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早田ひな、『情熱大陸』で垣間見たエースの矜持 盟友・平野美宇と語った“黄金世代”への想い「3人ともひとりになりたくない」

卓球選手の早田ひなが、5月26日に放送されたドキュメンタリー番組『情熱大陸』(MBS・TBS系)に出演。世界ランキングでは日本勢最高の5位をキープする23歳は、今夏に開催されるパリ五輪で女子シングルス、女子団体、混合ダブルスでメダル獲得が期待されている。今回はそんな早田の海外遠征や普段の練習風景などに番組が密着。そこには、日本のエースに成長を遂げた早田の卓球に対しての想いとアスリートとしての矜持(きょうじ)が詰まっていた。トップ画像出典:(C)MBS

Icon 30716468 1048529728619366 8600243217885036544 n 井本佳孝 | 2024/05/31

原動力は卓球に対してのまっすぐな想い


「絶対、誰にも卓球に対しての愛は負けないと思います」。


冒頭で語られたのが早田の卓球に対してのまっすぐな想い。「全てに100%になるから苦しい時は本当に苦しいし、好きだから苦しい。でも好きだから楽しいし、勝った時は嬉しい」と卓球と向き合う日々について吐露し、「好きというのはすごく大事」と、打倒中国を掲げるなかで、“卓球愛”が自身を成長に導いてきたと明かす。


番組で密着されていたのが3月に行われた国際大会、「シンガポールスマッシュ2024」での一コマ。この大会で早田は体調不良も影響し、シングルスは初戦敗退。国内外を休みなく動き回る過酷なスケジュールを前に、身体は悲鳴をあげていた。


そんななか、早田はシングルス敗退後も、男子のエース・張本智和と組む混合ダブルスで引き続き大会に参戦。このペアはパリ五輪に出場する2人であり、前回の東京五輪で水谷隼・伊藤美誠ペアが金メダルを獲得した流れを引き継ぎ、日本チームとしての五輪2大会連続金メダルが期待されている。残り数カ月に迫った大舞台を前に、限られた時間のなかでペアとしての強化を進めることが求められていた。


番組スタッフが驚きを示したのが、準決勝で韓国ペアに敗れた後の出来事。早田は張本に「まだ(試合後の)インタビューはある?」と尋ね、張本がメディア対応を終えたことを知ると、「ちょっとミックスの練習できる?1時間くらい」と練習を提案した。試合直後だからこそ焼き付いている課題調整にすぐに取り組み、「あれ難しいよね」「打点いいよ」と一つひとつのプレーを確かめる。「横にとりあえず逃げて、それで試合でやってみて。じゃないと私が(相手のボールを)取れないと勝負できない」と、起こりうる試合中の動きをイメージしながら互いの歩調を合わせていた。


早田をサポートする“チームひな”の存在

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日本生命の一員としてプレーする早田ひな(C)MBS

番組では大阪の日本生命に所属する早田の日本での練習風景も映され、寮に隣接する施設で卓球に向き合う日々を送っていると紹介。コーチが次々と繰り出す球に対し、フォア、バックで鋭く反応し、地道な反復練習を繰り返す様子が描かれた。


そんな早田に欠かせないの“チームひな”の存在で、石田大輔コーチは早田を食事面からサポートしている。早田、石田コーチ、岡雄介トレーナーによる昼食タイムは、ソース焼きそばにご飯という炭水化物と炭水化物の組み合わせ。「でも動くからいいんですよ」と語る早田に対し、「そう、動くときには炭水化物もとっておかないとパワーが(出ない)」と返す石田コーチ。かつては量が食べられずに苦労した早田が、それを克服したというエピソードが明かされ、そのなかであるのは「世界と戦うために」という想いからだった。


「自分が天才かと言われれば全然天才だとは思っていない。でも、ある意味天才じゃないから、めちゃくちゃ時間はかかるけど、忘れないところまで突き詰めるのが凡人のやり方というか、私のやり方」。

同学年の盟友との会話で語られた想い

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同学年の伊藤美誠、平野美宇らと切磋琢磨してきた(C)ITTF

自らのタイプを「天才じゃない」と言い切る早田の言葉の背景にあったのは、2人の天才プレーヤーの存在かもしれない。同じ2000年生まれで、“卓球黄金世代”と称されることもある伊藤美誠と平野美宇。10代から世界で結果を残してきたライバルでもあり、常に刺激を受け、与え合う友でもある。伊藤はリオから2大会、平野は東京五輪で早田より早くに大舞台を経験し、メダルも獲得してきた身近な存在が、早田の進む道に影響を与えた。努力で一つひとつの課題をクリアし、日本を代表する選手に上り詰めた早田のキャリアの指針となった。


番組での大きな見どころとして紹介されたのが、パリ五輪で共闘する平野と実現した焼肉シーン。誕生日が近かった平野をケーキでもてなす早田に「ありがとう、嬉しい」と返す平野。「今ハマってないの?」とアイドル好きで知られる平野に早田が問いかけるなど、普段は敵として戦うこともある両者の、気の置けない関係性が描かれた。


早田は同級生の2人について、「私は本当にこの2人がいなかったらまずここまで目指していない」と語る。一方で、「私はこの2人が引退した時のモチベーションが気になる」ともコメントし、「1人が引退したら『やばい』みたいになって、多分3人ともひとりになりたくないってちょっとあるんですよ」と3人だからこそ分かる思いを吐露した。切磋琢磨という言葉がこの3人ほど似合うケースはないと思えるくらいの、深い関係性が長きにわたり築かれてきたことを感じさせた。

歩みをやめない向上心と探求力

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日本のエースに上り詰めた早田(C)WTT

パリ五輪も迫るなかで、早田が追いかけるのが世界最強である中国勢であり、それを越えた先にある世界一を見据える。早田は国際大会で出た一つひとつのシーンを試合後に見直して、練習場で同じ場面を想定して次に向けての対策をする。


また、4月に行われた国際大会「ITTF男女ワールドカップ」を前に、ラケットを変更し、王曼昱(現世界ランク2位)相手に練習してきたバックでのレシーブ、フォアドライブを沈めた。敗れたものの、「負けてしまったんですけど勝つことが全てじゃない」と言い切る早田は、「自分が進化するためにいろんなことをやっていかないといけない」と常に前を見て進み続ける姿に、人間としての強さを垣間見た。


「天才の人だったら何でもすぐできるし、突き詰めようと思えばできるかもしれない。でもある意味、自分がそこに辿り着くことでいろんな人が『早田ひなちゃんができるんだったら、私もできるかもしれない』と思ってもらいたい」。

番組最後で紹介されたのが、早田が小学4年生の時に書いたという作文。「私はおばあちゃんになっても卓球はやめません」と記されたそのままに、早田は卓球選手として歩みを進める。「誰にも卓球に対しての愛は負けない」という言葉に対し、誠実に向き合い続ける早田ひなというアスリートが日本のエースに上り詰めたのは、必然の出来事だったのかもしれない。