アジアの渡り鳥「伊藤壇が見てきたスパイクと世界」 Vol.4偽物のスパイク
年賀状だけの付き合いではなく、毎年1回以上会う友人は何人いるだろうか?今回の主人公である伊藤壇さんとは16年前に出会い、毎年1回以上会っている友人だ。Vol.4ではモルディブリーグの練習場事情や海外でアピールする為の術を聞いた。
菊池 康平
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2017/10/09
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――ビブスを買うお金を持っているのに、別にわかるから買わないというのは面白い感覚ですよね。
伊藤 国民性だろうね。前所属チームである東ティモールのチームで面白かったのは練習着が2つあって、1つは黄色の蛍光で、2つ目は小豆色みたいなんだけど、練習着が黄色の日に渡されるビブスが黄緑なんだよね。
ビブスと練習着の色がほぼ一緒でさ、ビブス着てるのに敵か味方か良く分からない状態なんだよね。 あと練習試合があって、うちのチームが黄色の蛍光のユニホームで、相手チームは辛子色のユニホームでレフェリーがノーマルの黄色のシャツを着ていてね。
360度味方にしか見えないんだけど、そこも何とも思ってないんだと思う。
――分かるでしょ!みたいな感じなんですかね。
伊藤 絶対に日本人だったら草サッカーでも文句言うじゃん。分からないよ!とか。
――間違いないです。僕らのエンジョイでやっているフットサルでも言うと思います。 ある意味たくましいですよね。
伊藤 良く言えばたくましいね、自分で選んで来た国だし、与えられた環境で結果を残していくのがプロだと思うし。そのみんな黄色いシャツの状況も視野の確保の練習だって思って自分に言い聞かせて。
――他になんか「これヤバかったよ」という話はありますか?
伊藤 モルディブは国自体が狭くてグラウンドが少ないから、サッカー協会の横に人工芝のグラウンドが一応ひとつあるんだけど、そこはあんまり使えないから、その横にある広場みたいな所で練習するんだ。
そこには砂に近い土のグラウンドがあって、一応ゴールもあって、そこで練習するんだけどやっぱスパイクは履かずにトレシューでやるよね。
グラウンドが少ない分、他のチームも確保できないから、どのチームも大体そこでやるんだよね。翌日に試合をするチームが横でセットプレーの練習しててさ、全部筒抜けなの(笑)
――ひとつのグラウンドで、野球部とサッカー部が一緒に練習しているみたいなものですよね?
伊藤 練習を始める時間も一緒だからさ、違うチームに所属している兄弟がバイクで一緒に来て、それぞれのチームで練習して、練習が終わったらまた一緒にバイクでブーンって帰っていくんだ。
――なんか部活みたいですね。モルディブも土というか砂のグラウンドですが、最近はアジアでも人工芝のグラウンドが増えてますよね。
伊藤 ここ数年、時代と共にアジア各国で人工芝が主流となってきてるね。個人的には人工芝はトレシューだと思ってたから、トレシューを使う機会が増えたよ。
――カンボジアの芝生も以前は良くなかったけれど、最近は人工芝のグラウンドが増えてますよね。以前は凄くえげつない所で練習をさせられた覚えがあるんですけど、今は良くなってきてますよね。
伊藤 ブータンにあるナショナルスタジアムも昔は天然芝だったけど、あっちの方ってやっぱり気候的にそんなに芝が育たないのかな。メンテナンスの仕方をよく知らないっていうのもあるかもしれないけれど、グラウンドがボコボコだったから。でも数年前から人工芝になってて、時代と共に人工芝が増えてきたよね。
――海外のトライアウトの難しさってグラウンドだと思うんです。カンボジアの練習試合の時もグラウンドの数か所に穴が空いてたりとか、芝生が深かったり日本とは大きく違いますよね。ボリビアではグラウンドの穴にはまって自身は捻挫しましたし(笑)
伊藤 カンボンジアのプノンペンクラウンというチームはJクラブ並みの環境で練習してるけれど、俺の所属していたチームのグラウンドはくるぶしまで埋まるような芝の深いところでやってたりとかさ。
――よりスキルが問われますよね。でもちゃんとしたスキルがあったら適応できますよね?
伊藤 結局、適応能力が問われるよね。このグラウンドだったら、このプレーを選択するとか、たぶんだけどさネパールのデコボコのグラウンドでやったりしてもベッカムは美しいクロスを上げるだろうし。
――スキルがあるからってことですか?
伊藤 なんだかんだアップとかでグラウンドの状況を掴んで、スーパーなプレーをすると思うよ。できるやつはやっぱりできるもん。そういう所でも。
――あと、モンゴルリーグも結構衝撃的だったんですけど、ホットシャワーが出る時間とか決まってなかったでしたっけ?「今なら温かいのが出るよ!」という時に取り合いになってた記憶が。
伊藤 そうだね。モンゴルはとにかく寒かったな。冬は-40℃になりコンタクトレンズが割れたりもするからね。
――グラウンドは良かったですよね?
伊藤 人工芝だったからね。ギアで言うと暑い国と寒い国では俺の荷物は明らかに違ってきたよね。寒いと手袋だったり、ロングのタイツとかを持参したり。暑い国に行くと半袖とかポロシャツとかしか支給されないけど、寒い国に行くと冬物を支給されて、荷物が圧倒的に増えていくね。
――あとセルフブランディングで、なるべくテストを受けに行くときはカッコいい服で行ったり工夫されてましたよね。
伊藤 やっぱりサッカーに限らずだと思うけど「面接に行きます」ってボサボサの頭でヨレヨレの服を着ていったら、第一印象良くないじゃん。サッカーもそうで、ちゃんとした服っていうか上手そうな格好をして行くと「出来そうな奴だな」って第一印象が変わるわけで。
第一印象ってすごい大事だし、それによってスタートラインが変わってきちゃうからね。第一印象が良い人がいいプレーをしたら「やはり凄いな!」ってなるよね。第一印象が悪い人が同じプレーをしても「悪くないかも」とやっとそれでスタートラインに立てる。マイナスからのスタートだから。
あと、カッコいいスパイクとか目立つスパイクを履いてると自信あるんだなって思われるしね。俺は相手がそういうのを履いているとコイツ自信があるんだなって思うからさ。
――確かに自信のある選手は派手でカッコいいスパイクを履いている気がします。海外でスパイクについてローカルの選手達から聞かれることとかありますか?
伊藤 やっぱりどこの国に行っても日本の物はクオリティが良いから注目されるよね。あとは本物か偽物かよく聞かれるよね。海外ではアディダスとかナイキとかの偽物を履いてる選手が凄く多くてね。俺のスパイクを見てこれ本物か?オリジナルかってよく聞かれることがあるよ。
――確かにアジアでも南米でもよく「オリジナルか?」って聞かれました。
伊藤 どこのメーカーが良いとかじゃなくて本物か偽物かの話から入るのが面白いよね。代表チームが偽物のユニフォームを着てるって国もあったりします。
Vol.5 に続く。 http://king-gear.com/articles/517
写真:菅優樹、伊藤壇
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――ビブスを買うお金を持っているのに、別にわかるから買わないというのは面白い感覚ですよね。
伊藤 国民性だろうね。前所属チームである東ティモールのチームで面白かったのは練習着が2つあって、1つは黄色の蛍光で、2つ目は小豆色みたいなんだけど、練習着が黄色の日に渡されるビブスが黄緑なんだよね。
ビブスと練習着の色がほぼ一緒でさ、ビブス着てるのに敵か味方か良く分からない状態なんだよね。 あと練習試合があって、うちのチームが黄色の蛍光のユニホームで、相手チームは辛子色のユニホームでレフェリーがノーマルの黄色のシャツを着ていてね。
360度味方にしか見えないんだけど、そこも何とも思ってないんだと思う。
――分かるでしょ!みたいな感じなんですかね。
伊藤 絶対に日本人だったら草サッカーでも文句言うじゃん。分からないよ!とか。
――間違いないです。僕らのエンジョイでやっているフットサルでも言うと思います。 ある意味たくましいですよね。
伊藤 良く言えばたくましいね、自分で選んで来た国だし、与えられた環境で結果を残していくのがプロだと思うし。そのみんな黄色いシャツの状況も視野の確保の練習だって思って自分に言い聞かせて。
――他になんか「これヤバかったよ」という話はありますか?
伊藤 モルディブは国自体が狭くてグラウンドが少ないから、サッカー協会の横に人工芝のグラウンドが一応ひとつあるんだけど、そこはあんまり使えないから、その横にある広場みたいな所で練習するんだ。
そこには砂に近い土のグラウンドがあって、一応ゴールもあって、そこで練習するんだけどやっぱスパイクは履かずにトレシューでやるよね。
グラウンドが少ない分、他のチームも確保できないから、どのチームも大体そこでやるんだよね。翌日に試合をするチームが横でセットプレーの練習しててさ、全部筒抜けなの(笑)
――ひとつのグラウンドで、野球部とサッカー部が一緒に練習しているみたいなものですよね?
伊藤 練習を始める時間も一緒だからさ、違うチームに所属している兄弟がバイクで一緒に来て、それぞれのチームで練習して、練習が終わったらまた一緒にバイクでブーンって帰っていくんだ。
――なんか部活みたいですね。モルディブも土というか砂のグラウンドですが、最近はアジアでも人工芝のグラウンドが増えてますよね。
伊藤 ここ数年、時代と共にアジア各国で人工芝が主流となってきてるね。個人的には人工芝はトレシューだと思ってたから、トレシューを使う機会が増えたよ。
――カンボジアの芝生も以前は良くなかったけれど、最近は人工芝のグラウンドが増えてますよね。以前は凄くえげつない所で練習をさせられた覚えがあるんですけど、今は良くなってきてますよね。
伊藤 ブータンにあるナショナルスタジアムも昔は天然芝だったけど、あっちの方ってやっぱり気候的にそんなに芝が育たないのかな。メンテナンスの仕方をよく知らないっていうのもあるかもしれないけれど、グラウンドがボコボコだったから。でも数年前から人工芝になってて、時代と共に人工芝が増えてきたよね。
――海外のトライアウトの難しさってグラウンドだと思うんです。カンボジアの練習試合の時もグラウンドの数か所に穴が空いてたりとか、芝生が深かったり日本とは大きく違いますよね。ボリビアではグラウンドの穴にはまって自身は捻挫しましたし(笑)
伊藤 カンボンジアのプノンペンクラウンというチームはJクラブ並みの環境で練習してるけれど、俺の所属していたチームのグラウンドはくるぶしまで埋まるような芝の深いところでやってたりとかさ。
――よりスキルが問われますよね。でもちゃんとしたスキルがあったら適応できますよね?
伊藤 結局、適応能力が問われるよね。このグラウンドだったら、このプレーを選択するとか、たぶんだけどさネパールのデコボコのグラウンドでやったりしてもベッカムは美しいクロスを上げるだろうし。
――スキルがあるからってことですか?
伊藤 なんだかんだアップとかでグラウンドの状況を掴んで、スーパーなプレーをすると思うよ。できるやつはやっぱりできるもん。そういう所でも。
――あと、モンゴルリーグも結構衝撃的だったんですけど、ホットシャワーが出る時間とか決まってなかったでしたっけ?「今なら温かいのが出るよ!」という時に取り合いになってた記憶が。
伊藤 そうだね。モンゴルはとにかく寒かったな。冬は-40℃になりコンタクトレンズが割れたりもするからね。
――グラウンドは良かったですよね?
伊藤 人工芝だったからね。ギアで言うと暑い国と寒い国では俺の荷物は明らかに違ってきたよね。寒いと手袋だったり、ロングのタイツとかを持参したり。暑い国に行くと半袖とかポロシャツとかしか支給されないけど、寒い国に行くと冬物を支給されて、荷物が圧倒的に増えていくね。
――あとセルフブランディングで、なるべくテストを受けに行くときはカッコいい服で行ったり工夫されてましたよね。
伊藤 やっぱりサッカーに限らずだと思うけど「面接に行きます」ってボサボサの頭でヨレヨレの服を着ていったら、第一印象良くないじゃん。サッカーもそうで、ちゃんとした服っていうか上手そうな格好をして行くと「出来そうな奴だな」って第一印象が変わるわけで。
第一印象ってすごい大事だし、それによってスタートラインが変わってきちゃうからね。第一印象が良い人がいいプレーをしたら「やはり凄いな!」ってなるよね。第一印象が悪い人が同じプレーをしても「悪くないかも」とやっとそれでスタートラインに立てる。マイナスからのスタートだから。
あと、カッコいいスパイクとか目立つスパイクを履いてると自信あるんだなって思われるしね。俺は相手がそういうのを履いているとコイツ自信があるんだなって思うからさ。
――確かに自信のある選手は派手でカッコいいスパイクを履いている気がします。海外でスパイクについてローカルの選手達から聞かれることとかありますか?
伊藤 やっぱりどこの国に行っても日本の物はクオリティが良いから注目されるよね。あとは本物か偽物かよく聞かれるよね。海外ではアディダスとかナイキとかの偽物を履いてる選手が凄く多くてね。俺のスパイクを見てこれ本物か?オリジナルかってよく聞かれることがあるよ。
――確かにアジアでも南米でもよく「オリジナルか?」って聞かれました。
伊藤 どこのメーカーが良いとかじゃなくて本物か偽物かの話から入るのが面白いよね。代表チームが偽物のユニフォームを着てるって国もあったりします。
Vol.5 に続く。 http://king-gear.com/articles/517
写真:菅優樹、伊藤壇