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新たな風を吹き込んだ2024シーズン。読売ジャイアンツ新監督、阿部慎之助の挑戦
読売ジャイアンツが4年ぶりにセ・リーグ優勝を飾った。歓喜の輪に涙を流して加わったのは阿部慎之助新監督。変化なくして進化なし。目指すのはジャイアンツの新たな監督像。常勝軍団の再建として自分自身が変わり新しい風を巻き起こしていった。※トップ画像出典/photoAC
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人見知りな新監督が自らを変えチームに新風を吹き込む
2月1日、宮崎。キャンプインの朝をホテルで迎えた監督は、原辰徳氏の背番号「8」と長嶋茂雄監督の背番号「3」を掛け合わせた「83番」のユニフォームを着ていた。「僕を育てていただいた2人の番号なので、しっかり受け継いで1年間戦っていきたい」と語る監督。その日は、阿部が監督として新たなスタートを切った日でもあった。
阿部は原監督の後を受け継ぐ20代目の監督として就任し、必勝祈願の絵馬には今シーズンのジャイアンツのスローガンでもある「新風」を記した。昨年10月、監督としての初日を迎えた阿部は、「まだ実感もないのですけど。僕は人見知りだし、口下手だし。しっかりしなきゃいけないのは監督なんだけど。僕も変わりますしみんなも変わってほしいし。そしたら絶対優勝できると思うから。皆さんどうぞよろしくお願いします」と、メンバーに自らの想いを伝えた。
新たな風を吹き込むために、自らの変革を決意した阿部監督は、早速選手たちの元へ向かい、まず指導したのはオコエ瑠偉だった。「絞ってから、つく足だけでタイミングを取る」とアドバイスし、実際にスイングさせると、「強さが出た」と、二軍の桑田真澄監督からも褒められる結果となった。オコエ本人も「全然違った」と手応えを感じている様子だ。そして新風のカギは、若手選手の底上げも大切である。特に高卒2年目の浅野翔吾には、「(彼は)基本的に不器用なので遊びを入れるじゃないですけど、そういうのも大事だよと言いながら。もともとポテンシャルが高いので期待をしている。遊び心から学べることもあるというのは僕自身がやってきてわかるので、いろいろつかんでほしい」と語った。
この日、阿部監督は遊び心を取り入れたタイミングの取り方を指導した。普段より大きく足を上げ、ゆったりとしたスイングをするように指導したところ、浅野は「現役時代も知っているので素直に聞ける。ありがたいと思っています」と話し、監督の期待に応えた。結果、浅野は今シーズンの初ヒットで満塁ホームランを放ち、その後は持ち前のパワーに柔軟性が加わり、8月以降、一軍に定着するまで成長を遂げた。また時には監督自らバットを携え、バッティングゲージで選手たちに手本を見せる場面もあった。その様子を見つめる2年目の門脇誠は、「打ってるのを見て再現性がすごいんだって感じました。自分の引き出しも増えるし、ヒントを得られるのでやってたら見るようにしていますね」と話した。
来シーズンは悲願の日本一奪還へ。新たな風を巻き起こす
チームに吹き込んだ新たな風。前半戦を首位で折り返し、2年連続Bクラスからの脱却に成功した阿部巨人。優勝争いが繰り広げられている9月の真っ只中、監督としてリーグ戦を初めて迎えた阿部に、現役時代と監督としての心境の違いについて尋ねた。「誰をスタメンに使うか悩む。理想は固定だと言ったのですが、理想と現実は違うしいろんな方法で勝ってきたと思うので」「継投がハマったり代打がハマったり、勝てば楽しい」と語り、監督業の楽しさを感じている様子だった。
今シーズンの阿部巨人を象徴する試合が、9月7日首位で迎えたDeNA戦。代打に送った、一軍に昇格させたばかりの中山礼都が起死回生の同点タイムリーヒットを飛ばし延長戦へ。中山と同じ世代の横川凱投手は、2イニング無失点の好投を見せる。そして、プロ9年目のオコエが初めてサヨナラホームランを放った瞬間は、マンツーマン指導の成果が出た瞬間でもあった。監督は、「選手を信用してあげるというのはずっと年頭に置いてやっていました」と語り、信じて起用した選手たちが試合を決めていく姿に満足感を覚えていた。
そして9月28日、広島戦で読売ジャイアンツは4年ぶりとなる39回目の優勝を達成した。この喜びをどうしても伝えたく、監督は長嶋終身名誉監督の元にも足を運んだ。クライマックスシリーズファイナルステージでは、ベテランと若手が躍動し、終盤には崖っぷちからの2連勝。阿部采配に応えるように、選手たちは気迫を見せ、必死に戦い抜いたが、横浜DeNAベイスターズの勝利によりシーズンは幕を閉じた。
監督としての今シーズンの戦いが終わった阿部は、「2つ勝って盛り返せたのは手応えを感じていて。2つ勝てたというのは必ず来年につながる」と語り、来シーズンへの意欲を見せた。そして、最後に来シーズンへの公約も我々に残してくれた。「日本一になれたら、もっとすばらしい映像を提供できればなと思いますし、パレードの車にカメラを持ってあの景色を視聴者の人達が見れるようにしたいなと思います」と語り、2024年のジャイアンツに新たな風を吹き込んだ阿部巨人は、悲願の日本一奪還を目指して戦い続けることを誓った。来シーズンも新たな畔で旋風を巻き起こすことだろう。
『GIANTS 2024 -INSIDE- EPISODE3 : 新風 阿部慎之助の誓い』より
※記事内の情報は放送当時の内容を元に編集して配信しています