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アジアの渡り鳥「伊藤壇が見てきたスパイクと世界」 Vol.5スパイクは名刺代わり!!

年賀状だけの付き合いではなく、毎年1回以上会う友人は何人いるだろうか?今回の主人公である伊藤壇さんとは16年前に出会い、毎年1回以上会っている友人だ。最終話となるVol.5では、大変なこともある中でなぜ海外で16年間も選手を続けられているのかを聞いた。

Icon 16466945 810048175800857 1247399717 n 菊池 康平 | 2017/10/15
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――海外では想定外のことが多いじゃないですか。どうやって適応しているんですか?  

伊藤 俺も日本人だから、逆算して何でも計画立てて大雑把な計画は持っていたいんだよね。でもそういうのは絶対に通じないからね、向こうは。  

マラソンで例えると42.195kmって言われて、40kmまで来てあと2kmちょっとだから、バーってラストスパートかけてるのに、ゴールが伸びるみたいな感覚(笑)  

――45kmになりましたとか(笑)
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伊藤 ある国で5月30日が公式戦の最終戦ですって言われて、そこに合わせて色々帰国の準備や、次の国の想定とかしているのに、いきなり最終戦が6月下旬に延期しましたとか。  

――全部予定が狂いますよね。

  伊藤 こんなこと全然あるからね。例えば目覚まし時計を買うことひとつをとってみても、日本だったら買った時に当然のように中に電池が入っていて使えるけど、向こうだったら電池なんて入ってない事もありえるし、入ってたとしても使い古しの場合もあるから。  

電池も2~3個買って家に帰らないとね。あとはその場で入れて確認しないと。時計そのものが壊れている場合もあるから。  

――その場で最悪の状況を想定して確認しないといけないということですね。  

伊藤 常にそういう最悪の事態を想定していくことだね。高いビルとかの屋上で日本であれば手すりに寄りかかったりして、下の景色を見たりするけど、あっちは老朽化してるから手すりが「ガコーン!」って外れて落ちてしまう場合もあるから。

そういう所には寄り付かないようにするとか、常に最悪の事態を想定しておく。そういうものだと思って行動することが大切かも。  

日本だと全てを信じ切っているから、そんな所で崩れる訳ないやって思ってると思うけど。

――なるほど。今回1番聞きたいのが、海外はしんどい事って多いじゃないですか。今の話もそうですし、ネパールの環境とか東ティモールもみんなで雑魚寝したりとか、かゆくなったりとか、シャワー浴びれなかったりとか、蕁麻疹出たりとか。  

人間だから「良いところで寝たいな!」とかあると思うんですよ。日本の良さも知っている中で、なぜ大変な環境の中で16年もやり続けられているのか教えてください。 
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伊藤 考え方次第だよ。俺も汚い所よりも綺麗な所で寝たいとか思うけど、そこに泊まるってなったら考え方を変えて、こんな所で寝てたら将来的に講演会とか本を書く時にネタになるなって、ポジティブに考えられる。  

――ネタを拾ったなと。  

伊藤 中途半端に綺麗なホテルに泊まるより、それだったらすごい汚いホテルに泊まった方がこれはネタになるなって(笑)なんでもそういう時ってノンフィクションで話したいからさ。そういう風にポジティブに考えないとダメだよね。  

――それはやっぱりそういう経験の積み重ねがあるからで、16年前に初めて海を渡った時は「日本だったら~」とか思うじゃないですか。ふざけんなよとか。歳を重ねるにつれて考え方が変わってきたってことですよね。  

伊藤 それはあると思う。考えようによっては自分のプレーの幅が広がるって考えるしかないし、大事なのはそこだと思うね。ネガティブに考えれば考えるほどどんどん悪い方向に行くだろうし。  

――「ふざけんなよ」って思って寝れなくなるのも嫌ですもんね。  

伊藤 それは長いアジアの放浪で色んな物を培ってきたと思うから、今後何をするにしてもその経験は活かされるしね。  
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――最後に壇さんにとってのスパイクとは?  

伊藤 スパイクとは名刺代わりだよね。どこに行っても俺は荷物が多いし、パスポートのスタンプも多いから空港では必ず疑われるもん。初めは言いたくないから職業を自営とか言ってたんだ。時には会社員ですとか。根掘り葉掘り聞かれるのは嫌だから。  

でも毎回、警察犬とかクンクンしてきてさ、そういうのがあって途中からはダイレクトにプロサッカー選手です!っていうようにしたよ。  

――空港では「荷物見せろ」ってよく言われますよね?  

伊藤 荷物見せろって言われてもスパイクがあれば名刺代わりじゃん。海外でもスパイク持って歩いてれば、あいつサッカー選手だってなるし。  

――その名刺を見て海外の人はオリジナルなの?とか聞いてくる。  

伊藤 名刺代わりのスパイクでみんな食いついてくれるでしょ。話のネタにもなるし、その名刺は良いものとか目立つ物を持っておきたいよね。目立たない名刺より人と違う名刺を持った方がいいじゃん。

インパクトがあるじゃん。何でもそういう第一印象がすごい大事だから。   Thumb img 4560

――KING GEARの人間として大事なことを聞き忘れてました。今は何を履いてるんですか?  

伊藤 今はプーマのエヴォスピードを履いてるよ。軽くていいんだよね。  

――軽いのが良いのは何でですか?取材をしてきた中では、重いのが良い人もいましたので。  

伊藤 俺は軽いに越したことがないから。軽い方よりも重い方が走れる人いる?  

――ある程度重い方がシュートをしっかり打てるとか、パワーが伝わるって選手もいまして。  

伊藤 別に200キロの速いシュートを打って入ったら5点です!とかではないじゃない。コースとかが大事でしょ。どこまで走れるか、どこに正確に蹴れるか、とかそういう所だと思うから。
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――軽ければ軽いほど良くて必要最低限以外は削ぎ落としたいって感じですか?  

伊藤 そうだね、余計な物がガチャガチャないからエヴォスピードは好きなんだ。その代わり履いても分かるけど、耐久性は優れてないっていうのは感じてる。  

一応10試合限定って書いてあるから、俺は練習ではエヴォパワーを履いたり、トレシューを履いて、エヴォスピードは試合でしか履いていない。それくらい分けて履いたほうが良いと思っているから。

ーーなるほど。過酷なグラウンドもあるので丈夫なものを好むのかと思っていたのである意味意外なこだわりでした。でも理解できます。他にスパイクについてのこだわりはありますか?

伊藤 良いスパイクは正直値段的には多少値がはるかもしれない。でも高いスパイクって高いなりに理由があるから。良いものを使ってるから高いわけで。安いスパイクを履いてるとか、10年くらい大事に使ってますみたいなのが、素晴らしいみたいな風潮があるけど、俺はこだわるのはそこではないと思う。

もちろん大事には履くけど、何回も修理してボロボロになったスパイクで、低調なパフォーマンスをするくらいなら良いスパイクを履いて、最高のパフォーマンスをする方が大事だと思うから。

1番大事なのは自分の力を最大限に発揮できるスパイクを選択することだね。

  ーー自分の事を知るってことですね。サッカー選手だったら1番お金をかけるべきなのはスパイクなどの用具ですよね。 

伊藤 俺はそこをケチっちゃダメだと思うし、本当に上を目指したりとか、結果を求めてるのであればそれなりに良い物を使わなければダメだと思う。

もちろん大事にしてない訳じゃないし、毎回手入れしてるけれど、少しでも壊れてきたら、それを練習用におろしたりしてもいいしね。
 
ーー壇さんのスパイクへの考えが良くわかりました。さっき最後にと言いましたが、本当の最後に今後の目標を教えてください。

伊藤 少なくとも年内までは現役生活を続けます。現役最後にトルクメニスタンリーグに行きたくて色々と動いているんだけどね。動きながら今後のことも考えて先日、山梨県でC級ライセンスを取得しました。

ーー今後の挑戦にも注目させて頂きます。長時間に渡りありがとうございました!

伊藤壇オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/danito0820/