「キックをメインに考えて、スパイクを選ぶ」五郎丸歩(ラグビー日本代表)
五郎丸がキングギアだけに語ったスパイク観。
多羅 正崇
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2016/06/02
五郎丸歩が求めたスパイク。
2015年秋に行われたラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会。エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)率いるラグビー日本代表は、日本ラグビー史上初となるW杯1大会3勝を挙げ、国内外に大きなムーブメントを巻き起こした。1次リーグ初戦で南アフリカを撃破した快挙(34-32)は、世界を驚嘆させ、W杯後の日本における「80年代以来のラグビーブーム」の呼び水となった。
エディー・ジャパンの大躍進は、ひとりのラグビースターを生んだ。1次リーグで個人2位となる計58得点を挙げたFB五郎丸歩=ヤマハ発動機=である。W杯後のフィーバーぶりは、周知の通り。特にプレースキックのときに見せる俗に言う“五郎丸ポーズ”が大きな注目を集めた。
しかしその足もと、振り抜かれる右足に輝く三本線にフォーカスしたメディアは皆無だったのではないか。五郎丸の正確無比なプレースキックを支えたギア、すなわち、アディダスのラグビースパイク「クレイジークイックSG」の存在である。
今回KING GEAR(キングギア)はヤマハ発動機の本拠地・静岡県磐田市にて単独インタビューを敢行。日本ラグビー界の至宝となった男の知られざる「スパイク観」に迫った。
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――いつも用意しているスパイクは何足ですか?
五郎丸歩選手(以下、五郎丸):シーズンに入ると、取り替え一足と固定一足だけで済みますね。
――スパイクはどんなケアをされていますか?
五郎丸:試合前にはけっこう磨くのが好きで。試合終わったあとにはサッと汚れを取ります。で、試合の前日にもう一回きれいに磨きます。
――W杯イングランド大会ではクレイジークイックSGを履いていましたが、感触は?
――W杯イングランド大会ではクレイジークイックSGを履いていましたが、感触は?
五郎丸:ソールがしっかりしていますね。RS7に比べてすこし重いんですけども、キッカーにとってはすごくいいバランス。重りがあったほうが飛ぶんですけども、RS7よりはキッカー向けといいますか。
アディダスの「アディゼロRS7」シリーズは軽量性とフィッティングに優れたスピードモデルだ。代表レベルにおいても特にバックスの選手に支持され、五郎丸自身も2015年夏までアディゼロRS7(シルバーメタリック)を着用していた。
――2015年の夏までは、アディダスのRS7を履いていましたね。
五郎丸:そうですね。世界選抜戦くらいまで履いていましたね。
――スパイクを変えた理由は?
五郎丸:W杯はこれ(クレイジークイック)でいく、ということになっていたので。試合以外の時はクレイジークイックを履いていましたね。
――クレイジークイックという選択は間違いではなかった。
五郎丸:そうですね。飛距離も自分の思った通りに飛んでいましたし。ランニングもうまくいっていたかなという感じですね。
――プレースキッカーとしてのスパイク、フルバックとしてのスパイク、どちらを重視してスパイクを選びましたか?
五郎丸:まあ、代表の中でもいろんな選手がいて、たとえば足の速さを売りにしている選手というのは、できるだけ軽いスパイクを選ぶ傾向にありますね。で、僕はスピード系でもないので、キックメインに考えた時には、クレイジークイックが一番合っていると思いますね。
五郎丸はW杯前、本大会でのゴールキック(GK)成功率を85%と定めていた(2014年のGK成功率は約81%)。一連のルーティンはこの「85%」という数字との格闘の末に生まれたものだ。
そんな五郎丸はスパイクにもキックをサポートする性能を求めていた。高い軽量性とグリップ力を誇るRS7ではなく、「キックメインに考えた」クレイジークイックを選択した。RS7よりは重いが、重量があるぶんキックの飛距離が出た。
エディー・ジャパンの快挙を支えた五郎丸のキック。その彼を影で支えるスパイクがあった。そのスパイクの名は「アディダス・クレイジークイックSG」である。