酒井高徳が語るギアVol.3「ドイツの柔らかいピッチに対応するために“ミックスソール”を初めて履いた」
インタビューのラストは、ドイツでプレーしているからこそ直面する問題と、スパイクとの関係性について。2012年1月、酒井高徳選手がアルビレックス新潟からシュツットガルトへ移籍してすぐに活躍できたのは、スパイク選びに成功したからだった!?
ミムラユウスケ
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2016/10/14
<インタビュー第1回はこちら>
<インタビュー第2回はこちら>
――スパイクの機能とつながるのかもしれませんが、日本とヨーロッパでは地面の柔らかさが大きく異なりますよね? 日本のピッチが硬いのに対して、ヨーロッパは柔らかい。ドイツに来ると、まずはピッチの硬さにも適応しないといけませんが……
酒井高徳(以下、酒井):ドイツのピッチは本当に緩いですよね。Jリーグでプレーしていたときには、練習でも試合でも(スタッドが)固定式のもの以外は履いたことがありませんでした。
――固定式と取り換え式のスタッドが混ざった『ミックス』と呼ばれる、ミックスソールのスパイクも履いたことはなかったのですか?
酒井:年代別代表の遠征で海外へ行ったこともありましたけど、『ミックス』さえ履いたことはありませんでした。Jリーグでも、芝で足を滑らせることはほとんどなかったので、固定式のスパイクを履いていました。でもドイツに来て、練習で固定式を履いたら、サッカーが出来ないというか。普通に立っているだけで、滑ったりしますから。だから、移籍して最も違いを感じたのは、地面の硬さですね。
――しかも、酒井選手が移籍してきたのは1月、真冬のことでした。ピッチの一部が凍っており、夏にくらべてピッチの状態はかなり悪い時期でしたが……。
酒井:地面がグチャグチャで、芝があってもなくても、関係ないくらいだと感じましたね(笑)
――それで、ソールの異なるものを履くようになったと?
酒井:最初の練習のときに『これではまずい』と思って、すぐにアディダスの方に『ミックス』のスパイクをお願いしました。それが届いてからは『ミックス』を履いてトレーニングをするようになって、(当時所属していた)シュツットガルトで初めて試合に出たときには、そのスパイクもなじんできていましたね。ただ、最初の頃はそれでも滑ることはありましたけど。
――ディフェンダーの選手なので、試合中に相手の動きに対応しようとして足を滑らせてしまうのだけは避けたいですよね?
酒井:日本でも試合中に滑ったら、スパイクを見直すように言われたりしますけど、ドイツの方が、足を滑らせることについては厳しく指摘されますね。
――具体的に、どんなことを言われますか?
酒井:ピッチに足を取られたときは、『スタッドのポイントを高くしろ』と言われたり。相手のスピードが日本とは違うので、プレー中に踏ん張らないといけないことも多くて。
――となると、鋭い切り返しに対応しやすくなった今のスパイクも、ディフェンダーとしてはありがたいわけですね?
酒井:そうですね。やはり、相手のキュッとした動きについていくためには、『ミックス』を履いたほうがいいですね。
――柔らかいピッチには慣れていくものですか?
酒井:柔らかいピッチに合った筋肉が付いていくということなのかもしれませんが、次第に慣れていきますね。そのうち、練習で固定式のスパイクを履いても、あまり滑らなくなるようになります。足腰が強くなる、という感覚ですかね。慣れてからは、練習では固定式しか履かなくなりました。でも万が一、試合で足を滑らせてしまったらと考えると…。『ミックス』を履いていれば気持ち的にも安心するので、試合では絶対に『ミックス』を履きます」
――日本で代表戦に出場するときは、どちらのスパイクを履くのですか?
酒井:日本には固定式と『ミックス』の両方を持って行きます。日本のピッチなら固定式で問題ないと思うのですが、試合では『ミックス』を履きますね。それに慣れてしまったので。
――最後に、スパイクに対する愛とこだわりを持つ酒井選手の考える『スパイク選びのコツ』を教えてください。
酒井:まずは足に合うかどうかです。裸足に近い感覚のスパイクを選ぶと良いというか。例としてよく挙げるのは、学校の下駄箱で履き替える『内履き』です。校内で履く『内履き』は、新しいものに代えたときに、履き心地に違和感を覚えたりしますよね? 例えば1年間履いたものは、ボロボロになっていても、すごく履き心地が良い。履くときに指でカカトのところを引っ張らなくても、スッポリと入るような感じです。だから、足がスッと入って、違和感のないスパイクを選ぶといいと思います。
――それは、最初に足を入れた瞬間にわかるものなのでしょうか?
酒井:ある程度はわかります。もし可能であれば、スパイクを試すときにボールを少しリフティングさせてもらえたら、足に合うスパイクかどうかはすぐに気がつくと思います。横幅が自分の足よりも広くないか、親指の前の部分に余分なスペースがあるか、指の上の部分に浮いた感じがあるかないか、など。その意味では、スパイクを履いたときのファーストインパクトはかなり大事になるはず。ぜひ参考にしてみてください。
【プロフィール】 酒井高徳(さかいごうとく)1991年、新潟県出身。日本人の父親とドイツ人の母親を持ち、10歳のときにサッカーを始める。三条サッカースポーツ少年団、レザーFSジュニアユースを経て、アルビレックス新潟ユースに加入。2008年には2種登録選手として、天皇杯に出場した。2011年よりドイツ・ブンデスリーガでプレーし、シュツットガルトを経て、ハンブルガーSVでプレーしている。(2016年時点)
文・インタビュー写真 ミムラユウスケ/プレー写真 清水和良
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――スパイクの機能とつながるのかもしれませんが、日本とヨーロッパでは地面の柔らかさが大きく異なりますよね? 日本のピッチが硬いのに対して、ヨーロッパは柔らかい。ドイツに来ると、まずはピッチの硬さにも適応しないといけませんが……
酒井高徳(以下、酒井):ドイツのピッチは本当に緩いですよね。Jリーグでプレーしていたときには、練習でも試合でも(スタッドが)固定式のもの以外は履いたことがありませんでした。
――固定式と取り換え式のスタッドが混ざった『ミックス』と呼ばれる、ミックスソールのスパイクも履いたことはなかったのですか?
酒井:年代別代表の遠征で海外へ行ったこともありましたけど、『ミックス』さえ履いたことはありませんでした。Jリーグでも、芝で足を滑らせることはほとんどなかったので、固定式のスパイクを履いていました。でもドイツに来て、練習で固定式を履いたら、サッカーが出来ないというか。普通に立っているだけで、滑ったりしますから。だから、移籍して最も違いを感じたのは、地面の硬さですね。
――しかも、酒井選手が移籍してきたのは1月、真冬のことでした。ピッチの一部が凍っており、夏にくらべてピッチの状態はかなり悪い時期でしたが……。
酒井:地面がグチャグチャで、芝があってもなくても、関係ないくらいだと感じましたね(笑)
――それで、ソールの異なるものを履くようになったと?
酒井:最初の練習のときに『これではまずい』と思って、すぐにアディダスの方に『ミックス』のスパイクをお願いしました。それが届いてからは『ミックス』を履いてトレーニングをするようになって、(当時所属していた)シュツットガルトで初めて試合に出たときには、そのスパイクもなじんできていましたね。ただ、最初の頃はそれでも滑ることはありましたけど。
――ディフェンダーの選手なので、試合中に相手の動きに対応しようとして足を滑らせてしまうのだけは避けたいですよね?
酒井:日本でも試合中に滑ったら、スパイクを見直すように言われたりしますけど、ドイツの方が、足を滑らせることについては厳しく指摘されますね。
――具体的に、どんなことを言われますか?
酒井:ピッチに足を取られたときは、『スタッドのポイントを高くしろ』と言われたり。相手のスピードが日本とは違うので、プレー中に踏ん張らないといけないことも多くて。
――となると、鋭い切り返しに対応しやすくなった今のスパイクも、ディフェンダーとしてはありがたいわけですね?
酒井:そうですね。やはり、相手のキュッとした動きについていくためには、『ミックス』を履いたほうがいいですね。
――柔らかいピッチには慣れていくものですか?
酒井:柔らかいピッチに合った筋肉が付いていくということなのかもしれませんが、次第に慣れていきますね。そのうち、練習で固定式のスパイクを履いても、あまり滑らなくなるようになります。足腰が強くなる、という感覚ですかね。慣れてからは、練習では固定式しか履かなくなりました。でも万が一、試合で足を滑らせてしまったらと考えると…。『ミックス』を履いていれば気持ち的にも安心するので、試合では絶対に『ミックス』を履きます」
――日本で代表戦に出場するときは、どちらのスパイクを履くのですか?
酒井:日本には固定式と『ミックス』の両方を持って行きます。日本のピッチなら固定式で問題ないと思うのですが、試合では『ミックス』を履きますね。それに慣れてしまったので。
――最後に、スパイクに対する愛とこだわりを持つ酒井選手の考える『スパイク選びのコツ』を教えてください。
酒井:まずは足に合うかどうかです。裸足に近い感覚のスパイクを選ぶと良いというか。例としてよく挙げるのは、学校の下駄箱で履き替える『内履き』です。校内で履く『内履き』は、新しいものに代えたときに、履き心地に違和感を覚えたりしますよね? 例えば1年間履いたものは、ボロボロになっていても、すごく履き心地が良い。履くときに指でカカトのところを引っ張らなくても、スッポリと入るような感じです。だから、足がスッと入って、違和感のないスパイクを選ぶといいと思います。
――それは、最初に足を入れた瞬間にわかるものなのでしょうか?
酒井:ある程度はわかります。もし可能であれば、スパイクを試すときにボールを少しリフティングさせてもらえたら、足に合うスパイクかどうかはすぐに気がつくと思います。横幅が自分の足よりも広くないか、親指の前の部分に余分なスペースがあるか、指の上の部分に浮いた感じがあるかないか、など。その意味では、スパイクを履いたときのファーストインパクトはかなり大事になるはず。ぜひ参考にしてみてください。
【プロフィール】 酒井高徳(さかいごうとく)1991年、新潟県出身。日本人の父親とドイツ人の母親を持ち、10歳のときにサッカーを始める。三条サッカースポーツ少年団、レザーFSジュニアユースを経て、アルビレックス新潟ユースに加入。2008年には2種登録選手として、天皇杯に出場した。2011年よりドイツ・ブンデスリーガでプレーし、シュツットガルトを経て、ハンブルガーSVでプレーしている。(2016年時点)
文・インタビュー写真 ミムラユウスケ/プレー写真 清水和良