原口元気が語るギア vol.2「切り返しのときに踏ん張れるかどうか。僕はそこが大事だと思う」
前回は少年時代のスパイクとの関わりを中心に語った原口元気選手。今回はプロになってからの彼が、スパイクに求めるものに話題は移っていく。そして、彼が大活躍した試合のキックオフ直前までスパイクの選定をめぐって、悩んでいたという知られざるエピソードについても語り始めた。
ミムラユウスケ
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2016/10/11
<インタビュー第1回はこちら>
――初めてナイキのスパイクを履いたとき、他のスパイクとの違いをどこに感じましたか?
原口「ナイキのスパイクを初めて履いたときは、天然の皮じゃないということもあって、違和感みたいなのがありました。ただ、それまでスパイクの重さについてはあまり気にしてこなかったのですが、ナイキを履き続けることによって、あの軽さが心地よくなっていったんですよ」
――軽いスパイクを好むのは何故でしょう?
原口「自分のプレースタイルも、どんどんスピードを求めていくようなものに変わっていったからですかね。そうなると、試合中や試合前にスパイクの重さを感じるのも嫌だなと思うようになり、今ではスパイクは軽ければ軽いほどいい、と考えていますね」
――スパイクを履く際のジンクスはありますか?
原口「特にないですけど、悪いプレーしか出来なかったとき、大敗したときなんかは、次の試合でそのスパイクは履きづらいなと思うことはあります」
――では、ゴールを決めた試合で履いたスパイクは長く使ったりも?
原口「もちろん、縁起を担ぐときはあるのですが、履いていくたびに、スパイクはどんどん柔らかくなっていきますよね? 柔らかくなりすぎてしまうと、僕の場合はもう履かないんです」
――というと?
原口「ある程度の硬さがないと、試合中に切り返したときにスパイクのなかで足がズレるというか……。ズレてしまうと、その分だけ次のプレーが遅れてしまうので。良いプレーが続いているときなどは、そのスパイクを履き続けたい気持ちもあるけど、新しいスパイクに代えないといけないタイミングというのもあるんですよね」
――1年間でどのくらいのスパイクを履いているのですか?
原口「相当、多いほうだと思いますよ。固定式と『ミックス』(*固定式のスタッドと取り換え式のスタッドが混ざっているもの)を、それぞれ12足ずつくらいですかね」
――合計すると1年で24足ですか?
原口「だいたい、3か月に1回くらいのペースでモデルが変わりますよね? そのタイミングでさっき話した2つのタイプを3足ずつ送ってもらうんですよね。要するに、1か月に2足のペースですね」
――そうしたこだわりが、攻守にアグッレシブなプレーを可能にしているということですか?
原口「そうですね。本当に、その感覚が大切なんですよ。切り返したときに、少しでも違和感があるのは嫌なので。とはいえ、さすがに新品のスパイクを試合で履くわけにもいかないから、練習で1回か2回履いて、少しなじませてから試合で使っています」
――サッカー選手のスパイクというと、ボールを蹴るときの感覚に目が向きがちですが、原口選手にとっては地面を踏み込む際の感覚が大切なのですね?
原口「蹴る作業については、自分の技術でカバーできますけど、切り返しのときに踏ん張れるか、踏ん張れないかは……。僕は、そこが大事だと思うので」
――ところで、ヨーロッパのピッチは日本よりもはるかにやわらかいですよね。ドイツに来たころは、戸惑いましたか?
原口「そうですね。さっきも言ったように、今は試合では主に『MIX』を履いていますけど、日本ではずっと固定式を履いていましたからね。純粋な取り換え式ではない『MIX』であっても、固定式と比べれば少しは重くなる。それに、固定式と比べたらボールタッチの部分でもやりづらさがあるので、初めのころは嫌でしたけどね。でも、履かざるを得ないわけで」
――ヘルタに来た当初から『MIX』を履いていたのですか?
原口「いや、最初のほうの試合では固定式で粘っていました」
――代えたのはいつごろですか?
原口「最初のシーズンのリーグ戦で、自分が出場した3試合目のヴォルフスブルクとの試合(*2014年9月24日)のあとから。ヴォルフスブルク戦で守備をしているときに、足を滑らせて、止まれずに、ファールをして、イエローカードをもらったんです。『あぁ、これではダメだ』と気づいて、そこからは割り切って『MIX』を履くようになりました」
――なるほど……。
原口「ただ、今シーズンのリーグ戦では1試合目も2試合目も、固定式を履いていたんですよ」
――それは柔らかいピッチに慣れてきたからですか?
原口「それもあるし、夏で天気がよければ固定式でいけるんですよ(*リーグ第1節のフライブルク戦は8月28日、第2節のインゴルシュタット戦は9月10日に行なわれ、原口は2アシストを記録し、チームの4得点すべてに絡んだ)。でも、冬が近づいてくると、さすがに固定式ではプレーできない日がやって来る(笑) だから、寒くなるまでは試合前のウォーミングアップで固定式を履いて、試してみて、その上でどちらのタイプを履くのかを決めます。アウェーでのインゴルシュタット戦のときも試合が始まる直前まで悩んでいましたから」
(第3回に続く) http://king-gear.com/articles/147
【プロフィール】 原口元気(はらぐちげんき) 1991年、埼玉県生まれ。江南南サッカー少年団、浦和レッズジュニアユース、同ユースを経て、2008年に二種登録選手として公式戦デビューを果たす。2009年にクラブ史上最年少で契約を結び、浦和レッズの一員として2014年までプレー。2104シーズンからはドイツ・ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンで活躍中(2016年時点)
文・写真 ミムラユウスケ/プレー写真 清水和良、写真編集 榎本貴浩
――初めてナイキのスパイクを履いたとき、他のスパイクとの違いをどこに感じましたか?
原口「ナイキのスパイクを初めて履いたときは、天然の皮じゃないということもあって、違和感みたいなのがありました。ただ、それまでスパイクの重さについてはあまり気にしてこなかったのですが、ナイキを履き続けることによって、あの軽さが心地よくなっていったんですよ」
――軽いスパイクを好むのは何故でしょう?
原口「自分のプレースタイルも、どんどんスピードを求めていくようなものに変わっていったからですかね。そうなると、試合中や試合前にスパイクの重さを感じるのも嫌だなと思うようになり、今ではスパイクは軽ければ軽いほどいい、と考えていますね」
――スパイクを履く際のジンクスはありますか?
原口「特にないですけど、悪いプレーしか出来なかったとき、大敗したときなんかは、次の試合でそのスパイクは履きづらいなと思うことはあります」
――では、ゴールを決めた試合で履いたスパイクは長く使ったりも?
原口「もちろん、縁起を担ぐときはあるのですが、履いていくたびに、スパイクはどんどん柔らかくなっていきますよね? 柔らかくなりすぎてしまうと、僕の場合はもう履かないんです」
――というと?
原口「ある程度の硬さがないと、試合中に切り返したときにスパイクのなかで足がズレるというか……。ズレてしまうと、その分だけ次のプレーが遅れてしまうので。良いプレーが続いているときなどは、そのスパイクを履き続けたい気持ちもあるけど、新しいスパイクに代えないといけないタイミングというのもあるんですよね」
――1年間でどのくらいのスパイクを履いているのですか?
原口「相当、多いほうだと思いますよ。固定式と『ミックス』(*固定式のスタッドと取り換え式のスタッドが混ざっているもの)を、それぞれ12足ずつくらいですかね」
――合計すると1年で24足ですか?
原口「だいたい、3か月に1回くらいのペースでモデルが変わりますよね? そのタイミングでさっき話した2つのタイプを3足ずつ送ってもらうんですよね。要するに、1か月に2足のペースですね」
――そうしたこだわりが、攻守にアグッレシブなプレーを可能にしているということですか?
原口「そうですね。本当に、その感覚が大切なんですよ。切り返したときに、少しでも違和感があるのは嫌なので。とはいえ、さすがに新品のスパイクを試合で履くわけにもいかないから、練習で1回か2回履いて、少しなじませてから試合で使っています」
――サッカー選手のスパイクというと、ボールを蹴るときの感覚に目が向きがちですが、原口選手にとっては地面を踏み込む際の感覚が大切なのですね?
原口「蹴る作業については、自分の技術でカバーできますけど、切り返しのときに踏ん張れるか、踏ん張れないかは……。僕は、そこが大事だと思うので」
――ところで、ヨーロッパのピッチは日本よりもはるかにやわらかいですよね。ドイツに来たころは、戸惑いましたか?
原口「そうですね。さっきも言ったように、今は試合では主に『MIX』を履いていますけど、日本ではずっと固定式を履いていましたからね。純粋な取り換え式ではない『MIX』であっても、固定式と比べれば少しは重くなる。それに、固定式と比べたらボールタッチの部分でもやりづらさがあるので、初めのころは嫌でしたけどね。でも、履かざるを得ないわけで」
――ヘルタに来た当初から『MIX』を履いていたのですか?
原口「いや、最初のほうの試合では固定式で粘っていました」
――代えたのはいつごろですか?
原口「最初のシーズンのリーグ戦で、自分が出場した3試合目のヴォルフスブルクとの試合(*2014年9月24日)のあとから。ヴォルフスブルク戦で守備をしているときに、足を滑らせて、止まれずに、ファールをして、イエローカードをもらったんです。『あぁ、これではダメだ』と気づいて、そこからは割り切って『MIX』を履くようになりました」
――なるほど……。
原口「ただ、今シーズンのリーグ戦では1試合目も2試合目も、固定式を履いていたんですよ」
――それは柔らかいピッチに慣れてきたからですか?
原口「それもあるし、夏で天気がよければ固定式でいけるんですよ(*リーグ第1節のフライブルク戦は8月28日、第2節のインゴルシュタット戦は9月10日に行なわれ、原口は2アシストを記録し、チームの4得点すべてに絡んだ)。でも、冬が近づいてくると、さすがに固定式ではプレーできない日がやって来る(笑) だから、寒くなるまでは試合前のウォーミングアップで固定式を履いて、試してみて、その上でどちらのタイプを履くのかを決めます。アウェーでのインゴルシュタット戦のときも試合が始まる直前まで悩んでいましたから」
(第3回に続く) http://king-gear.com/articles/147
【プロフィール】 原口元気(はらぐちげんき) 1991年、埼玉県生まれ。江南南サッカー少年団、浦和レッズジュニアユース、同ユースを経て、2008年に二種登録選手として公式戦デビューを果たす。2009年にクラブ史上最年少で契約を結び、浦和レッズの一員として2014年までプレー。2104シーズンからはドイツ・ブンデスリーガのヘルタ・ベルリンで活躍中(2016年時点)
文・写真 ミムラユウスケ/プレー写真 清水和良、写真編集 榎本貴浩