覚悟のサッカー人生を歩む 梅崎司インタビュアーvol.2『僕にとってサッカーは『心の拠り所』』
今季、10年間在籍した浦和レッズを離れ、湘南ベルマーレへと完全移籍をしたMF梅崎司に愛用するスパイクについて聞いてみると、そこには彼の壮絶な生い立ちと、サッカーでのし上がって来た強固なメンタリティー、そして熱い情熱と謙虚な心が浮かび上がって来た。梅崎司の衝撃的な半生を綴った話題作『15歳サッカーで生きると誓った日』の共同制作者 安藤隆人がインタビュアーになり、その本音に迫った。 vol.2では、彼のスパイクに対する強い意識を語ってくれた。
安藤隆人
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2018/01/27
vol.1はこちらから
梅崎は幼少期に壮絶な経験をして来た。
実の父親の母親に対するDVを生まれた頃からずっと目の当たりにし、小学校低学年から始めたサッカーに対し、父親に否定され続けた。 家庭内のアンバランスの中で、サッカーだけが彼にとっての希望の光であり、それを全力で応援してくれる母親の存在こそが、彼の心の支えであった。
だからこそ、彼はずっとわがままを言うことが出来なかった。大好きになったサッカーを続けさせてもらうこと自体が、彼の思う『わがまま』であった。
これ以上のわがままを言って、母親を困らせたり、父親の逆鱗に触れてサッカーを取り上げられたくない。彼はこの一心から欲しいものを多く我慢し、その中で母親に買ってもらったスパイクを何よりも大切に使い続けた。
「壊れて来たから、次」
彼はその想いを抱くことは無かった。壊れて来たら自分で修理をする。壊れないように手入れをきちんとする。幼少の頃から彼はそれをやり続けて来た。
スパイクを大切にしながらも、サッカーがうまくなるために彼は相当な努力を積んだ。身体がひと際小さかった彼は、大きな選手に負けないようにドリブルのキレを磨き続けた。
朝早く起きて朝練をし、クラブの練習の後も一人で暗くなるまでボールを蹴り続けた。当然、努力すれば努力するほど、スパイクの消耗も激しくなるが、彼は何度も修理をして履き潰れるまで履き続けた―。
―改めて、梅崎選手にとってスパイクとはどういう存在ですか?
梅崎:僕にとってスパイクは『高価なもの』ですね。僕は長崎で小学校のときからサッカーを始めたのですが、親にスパイクを買ってもらうこと自体が申し訳ない気持ちがあった。
先月、出版した『15歳 サッカーで生きると誓った日』(東邦出版)に書き記したのですが、僕の家庭はかなりの『複雑な家庭』で、毎日父親の暴力におびえる生活を送っていました。その中で、サッカーは僕にとっての一筋の光であって、自分の存在を肯定してもらえる唯一と言っても良いほどのツールでした。
サッカーをやっているときは家庭のことなど、つらいことが一切忘れられるし、何より僕の唯一の味方だった母親が笑顔になってくれる。それがたまらなく嬉しかったし、僕にとってサッカーは『心の拠り所』だったんです。
でも、その一方で父親は僕のサッカーをずっと否定し続けました。
「お前じゃ無理だからとっとと辞めて勉強しろ」「お前みたいなチビに何が出来る」「無意味だから辞めろ」とまで言われました。
それを母が必死で僕からサッカーを取り上げられないように守ってくれた。だからこそ、安易に「あのスパイクが欲しい」とか口が裂けても言えなかったんです。
―母親が必死で守ってくれたサッカーを続けるためには、努力することはもちろん、贅沢を言わないことも入っていたのですね。
梅崎:はい。スパイクが高価なものだと小学生のときから分かっていたし、母にスパイクを買ってもらったときも「大切に使いなさい」と言われていたので、本当に大事に、大事に使いました。
僕は『プリモJ』というスパイクが好きで、そのスパイクは安くて、僕の足にもフィットしていたんです。それでそのスパイクをずっと使っていました。
―梅崎選手のプレースタイルだとスパイクの消耗も早いような気がします。
梅崎:当時は物凄く身長が低かったですし、小学校時代は良いけど、中学、高校となると相手の身体も大きくなるので、よりプレーのキレを追求するようになりました。そうなると当然、ターンや切り返しなどの鋭さを求めるようになって、さらに朝練、夜練とか自主練も本当にたくさんやったので、消耗度は本当に激しくなりました。
でも、そんなに何足も買える訳ではないので、手入れは本当にずっと丁寧にやっていました。当時、『シューグー』と言って、スパイクの革の部分とソールの部分が剥がれたときに、間を埋めてくっつける液があったんです。
それを剥がれる度に塗ってくっつけてまた履いて、そしてまた剥がれて、また塗って履くの繰り返しでした。さすがにもうこれ以上塗ってもダメだというときだけ、母におねだりをしましたね(笑)。
―凄くその姿が目に浮かびます。小さい頃から本当に大切に使っていたのですね。
梅崎:そう簡単に買えない環境と、母のしつけが大きかったと思います。スパイクに限らず、常に「物は大切にしなさい」と言われていましたから。
vol.3に続く。 http://king-gear.com/articles/665
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実の父親の母親に対するDVを生まれた頃からずっと目の当たりにし、小学校低学年から始めたサッカーに対し、父親に否定され続けた。 家庭内のアンバランスの中で、サッカーだけが彼にとっての希望の光であり、それを全力で応援してくれる母親の存在こそが、彼の心の支えであった。
だからこそ、彼はずっとわがままを言うことが出来なかった。大好きになったサッカーを続けさせてもらうこと自体が、彼の思う『わがまま』であった。
これ以上のわがままを言って、母親を困らせたり、父親の逆鱗に触れてサッカーを取り上げられたくない。彼はこの一心から欲しいものを多く我慢し、その中で母親に買ってもらったスパイクを何よりも大切に使い続けた。
「壊れて来たから、次」
彼はその想いを抱くことは無かった。壊れて来たら自分で修理をする。壊れないように手入れをきちんとする。幼少の頃から彼はそれをやり続けて来た。
スパイクを大切にしながらも、サッカーがうまくなるために彼は相当な努力を積んだ。身体がひと際小さかった彼は、大きな選手に負けないようにドリブルのキレを磨き続けた。
朝早く起きて朝練をし、クラブの練習の後も一人で暗くなるまでボールを蹴り続けた。当然、努力すれば努力するほど、スパイクの消耗も激しくなるが、彼は何度も修理をして履き潰れるまで履き続けた―。
―改めて、梅崎選手にとってスパイクとはどういう存在ですか?
梅崎:僕にとってスパイクは『高価なもの』ですね。僕は長崎で小学校のときからサッカーを始めたのですが、親にスパイクを買ってもらうこと自体が申し訳ない気持ちがあった。
先月、出版した『15歳 サッカーで生きると誓った日』(東邦出版)に書き記したのですが、僕の家庭はかなりの『複雑な家庭』で、毎日父親の暴力におびえる生活を送っていました。その中で、サッカーは僕にとっての一筋の光であって、自分の存在を肯定してもらえる唯一と言っても良いほどのツールでした。
サッカーをやっているときは家庭のことなど、つらいことが一切忘れられるし、何より僕の唯一の味方だった母親が笑顔になってくれる。それがたまらなく嬉しかったし、僕にとってサッカーは『心の拠り所』だったんです。
でも、その一方で父親は僕のサッカーをずっと否定し続けました。
「お前じゃ無理だからとっとと辞めて勉強しろ」「お前みたいなチビに何が出来る」「無意味だから辞めろ」とまで言われました。
それを母が必死で僕からサッカーを取り上げられないように守ってくれた。だからこそ、安易に「あのスパイクが欲しい」とか口が裂けても言えなかったんです。
―母親が必死で守ってくれたサッカーを続けるためには、努力することはもちろん、贅沢を言わないことも入っていたのですね。
梅崎:はい。スパイクが高価なものだと小学生のときから分かっていたし、母にスパイクを買ってもらったときも「大切に使いなさい」と言われていたので、本当に大事に、大事に使いました。
僕は『プリモJ』というスパイクが好きで、そのスパイクは安くて、僕の足にもフィットしていたんです。それでそのスパイクをずっと使っていました。
―梅崎選手のプレースタイルだとスパイクの消耗も早いような気がします。
梅崎:当時は物凄く身長が低かったですし、小学校時代は良いけど、中学、高校となると相手の身体も大きくなるので、よりプレーのキレを追求するようになりました。そうなると当然、ターンや切り返しなどの鋭さを求めるようになって、さらに朝練、夜練とか自主練も本当にたくさんやったので、消耗度は本当に激しくなりました。
でも、そんなに何足も買える訳ではないので、手入れは本当にずっと丁寧にやっていました。当時、『シューグー』と言って、スパイクの革の部分とソールの部分が剥がれたときに、間を埋めてくっつける液があったんです。
それを剥がれる度に塗ってくっつけてまた履いて、そしてまた剥がれて、また塗って履くの繰り返しでした。さすがにもうこれ以上塗ってもダメだというときだけ、母におねだりをしましたね(笑)。
―凄くその姿が目に浮かびます。小さい頃から本当に大切に使っていたのですね。
梅崎:そう簡単に買えない環境と、母のしつけが大きかったと思います。スパイクに限らず、常に「物は大切にしなさい」と言われていましたから。
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