言います。
菊池 「ミザンセーヌ」という言葉は、はじめて聞きました。
勝村: フランス語で「舞台に置く」と言う意味ですが、位置取りとして使ってます。ボールが言葉だとしたら、沢山しゃべる人は沢山ボールをさわる人で、ボランチと同じように舞台をコントロールします。
優しいパス、強いパス、時にスルーパスを繰り出すように台詞を扱います。ミザンセーヌ、位置取りも能力の高い人は役が輝くような絶妙な位置に行くんですよ。
菊池:凄く興味深いです。
勝村:そういうのって、演劇だとワークショップなどで勉強するのですが、僕らの頃は日本に正しいワークショップが出来る人がほとんどいなかったんですね。で、僕は若い俳優にサッカーボールを使って動きを説明するんです。
「他者と関わることで、もっと有機的に動けるでしょ?」と説明して、動機を与えたりします。サッカーの得点と言う答えを、演劇では演劇的に逆算して言葉と言うボールをゴールネットを揺らすように、やわらかく固めて行きます。だから言葉とボールはイコールになります。演劇的身体ができていないと、動きに力が入ってしまいます。サッカーが得意じゃない人達はボールって扱えないでしょ。
そうすると、自我が消えていくんですよ。ボールに意識が行くから動きや感情がストレートになって行く。しかも段々楽しくなってくる。感情が解放されて行くんです。演劇のワークショップでは、基本説明はしません。楽しかったり、悔しかったり、色々な気持ちが出ればいいんですよ。それを自分のストックにしていって、あるとき追体験をする時に、その引き出しを開けて出す。
菊池 サッカーだと動機がボールになる点など「なるほど!」と思う話ばかりで、サッカーと芝居の共通点が段々とわかってきました。
インタビュー文・写真 菊池康平&三浦知良写真(清水知良)
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菊池:今年で53歳を迎えられた勝村さんですが、未だにサッカーを続けていられる秘訣はありますか? キングカズさんよりも年齢は上ですよね。
勝村:今年の元旦に、カズさんのグアムキャンプに一緒に行きましたよ。「何やってるんだろ俺!」って思いながら(笑)。朝練だけでしたけど、スタッフが止めないのよ。止めるだろ普通、俺、最年長だぞって(笑)
菊池:しかも、勝村さんはプロサッカー選手ではないですもんね。
勝村:でも、嬉しかったなぁ。周りにいるのは神様ばっかりで。きーちゃん(北澤豪)もいたし、ゾノちゃん(前園真聖)もいたし。松井大輔くんもいたし。他にもFC横浜の現役選手。笑
菊池:錚々たるメンバーですね!
勝村:何で俺、一緒に走ってるんだろうって思いましたから。
菊池:しかも元旦から。
勝村:おじいさんなのに(笑)。やっぱり、続けることですよ。サッカーが好きだし、今でも上手くなりたいもん。
菊池:今でも上手くなりたい!という想いを持ち続けていることが凄いです。現在は週に何回くらい、ボールを蹴っているのですか?
勝村:仕事のスケジュール次第ですが、週に1〜2回くらいですかね。いつもの練習日に仕事で行けない時は、平日の夕方にトリプレッタというチームの小学生のカテゴリーとかに混ざって蹴ってます。
菊池:そうなんですね。出来る時に、時間を見つけて練習しておこうと。
勝村:後ろから子供達の足を削ってますから(笑)。「ずるいよ」って言ってくるけど「こんなの世界では当たり前だよ」って(笑)
菊池:勝村さんとは、よく試合をさせてもらっていますが、凄く走っていて、ピッチの中では年齢がわからないほどです。なぜそれほど走れるのでしょう?
勝村: 続けているからでしょうね。ただ最近は、抜いた相手に追い越されるという特殊な事件が起きるんですよ。笑。もう自分の中ではわからない現象が起こりはじめていて。
菊池: 抜いたのに、その相手が目の前に現れるってことですね(笑)
勝村: マジックです。抜いても嬉しいのは一瞬だけという…。そういえばスパイク関連の話として、ガンバ大阪の吹田スタジアムの、こけら落としのOB戦に呼んで頂いたことがありました。
ちょうどその日のロケが石川県の金沢で終わって「金沢打ち上げをやろう!」ってことになったんですよ。朝一でサンダーバードという列車に乗って金沢から大阪に行って試合をして、そのままサンダーバードに乗って、金沢に戻って打ち上げをしました。
菊池: ハンパない体力とサッカー愛ですね!!
勝村: こけら落としだから当然です。笑。こけら落とし用のスパイクをということで、笑、ガンバカラーのスパイクをミズノから送って頂いて。青と黒の、素晴らしいスパイクでした。
菊池: どんなメンバーが参加していたのですか?
勝村: 豪華なガンバOBの皆様です。釜本さんもいらして、豪華なOBの前に来て「ボール取りにくんなよ!」って脅かしてました(笑)
菊池: 怖いですね(笑)
勝村: 豪華な大人たちが「はいっ!」って。笑
菊池: さすが世界の釜本さんです。話は変わりますが、サッカーへのこだわりと俳優としてのこだわりに共通点はありますか? 舞台上のポジショニングとサッカーでのポジショニングなどの考え方は、似ているのでしょうか?
勝村: 僕は芝居を始めた頃から「サッカーと芝居は同じ」と言い放ってます。笑。いま、ポジショニングという言葉が出ましたが、演劇だと「ミザンセーヌ」と言います。
菊池 「ミザンセーヌ」という言葉は、はじめて聞きました。
勝村: フランス語で「舞台に置く」と言う意味ですが、位置取りとして使ってます。ボールが言葉だとしたら、沢山しゃべる人は沢山ボールをさわる人で、ボランチと同じように舞台をコントロールします。
優しいパス、強いパス、時にスルーパスを繰り出すように台詞を扱います。ミザンセーヌ、位置取りも能力の高い人は役が輝くような絶妙な位置に行くんですよ。
菊池:凄く興味深いです。
勝村:そういうのって、演劇だとワークショップなどで勉強するのですが、僕らの頃は日本に正しいワークショップが出来る人がほとんどいなかったんですね。で、僕は若い俳優にサッカーボールを使って動きを説明するんです。
「他者と関わることで、もっと有機的に動けるでしょ?」と説明して、動機を与えたりします。サッカーの得点と言う答えを、演劇では演劇的に逆算して言葉と言うボールをゴールネットを揺らすように、やわらかく固めて行きます。だから言葉とボールはイコールになります。演劇的身体ができていないと、動きに力が入ってしまいます。サッカーが得意じゃない人達はボールって扱えないでしょ。
そうすると、自我が消えていくんですよ。ボールに意識が行くから動きや感情がストレートになって行く。しかも段々楽しくなってくる。感情が解放されて行くんです。演劇のワークショップでは、基本説明はしません。楽しかったり、悔しかったり、色々な気持ちが出ればいいんですよ。それを自分のストックにしていって、あるとき追体験をする時に、その引き出しを開けて出す。
菊池 サッカーだと動機がボールになる点など「なるほど!」と思う話ばかりで、サッカーと芝居の共通点が段々とわかってきました。
インタビュー文・写真 菊池康平&三浦知良写真(清水知良)