野球浪人を経て、プロの世界へ。尊敬するチームメイトからの刺激と2年目の苦悩。加藤優インタビューvol.2
高校生ながら社会人クラブチームに入る選択をした加藤優選手。高校卒業後、しばらくしてからはチームの親会社での仕事も退職し、アルバイトをしながら野球中心の生活をするという茨の道を歩んで、女子プロ野球選手としてのキャリアを切り開くことになる。 ルーキーだった昨季は打率.281の成績を残し、新人特別賞を受賞した。しかし、今季は思うような成績が残せず苦しんでいる。 それでも8月のオールスターゲームでは2安打3打点を放って存在感を示し、9月4日の対京都戦では2本のタイムリーを放ち、自身プロ初のヒロインとしてお立ち台に立った。 プロ入り前後の心境の変化と2年目のシーズンについて、どのように感じているのかだろうか。
森 大樹
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2017/10/05
<インタビュー第1回はこちら>
-高校卒業後は女子プロ野球を目指して野球浪人していますね。
アサヒトラストでは仕事をしながら野球をしていたわけですが、より上を目指すには練習量が足りていないと感じていました。そこでまずは練習環境を整えて、それから女子プロ野球の入団テストを受けたいと考えました。
せっかく会社に入れたのに辞めるとなれば普通だったら反対されると思うのですが、練習環境を整えたいと両親に話したら、OKしてもらえたので、浪人することにしました。
-自分自身で自分のことを律してやる難しさはあったのではないですか?
いくらでも自分に甘えようと思えば甘えられてしまう環境ではありましたが、それ以上に野球ができないことに対するもどかしさを強く感じてきたので、できる環境が目の前にあるなら無駄にしたくないという気持ちになれました。
だからこそ女子プロ野球の入団テストにも合格できたのだと思いますし、あの当時の自分なりには頑張っていたのだと振り返って思います。
-普段のトレーニングやケアの方法については自分で勉強したのですか。
当時アルバイトしていたのがデイサービスをしているところで、知り合いの野球関係の方がやっていました。資格は持っていないですが、アサヒトラストの時もデイサービスの仕事をしていたということで働かせてもらっていたんです。
そこには理学療法士の方もいて、昼休みにはそこで体幹トレーニングを見てもらっていました。バイト先の人に協力してもらって、効果も上がっていたと思います。 おじいちゃんやおばあちゃんもすごく応援してくれて、嬉しかったですね。
-過去には日本代表候補に挙がるも落選しています。今チームメイトや対戦相手にも代表選手がいると思いますが、そういった人から感じているものはありますか。
アマチュア時代は日の丸を背負うことが一番の目標でしたが、今は私の中でそれが変わってきています。プロに来てからはやはりプロが一番レベルが高いと感じています。
今の日本代表はアマチュア選手中心で構成されていて、そこに常時5人前後の女子プロ野球の中でも特に経験豊富で優秀な選手が入る感じなので、そこに選ばれるくらいの実力をつけないと仮に呼ばれても試合に出られないと感じました。
代表に選ばれていなくてもプロにはアマチュアよりうまい選手がたくさんいますし、野球に対しての意識1つ取っても強く持っている人ばかりなので、今は女子プロ野球界の中での一番を目指すということが目標ですし、もしそうなることができれば日の丸を背負う機会も出てくると思います。
だから、尊敬できるチームメイトの中で自分をとにかく磨いていきたいです。 特に川端友紀(#23=埼玉アストライア)さんはすべてのプレーにおいて、お手本になる尊敬できる選手ですね。
あと岩見(香枝・#10=埼玉アストライア)選手にはウェイトトレーニングを見てもらったりしています。岩見選手は日本体育大学でソフトボールをやっていたのですが、その頃に私がいた厚木商業高校に練習に来たりしていて、当時からめっちゃうまいなと思ってプレーを見ていました。 そういう選手と一緒のチームでプレーできていることを無駄にせず、いろいろなものを吸収したいです。
-厳しい夏場をしっかり乗り切るために、岩見選手からは食事についても教えてもらったようですね。
食に対しても岩見選手は意識が高いので参考にしてます。そのおかげもあって、今年は昨年よりは体重も落ちずに踏ん張れていた方です。
それでも落ちてしまったいるので、もっと食べないといけないですね。調子にも関係しているとは感じたので、パフォーマンスを出すためにはなるべく体重は変わらない方がいいと思っています。
まだ体重の変動なく、夏を乗り切ったことがないので、それができた時にどうパフォーマンスが変わるのかは来年以降の課題です。
年に1度の神宮球場での試合開催。今年は7月に行われ、その広報活動面でも大きく貢献した。(左は川端友紀選手)
-女子プロ野球に実際に入ってみて分かった面白さ、楽しさを教えてください。
プロになっていなかったら7月の神宮での試合もそうですけど、こんなにたくさんの人の前でプレーすることはなかったですし、実際にその場に立った人しか感じられないものを体感できたことで気合いも入って、引き締まる思いがしました。 あのような感覚をもっと味わえるようにたくさんの人に球場に来てもらいたいですね。
-2年目を迎え、シーズンの過ごし方として見えてきた部分はありますか?
昨年よりは少し心の余裕を持ってできているところもあるとは思いますが、成績は同じ時期と比べて落ちているので、過ごし方として見えてくるのはもう少し先になるのかな、と思っています。そこまでの余裕はないので。
-今季の成績が思わしくないことについては自身ではどのように分析していますか?
今年はシーズンの初めから数字が良くなかったので、多少は体重の減少というのも関係はあるかもしれませんが、原因はそこではないと思っています。 バッティングに関してすごく悩んで、冬場から少しフォームを変えたりしていた中で自分の振りができなくなって、分からなくなっていったところがありました。
-打撃に関しての意識や独自に取り組んでいることを教えてください。
アマチュア時代は引っ張りが多かったのですが、プロに入ってからは打球が反対方向にしか飛ばない時期がありました。 悪くなるとバットのヘッドが下がる癖があるので、よく言われることですが、そうならないようにバットを上から出すようにしています。そう意識して初めてレベルスイングになるくらいなので。
プロに入ってからはずっと詰まらないようにすることを言われてきました。正直初めの頃はその意味が理解できないでいたのですが、ようやく最近分かってきました。
詰まれば当然ヒットの確率は下がるので、そうならないためにもタイミングを早く取って間を作り、泳がされた状態でも強く振り抜けるようにしています。
私の調整方法としてはロングティーで強いゴロを打ってから、打球の角度を上げていくようにしています。肩の開きについても早くならないように意識しています。素振りに関しては基本木のバットでやっています。
ちなみに元々プロに入る前は中学生の頃から1mくらいある長尺のバットでずっと練習をしていました。マスコットバットも含めて、複数のバットの種類を使い分けて振る力は付けてきました。スイングスピードの速さはそこで培われたと思っています。
vol.3へ続く http://king-gear.com/articles/534
加藤優選手が所属する埼玉アストライアのホーム最終戦が10月9日(月・祝)14:00〜、10日(火)18:00〜いずれも川口市営球場で行われます。 詳しくは埼玉アストライアHPをご覧ください。
-高校卒業後は女子プロ野球を目指して野球浪人していますね。
アサヒトラストでは仕事をしながら野球をしていたわけですが、より上を目指すには練習量が足りていないと感じていました。そこでまずは練習環境を整えて、それから女子プロ野球の入団テストを受けたいと考えました。
せっかく会社に入れたのに辞めるとなれば普通だったら反対されると思うのですが、練習環境を整えたいと両親に話したら、OKしてもらえたので、浪人することにしました。
-自分自身で自分のことを律してやる難しさはあったのではないですか?
いくらでも自分に甘えようと思えば甘えられてしまう環境ではありましたが、それ以上に野球ができないことに対するもどかしさを強く感じてきたので、できる環境が目の前にあるなら無駄にしたくないという気持ちになれました。
だからこそ女子プロ野球の入団テストにも合格できたのだと思いますし、あの当時の自分なりには頑張っていたのだと振り返って思います。
-普段のトレーニングやケアの方法については自分で勉強したのですか。
当時アルバイトしていたのがデイサービスをしているところで、知り合いの野球関係の方がやっていました。資格は持っていないですが、アサヒトラストの時もデイサービスの仕事をしていたということで働かせてもらっていたんです。
そこには理学療法士の方もいて、昼休みにはそこで体幹トレーニングを見てもらっていました。バイト先の人に協力してもらって、効果も上がっていたと思います。 おじいちゃんやおばあちゃんもすごく応援してくれて、嬉しかったですね。
-過去には日本代表候補に挙がるも落選しています。今チームメイトや対戦相手にも代表選手がいると思いますが、そういった人から感じているものはありますか。
アマチュア時代は日の丸を背負うことが一番の目標でしたが、今は私の中でそれが変わってきています。プロに来てからはやはりプロが一番レベルが高いと感じています。
今の日本代表はアマチュア選手中心で構成されていて、そこに常時5人前後の女子プロ野球の中でも特に経験豊富で優秀な選手が入る感じなので、そこに選ばれるくらいの実力をつけないと仮に呼ばれても試合に出られないと感じました。
代表に選ばれていなくてもプロにはアマチュアよりうまい選手がたくさんいますし、野球に対しての意識1つ取っても強く持っている人ばかりなので、今は女子プロ野球界の中での一番を目指すということが目標ですし、もしそうなることができれば日の丸を背負う機会も出てくると思います。
だから、尊敬できるチームメイトの中で自分をとにかく磨いていきたいです。 特に川端友紀(#23=埼玉アストライア)さんはすべてのプレーにおいて、お手本になる尊敬できる選手ですね。
あと岩見(香枝・#10=埼玉アストライア)選手にはウェイトトレーニングを見てもらったりしています。岩見選手は日本体育大学でソフトボールをやっていたのですが、その頃に私がいた厚木商業高校に練習に来たりしていて、当時からめっちゃうまいなと思ってプレーを見ていました。 そういう選手と一緒のチームでプレーできていることを無駄にせず、いろいろなものを吸収したいです。
-厳しい夏場をしっかり乗り切るために、岩見選手からは食事についても教えてもらったようですね。
食に対しても岩見選手は意識が高いので参考にしてます。そのおかげもあって、今年は昨年よりは体重も落ちずに踏ん張れていた方です。
それでも落ちてしまったいるので、もっと食べないといけないですね。調子にも関係しているとは感じたので、パフォーマンスを出すためにはなるべく体重は変わらない方がいいと思っています。
まだ体重の変動なく、夏を乗り切ったことがないので、それができた時にどうパフォーマンスが変わるのかは来年以降の課題です。
年に1度の神宮球場での試合開催。今年は7月に行われ、その広報活動面でも大きく貢献した。(左は川端友紀選手)
-女子プロ野球に実際に入ってみて分かった面白さ、楽しさを教えてください。
プロになっていなかったら7月の神宮での試合もそうですけど、こんなにたくさんの人の前でプレーすることはなかったですし、実際にその場に立った人しか感じられないものを体感できたことで気合いも入って、引き締まる思いがしました。 あのような感覚をもっと味わえるようにたくさんの人に球場に来てもらいたいですね。
-2年目を迎え、シーズンの過ごし方として見えてきた部分はありますか?
昨年よりは少し心の余裕を持ってできているところもあるとは思いますが、成績は同じ時期と比べて落ちているので、過ごし方として見えてくるのはもう少し先になるのかな、と思っています。そこまでの余裕はないので。
-今季の成績が思わしくないことについては自身ではどのように分析していますか?
今年はシーズンの初めから数字が良くなかったので、多少は体重の減少というのも関係はあるかもしれませんが、原因はそこではないと思っています。 バッティングに関してすごく悩んで、冬場から少しフォームを変えたりしていた中で自分の振りができなくなって、分からなくなっていったところがありました。
-打撃に関しての意識や独自に取り組んでいることを教えてください。
アマチュア時代は引っ張りが多かったのですが、プロに入ってからは打球が反対方向にしか飛ばない時期がありました。 悪くなるとバットのヘッドが下がる癖があるので、よく言われることですが、そうならないようにバットを上から出すようにしています。そう意識して初めてレベルスイングになるくらいなので。
プロに入ってからはずっと詰まらないようにすることを言われてきました。正直初めの頃はその意味が理解できないでいたのですが、ようやく最近分かってきました。
詰まれば当然ヒットの確率は下がるので、そうならないためにもタイミングを早く取って間を作り、泳がされた状態でも強く振り抜けるようにしています。
私の調整方法としてはロングティーで強いゴロを打ってから、打球の角度を上げていくようにしています。肩の開きについても早くならないように意識しています。素振りに関しては基本木のバットでやっています。
ちなみに元々プロに入る前は中学生の頃から1mくらいある長尺のバットでずっと練習をしていました。マスコットバットも含めて、複数のバットの種類を使い分けて振る力は付けてきました。スイングスピードの速さはそこで培われたと思っています。
vol.3へ続く http://king-gear.com/articles/534
加藤優選手が所属する埼玉アストライアのホーム最終戦が10月9日(月・祝)14:00〜、10日(火)18:00〜いずれも川口市営球場で行われます。 詳しくは埼玉アストライアHPをご覧ください。