
森保ジャパンが“攻撃的3バック”を武器にアジアを席巻ー最速W杯出場を決めた歴代最高の最終予選を振り返る
サッカー日本代表は、3月20日に行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の第7節でバーレーンと対戦。2ー0で勝利を飾り、開催国であるアメリカ、メキシコ、カナダを除いては世界最速でW杯出場を決めた。2018年7月から日本代表を率いる森保一監督の“第二期”にあたる26年W杯での上位進出を目指すメンバーは、質、量ともに過去トップクラスのメンバーを揃えて強さを見せつけた。歴代のA代表が苦しみを味わった最終予選を無敗で駆け抜けた森保ジャパンの戦いを振り返る。※トップ画像出典/Getty images

三笘や堂安をWBにおいた攻撃スタイル
初出場を果たした1998年フランス大会から8大会連続のW杯出場を目指した日本代表だが、歴代のチームは最終予選で苦戦を強いられてきた。
2018年のロシア大会を目指したヴァイッド・ハリルホジッチのチームは初戦に敗れるスタートとなり、その後本大会出場を決めたものの大会前に監督は解任。22年のカタール大会を目指した“第一期”の森保政権でも最終予選の開幕3試合で2敗を喫するなど、アジアの戦いは簡単なものではなかった。
そこで森保監督が採用したのが攻撃型の3バックで、Jリーグのサンフレッチェ広島の監督時代や前回のカタールW杯でも試合途中のオプションとして用いていた。そんななか、2次予選の途中から試したのが両ウイングに三笘薫や堂安律といったより攻撃面で特徴を出せる選手を配置する布陣だった。
最終予選で鍵を握ったのが第1節となった昨年9月の中国戦。日本は前半12分に久保建英の左からのCKに主将の遠藤航が合わせて幸先よく先制点を奪うと、前半終了間際にも右サイドでボールを受けた堂安のクロスに左サイドでフリーになった三笘が頭で合わせて2点のリードを奪った。
右WBの堂安から左WBの三笘が合わせたこの1点は森保監督の“攻撃的3バック”が活かされた形であり、引き気味の相手を崩すことに苦戦してきた過去があるなかで、解決策の一つとして効果を発揮した。さらに、後半には南野拓実に2ゴールが生まれるなど7ー0という前例のない初陣での大勝を飾り、これ以上ない形でチームは動き出した。
守田は攻守におけるキーマンに
そして、敵地に乗り込んだ第2節のバーレーン戦では新エースと中盤のキーマンが躍動した。1トップで先発出場した上田綺世がPKを含む2ゴールを挙げると、ボランチの守田英正も後半16分と19分にゴール前に侵入し、立て続けに2ゴールを奪うなど、5ー0の勝利に貢献。新世代が台頭するなかでもポルトガルの名門スポルティングCPで主力を担う守田は、遠藤と並んで攻守において替えのきかない存在として君臨した。

3連勝を飾って迎えた第4節ではホームに最大のライバルであるオーストラリアを迎え入れたなか、チャンスを決めきれないまま迎えた後半13分、右サイドからの相手のクロスが谷口彰悟のOGとなり最終予選初失点でビハインドの状況になる。
膠着状態を打開したのが途中交代で入った中村敬斗で、今季スタッド・ランスで5試合連続ゴールを奪うなどフランスでも進化を遂げているアタッカーが後半31分に左サイドで相手DF2人を交わしエリア内に侵入し相手のOGを誘発。1ー1のドローとなったなか、試合途中でシャドーに回った三笘と中村の共存が成立したこともポジティブな要素となった。

第5節のインドネシア戦で存在感を示したのが、今回の予選で不遇を味わっていた右サイドのスペシャリスト。後半途中に投入された菅原由勢は、堂安や伊東純也といった攻撃的な選手をWBに配置した“攻撃的3バック”において、居場所を失い苦しい状況が続いていた。そんななか、後半24分に右サイドから伊東とのワンツーでエリア内に侵入した菅原は、中へのクロスも選択肢としてあったなか右足を振り切りニアサイドを撃ち抜いた。
久保が圧巻の1G1AでW杯行き決定
試合後に菅原は「最終予選が始まってから自分自身悔しい思いをしてきた」と苦境に対して正直な想いを発しつつ、「ほかの人に矢印を向けそうな時もありましたけど、サッカー選手としてピッチで自分を証明することが結果につながると思っていた」と自分自身と向き合った日々を振り返った。このインタビューはSNSでも大きな反響が寄せられるなど、今回の最終予選でも屈指の名シーンとなった。
その後、中国に勝利して王手をかけて迎えた20日のバーレーン戦では第2節で大敗していた相手の対策にあったなか、後半に輝きを放ったのが久保。後半21分に上田のポストワークから裏へ抜け出すと、入れ替わる形で中央に侵入した鎌田大地の先制弾を演出する。そして、後半終了間際にもショートコーナーからエリア内に入ると相手GKの逆を突く形でニアを抜き、圧巻の1ゴール1アシストで日本のW杯出場を“確定”させた。守備でも奔走する姿が目立つなど、スペインでも屈指の名手に成長した日本の至宝が主役となった。
日本はこれで6勝1分けの勝ち点19となり、3試合を残した段階で2位以内を確定。森保監督が採用した“攻撃的3バック”は自軍がボールを握る時間帯が増えるアジアの戦いにおいて、7試合で24得点を記録するなど効果を発揮した。途中交代で入った選手の活躍が目立つなど選手層は厚みを増しており、歴代最強の呼び声も高いチームが来年6月のW杯に向けてどのように底上げを図っていくかは今後の注目となっていく。
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