マイノリティレポート 第1回 遠藤保仁選手(ガンバ大阪)「スパイクへのこだわりは重さ。軽いのはダメです」
遠藤保仁がキングギアだけに語ったスパイク観。
戸塚 啓
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2016/06/09
スパイクには「ちょっとした重さ」が欲しい
吾輩は「アクセレイター プロ」である。アンブロのスパイクだ。
アクセレイターシリーズの人工芝対応トップモデルで、アッパーにはフィット感抜群の
カンガルーレザーを使用している。通気性を考慮して一部がメッシュ素材になっており、
足入れ感に優れつつ足ブレがしない──
スポーツショップの店頭に並ぶ吾輩は、およそこんな感じで紹介されている。
そのとおりだ、との自負はある。
ただ、実際に吾輩を使っている選手の声を聞く機会は、実は意外なほど少ない。
ここはひとつ、吾輩のアイコンとなってくれている選手に、ご登場願おうと思う。
遠藤保仁選手だ。
あえて説明するまでもないだろうが、彼は日本代表として歴代最多の国際Aマッチ出場を誇り、
J1リーグの出場数でも歴代4位の513試合を記録している(16年5月8日現在)。
かくも素晴らしいキャリアを持った遠藤選手が、なぜ吾輩を選んでくれているのか。
彼自身のスパイク履歴やスパイクへのこだわりもまじえて、レポートをしてみようと思うのである。
履いてる人が少ないから「アンブロ」に
遠藤保仁選手(以下、遠藤)初めて履いたスパイクですか?
それはちょっと、難しい質問ですねえ。どうかなあ……
メーカーまでは覚えてないですねえ。たぶん、兄貴が履けなくなったモノのおさがりとか、
そんな感じだった気がします。
サッカーを始めたばかりの頃は、アシックスが好きでした。
『2002』というスパイクが履きやすかったんです。アディダスの『コパ・ムンディアル』とかも。
自分の足に合わなかったのはプーマですね。『パラメヒコ』とかはいいなと思ったんですけど、
僕はカカトの骨がちょっと出ているんですが実際に履いて動いてみるとそこがどうしても当たっちゃって。
プロになってから数年間は、アディダスのスパイクを履いていました。
若い頃の僕を知る人は、「アディダスのイメージがある」と思うかもしれません。
でも、キャリアの4分の3ぐらいはアンブロのスパイクを履いているんです。
ガンバのユニフォームがアンブロに変わったのと同じタイミングだから……
ええと、2003年ですね。そのタイミングで僕も、契約をすることになったんです。
どうしてアンブロにしたのか、ですか?
遠藤 当時は履いている選手が少なくて、すごく熱心に誘ってくれたので、
「よし、履いてみようかな」という気持ちになりました。
履き始めたばかりの頃は、要望を出すこともありました。
いまはもう、僕からお願いすることはほとんどなくて。
気持ち良く履かせてもらってます。ほとんどないと言えば、色へのこだわりもそうですね。
「これを履いてください」と言われたもので、全然問題ありません。
シンプルな色の組み合わせが好きですが、そのあたりはアンブロも分かってくれているので。
スパイクそのものへのこだわりは、まず重さですね。軽過ぎるのはダメなんです。
ちょうど僕がアンブロに変えたぐらいの時期から、スパイクの軽量化が進んでいった。
最初は軽いものを履いてみたんですけど、あまりしっくりこなかったんです。
「軽いスパイクを履いたほうが足と一体化する」と言う選手もいます。
それも分かるんだけど、僕の場合はちょっとした重さというか、
スパイクを履いているなっていう感覚が欲しいんですね。
たぶん僕、かなり重いスパイクを履いていると思いますよ。
そう言って遠藤選手は、目の前に置かれた吾輩に手を伸ばした。市販されているものである。
遠藤 「これはメチャクチャ軽いですよ。パッと持った瞬間にもう、僕のものとは違います。
僕のほうが明らかに重いですから」
重いと言ったところで、昭和の時代に流通していたようなものとは違うはずだ。
現在のスパイクが軽過ぎるだけで、市販のものよりちょっと重い吾輩が遠藤選手には快適なのだろう。
遠藤 あとは、さっきちょっと話したカカトの部分ですね。普通の人の足に比べると、
カカトの骨が出っ張っているんです。なので……」
おおっと、今回はここまでにしよう。遠藤選手はどうやら、吾輩をカスタマイズしているようだ。
当事者の声を聞くのは、やはり楽しいものである。
写真:清水知良
(第2回へ続く) マイノリティーレポート 遠藤保仁選手(ガンバ大阪)